voice151■長屋紳士録
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[218]おなまえ:おーはし
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先日の土曜日は「東京乾電池祭り」を観劇。 乾電池が劇団設立30周年の記念として、 5作品をローテションを組んで 一日4作品ずつ、12日間に渡って 下北のスズナリでやっていた。
大胆とゆぅか無謀とゆぅか… 舞台挨拶で柄本明も、 点滴を打って芝居をやっていると言っていた。 …頭が下がります。
俺はこの日、うち三本を観る。 11時から別役実作『五人の紳士』 17時からはイヨネスコ作『授業』 そして19時半からは 小津安二郎の『長屋紳士録』
『五人の紳士』では、 柄本明がおばちゃんに扮して登場する。 可笑しいのは当然なのだが、 何でこの人はいつも怖いんだろ? そのくせ面白いんだろ? 黙っているのにしゃべってるんだろ? …これ、変な表現だけど…
怪優って言葉は最近あまり使わない。 だって、怪優自体がいないから。 柄本明って役者は間違い無く【怪優】だ。 怪優中の怪優だ。 もぅ今後こんなヒトは出ない。 …今もいつまでも憧れの役者さんだ◎
そして、別役実。 この作家の作品は久しぶりに観たが、 とっても普遍的な事を言っているのね。 今も昔も変わらないコトを謳っているのね。 軽快に考えさせられる。 あれょあれょと観客の心をエグル◎
『授業』はベンガル主演。 あ〜来たょ!この人♪ この動き、この表現、…名人芸だなぁ〜
この作品は教師が生徒に教える過程で、 如何に教師が狂気に走り、 生徒を殺すまでに至るかがポイントだろうが、 ベンガルが演じるとそぅじゃないよぅな…
狂気はどこにでも潜んでいるし、 熱意とか入り込むとか熱中とか、 そんなところに簡単に飛び出るんじゃないか… 狂気を狂気として見せる事を 否定しているところに狂気を感じた。
角替和枝が思いっきり頬をぶん殴っていた。 それも二発も。 ベンガルぶっ飛ぶ!場内大笑い! …すげぇ〜
そして柄本もベンガルも角替も 綾田俊樹も蛭子能収も、 とにかく東京乾電池オールスター出演の 『長屋紳士録』 …ちょっとこれは… びっくりした!ホントびっくりした!!
小津安二郎の映画には、 以前夢中になっていた時期があって、 「東京物語」はもちろん「秋刀魚の味」 「秋日和」「彼岸花」などは大好きな作品だ。 特に「生まれてはみたけれど」と 「お早う」がいい☆☆子供がいいんだょ◎
『長屋紳士録』は 残念ながら観ていないのだが、 この乾電池の舞台を観ながら 「そぅそぅ!これこれ!これが小津!」と ニンマリする。…始めはね。
ところがオープニングから15分もすると、 この舞台はただ事じゃないぞ!と感じる。
小津作品を舞台化するって どうゆぅコトなんだろ?って感じてた。 そりゃ、哀愁とか情愛とか交流とか 心の動きはある。 だが、それがストレートに響くかとゆぅと そうじゃない。 あくまでも小津の映画は【しみじみ】なのだ。 …だから、この世界を舞台に持って来ても、 こっちに届かないんじゃないのかな? ビビッドでもないしキャッチーでも無い。 ハッキリ言ってしまえば地味。
かと言って 「小津をグルーブ感バリ出しでやろうぜ♪」 な〜んてなったらアウトね。アウト。 お前な〜んもワカットラン。アタマタラン。 …小津はしみじみしとらんといかんの!
それをやってしまったのだょ、 30周年の東京乾電池が!!!!!!!!
【小津作品はしみじみしてますよ】 【でも笑えるんですよ】 【そしてもっと泣けるんですよ】 …って、舞台で表現してくれた。 小津世界が持つユーモアとペーソスを 分かりやすく表現してくれた(感動)
まじ、びっくりです。これは。
演出がいいな〜 暗転が20回ぐらいはある。 その度シーンが変わる。 道具も変わる。 そのすべてが成立している。 演技が引いている。 そのくせ押しが強い。 だから小津映画特有の 正面撮影の効果も実現している。
あとは… 捨てられた子供を預かるおばちゃん役の 江口のりこってゆぅ女優かな? 顔が怖いんだよ。 無愛想なんだよ。 まさに乾電池っぽいんだよ(笑) …でもい〜芝居すんだよ、この女優さん◎
あとはあとは… 俺この日、風邪でした。 微熱でした。 特に三本目の『長屋紳士録』は やばかったです。 悪寒がぞぞぞぞぞーーー!!って走りました。 おまけにお金ケチって、 三本とも自由席取ったもんで。 背もたれの無いベンチシートでした。 …ケツが痛いのなんのって!! (ジゴク〜) でも完璧はまりました。 柄本明演出の劇世界に。
真剣に思う。 この作品、どっかの演劇賞を取るべきだぜ。
2006年05月03日 (水) 01時09分
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