それが何語であれ、言葉というのは思考を可能にする道具でもあります。私がこの教室で一番大事にしたいのは実は、この「思考力」なのです。漢字が少々書けなくても思考力さえあればあとはワープロが書いてくれる時代なのですから。

その点インターに通うお子さんは共通して、漢字はがたがたなのですが、思考力があり自分で考えることができるように思います。たとえば、実際の中学生の例なのですが、自由の「由」の字が書けなくても、コミュニズムとフリーダムについて私と議論ができるのです。要約を書きなさいというとなんだか訳の分からない文章を書いていたので、思わずサマリーを書きなさいと、r の発音に注意して言い換えるとたちまち完璧に書けるという次第。

その対局にあるのが進学塾に通う生徒さんたちです。自由の由どころか難しい四字熟語などは完璧に暗記しています。使うことはできませんがね。そして、難関中学を狙っていて算数はおそらくすごくできる。でも、コボちゃんひとつうまくまとめられない生徒さんが、昨年いらっしゃいました。彼はある有名進学塾に通っていて、昨年の夏期講習をこの教室でやりました。9月ぐらいまでいたのかな。随分ともんもんとしながらも、普通の文章が書けるようになり、今年、見事に開成中学に合格しています。

日本は本当に変わりました。さまざまな個性のあふれる生徒さんがいて、それはそれでいいという場づくりをしていきたいと思っています。どのお子さんも個性あふれていて、それを点数で評価しようなどと言う気には全くなれません。

この教室ではコボちゃん・ロダン作文が書けることは、普通のこととして扱います。後者の進学塾の生徒さんが、その意味で、特別優れた思考力の持ち主であるとは考えることができません。難関校といえど、国語に関していうなら難関でも何でもない。それを難関にしてしまっている進学塾に、私は大いに疑問を感じてしまうのです。