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小説投稿掲示版〜!!!!

小説の投稿掲示版です!! あなたの作った小説をどうぞ ご披露ください!!!!

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[341] TRUE JUSTICE
ロキ - 2006年04月15日 (土) 14時24分

この作品は野球となんら関係ありません。
どうかお気をつけ下さい。
NIGHTも終ってないのに…。いいのかな。こんなの。(笑
またまた拙いストーリーですが、どうかお付き合いください。
あとご協力お願いします(苦笑

――2月20日 【報告】――

よくよく考えて、更新停止なんてしねぇでいいんじゃね?
なんか思いました。更新しなくなったらそんときはそんときだ!
ということで厚顔無恥らしさが前面に染み出てます。ロキです。
さぁ、皆さんはどれほど俺に呆れてるのだろうとかそんなん考える暇もなく、うん。あはは。

[342]
ロキ - 2006年04月15日 (土) 14時28分


ようこそ,TRUE JUSTICEへ。
本ゲームにご参加いただき、まことに有難う御座います。
まずは、私からこのゲームについてご説明させていただきます。

このゲームは体感型人数無制限ゲームでございます。
自分の職業を決めてただ自分を高めるために戦うアクションゲームです。
従来のテレビゲームは、コントローラーを使用してのプレイでしたがこのTRUE JUSTICEは
脳に特別な信号を送りデータ内で本人が戦うことになります。
つまり、今のあなたがゲームに入り込む、ということですね。
もちろん痛みありますし、空腹感も覚えますが、ゲームが終了と同時にそれらは消え去りますのでご安心ください。

このゲームの目的は、プレイヤーが広大な世界で冒険をしながらモンスター(怪獣)や盗賊、もしく他プレイヤーなどと戦闘を繰り返し頂点を目指すことにあります。
職を極める、武器を集める、自分の国を作る、など用途は様々です。
相手に倒された(致命傷を与えられた)らゲームオーバーになります。
ゲームオーバーになった場合は、セーブデータは全く残りませんのでお気をつけ下さい。


職業はあなたの考え次第で様々です。
勇者、魔王、などとありがちな物もあれば主婦、スポーツ選手、小学生など全く戦闘には関係のないものに就けることができます。
ですが、職業は最初に設定した以外に変更はできないのでご注意ください。


武器は、職業に合った武器が支給されます。それ以外に、ゲームの世界の通貨『イェン』を貯めて武器を買うこともできますし、
モンスターや他プレイヤーを襲って奪うことが出来ます。
世の中には伝説の武器があったり、自分だけのオリジナル武器を作ることができるみたいですがどうなんでしょうか…?
資金を貯めて、城を買うということもできますが城は兵士がいなければ成り立たないのでオススメをできません。
ちなみに『ウェル』は、現実世界に持ち込むことが出来ます。
1イェン=1円ですので、お金を稼ぎたい方もご利用できることでしょう。


もちろんゲームに重要なLvがあります。
Lv、とは言わずランクと表しますが、G〜Aランクがあります。が、もっと上のランクもあるそうですよ…?
ランクは戦闘後の経験地により上がります。当然上に行けば行くほど経験地は大量に必要になっていきます。
ランクとは別に、ステータスというものも御座います。
ステータスは戦闘力の事を表し、戦闘を繰り返すたびに上昇していきますが、注意することがニつ。
戦闘をする場合、力を使わなければ力は上がりませんし、スピードを使わなければスピードは上がりません。
あと、相手に倒された場合経験地は下がりますのでお気をつけ下さい。ギブアップも同様です。


ステータスはあなたの現実世界での能力が反映します。
あなたが運動に強ければ、運動に関する能力は高く、勉強に強ければ知識に関する能力は高くなります。
属性もあり、闇や炎などもあれば、ロリや親父属性などこれも様々で結構です。


それでは、ゲームに関してご質問はないでしょうか?
…ないですね。万一、ご質問がある場合は私のほうへご連絡ください。
経験地は能力値の隣に数字を入れてください。合計は20です。
下の表に書き込んで提出してください。
名前はHNでもよければ本名でも構いません。オリジナルでも一向に構いませんよ。
年齢も詐称しても結構です。
職業は特異なものであればご説明をその欄の下にお願いします。
注意点を言わせていただければ、キャラは必ずしも素敵な位置だとは限らないということでしょうか。

↓例

名前【ロキ】 
年齢【14歳】
職業【魔王】
属性【闇】
性格【後先考えず突き進むタイプ。熱っぽく、冷静に考えることが出来ない。】
*性格は詳しく。
経験地【パワー4 スピード6 ガード2 テクニック3 知識5】
その他【短距離での瞬間移動ができる】
特殊能力を添付したければ、お付けすることが出来ます。
(短距離の瞬間移動ができる、空を飛べる、など)


それでは↓にお書き下さい

名前【  】 
年齢【  】
職業【  】
属性【 】
性格【                           】
*性格は詳しく。
経験地【パワー スピード ガード テクニック 知識】
その他【            】


お描きになられましたか?
参加後は、作者にストーリーを委託するか、自分で全てを作るか、お決めください。
それでは、どうぞゲームをお楽しみください―――





[343]
ロキ - 2006年04月15日 (土) 14時29分

―――バキィ!


