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- 麦チョコ - 2006年12月27日 (水) 10時38分
夕暮れ遠くに伸びる長い二人の影を目で追いながら 手をつないで二人で帰った 彼女は小さく泣きながら 一様に並んでいる鳩時計が鳴る時、一緒に僕達の出発の鐘も鳴るよ。 りんりりぃん 響く小さな小さな音
ある朝彼の死を告げる知らせが来た。殉職で2階級特進、彼はお偉いさんになったのだと。 「君は僕がいなくても平気ですか?」 頭の中で響く彼の声。震える彼女の手。「これは何かの間違い?」堂々巡りの迷妄。 「嘘だ、彼が死ぬわけなんてない―」狂い汚れた笑みを浮かべる。 りんりりぃん 響く彼女の笑い声
死神が僕の背中で笑う そうさ ぺろりと・・・舌出しながら 「敬礼せよ!我が国家崇めよ!栄光を我が手に!」 と言いながらも「いつまでこんな事を続けるのだ」とどの兵達も論う。兵達は右へならえ。
これは当然の事だと思い描いていた理想と幸せは当然ではなくなり 壊れ消えていく。 耳元で死神が僕に囁く 「鬼さん こちら手の鳴る方へ」まだそちらに行くわけには―逝くわけにはいかない。 白雲 消えていく
(彼は死んだ、死んだんだよ) 黙れ!! 「嘘をつくキサマらの舌なんてチョン切って捨ててやる! ずっと待つんだ!彼を待つんだ!」 (彼は死んだのさ、この知らせが全て物語っている) 見えぬ聞こえぬ 「もういっそ何もない方がいい」と笑う 金魚鉢に写る彼女は不安と絶望の渦に流され狂っていく。
「お元気ですか?」 毎日のように戦地に届く彼女からの手紙 だが ある日を境に途絶えた
彼らが戦地に赴いてから何度目かの夏が来た。緑雨に染まる鳥が風を、平穏を連れてきた。 でもあの子はいない。黙って閉じこもってしまった。時折聞こえる何かの音。(不気味な音色が聞こえてくる) あの夕焼け空にもう二人で影を伸ばす事はないでしょう。 音色は鳴り響く
「僕は生きて帰ってきたよ!」 兵達の喚声、喜びに満ちる声 夕暮れ空に消えていく 彼は走った!(やっと彼女に会える!)そして涙をこらえてそっと扉開けた! そこには・・・彼女の生と死をのせた 彼女の骸と羽音だけが・・・
揺れる彼女の骸 鳴るおぞましい羽音 嗚呼、まるで鈴のようだ・・・・・・・
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