・・・クラシックファンなら、シューマンの「北欧神話の巨人に挟まれたギリシャの乙女」という評をご存知でしょう。
ベートーベンの交響曲の大作・第3番「英雄」と第5番「運命」に挟まれ、軽く見られがちな第4番を称えるものですよね。
僕は「炎のロマンス」と「マリーベル」に挟まれた、比較的短いこの「チャーミィ」に関して、まさしくこの間違いを犯してたな、としみじみ反省してます。
確かに短い分、大河ドラマ的広がりはないけど、上原作品の魅力は、すべてここに凝縮されてますよね。
まさに上原エッセンス。
大長編とも、珠玉の短編とも違う、独自の魅力が、確かにここにあると思います。
ムダな部分なく緊迫感が続き、ハラハラさせられつつ、怒涛の展開の末に、ちゃんと劇的なフィナーレがある。
今読み返してみて、一気に読んでしまいながら、感動はいつまでも冷めることなく続いてる。
・・・スゴイ、本当にスゴイ作品です。
悪人がいないのも、いいですね。
当初エルロイ大おばさまっぽかった(笑)おばあさまも、実に優しい人だったし。
シベールやルイ系の(笑)ルーディも、最初からなぜか憎めないし。
そしてそしてチャーミィ。紛れもない、上原ヒロインですね。健気で可愛くて、しっかりしてて努力家で・・ドジで泣き虫で(笑)。
(ネタバレごめんっ!)
ラストシーンでさえ「好き」と言えないアレンに業を煮やし、大観衆の前で自分から「好き!!好き!!好き!!」と絶叫するし。
アレンもロベール君ぽい、ちょっと頼りな系(笑)なのに、
「母親ならば、自分が幸せになる前に、わが子を幸せにする義務がある。」とキッパリ言いきりますね。
これは、問題発言です。勿論、納得しない方も多いでしょう。
でも、反論を承知で敢えて言わせたのは、上原先生の信念なんでしょうね。
僕はこのセリフで「いのちの器」をとっさに思い浮かべました。
以上、
この「ごきげんチャーミィ」。もしかしたら、スゴイ作品じゃないんでしょうか。
上原先生の、それまでの集大成であると共に、その後の原点でもある。
そんな風にさえ思えるのです。