コンクリートに叩きつけられた音が、結構大きく響いた。
叩きつけられた金髪の男は頭から血が噴き出て体をぐったりとさせている。
お前ほどじゃないだろうけど、俺の腕の充分に痛いんだ。痛いのはお前だけじゃないんだぜ。

「ん、大丈夫か?生きてる?」

顔を伝って顎に血がポタポタと滴った。

「お前から喧嘩売ってきて、これかよ。」

「うる…せぇ…」

金髪の男がペッと口から血を吐くと、殴りかかってきた。
大振りで、殴り方の基本もなってないようなパンチだ。こんなものを避けるなんて他愛も無い。

「あーもう」

男の右フックを上手くしゃがんでかわす。やっぱりだ。コイツはトロい。
しゃがんだ瞬間、俺は鳩尾丁度に拳をねじりこんだ。

「ガハッ…!」

よほど痛いんだろう。眼をみひらき、口が大きく開いて倒れこんだ。
汚ない。唾がとんできた。

「あのさ。なんなの?お前」

「うるせぇ…よぉ!」

「…!」

隠して持っていたのだろうか、サバイバルナイフを奴は取り出していた。
そこから俺に刺し違えるのを覚悟しているかのように走り出した。

冗談じゃない。俺はお前と刺し違える気なんてねぇよ。

「ナイフなんて危ないもんもってんじゃねぇ!」

フワリと足を上げる。

瞬間、男の耳に俺の足の甲が接触した。
男はまるでサッカーボールのように吹っ飛ぶ。接触が悪かったのか、俺の足の甲も痛い。
ずざぁと砂埃を起こして、男はそのまま白目を剥いてそれ以上動かなかった。

「だっせぇな。」

男の気絶ぶりはそれはもう悲惨な様子だ。
だがそんなことに視線を向ける暇をなくさせる様に、俺の顔に光が照らされた。
その光の方を見れば、そこはめんどくさく、嫌すぎる光景を眼にしてしまうことになってしまった。
そこにはバリバリバリ…とひどく五月蝿いエンジン音を鳴らしている奴等が眼に入る。この騒音は近所迷惑だと思わないのかと思うくらい、五月蝿い。

あからさまにダサい色合いのバイクの集団だ。多分、今の金髪男の仲間たち。10人くらいはいるんじゃないだろうか。

思わず溜息が吐いてしまう。



「ったく…やってられないな…」














第一話 ハジマリ


















「ふぅー…」

足の踵で煙草の火を消して、立ち上がった。

乱雑に散らばったバイクの部品が、見事に喧嘩後という雰囲気をかもしだしていた。
高校生らしき体格と顔つきの男達が身体を丸めて、何も喋らず倒れている。
やりすぎたか?と思ってみたものの、相手はバイクで凶器持ちだった。仕方の無い事だったんじゃないだろうか。
首をゆっくりと回転させ誰も動いていないことを確認する。
…大丈夫だな。喧嘩した俺が言うんだから間違いない。
服についた砂埃を手で叩き落として、バイクの部品を踏み潰しながら公園を後にすることにした。
気づけば、5,6万したジーパンが血で汚れていた。
あーあ、畜生。もったいない。
その血のついた箇所を叩くが、とれることはない。くそっ、なんなんだ。
諦めて、歩き出した。
入り口近くでもう一度振り向く。

「…あーあ、つまんね。」

こんなことにはなれていた。俺はいたって真面目な高校生で別に不良グループに所属しているわけでもなく、親がそんな関係だとか、ましてや好戦的なわけでもないが
因縁をつけられて、いつも何故だがいつの間にかこんなことになっている。それはお前の性格が悪い、だとかそんなことをよく友達に言われるが俺はそうだとは思っていない。
っていうか、因縁つけてくる奴が間違ってる。
俺は結構筋肉質なほうだし、結構ツリ目で外見もよく『怖い』だとかそんな事を言われている。
そのお陰かどうか、学校では喧嘩はなかったし、平和な毎日だった。
なのに、乱してくる奴がいる。なんなんだよ。馬鹿なのか。あいつらは。

ププー、と車のクラクションの音がした。

音が鳴った場所を確認すると、そこには黒塗りのいかにもヤクザが乗っているんじゃないかと思うくらいのゴツさをかもし出す車があった。
窓から顔だして俺に煙草をはさんだ手で、手を振るサングラスの男。

「…木山」

「よう。乗れよ。」

その男は煙草の煙を吐いて、はさんでいた煙草を道端に捨てた。

「TJ、行くんだろ?」

人差し指でこめかみをポリポリと掻いた。

「そう思ってたところ。」








     *








大路地をしばらく行き、大型のショッピングモールの一角に堂々と巨大な看板で『TJ』と構えていた店がある。
その店にすぐ横にさら巨大な立体駐車場があり、駐車場には車が所狭しと入っていた。

外車特有のけたたましいエンジン音が車内に響いて、耳にチクチクと針を刺されているようだ。

「TJ。楽しみだろ?」

「まぁ…な。お前等の言っている事が本当なら、の話だが。」

「面白れぇんだって!」

後部座席に座っていた北見陽太が、身を乗り出してそう言った。
俺はめんどくさそうに頷く。

「俺の言う事はやっぱ聞くもんだぜ!?」

耳元で叫ぶもんだから、エンジン音と重なって不快さが重なった。

「うるせぇ」

「ちょ…そんな怒るなよ」

木山が、口元を歪ませて愉快そうに言った。

「北見も、まぁ、ちょっと黙っとけ。確かに五月蝿い。」

「なんスかそれ!まるで俺の声が五月蝿いみたいじゃないですか!」

「うるさいんだよ。阿呆」

乗り出した体を引いて、しょんぼりした顔でボスンと身を落とした。

「まだつかないのか?」

「どこも空いてないんだよ。駐車場」

あーとられた、と木山がボヤいた後で丁度出て行く車があった。
そこをすかさず奪い取り、やっとの思いで駐車を完了させた。

「相変わらず、危ない運転だな」

「俺の車に乗るときはそれくらい覚悟してもらわねぇとな」

ククッ、と笑ってみせる木山。
後ろで陽太が頭を打っておでこを抑えていたのを俺たちは見て見ぬふりをしていた。

車のドアを開いて、バタン、と音をさせた。
外にでたらでたで、排気ガスのにおいが充満していた。
…そうだった。駐車場なんだしな。あたりまえだよな…
少しテンションが下がったが、それでもこれからする事を考えるとどうってことない。

