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【冬の絵空】深読み「犬男とはなんぞや」
ひばる@管理人
「こういう考え方もあるのね」くらいの気持ちで読んで下さい。
異論反論、大歓迎。
「私はそうじゃなくて、こう思う」という意見があったら、ぜひ聞かせて下さい。
ところどころ大穴が空いた説なので、付け入る隙ばかりです。
いくらでも崩せるよ!
スペシャルサンクス、母と友達。

◆犬男の定義
自分を自分だと証明できないと、迎えが来ず門をくぐれないません。
真の証を立てられたもの、あるいは嘘を貫き通した者だけが門をくぐれます。
誰として死に、誰として成仏するかがポイントで、
二つが合致しないと通れない。(成仏できない)
必ずしも真実である必要性はなく、嘘でも嘘を貫き通せばまかり通ります。
ただし、嘘をつく場合は自身が揺らがないこと、
あるいは他者がその嘘を信じている必要があります。
また、真実の場合も、自身が揺らいでおり、
かつ他者がそれを良しとしない(嘘だと認定した)場合、
本物であるという証が立たないとします。


◆大石内蔵助が成仏できない理由
自分が大石内蔵助だと証明できなかったからです。
まず、堀江たち赤穂浪士が宗十郎を大石内蔵助だとしました。
(=本物の大石内蔵助は、偽者である。)
さらにおかるも、大石内蔵助を「誰か分からない」
「本物の大石内蔵助は死んだ」と言いました。
(=本物の大石内蔵助は、偽者である)
世間(他者)が本物の大石内蔵助を偽者としたため、
大石内蔵助自身は、自分が大石内蔵助だと証明できません。
自己申告しようにも、自信を喪失しているので証になりません。

最後に犬男達が成仏した後、犬男頭(大石内蔵助)おかるに
「目は見えているのだろう」と問うたのは、自分が成仏するため。
これは、おかるの目が見える場合、おかるが最後に大石内蔵助に言った
「あなたは大石内蔵助ではありません」という意味の言葉が「嘘」になるからです。
あの言葉が嘘になれば、嘘の裏は真。
犬男頭(大石内蔵助)は、自分が大石内蔵助だと証明して成仏できます。
しかし、おかるが「見えません」と嘘を貫いたため、犬男頭は本物の証を立てられず、
ひとり門の前に残されました。


◆宗十郎が成仏できた理由
宗十郎は大石内蔵助として死んだ、つまり嘘をついて死んだように見えますが
実際には「役を貫き通して死んだ」が正解。
他の人は宗十郎を大石内蔵助として扱っていますが、それこそが
「嘘すら真に見せる、一流役者」の証になります。
「役者」が宗十郎の本質なので、そこが揺るがなければ大丈夫。
ちょっとややこしいんですが、
「宗十郎が大石内蔵助として死んで、大石内蔵助として成仏した」のではなく、
「宗十郎が大石内蔵助を演じきった役者宗十郎として死んで、宗十郎として成仏した」
ということです。

◆浅野内匠頭が成仏できた理由
こちらは少し変則的。
まず、影武者の平助(漢字不明)が浅野内匠頭として死んでいることに注目。
平助は犬男になっていなかったようなので、平助は成仏したとします。
おそらく平助は浅野内匠頭として死んで、浅野内匠頭として成仏しています。
平助が死んだ当初、世間もそれを信じて疑わないので
平助が自分は浅野内匠頭であるとすれば、嘘がまかり通ります。
唯一真実を知る本物の浅野内匠頭は、その時点では平助が偽者だと知れたら困るので
平助の嘘に協力していることになるので問題なし。

そして、本物の浅野内匠頭は平助として殺されました。
他の者は、「本物の浅野内匠頭を平助である」と信じた方が都合がいいので、
各々の都合からその嘘に協力しています。
あとは、浅野内匠頭自身が自分を平助だと言えば成仏できる。
逆に、門で自分は本物の浅野内匠頭だと公言すれば、門を通ることはできません。
すでに平助が浅野内匠頭として成仏したので、2人目になるからです。
浅野内匠頭が犬男になっていなかったということは、門を通ったということ。
犬男として生きるとも死ぬともつかない状態でいるより、平助として死ぬことを選択し、
平助として死に、平助として成仏すれば門を通れます。

あるいは、浅野内匠頭が門に行くまでは平助が犬男として残っていて、
互いの役を元に戻してから、2人揃って成仏したとも考えられます。
浅野内匠頭の性格を考えると、こっちですかね?


◆赤穂浪士が成仏できなかった理由
赤穂浪士は、「主君のために命を捨てた忠臣」として死にました。
しかし本物の浅野内匠頭を偽者とし、
かといって偽者の浅野内匠頭(平助)を本物と信じ込んだわけでもありません。
忠義を尽くす相手の存在を、自ら消してしまっている。
そのため、存在しない「主君」のために命を捨てたことになり、
「主君のために命を捨てた忠臣」という説明が成り立ちません。

まあ、こう考えると「なぜ大石内蔵助(犬男頭)の言葉で成仏できたのか」の
理由が曖昧になっちゃうんですけど。再考の余地有り。


◆シロが成仏できなかった理由
シロは、犬として生きていたので、犬として死ねば成仏できたはず。
しかし、最後に大石内蔵助に話しかけているため、
自分は犬だという嘘を貫き通せませんでした。
こちらは大石内蔵助が、最後の会話は無かったことにしてくれたら問題はクリア。
犬男頭「行っていい」で成仏できる理屈。

個人的には、「いつでも成仏できたけど、おかるを待っていた」と考える方が好きですけど。
でもそっちは説明できないので保留。
[83] 2008年12月18日 (木) 21時11分


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