6本目が宮沢賢治「銀河鉄道の夜」をモチーフにしている
というのは以前書きました。
じゃあそもそも「銀河鉄道の夜」ってどんな話?
「ジョバンニも激怒した」やつ?
気になるけど本を読むのは苦手、あるいは時間がない。
そんな方にあらすじをご紹介。
細かめに書いたので、もっと簡単でいいという方は、
ウィキペディアの銀河鉄道夜の項をどうぞ。
かなり簡潔にまとまってます。
一、午后(ごご)の授業
授業中。ジョバンニのクラスは、天の川について勉強している。
ジョバンニは先生に質問されるが、答えは知っているのに真っ赤になってしまい答えられない。
次にカムパネルラがあてられるが、カムパネルラも答えを知っているはずなのに答えない。
ジョバンにが朝も夜も仕事が辛く、最近皆とあまり遊ばなくなりカムパネルラとも話さないようになったから、ジョバンニを気の毒に思って答えなかったのだろうと考えるジョバンニ。
二、活版所
ジョバンニは、今夜のお祭りで使う烏瓜を取りに行く相談をしているクラスメイトを横目で見ながら、活版所へ行き新聞の活字拾いの仕事をする。
夕方(6時)に仕事を追え、貰った給料でパンの塊と角砂糖を買い家に帰る。
三、家
家には病気のお母さんがいる。
牛乳が届いていないので、ジョバンニは夕食を食べた後に牛乳を取りにいくことにする。
ご飯を食べながら、ジョバンには学校で冷やかされている話などをする。
母「おまえに悪口を云うの。」
ジョバンニ「うん、けれどもカムパネルラなんか決して云わない。カムパネルラはみんながそんなことを云うときは気の毒そうにしているよ。」
ジョバンには牛乳を取りに行く道すがら、お祭りを見てくることにすると言う。
1時間半で帰ると言い、ジョバンニは家を出る。
四、ケンタウル祭の夜
ジョバンニは、ザネリ(ジョバンニをいじめているクラスメイト)に冷やかされたり、時計屋で星座盤を見たりしながら牛乳屋に行く。
牛乳屋には年をとった女の人しかおらず、「いま誰もいないでわかりません。あしたにして下さい。」と言われてしまう。
病気のおっかさんがいるから今日でないと困ると言うと、あとで来てくれと言われ、ジョバンニは一旦帰ることにする。
帰り道、ジョバンにはクラスメイトたちに出会う。
ザネリをはじめとするクラスメイトたちはジョバンニを冷やかすが、カムパネルラだけは気の毒そうな目で見ている。
ジョバンニは逃げるようにその眼を避け、クラスメイトが言ってしまうと、なんとも言えずさびしくなって黒い丘の方へ走り出す。
五、天気輪(てんきりん)の柱
丘で1人風に吹かれていると、汽車の音が聞こえてくる。
その列車の中では乗客が苹果(りんご)を剥いたり、笑ったり…と考えていると、何とも言えず悲しくなってくる。
星空を眺めるジョバンニ。
六、銀河ステーション
「銀河ステーション、銀河ステーション」という声がしたかと思うと目の前がぱっと明るくなって、気がつくとジョバンニは列車の中にいる。
すぐ前の席には、濡れたように真っ黒な上着を着た背の高い子供が、窓から身を乗り出して外を見ている。
それはカムパネルラだった。
ジョバンにが、カムパネルラは前からここにいたのかと訊こうとすると、
カムパネルラは「みんなはねずいぶん走ったけれども遅れてしまったよ。ザネリもね、ずいぶん走ったけれども追いつかなかった。」と答える。
ザネリの話をするカムパネルラは、少し青ざめてどこか苦しいという風だった。するとジョバンニも何か忘れているようなおかしな気持ちがして黙ってしまう。
七、北十字とプリオシン海岸
列車は白い十字架の前を通りかかると、乗客たちは立ち上がり、バイブル(聖書)を胸に当てたり、水晶の数珠をかけたりして祈る。