駐車場からエレベーターに乗り、目的地についた。

軽快な音楽が、またも俺の耳を劈いた。

「人…多いな」

自動ドアを開いた先には、色彩鮮やかなゲームセンターがあった。





























「ひゃー、人多いな〜」

陽太が嬉しそうに、踊りながら言った。
言っていることは、まさに正しく2、300人はいるんじゃないかと思うくらいの人数はいる。
それくらいの人数はいるのに、スペースが有り余っているこのゲームセンターはどれほど巨大なんだろう。
このゲームセンターは、巨大な上、もっと異質なところがある。
アーケードゲームはおろか、スロット、メダルゲーム、UFOキャッチャーなんてものは一切ない。
一つのゲームだけ、大量に置かれている。

そう、先ほどまで話題になっていた…『TRUE JUSTICE』略して『TJ』。
ここ最近、人気度ブッチギリの一位だ。
近代科学の結晶で、体感型人数無制限ゲームと銘をうっている。
実際に自分自身がゲームの世界に行くというもので、戦闘も本当に『本物』なのだ。
さらに、自分を鍛えれば鍛えるほど能力はゲームに反映され、ゲーム内のお金もリアルに換金できるという始末。
国が作ったゲームなのだそうだ。

「おい、さっさと行こうぜ」

既に俺と陽太と10mは先に前に出た木山が言った。

「はしゃぎすぎだろ。」

「俺はさっさとゲームしたいんだよ」

「俺も俺もー♪」

「…へいへい。」

実を言うと俺は、体験は初めてだ。今日、高校の先輩の位置にあたる木山に誘われてここに来た。
奴等が言うには「最高に熱い!」そうだ。日本語になっていないような気がするのは俺だけだろうか。

「おい急げよ。」

「っと、悪い。」

既に陽太は木山と隣にいて、差はまた大きくなっていた。
ちょっと焦って駆け足する。

「あー、お前まだ登録してないんだよな。」

「おう。」

「最初、なんか登録画面でるからその辺でちゃんと考えてやんだぞ?」

「わかってるよ」

「ちなみに俺はパラディンだ。」

「ふーん」

「俺、未来戦闘員!!」

「なんだそれ。」

「ビームとかレーザーとか発射する奴。」

「ビームとレーザーは同じじゃないのか?

「これが違うんだなぁ。素人はそれだから困るなぁ!。」

「はぁ?」

「職業っt『職業ってのは妄想で作れるんだよ。限度があるけど。』」

「…へぇー。」

「1へぇだ。100円。」

「死んでくれ。」


話していたらやっと空きの席を見つけた。
ここに座ろうぜと言う、木山の指示に俺達は従った。
高級そうな椅子に腰を下ろし、木山達は財布から1000円札を取り出した。

「1000円!?高くないか!?」

「だぁーいじょうぶだって。すぐに元はとれる!」

「ふーん…」

大人しく従うことにして、俺も1000札取り出した。
自動販売機みたいな金の入り口になんだか変な感じがするが、まぁ気にしない方向で行こう。
ガー…と機械音がなり、俺の1000円札を食べていく。

目の前のゲーム画面に『Please equip with a helmet. 』とでた。

「…ん?これなんて読むんだ?ぷりーず…ん?」

「ヘルメットつけろってことだよ。」

「…なるほど」

置かれていたヘルメットを手に持ち、ヘルメットをつける。
ヘルメットを装着すると目の前に砂嵐みたいな光景が現れた。

(うわ。なんだこれ)

『ようこそ,TRUE JUSTICEへ。』

突然、声がした。

『本ゲームにご参加いただき、まことに有難う御座います。』

(これは…アナウンスか?)

ポァンと音がして、画面がでてきた。
その画面にはサンプル画像らしい画像がでてきた。
戦闘していたり、武器を買っていたり…とそんな風な画像だ。

『まずは、私からこのゲームについてご説明させていただきます。』

(私って…誰だよ)

天邪鬼みたいな考えをしていたら、選択肢が現れた。
『このゲームについて』『ゲームの目的』『職業と武器について』『経験地とレベル』『お金の換金』『よくある質問』『登録』
たくさんあったが、ゲームについての質問は耳にタコができるほど聞いた。(あいつらに)
今更、聞くこともないだろう。
登録、のボタンを押した。
すると『登録ありがとう御座います』と、表示がでてまた違う画像が表示された。
履歴書…みたいな画像だ。俺の顔写真が画面端に移っている。
いつとったんだろうか。

まず、名前。これは…適当な名前で良いって言っていたが…なんか恥ずかしいな。
俺の名前の弘毅からとって、…ロキ、でいいか。

『ロキ』

次は、年齢。実年齢でいいよな。

『17』

職業。…職業か。…うーん。銃がいいな。昔なんか、召還銃とか言って悪魔とか召還してる奴があったな。
あれはかっこよかったな…。よし。

『魔銃使い』

…なんか魔法使いみたいだ。
まぁいいか。次。…属性?なんだこれ。いるのか?こんなもの。
魔だから闇でいいか。

『闇』

終わりか。

『登録クリア―――ゲームに移行します―――』

(!?)

その表示がでた瞬間、俺の足がポロポロと崩れ落ちていく。
足から胴…頭…なんだ?頭が崩れても意識はある。
瞬間、グンッと何かに圧されたような感覚が起きた。まるでジェットコースターが一気に落ちるときのような。

(うわっ…なんだこの感覚―――!?)












