[842] 10話以内で終わらせたい。疑問は完結してからにしてください。(ぁ |
- じゅう - 2006年12月21日 (木) 22時38分
1年戦争に置いて、アムロ・レイという伝説的なニュータイプが多大な戦果を挙げ、まさにエースパイロット、と言う存在が生まれてから2年。
UC.0082年
空白の激闘が、幕を開ける。
第1話「流れ行く硫煙(ガンスモーク)」
UC.0082年 6月17日
北アメリカ、ジョージア州、サウスカロライナ州の境―都市オーガスタに位置する、オーガスタ研究所。
ここから、一人の強化人間が何の変哲もない部隊へと編入された。 実戦データの収集を兼ねた、実戦での能力を見ることが目的で、データ収集後はエース部隊へと編入される予定が組み立てられていた。
連邦軍第28小隊。それはここ、北アメリカのジオン残党を一掃する為の部隊。
とはいえ、配備されているMSはノーマルジムが2機、ジャンクから再興したザクUのみの後方支援部隊だった。
全機、ある程度強化された遠距離用武器を装備してはいるが、機体性能自体が低く、あまり戦果は上げられない状況が続いていた。
いうなれば廃部寸前の弱小野球部といったところであろうか。
部隊名簿に新たに書き加えられた「アークライト・フューリー」の文字。
この物語の主軸となるべく存在であり、そして、彼がその強化人間である。
「…ガンキャノン、か」
彼に配備されたのはガンキャノンの装甲を最低限削ぎ落とし、コスト低下と機動性の向上を狙った試作型ガンキャノンだった。
3機がロールアウトされ、その中ですでに1機が撃破され、ロストしていた。
アーク用に少し改良を加えたこのガンキャノンは、低出力ながらもビーム・サーベルを装備していたが、接近戦の脆さと言う弱点を『僅か』に克服したに過ぎなかった。
射撃武器も、キャノン砲は若干小型化。ライフルはコスト削減のためマシンガンになっていた。
「………」
一つの風が、木々を揺らす。どこかさびしげな戦場を、じっと見つめるアーク。
基地に向かって歩みだすと、また強めの風が戦場を駆け抜けた。
朝6時21分。小鳥のさえずりが聞こえてくる頃、アークの足が基地の床を踏んでいた。
「君がアークライト君…だね?」
「アークでいいです」
素っ気無い返事に、小隊指揮官は口を僅かに吊り上げたが、アークは俯き、気づく様子はなかった。
「では、アーク君、早速君には戦場へ出てもらうことになる」
研究者は、ジオンの残党が動き出したことをいち早くキャッチし、それを踏まえてアークを送り込んでいた。 この方が早く戦闘データを収集できると予測していたのだろう。
計5回、この小隊での戦闘をこなした後、エース部隊へと編入される。
「………了解」
数秒の沈黙のあと、了解の返事が返ってくる。
無機質な声の後、ドアを閉めるバタン、という音が狭い小部屋に響いた。
「…強化人間か…好かんな」
指揮官であるミシェル・グレイの本心がつい垣間見える。 元々、人間を強化して作り変えるという、しかもマインドコントロール、精神不安定、感情らしい感情がなくなるなど、その副作用は甚大なものだった。
「…いくらなんでも、な…」
先ほどのアークの態度を見て、さらに連邦への不信が高まる。 完成度が高いとは聞いていたが、あれは『強化人間』―戦争の道具としての完成度が高い、ということであるとしか考えられなかった。
「…あ、君が…ってあれ?」
小隊員の一人であるラルフ・リンクスの声を無視して自機のドッグへ向かったアークを、唖然として見つめていた。
それを共に見ていた隊長のレックス・バンガードの口笛の音色が廊下に広がった。
「うーん、さっすが強化人間、ってところだなー」
「…そうなんですか?」
ラルフの素っ頓狂な声を、レックスは軽く流して
「まぁ、戦力にはなるだろうな」