ジョバンニとカムパネルラも思わず立ち上がる。
白鳥の停車場に着く。
列車はここで20分停車するので、列車を降りてみた2人はプリオシン海岸に辿り着く。
そこでは眼鏡をかけた大学士と3人の助手が「ボス」という昔の獣の骨を発掘している。
2人はそれを見物した後、また列車に戻る。
八、鳥を捕る人
鳥獲りが乗車してくる。鳥獲りの仕事は鳥を捕ること。
鳥は食べるために獲るらしい。
鳥獲りは、2人に雁(がん)を分けてくれる。
雁は美味しかったが、カムパネルラがこれは鳥じゃなくてお菓子だろうと言うと、鳥獲りは慌ててどこかへ行ってしまう。
窓を覗くと、外に鳥獲りが居る。
鳥獲りは20ばかり鷺(さぎ)を獲ると、兵隊が鉄砲の弾に当たって死ぬときのような格好をする。
すると鳥獲りはまた列車の中に戻ってきていた。
ジョバンニが、どうして戻ってこれたのかと訊くと、鳥獲りは戻ってこようとしたから来れたと答える。
逆にあなた方はどこから来たのかと訊かれると、2人はどうしても考え付かず、答えられない。
鳥獲りは「ああ、遠くからですね」と勝手に納得する。
九、ジョバンニの切符
車掌がやってきて、切符を確認する。
ジョバンニが切符を出せずにもじもじしていると、カムパネルラはわけもないという風に鼠色の切符を取り出して車掌に渡す。
ジョバンニは、もしかしたら上着のポケットに入っていたかもしれないと手を入れると、ハガキくらいの大きさの緑色の紙が入っていた。
何でも構わないと車掌に出すと、車掌は「これは三次空間の方からお持ちになったのですか。」と訊ねる。ジョバンニはわからないと答える。
車掌が行ってしまった後、鳥獲りがジョバンニの切符は、ほんとうの天上でもどこにでも勝手に行ける通行券で、それを持っているなら、こんな不完全な幻想第四次の銀河鉄道なんかどこまででも行けると教えてくれる。
カムパネルラがもうすぐ鷲(わし)の停車場だというと、ジョバンニはわけもわからず鳥獲りが気の毒になり、この人のためならなんでもしてあげると思う。
鳥獲りが降りると、ジョバンニはもう少しあの人と話せばよかった「僕はあの人が邪魔なような気がしたんだ。だから僕は大へんつらい。」と後悔する。
野茨の香りがしたかと思うと、列車に男の子と女の子、青年の3人が立っている。
男の子と女の子は姉弟で、青年はその家庭教師らしい。
外国にいたのだが、姉弟の父が先に本国へ帰り、後から3人で帰国している途中、乗っていた船が氷山にぶつかって沈んでしまったのだという。
(作中で名前は出てこないが、この船はタイタニック号のこと)
ジョバンニとカムパネルラはこの姉弟と仲良くなり、
一緒にリンゴを食べたり話したりするが、だんだんジョバンニはさびしくなってくる。
姉はジョバンニに話しかけるが、ジョバンニは生意気ないやだいと思って口をつぐむ。
カムパネルラは自分と一緒に汽車に乗っていながら、女の子とばかり話しているのでジョバンニは辛くなる。
しかし、インデアンの狩りや急勾配の坂を下りたり、発破(爆薬)で魚を獲る様子を見ているうちに楽しくなって姉と話すようになる。
サウザンクロス(南十字)で姉弟と青年は降りることになる。
弟はもっと乗っていたいと渋るが、姉に私たちは天上に行かなくてはならないのだからと説得される。
姉弟と青年はサウザンクロスで降り、他の乗客たちも降りていき
ジョバンニとカムパネルラは2人きりになる。
「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。」
2人がほんとうの幸いついて語る中、ジョバンニは一緒に行こうと繰り返す。