『登録完全完了。無限の戦いをお楽しみください―――』
























第一話 END











埴輪さんの北見 陽太君を早速使わせていただきました。ありがとう御座いました。

[347] 変えちゃってもいいよね!答えは聞かないけど
埴輪 - 2006年04月15日 (土) 23時29分

名前【ゼファー】 
年齢【20】
職業【風騎士】
属性【風】
性格【後先考えず突っ込んだりする熱血馬鹿】

経験地【パワー5 スピード8 ガード1 テクニック3 知識3】
その他【武器は鎌が付いた槍『サイズハルバード』、風騎士という職業からわかるように、風を操ることができ、風の刃や風の壁を作ることができる。また、自身に風を纏わせ、超高速移動を可能にする『テンペストブースト』もできるが、体力を大幅に消費するため、何度も使うことはできない】

やった!厨二臭いのは気のせいだ!

[348]
竜矢 - 2006年04月16日 (日) 00時34分

名前【竜矢】 
年齢【13】
職業【情報家】
仲間に、その敵のデータを教える。
属性【水・炎】
性格【普段は、暗くて、女からは、かなりキモがられているが、自分の好きな事だと、明るくなり、活発になる。メガネをかけている。ちなみに、裸眼での視力は、0,03・・・。】
*性格は詳しく。
経験地【パワー1 スピード2 ガード1 テクニック5 知識11】
その他【ほとんど、戦闘では、仲間にデータを教えるだけだが、本気になると、バレーボールで、相手にぶつける。最大ダメージは、5ダメージ。】

ストーリーは、作者さんに委託します。かなり作りにくい能力ですが、宜しくお願いします。

[353]
ロキ - 2006年04月20日 (木) 20時41分

「ここが…TJの世界…」

まるで、ゲームのRPGにでてくる世界のようだ。
草原、遠くにある巨大な山、そして、目の前にある巨大な街。
自分の姿も、黒の皮の素材でできた服に変わっており、左手には砲身が長い銃を手に持っていた。
銃も奇抜なデザインだが、俺の想像通り。

「…木山達はどこにいるんだ?」

周りを見渡せば木山ららしき人物はいない。
代りにいるのは、街の城壁の門に一人ぽつんとたっている20代ぐらいの男。
あの人もプレイヤーなのだろう。何か聞けることがあるかもしれない。

「…すいません。ちょっといいですか?」

その人に歩み寄りながら、声を掛けてみる。すると不自然なほど素早く俺の方を向いた。
そして開口一番に

「ここはファーストシティだよ。皆ここから始まるんだ。」

「…え?」

思わぬ言葉に、一瞬硬直してしまう。

「ここはファーストシティだよ。皆ここから始まるんだ。」

「ちょっと…すいま『ここはファーストシティだよ。皆ここから始まるんだ。』」

「あのす『ここはファーストシティだよ。皆ここから始まるんだ。』」

…なるほど。こいつは、よくゲームなどにある町人Aという奴か。それにしてもむかつくなコイツ。
俺は一人頷いて、町人Aをそのまま放置して街に入ることにした。
街には大きな門があり、今は開いているが閉まれば巨大な防壁になるのだろう。
門をくぐり街の領域に一歩、足を踏み入れる。

踏み入れた先は、妙に華やかで町人だけではなくこのゲームのプレイヤーと思しき人達がたくさんいる。
さすがにこの街で、戦をしている人はいなさそうだ。
街にいる人数だけでも、1000人以上はいるんじゃないか。この中から木山達を探すと思うと、溜息をはいてしまう。

(とりあえず…誰かに聞くかな)

周りを再び見渡す。何か、優しげな奴を見つけるしかない。
…あの装備が緑色の爬虫類みたいな奴は駄目だ。なんか怖い。
…なんだあの、ピエロみたいな奴。あいつもなんだか気味が悪い。
奇抜な装備の中から、基本中の基本を示すような武具を装備している男がいた。
あの人の職業はきっと勇者だろう。
兜こそ被ってはいないがストレートの茶色の髪でいわゆるイケメンの顔をしている。
鎧は鋼かなにかができているようで、剣の白銀の刀身はきらびやかに光っていた。
彼に聞いてみよう。

「あー…ちょっといいですか?」

「え?」

「すいません、初心者なんですが…仲間とはぐれてしまったんですよ。どうしたらいいですか?」

「ああ、それならあの店に行くといい。恐らく仲間はそこにいるよ。」

彼の指差した方向を見ると、酒屋のような場所でやはり俺のような初心者らしきまだおどおどしている奴がたくさんいた。
看板にはカタカナで「ギルド」と書いている。

「あ、どうもです。」

「それじゃ、僕はこれで。」

なんとまぁ、紳士な男なのだろうか。現実の俺とは正反対の男だ。

「ありがとう御座います。」

「うん。じゃあ、また縁があったら」

「はい。」

そして俺は、その「ギルド」に向って歩き出す。
あそこに木山達はいなかったらどうするんだろう、と思いながらも俺は新しい世界に胸を弾ませずにはいられないでいた。
















第二話 初心者
















「やぁっと見つけたぜ…」

ギルドに足を踏み入れるとすぐさま木山と陽太を見つけた。二人は席を挟んで白濁色の液体を飲んでいる。牛乳かなにかだろうか。
おお、と喜びの声を叫んだ木山と陽太が俺に駆け寄ってくる。
木山は見た目派手な鎧と大きな槍を持っていて、なんだか変な格好だ。
…いや、変な格好と言えば陽太だ。確かに近代的といえば近代的なのだが、
あの格好はどうみても昔の映画が何かであったロボコップをちょっと改造したような感じだ。

