ほるぷ出版の復刻版の日本児童文学館--第一期配本の35冊が吉祥寺の古本屋に１万円で展示されていた。思わず手が伸びてしまい、荻窪教室用に買ってしまった。

その中には、それだけで１万円以上の価値はあると思われる芥川龍之介の「三つの寶」が入っている。天金張りの和紙を使った大型本。さし絵の部分は和紙ではにじんでしまうから、一枚ずつ貼ってある。何とぜいたくな造りであろうか。昭和三年改造社刊である。いま、どんなに流行作家であろうと、こんなぜいたくな本づくりなんてできないだろう。

ハリー・ポッターに夢中の子どもたちにこの本を見せてやりたい。
佐藤春夫が芥川に手紙を書いている。それは本当に心を打つ内容だ。そして、あとがきの小穴隆一の文章もすばらしい。以下に引用。

「あなたがたはあなたがたの　一番仲のいいひと、一番好きな方々と、御いっしょに
この　三つの寶　を御覧になりませうが、この本は、芥川さんと私がいまから三年前に計画したものであります。私達は一つの卓子テーブルのうへにひろげて　縦からも　横からも　みんなが首をつっこんで読める本がこしらへてみたかったのです。-------------
どうか　あなたがたは、三つの寶の中の王子のように　お姫様のように　この世のなかに、
信じあひ助け合っていつてください。」