こう一言だけ言い放って、アークの後を追うように廊下に足音を鳴らした。 ラルフは一瞬呆気に取られたような表情でその場に立ち尽くしていたが、けたたましい警報音でその腑抜けた顔がピシッと引き締まる。
その後を、女性パイロットのリズ・ネレイトが思いっきり廊下を滑ってこけた。
その音が、ラルフの気を散らす。
「何やってんだよー…」
「いったー…」
その会話が途中で打ち切られた。明らかにMSのバーニアの音。
キラキラと光る粒子が、基地の中にも入り込んでいた。
レックス、ラルフはジム、リズはザクで出撃。 当然、アークは軽量型ガンキャノン試作型で出撃した。
MSが森に着地すると同時に、砂が巻き上がり、木々がミシミシと音を立てて倒れていく。
策敵の結果、敵軍はザクUが4機、ドム1機。
数では負けているが、ドムさえつぶせば相手はザクのみである。
「…戦闘開始」
アークは低出力試作型サーベルを引き抜いた。刃が細く、レイピアのような形である。
この細さ故に、指突の能力に特化したサーベルで、ザクに切っ先を向けた。
マシンガンをザクの足を狙って放った。その一撃が地を削り、爆風を巻き起こす。 その白煙を貫くザクマシンガンの弾。目の前に飛んだ木の葉が何の音も立てずにちぎれとんだ。
バックジャンプで距離をとるように見せかけて、一瞬の虚を突く。
着地した瞬間に、バーニアが燐粉を散らす。凄まじい土煙が足を覆い、木々を吹き飛ばす。 肩を前に出し、ザクの懐から上に向かってタックルすると、一瞬だけザクの体が浮いた。
そこを、サーベルで横薙ぎ、だがザクが寸でのところで取り出したヒートホークで防がれた。 そればかりか、右手に持ったザクマシンガンで至近距離からの射撃を受けてよろめいた。
「………ッ」
不意に肩が動く。マニピュレーターをザクの腹部に突き出す形で反撃する。
ザクの全身に伝わる振動、そして大地が揺れる。 土煙を被った木が、風により、花粉のように砂を撒き散らした。
アークは微妙に歯を食いしばった。操縦桿をあらんかぎり前に動かす。
足は、確かに大地をグリップし、加速した。
サーベルがコクピットを貫き、そのままゆっくりとザクは倒れた。
爆発はしない。コクピットだけを正確に貫いた為、恐らくパイロットは蒸発死だろう。
デュアルアイが眼光だけを残して右を確認する。
最初に爆炎が視界を埋め尽くす。その次にきたのは衝撃だった。
「うわぁぁぁッ!」
ラルフのジムがドムのバズーカの爆風を受け吹っ飛んだ。体はガンキャノンを押し倒し、無様に煙を上げた。
「うわわッ!すいません」
「邪魔だ」
腕でジムを地面に突き倒すと、サーベルを拾い上げ、刃を形成する。その時だけ粒子が一瞬舞い上がる。
ドムは、ホバーで素早く動き回って、レックスのジムの後ろを取ってヒートサーベルで斬り付ける。
バランスを崩しながら、危なっかしい操縦で避けているレックスだが、いつかはやられそうな雰囲気が漂っていた。
さらに、苦戦しているリズがそのまた遠くにいた。 同じタイプでもリズのザクはジャンクからの再生品なので、若干性能が低い。 それが、今リズが押されている要因のひとつだ。
「あー…もう…切れそう…」
リズのイライラが積もりに積もる。リズの弱点であり利点であるのは、キレやすいことだった。イコール、頭に血が上りやすいタイプだ。 コレまでに数回、先行し過ぎて撃破された事はあった。だが、一行に改善されようとしない。
「ハァ…ハァ…」
息が荒くなる。限界だ。
長い間拮抗していると、どうしても耐え切れなくなる。その精神不安定なところは、宛ら強化人間であった。 無論、本当は強化人間ではないが。
「…うおらぁぁッ!」
頭の中で何かが切れた気がした。冷静さが失われる分全く違う操縦技能でザクを攻め立てる。
モノアイがギラリと光った。