「あー悪い悪い。待ち合わせ場所決めとくの忘れてたわ。」

「全くだ。超焦ったし」

「つか、弘毅悪役っぽくね」

陽太がズビシと音がでるくらいに人差し指を俺に突きつけた。

「あぁ?お前なんかロボじゃん。」

「ロボ格好いいじゃん!」

「なんかダセーよ。それ」

世界観に全くの不釣合いなんだよ。

「んだよ!お前なんてそれ、お前、…お前…」

段々と声が小さくなっていく。どうやら反論ができずにいるみたいだ。
 しかし確かに自分の装備を見てみれば黒が主で悪役っぽいといえば悪役っぽい。
深い黒色と赤でデザインされたこの服装は悪のようで正義のそれとはだいぶかけ離れている。


「ってか、弘毅。どうやってここに来たんだ?」

「なんかさぁ。勇者っぽい人に聞いて教えてもらったんやけど。」

「勇者っぽい人?」

ふーん…と小さくこぼしてまぁ座れよと俺に椅子を差し出した。
俺はその椅子を受け取り、腰をやっと落ち着かせることができた。そういえば立ちっぱなしだったな。

「ふーん…。弘毅は銃使うのか。」

「魔銃?使いって職業に書いたんやけどな。ちょっと無理だったぽい。」

銃を触りながら言う。銃を触ってみるとなんだか、鉄かなにかの金属の感触が妙に冷たかった。

「いや、職業は鮮明に再現されるからな。いずれレベルアップするたびに特殊なことができるはずだぞ」

「へぇ…そうなんだ」

「北見とかだったら、なんだっけ。今はホラ、あの光線。」

先ほどの俺との口論で若干沈んでいる陽太に、木山は謎のジェスチャーをして身振り手振りで伝えた。
あんなジェスチャーで通じるんだろうか。
 どうやらジェスチャーで通じたらしく、陽太は沈んだ表情が電球のように明るく光った。

「ジャネシックデストロイヤービームっす!…あ、光線じゃないですよ?ビームです。ビーム」

「ああ、そうそう。そんな名前だった。こんな風に自分の力に見合った技を出せるようになっていくんだよ」

ふーん、と木山の話に耳を傾けながら周りの装備に目を向けていた。
…あれはドラえもんだろうか、いや大穴でただのタヌキ…
いや多分、ドラえもんだろうな。
自分の悩みを解決させて、やっと木山の話に返事をした。

「妙に凄い名前だが、本当に凄いのか?」

フフンと鼻につく笑い方のあと、偉そうに



「ま、それは見てのお楽しみだな。ビビるぜ?きっと」
















        
         *

















街をでて、川沿いを歩いていくと鉱山にぶつかった。
木山に聞いた話では、鉱山では実際に鉱物を集めて冒険をするさいの資金にするそうだ。
しかもRPGではありがちの鉱山でのモンスターもいる。
この鉱山の難易度は☆一つで、そこまで難しい場所ではなく2、3人いればどうにかなるそうだ。
俺は、その鉱山で俺の初戦闘をするらしい。
複数で戦闘をする場合、経験地は分散するらしいがまぁそれはしょうがないとは思う。

「よし。ついたぞ。」

ついたぞ、と一言言って木山は後ろに背負っていた槍を取り出した。

「ここに来るのか?」

トロッコや、レールが敷かれた鉱山内の休憩場所のようなところに、今俺たちはいた。
乱雑に石が転がっており、まぁ、鉱山だな、と何故か納得してしまった。

「ああ、ここはでやすい。っつーか1番ランク低いダンジョンだ」

「っていっても、中々に強いモンスターでるからな、死なないように気をつけろよ。」

いつもより低い声で陽太が警告を発した。

「銃、取り出しとけよ。」

「…わかった」

カチャリ、と引き鉄に指をあてがった。

(…くるのか)

胸が痛い。果てし無い緊張感を俺の胸を締め付ける。
心臓の鼓動の高鳴りが収まらない。この緊張感、いいね。最高だ。

(まだか…?まだ……まだ…まだ…)

「待てよ。落ち着くんだ。いずれくるからよ」

「…わかってる」








ドカァァァァァァァァァァン!!!







突然の巨大な破裂音!
土壁を蹴破って現れたのは巨大な恐竜だ。

「…すげぇな…こんなでかさで☆一つかよ…。」

大きさは4mはあり、獰猛そうな顔つきをしている。爪を鋭いし何より牙が長い。
こんなのにやられたら、痛みだけでも洒落にならないだろう。

「…やべぇな」

ポツリ、と木山が漏らした。

「これは…うん。結構やばいっすね」

「ヤ…ヤバイ…?」

木山が口を歪ませて、後ずさりをしながら槍を構えた。
陽太は光線銃らしき大きな銃を構え、奴の顔面に照準を合わしている。

「こいつは…この鉱山の長だ。多分…俺達じゃ相手にならねぇ…」

「…マジか」

「まぁ、これも経験だ。頑張ろうぜ」

「…おう」

その返事をした瞬間、恐竜は俺等に向って巨大な爪を繰り出してくる!
それを、かするかかすらないかの瀬戸際で間一髪で避ける。

(くそっ…こちとら初心者だぞ!もう少し手加減したらどうだ!!)

「いくぞぉぉ!!」

木山が繰り出した。相手の腕に槍を刺して、上手く槍に飛び乗る。
恐竜は叫び声をあげ、暴れるが木山は上手く飛び乗った。
やはり戦いなれている。

「陽太は胴体!弘毅は足を狙え!」

「「了解!!」」

木山の言葉にすぐさまに反応した陽太は、銃のトリガーを引いた。
銃口に光が集められるように収集され、その光はすぐに放たれた。
放たれた光線は胴体を目掛けて一直線に飛んでいく。
ヒュゥ――ン…と風を切る音しか聞こえなかったが、すぐに爆音へと進化した。

「ガァァァァァァァ!!!」

「おい!弘毅!お前も攻撃するんだよ!」

「あっ…ああ!」

しまった。奴等の動きに目を奪われてしまった。不覚。
俺はやっと銃を構える。銃口を奴の足首に合わせて、全神経を銃口の先に集中させた。

(初めての攻撃だ。ここはいいところを見てやる―――!)