カムパネルラが窓の外に広がる野原を指差しながら、「あすこがほんとうの天上なんだ。あっあすこにいるのぼくのお母さんだよ。」と叫ぶが、ジョバンニには白くけむるばかりで天上は見えない。
「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうねえ。」
ジョバンニがそう言いながらカムパネルラを振り返ると、そこにカンパネルラの姿はなかった。
ジョバンニは鉄砲玉のように立ち上がり、誰にも聞こえないよう窓の外に乗り出すと喉一杯に泣き出した。
ジョバンニが目を開くと、もとの丘の上にいた。
眠っていたらしい。胸は熱(ほて)り、頬には涙が流れている。
ジョバンニは跳ね起きて牛乳屋へ向かう。
牛乳屋にはちょうど誰かが帰ってきたところで、ジョバンニは謝罪とともに牛乳を受け取る。
ジョバンニは帰り道、橋を見つめる人だかりと、橋の上の沢山の灯りを見てさあっと胸が冷たくなったように思う。
近くの人に聞いてみると、子供が川に落ちたらしい。
川に向かって走ると、さっきカムパネルラたちといたマルコに出会い、
ザネリが川に落ちてしまい、カムパネルラが川に飛び込みザネリを助けたが、そのカムパネルラが見つからないと教えてくれる。
ジョバンニはカムパネルラはもう銀河の果てにしかいないというような気がしてしかたなくなる。
するとカムパネルラのお父さんが
「もう駄目です。落ちてから四十五分たちましたから。」と言い捜索は打ち切られる。
ジョバンニがカムパネルラの父に駆け寄ると、カムパネルラの父は挨拶をしてくれ、ジョバンニの父は帰ってきたかと訊ねる。
いいえと答えると、カムパネルラの父は「どうしたのかなあ。ぼくには一昨日大へん元気な便りがあったんだが。今日あたりもう着くころなんだが。船が遅れたんだな。ジョバンニさん。あした放課後みなさんとうちへ遊びに来てくださいね。」と言い、銀河の写った川をじっと見つめた。
するとジョバンニは色んなことで胸がいっぱいになってしまって何も言えず、母に牛乳を持って帰って父が帰ることを伝えようと一目散に帰っていった。
おわり。
長い文を読まれた方、お疲れ様です。
「銀河鉄道の夜」はいくつかバージョンがありまして、
上の文はもっとも一般に流通している形のもののあらすじです。
1番古いものだと、カムパネルラが川に落ちたことが序盤で語られ、
ジョバンニの旅はブルカニロ博士という人物の「遠くから私の考へを人に伝える実験」によるものだったことが判明します。
ジョバンニは丘でそのことを聞かされ、ブルカニロ博士に金貨2枚を包んだ銀河鉄道の緑の切符を貰います。実験に協力したお礼だと思います。
活版所でジョバンニが貰った給料が銀貨1枚なので、金貨2枚は多分高額です。
ジョバンニは博士に礼を言い、帰っていくというところで終りです。
最終稿と1番古いもの(初稿)の間にある話もあります。(3版?)
これはカムパネルラが川に落ちるシーンは最後にあり、
ジョバンニの旅は初稿と同じくブルカニロ博士の実験だったことが判明します。
著作権が切れた文学作品を無料公開しているサイト「青空文庫」に3つともあるので、時間がある方は読んでみると面白いかもしれません。
「ファイルのダウンロード」で「XHTMLファイル」を開くのが手っ取り早いです。
No.46322No.43737No.456青空文庫トップ1番上が1番古い形。
3番目が最終稿です。
2番目は1番目と3番目の間のやつ。
個人的には1番目のアクの強いジョバンニが好きです。
でも旧字体なので読みにくいです。長いし。
チャレンジする方頑張ってください。