敵の一閃したヒートホークの太刀筋を見切り、こちらもヒートホークで受け止め―流した。
「隙ありィィィィッ!」
咆哮と共にヒートホークが敵のザクの下半身と上半身を分断した。
その頃、ラルフが起き上がり、レックス、アークの援護を行なっていたが、さど役に立っていない。
ラルフのパイロットとしての能力は、反応力以外は最低ランクであり、そのせいでここに配備されてきたのだ。
ライフルは全く当たらない。 それを見ていたアークが、マニピュレーターを操作し、ラルフのライフルをかっぱらった。
「貸せ、お前は基地にでも戻ってろ」
冷徹な一言がラルフに突き刺さるが、メンタルは意外と強く、めげなかった。
「僕はザクの相手してます!」
リズが続いて斬りかかったザクの下半身にサーベルを放ったが、宛ら馬に蹴り飛ばされるように地面に寝転んだ。
「こ、こんなことでッ!」
ラルフの頭が、相手の行動を感覚で読み取った。 サーベルを胸部に突き立てたと思った瞬間、モニターがそこで途切れた。
ジムのメインカメラが宙を舞い、地面にめりこむ。 ラルフは一瞬の間硬直したが、コクピットを半開きにして外を確認する。
その『外』では、立て続けにリズがヒートホークでザクを切り刻んだ。
かっぱらったライフルでドムに応戦するアーク。そしてレックス。 アークに疑問が浮かんだ、本当に隊長なのかと。
これなら、ザクのパイロットのほうがマシだ、という考えは当然ながらに生まれてくる。
ただ不安定だが。
「俺だって隊長だッ!リズに負けてられるかよ!」
サーベルを手に、静かにその場にたたずむ。
ドムがバズーカを撃ち込むが、バックステップから上昇し、避けた。
バズーカによる反動で出来た隙を付け込む為の最低限のジャンプで交わすと、スロットルレバーを引いた。
ドムのスカートアーマー部分を切り取った。そしてそこへアークのライフル、マシンガンが核融合炉を突かないところを正確に撃ち抜いた。
そして、何とかドムを地に沈めた。
残りの1機は、ラルフの闇雲なサーベル攻撃で足を失ったザクをリズのヒートホークの先端で貫き、撃破した。
「…戦闘終了、帰還する」
ラルフのジムと、鹵獲したザクを乱暴に引きずると、小さな基地へと戻っていく。 整備は外でするため、余計に夜が厄介である。
寝ている時にMSを撃破されたら終わりだ。
こんなとこに回した意味はなんなのか、アークはそれを考えない。
生き抜けばいいだけ、そう考えていたからだ。
0082年 6月17日 朝7時12分
第1戦闘終了 戦闘データを研究所に送付
続
おまけ
ウィル「何で俺たちがこんな所にー!」
シン「ぎゃーぎゃー」
(拳2発)
アーク「黙れ」
ウィル「ぐふっ」
シン「大げさだ、ウィル やべぇ、たんこぶできた」
アーク「ガンキャノンの能力データだ」
機体名 ガンキャノン軽量型 型式番号 RX-77-1D
所属 地球連邦軍 開発 オーガスタ研の研究チームとアナハイム・エレクトロニクス社とスーズ社等が参加。 製造 オーガスタ研究所、および連邦基地。
生産形態 試作機 全高 17.0m 本体重量 48.2t 全備重量 59.9t ジェネレーター出力 1,320kW スラスター総推力 42,500kg センサー有効半径 5,900m 装甲材質 ルナ・チタニウム合金 主な搭乗者 武装 グレネード 100mmマシンガン 低出力レイピアサーベル×2 60mmバルカン砲×2 200mm低反動キャノン砲×2
アーク「キャノンが少し小さいな」
ウィル「軽量化軽量化」
シン「ガンキャノンより武装多いのな…」
ウィル「俺らはゲストさー」
シン「オキナワ弁…ってやつか、ウィル?」
完! いや、続くよ!?(笑
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