心臓の高鳴りが大きくなるにつれて俺のボルテージは最高潮に達し始めていた。
トリガーに指をあてて、金属の冷たさと感触を確かめる。
人差し指に力を入れて―――







カチッ






「あ…あれ?」

弾が…でない!?

「なにやってんだよ弘毅!」

恐竜の腕に振り払われまいと奮戦を続けいる木山が叫んだ。

カチッカチッカチッ

なんどトリガーを引いても、軽そうな音が聞こえてくるだけ。
弾丸などまるで、撃ちでてきやしない。どうなっているんだ!?

「弾がでないんだよ!どうなってんだ!?」

「弾がでないぃ!?」

「ああ!トリガーを引いても何もでないんだよ!」

「畜生!どうなってんだ!?」

今にも「FUCK!」と外国映画のように叫びそうな剣幕の木山。

二人はだいぶ奮戦していた。しかし、彼等もどうやら始めて間も無いようだし厳しいのだろう。恐竜の圧倒的な質量に押されていた。

 木山は、恐竜の腕を指でなぞらえ円を描くような動きをした。

「爆破!」

バァン!と腕が破裂し、血が噴き出る。しかし、恐竜の猛攻は止まるところをしらない。
その攻撃に反応をしたのか、恐竜は木山を腕から振り払った。
大きくやまなりして吹き飛ばされて、石壁に勢い良く衝突した。

「っ―――!」

グッタリとうなだれた。

「木山先輩!?――!?」

勢い良く振り払った恐竜の腕は、見事に陽太の顔面にクリーンヒットした。
首の曲がりえる限界点まで、ぐりんと音がでるように曲がってそのまま体を空中に持っていった。
ズザァと砂が舞った。

「陽太ぁ!」

赤い目を鋭く光らせて、俺を見ている。
あの恐竜…俺が相手をできる相手じゃない…!
歯が全く噛み合わない。手が震える。たっていられない。
これが死ぬという恐怖…!?

(逃げろ…逃げろよ…!ギブアップって叫べ…!)









――逃げるな











(――!?)

耳鳴りのように突然、声が聞こえた。

(誰だ…!)

刹那の油断だった。俺は奴から目を離すべきではなかったんだ。

―――目の前に茶色い何かが現れた。

こいつは…恐竜の尻尾!?

目には砂嵐が巻き起こる。何がおきたのか全くわからないでいる。
頭が真っ白になったような、空中を跳んでいるようで、混迷しているだろう。

ただ一つわかりえること、それは

体が痛い、ということだった。

「がっ…はっ…!」

顔面にもろに喰らってしまった。これでまだゲームオーバーになっていないのが不思議で堪らない。
早くこんな恐怖からおさらばしたい!なんなんだよこのゲーム!

「ウガァァァァァァァァァァァアァ!!!!」

ドカドカと大地を踏み鳴らして、猛スピードで迫るそれは俺に死を戦慄させた。

(駄目だ!逃げろ!ギブアップしろ!)

体が言うことを聞かない。

(聞けよ!動けよ!どうにかしろよ!白薙弘毅!)

心臓が最大限にまで鼓動する。
アイツの眼に渦巻いている炎が一片の破片を残すまいと、大蛇のように俺に絡みつく。
0.1秒たつごとに俺の心臓に恐怖が俺の視界をかすめさせ、死を直感させる。

(怖いんだろ!?逃げてくれよぉ!!)

















――逃げるな

――闘え

――生を望むのなら





















急に、腕に力が入る。目の前で反射鏡のようにパニックに陥った光景が、なにも違和感を感じないほど一瞬の出来事。
光景が動くのがかなりのスローペースに見える。

(誰だよ…!なんなんだ…!?)

――死を望むか

(…何言ってんだよ…!…なわけねぇだろ!)

――ならば闘え

(…なんなんだよお前は!?)

