<原題> 「実尾島」
長年に渡って隠蔽されてきた韓国政府による金日成暗殺計画とそれを巡る工作部隊の反乱。。。
1971年に勃発した“シルミド事件”をその発端となった事件から辿り、3年間に及ぶ南北朝鮮の緊張状態の過程を克明に描く。
出演は「オアシス」のソル・ギョング、「黒水仙」のアン・ソンギ。
「ツー・コップス」のカン・ウソク監督が映画化。
<あらすじ> 1968年1月、パク・チョンヒ大統領暗殺の命を受けた北朝鮮の武装特殊部隊が韓国に侵入し、大統領府近くまで接近して警官隊と大規模な銃撃戦を行う事件が起きた。
韓国政府は北朝鮮への対抗措置として、キム・イルソン暗殺を目指す特殊部隊の訓練に入る。
インチョン沖のシルミ島(ド)に集められた31人の男たちは、連日の過酷な訓練で一撃必殺の暗殺部隊へと練り上げられる。
だが北朝鮮との宥和政策に転じた韓国政府は、キム・イルソン暗殺計画を撤回。
計画が外部に漏れることを恐れた政府は、シルミ島の暗殺部隊を闇から闇に葬ることを決定するのだった。。。
アン・ソンギ Ahn Sung-kee・・・・チェ・ジェヒョン(韓国空軍准尉)
ソル・ギョング Sol Kyung-gu・・・カン・インチャン(684部隊第3班長)
ホ・ジュノ Heo Jun-Ho・・・・・・・チョ軍曹(韓国空軍兵)
チョン・ジェヨン・・・・・・・・・・・・・・ハン・サンピル(684部隊第1班長)
イム・ウォニ
カン・ソンジン
カン・シニル
イ・ジョンホン
(↓ 注:以下ネタバレあり)
劇中では兵士たちが死刑囚やヤクザという社会のはみ出しものという設定になっているけれど、実際の684部隊は映画のようなアウトロー部隊ではなく、ほとんどが一般市民からの徴募兵だったらしい。
婦女暴行事件も社会問題になったり、バスジャック事件では映画では人質が解放されているものの実際には巻き添えをくっていたことなど。。。
映画は事実に基づいてはいても、アクション・ドラマとして事実を脚色している点も多いのでしょう。
「キム・イルソンを討てば、死刑を免れ成功報酬を勝取ることができるという」大義が引き立つし。
684部隊の遺族の中には、兵士が犯罪者として描かれたことに腹を立てている人もいたと聞くので、映画をきっかけにこういう事があったのだ、と知るだけでもよしとしなければ。
歴史に翻弄される人々の悲劇というメッセージがとても強く、その悲劇っぷりに涙しました。
目を背けたくなるような地獄のような訓練と、共に出来上がる仲間、教える立場の空軍兵など絆が深まっていくのはわかったけれど「3年間」という台詞がなければ、そんなに時間経過を感じられませんでした。
特典映像を見ても、実際の朝鮮の特殊部隊の訓練にかなり忠実なようでした。
その凄さは伝わるし訓練シーンには見せ場もあったけれど、出動まで長く感じました。
でも特殊部隊の面々が北へと向かう場面では、男の映画!らしい盛り上がりに興奮しました。
暗殺計画が突然中止された684部隊の兵士たちが「北朝鮮に送ってくれ」と言うのはわかる。
暗殺計画が宙に浮いたことで、部隊を抹殺しようと言う国家の冷酷さもわかる。
わからないのはその後島を脱出した部隊が、北朝鮮ではなくソウルの大統領府に向かうこと、
大統領に訴えてただ自分たちの存在、アイデンティティーを認めてもらいたかったのかもしれない。
人間扱いされず戸籍までをも奪い取られて、個性を排除した北朝鮮攻略のためだけの殺人兵器から、人間らしく死にたい!とバスの中で血文字で署名していくシーンは悲しかったです。
彼らが目前にした事実は、国とか時代の空気とかに翻弄されて死に場所すら失って、虫けらかなんぞのように抹殺されかけてて。
「奪われた、失われた大儀」を感じるともう「新撰組」みたいに切なくも思えてきて。
チョ軍曹が飴玉を袋に入れて走るシーンでも泣きました。。。
ホ・ジュノには一つ一つの仕草に惹きつけられます。
インチャンとサンピルの友情の描かれ方も良かったし、またソル・ギョングの表情のない演技から感情が時たま見える瞬間が上手い!と思います。
役名が始めはあまり出てこないので、大杉漣、鶴見信吾など思い浮かべながらキャラクターを覚えました(苦笑)
--- シルミド事件 ---
1971年、24名の軍人によって路線バスが奪取された。
一行は、青瓦台(韓国大統領府)のあるソウルに向うよう指示するのだった。
当時は、「北朝鮮の武装ゲリラがソウル突入を図り失敗した」的に報道されたが、すぐさま「空軍空挺部隊の特殊犯の暴動事件」という訂正報道がなされた。
ところがその直後、国防長官が辞任したり不審な動きが。。。
真実は別にあると囁かれながら。。。韓国政府が30年以上、封印してきた。