<原題> 「DEEP BLUE 」
<公開時コピー> 「誰も見たことのない世界を見せてあげよう」
自然・動物ドキュメンタリー製作において、長年に渡り世界的に高い評価を受けるイギリスBBC。
かつてないスケールのプロジェクトとして取り組んだ驚異の海洋ドキュメンタリー。
製作7年、撮影4年半、ロケ地200ヶ所で撮り上げた合計7000時間に及ぶ撮影フィルム。
日本でも2002年にNHKで全8回のミニ・シリーズとして放映され大反響を呼んだドキュメンタリー番組「海・青き大自然」で使われた素材から、スペクタクルなシーンを中心に厳選、劇場版として再構成。
地球の表面積の70%を占める海。
しかし、その深海5000mを超える水域に入った人間は、宇宙を旅した者より少ないという。
そんな科学者さえ見たことのない“未知の世界”をはじめ、海の知られざる世界をかつてないスケールで描き、観る者を別世界へといざなう壮大なスペクタクル!!!
監督・・・・・・・・・・・アラステア・フォザーギル Alastair Fothergill 、アンディ・バイヤット Andy Byatt
音楽・・・・・・・・・・・ジョージ・フェントン George Fenton
演奏・・・・・・・・・・・ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ナレーション・・・・・マイケル・ガンボン Michael Gambon
★★★★☆
□HP http://www.deep-blue.jp/
音響が凄い!!! ドルサラ、THXの甲斐があります。
ベルリンフィルの奏でる音楽が盛り上げるし、鰯の群が渦になって立てる音とか生の音も聴くことが出来て素晴らしい。
ベルリンフィルは初めて映画音楽の仕事を引き受けたそうです。
またカメラマン達の仕事っぷりに感服。
どうやって撮影しているんだろうと思う間もなく、壮大な世界を見せつけられます。
プロダクションノートを見ると、鮫の大群を撮影したカメラマンは、柵にも入らず手持カメラを担いで潜り、何百という鮫の真っ只中での撮影だとか、
5頭のシャチが鯨の親子と死闘を繰り広げる海中に入って撮影だとか、
時速100キロで獲物に突進する3mのマカジキと向き合って撮影だとか、もう命がけ。
深海の撮影では、映像を提供する条件で科学者に潜水艇を借りたところ、高性能カメラの鮮明な映像で新種を発見、学会を驚かせたりもした。
ナレーションのマイケル・ガンボンといえば、ハリポタ〜アズカバンのダンブルドア校長、その語り口は絵本を読み聞かせるお父さんみたいでした。
水族館大好きだし癒されるのかと思いきや、動物と動物が出会うとほぼ必ずハンティング。
そのまんま見せるので血吹雪きはあがるし、肉片も見えたりグロい。
例えばシャチ。
浜辺で遊ぶオタリア(アザラシ科)の子供達を、シャチの群れが襲います。
波打ち際まで波と共に乗り上げるシャチは、子供を捕らえると沖に連れ去り、生きたままボールのように空中に放り投げ、弄ぶ。
この行動は、実はこのシャチの群れだけがとるそうです。
他の群れでは観察されない。この群れ固有の文化なんだそうです。
シャチの大きな尾びれで空中に放り上げられたオタリアは、内臓を垂らしながらポーンと高く飛ばされた後に食べられてしまいます。
それから母子鯨のシーンでは、
シャチ達は大きなクジラを襲うリスクを最小限に抑える為に、6時間に渉って母子を付け回す。
泳ぎがあまり得意ではない子供は、疲れて泳げなくなってくる。
そこを、シャチ達が次々にのしかかり、子供を(鯨は海面に出て呼吸をする)溺死させる。。。
シャチって賢くて恐ろしい。。。
シャチといえば水族館で芸をするとかのイメージだったけれど、“海のギャング”とも呼ばれていたんだっけ。
子供たちにも是非見て欲しい作品だけれど、リアル過ぎても理解出来るといいなぁ。
白イルカ達は、5m四方くらいやっと空いた氷の穴が塞がないように、絶えず水面に呼吸に上がっている。
けれど氷の上にはホッキョクグマがいて、水面に昇るのを待ち構えてる。
息を詰めて水中に隠れるけど、だんだん苦しくなってくる。。。
どの白イルカの背も、爪痕でボロボロになっている。
それが何ヶ月も春まで続く。 生き延びる為に、耐え忍ぶ。
そのホッキョクグマは、お腹をすかした子供のために、自分より大きなイルカを狙って氷の海に飛び込む。
-50度の氷上で3ヶ月間絶食して、身を寄せ合って卵を守るコウテイペンギン。
鮫とイルカ、そして海鳥の群れが同じ魚を追って海中で攻防を繰り広げたり。。。
外敵から身を守るため、巨大な塊となって素早く逃げ回るイワシの大群。
魚達は夜は岩陰に身を潜めるけれど、捕獲されずに朝を迎えられる保証も無かったり。。。
クラゲのシーンはとても綺麗だった。
あとイカの群れ。 目が哲学的で、どんなSFよりも不思議。美しい。
赤い魚の群れは、スイミーの兄弟達みたいだったw
宇宙やエイリアンより、海洋生物のほうがよっぽど。。。ねぇ。
ただただ見て感じてもらいたい、その生と死の輪廻。 弱肉強食。 食物連鎖。 を感じた90分。
そして自然と生物のただそこにある美しさを。
壁紙の写真だけでも美しい様はわかるかと。
映画最後のコメント。
「シロナガス鯨は一時期30万頭いた。現在は1%に満たない。そして人類はまた自然を壊している」
「19世紀に米国が灯油用に乱獲したため」という註釈をこっそり入れたいです(苦笑) まぁその灯油なり日本も輸入しているわけですが。
2004年8月12日(木)ヴァージンシネマズ市川