――そこに、生は輝いている

はっと息を呑んだ。
それと同時に何かが痺れるような感覚を覚えた。
その感覚のすぐ後、銃口を恐竜に合わせた銃が龍のように堂々と聳えていた。

 風が振動し地が震える。心臓が破裂しそうだ。
意識の中にいる俺が片隅で震えていて、俺じゃない俺が存在していた。
そのもう1人の俺がずっと俺に囁く。















「生を、望むか?」















龍が、咆哮した。
















END

[359]
ロキ - 2006年04月24日 (月) 14時42分

『ゲーム終了。ランクBモンスタードラギアスを倒したため、経験地3000と資金、5000イェンの獲得です』

『ですが、異例のモンスターデータ『消滅』のため、ダメージ具合が確認できませんので半分になります』

『さらに、SP(スピリット)完全消費のため1割の減額ですのでご了承ください。』

『獲得経験地:1350 獲得資金:2250』

『経験地UPです。が、残念ながら該当する項目はありませんので経験地は上がりません』

『それでは、お疲れ様でした』

『またのご利用をお待ちしています――』


















第三話 余韻















「…ここ…は…?」

眼を開ければ、世界は真っ暗だった。…どこだ?ここは。

…………………あ、そうか。

ヘルメットを被っていたんだ、と気づきヘルメットを脱ぐ。

「「弘毅!」」

脱いだ瞬間に、叫び声。
この声は、陽太と木山だ。

「お前…すげぇよ!!」

まん丸に眼を見開いた陽太が俺の肩を揺さぶる。グワングワンと頭が揺れて、視界が回った。
木山は静かに俺をずっと見ている。

「…お前…あれ、どうやったんだ?」

「…あれ?」

「最後の、アレだよ」

…最後の、アレ。

「いや…俺なんか記憶ないんだけどよ…」

「記憶がない?」

「ん…。なんかよくわからんのやけどな」

なんだったんだ?俺にもよくわからない。
あの誰かわからない声が聞こえた後、意識はどこかへ飛んで行ってしまったから。

「わかんねーんだよ。なんか、無意識ってか…なんか…な。」

「ランクGがランクBを倒すなんて…有り得ないぜ。本当は。」

「そんなこと言われてもな。」

木山は顎を人差し指と親指で支え、探偵がよくやるようなポーズをしてみせた。
やっぱりそうか、とボソリと呟いて口を開いた。

「多分、お前は天才型を引いちまったんだ」

「て…天才型?」

天才型って、あれか?最初っから初期能力が高いだとか最強だとかゲームバランスを崩すような能力を持ってる…。
そんなことを考えている俺を見抜いたのか、木山はニヤリと笑った。
何故かその笑いが妙にいやらしく見えて、若干の不快感が胸に昇ってきた。

「あ、多分お前が思ってるような天才型じゃあ、ないぜ」

「…どういう天才型なんだよ」

「うーん…。まあ、お前は貧乏くじをひいちまったんだよ。」

「貧乏くじぃ?」

いいか、と言って俺に人差し指を近づけると木山はまたもいやらしく笑う。

「天才型ってのはなぁ、必要以上に能力が高いんだ」

「いいじゃん。能力が高いことはいいことだ。」

「ブッ!なんか大きいことはいいことだっていってるみたいだよ」

隣で爆笑をしている陽太を尻目に、木山は話を続けた。

「あのなぁ、必要以上に初期能力が高ければそれほどお前の初期能力が高ければ使い切れないだろ?」

「…ん?どういうことだ?」

木山ははぁー…と溜息をついて仕方ないと言わんばかりの顔をする。
これだから低学歴は、とでもいいそうな。ぶっ飛ばすぞこのやろう。

「お前、最後の画面見たろ?SPの完全消費だとかなんとかって。」

「ああ。」

「SPってのはドラクエで言うMPって奴なんだがな」

「おう。すげーよくわかる」

「例えばだな、メラゾーマを使おうとするのにMPが1だったらどうしようもないだろ?」

「どうしようもないな」

「天才型ってのは、必要以上にSPを必要とするんだ。精度がよければよいほどな。」

「…おう」

俺はイマイチ理解できないでいた。頼む木山。それを要約して俺にもわかるように伝えてくれ。

「つまりな。お前のステータス初期値では、全く攻撃ができないんだよ。」

「…。」

ああ、そうか、と納得してしまう。
つまり、俺は攻撃も全くできない、と。そういうことだな。
ああ、うん。すげーよくわかる。わかりやすい。わかりやすい…が。



え、やっぱり意味がわからない。

「え、意味わかんねーよ。俺、現に攻撃できたじゃん」

「そこなんだなぁ」

「単純に弘毅のSPが高かったっていうことじゃないっすか?」

「それはない。これ見ろよ」

木山の手には、免許証らしきカードがあった。
それには俺の顔写真とステータスなどそんなことが書いてある。…なんで木山が持っているんだ。
カードを手渡し、陽太に確認をさせた。

「…SP15。これは…ないっすね」

「ないだろ?」

「俺のSPも50はあるのに、15くらいであんな協力な攻撃できるはずがないっすよ」

俺はいつまでも埒があかないこの会話に胸のムカつきを覚えずにはいられなかった。
勘弁してくれ。俺はこんな細かい会話は好きじゃないんだ。
二人の会話を制しようと俺が左手を振り上げると、二人が俺に視線を向ける。

「…OKOK。どうでもいいよ。次の冒険で確かめようぜ」

仕方ないな、と苦笑いをして木山は最近よくCMなどでみる最新機種の携帯を取り出した。
その携帯を開いて、電話番号を打ち込み始める。

「――おう。俺。今日ちょっと遅れるから。…おう。…そう。…ん。わかった。」

「どした?」

俺の問いかけに木山は、片手で携帯を折りたたんで車のキーを取り出した。

「弘毅が退屈そうだからな。飯、食いに行こうぜ」

























俺達は場所を変えて、ファーストフード店で若干早い夕食を取っていた。
周りは若いカップルなどが席を陣取っていたり、男同士、女同士のグループが騒いでいたりしている。
その騒がしい雰囲気が俺は好きではないのだが、如何せん木山と陽太がここの「厚揚げポテト」を妙に気に入っているということで今ここにいる。
奴等の好きな食い物だ。どうせろくなものじゃない。と思いながら、予想に反して、いや予想以上にポテトは美味かった。
めったにこない店に行くのもそう悪いことじゃないな、と考えを少し改めることにして、俺はゆっくりとこの店でくつろぐことにした。

「…それで、天才型を使ってる奴ってのは他にもいないのか?」

陽太と木山は机をはさんで俺と反対側の席に座っている。
奴等は奴等で、ポテトを10人前の量を一人で買っているのだから呆れずにはいられない。
先ほどからずっと貪っているポテトを口の中から消化させて、ドリンクを飲んでやっとのことで木山が声を口から吐いた。

「あー、詳しくは知らないけどさぁ。確かAランクにいたよ。天才型の奴」

「どんな奴なんだ?ちょっと聞いてみたいんだけど」

「無理無理。そいつはアレだよ。群れをなさないっていうか…な、陽太」

むぐむぐとまだ口に残っているポテトをドリンクで流し込んで、陽太もやっと口を開いた。

「一匹狼って奴ですよね。あの人。」

「そうそう。自分のチームとしか話さないっていうか…」

「へぇ…。そいつ、強いのか?」

大きく頷いて、「あいつはマジでやばい」と大袈裟にジャスチャーをした。

「あいつは自分の職業の特性使わずに、生身でモンスターたおしちまうからな」

「だから、天才型でレベルが上げられたんですよね」

「ふーん…。ちなみ、職業は?」

陽太は少し考えるようなポーズをしてみせて、ポンと音がでるように左手を右手で叩いた。

「確か――…そう、なんちゃらナイツ…だったかな」

自信なさげに言うが、木山が「ああそうだ」と頷いたところ見ると、ナイト系だったのだろう。
曖昧なのに、そうだとか言うなよ木山。
そいつはどれほど強いのだろうか、木山以上は確実だろうがなにせまだ戦闘シーンもあまり見ていない。
まだ未知数の戦いを想像すると俺は何か心躍るような感覚を覚えていた。

