デジールDXの新作は、面白かったですね。
周囲の、というか「家」の圧力で結婚させられそうな二人が、そこから逃れるための「緊急避難」として、あらかじめ別れる約束をしておいて、とりあえず籍を入れてしまう。
別れる約束の日は近づくが、「圧力」の正体が次第に明らかになっていくと共に、二人ともお互いを必要としていることに気付き、最後はハッピーエンドです。
・・・これだけではネタバレじゃない。この骨格に、上原先生がどう肉付けしたか、読んでみてのお楽しみ!ですよ。
とにかく、重たいシーンはなく、軽やかなテンポだけれど、一つ一つのシーンが、二人の想いが心に沁みます。
「ひところの、良く出来たフランス映画のような展開」というのが、僕の感想です。
こんな設定、都合よすぎる結末、ありえないと思いますか?
確かに、本当の「偽装結婚」なら、ハッピーエンドはないでしょう。けれど「婚姻届に判を押す」ってのは、経験者ならおわかりでしょうが、冗談にも気軽にも出来ませんよね。それを自分の意思で敢えてして、しかも続けるなんて、心が結ばれてなければ、つまり、「赤い糸」がなければ、そもそも無理ですよ。
そのことに、二人がいつ気付くか。どんなキッカケで自分の心に素直になれるか。・・・ここらへんの表現が「上原先生ならでは」なんですよねー。
未読の方、ぜひ読みましょうよ!
さて、「偽装結婚」で僕が思い出したのがクラレンス公とマーガレットのロマンスです。
「とりあえず妻という形で預かる」・・・これは、いくらなんでも非現実的すぎるんじゃないの?当初はそう思ったけれど、今回の「離婚のお約束」と、全く一緒ですよね。
「愛し合ってるからこそ結婚した」んだと。
ところが二人とも「ロベールのために」ということが足枷になって、それを素直に表現できないのまで似てる。だいたい、クラレンス公がロベールに決闘を申し込むけど、愛してなきゃ「決闘」なんてするわけないじゃん、と僕は後で気付いたんですけどね(汗)。
結局、マリーベルにドヤシつけられたクラレンス公がマーガレットにプロポーズして、この二人はめでたしめでたし。
「マリーベル」には亡くなった人も多いけれど、このクラレンス公のように、みんなマリーベルに「前に進む勇気」「素直になる勇気」をもらってる。だから短い人生だけれど悔いはなく、マリーベルに感謝してるはず。
そのマリーベルも、いざ自分のことになると、やっぱり素直になれない。だから「マリーベル、今は君こそ素直にならなくちゃいけないんだよ」と、みんなが感謝をこめて説得に来たのが、あの感動のラストシーンだと思う。
出てきたのは亡くなった人ばかりだけど、その感謝の思いはクラレンス公・マーガレット夫妻も、全く同じでしょうね。
全く余談ですが、オーストラリアにワインで有名な「アデレード」という大都市があります。あれって、イギリス国王ウィリアム4世の王妃の名前から付けられたんですね。
つまり、クラレンス公の奥さん。・・・「マーガレット」じゃないのが残念ですが。