「んで、名前は?」

「英語で書いて、MATUI。だったかな。」

「マツイ…ねぇ…」

「マツイは強いぜ。あいつのチームもかなりのレベルだけど、あいつはヤバイ。ヤバすぎる」

「チーム?」

「あーっと…なんていうのかな、ドラクエで言う…」

「ああ、わかった。」

「ならよし。チーム名もあって、名前は「南里」だ。出会ったら気をつけろよ。殺されるかもしれねーぞ」

半分冗談のように聞こえるが、半分はマジに聞こえる。
…マツイ、計り知れない。

「ってか、お前カード持ってるよな?」

「…このカードか?」

さっきの免許証らしきカードを木山に見せ、確認をとる。

「そう、それ。それがないとデータ引継ぎできねーからな。気をつけろよ」

「…おう」

「それよか、次のクエストなんやけど―――」

陽太が口火を切るように片手にドリンクを持って、ストローを口に挟みながら喋る。
その言葉を聞くと、木山は携帯を取り出して何かを確認するとまた片手でかっこつけながら閉じた。
その様子はただ片手で閉じるだけではなく、なにかしらナルシストなんじゃないか、と疑惑をもたれても仕方ないような行動で
木山の人格を表しているような気がする。

「明日、俺空いてる。」

「あ、俺もおっけー」

「俺も。」

「それじゃ、明日やな。お前等ん家に迎えに行くわ」

「「へーい」」

木山はガタッと椅子を後ろにさげて、それにかけていたジャケットをとると会計をすませにレジへと行く。

「今日はおごってやるよ。本日はこれにて解散!」




































「あー…ねむてぇ…」

ドアを閉めるて、すぐにベットに倒れこむ。
1日遊んでいたせいか、妙に布団が柔らかく感じた。

(あれって結構疲れるんだな…)

特に腕の疲労感が強く、重りが腕についているんじゃないかと思うぐらいだ。
肩から力が抜けないような感覚で、足も痺れている感じ。
体がだるい。もう寝るしかないだろう。

眼を閉じて、眠りに落ちよう――……

………

と思うのだけど、心臓の高鳴りが収まらず眠りにつけない。
駄目だ。明日のことを考えると緊張して眠れない。
あの臨場感と緊張感と高揚感は絶対に現実では味わえないスリルがあった。
あれに病みつきになる木山達の気持ちもわかる。

考えれば考えるほど、眠りにはどんどんと、お、く…な…る…









第三話END

[360] 『静かなる不死鳥』と『怒涛の神竜』と・・・おまけ?
PS−N - 2006年04月24日 (月) 22時00分

名前【秀一】 
年齢【17歳】
職業【フェニックスナイツ】
属性【光】
性格【クールで冷酷、眼前の小事にとらわれることなく、
   常に“自分にとっての”ベストを尽くす】
経験値【パワー5 スピード20 ガード5 テクニック20 知識19】
その他【武器は長剣、左手一本で剣を扱う、右手で魔法を操る
    特殊能力:リザレクション・1度やられても、SPを99%消費して復活
    フェニックスナイツ・・・直訳すると“不死鳥の騎士達”だが
    本人のこだわりによりここでは“不死鳥の使い”の意。





名前【神人】 
年齢【17歳】
職業【竜騎士】
属性【風、闇】
性格【外面は熱血だが、内面では常に冷静に物事を考えている
   口癖は『あめえんだよボケェ!』】
経験地【パワー20 スピード5 ガード5 テクニック20 知識19】
その他【武器は槍、魔法よりも肉弾戦を得意としている、
    特殊能力:エアードラゴン・SPを60%消費して飛竜を呼び出し、それにまたがって戦う
    飛竜に乗るとスピードとガードが飛躍的に上昇するが、雷属性に弱くなる





名前【荻野目】 
年齢【17歳】
職業【シューター】
属性【土】
性格【天然だったり詰めを誤ったりするするが、自信家で責任感が強い】
経験地【パワー2 スピード14 ガード18 テクニック11 知識11】
その他【弓術を中心とした飛び道具によるアシストが得意、
    特殊能力・・・思い浮かばなかったんで後はよろしくです・・・(殴




お待たせしました・・・それと、マニアックですいません(笑



[362]
しんかー進化 - 2006年04月24日 (月) 22時36分

名前【新川 心紅】 
年齢【17歳】
職業【高2】
属性【私立探偵】
性格【母親譲りの勇気、情熱、正義感に満ち溢れる。
   悪があいてだと突っ込む覚悟で大暴れする!】
*性格は詳しく。
経験地【パワー2 スピード10 ガード3 テクニック2 知識3】
その他【根性で体力は底なしと思うくらい不屈の闘志。
    力尽きても立つ!】
    

小説はロキ様にオマカセします(笑)

[363]
PS−N - 2006年04月24日 (月) 22時51分



名前【聖雫(せいな)】 
年齢【12】
職業【風水戦士】
属性【水】
性格【明るくて大雑把(?)で人懐っこい】
経験値【パワー1 スピード10 ガード2 テクニック5 知識2】
その他【武器は“叉刃拐(サジンカイ)”という、トンファーに刃がついた2対のものを使用する
    また、自然の力をかりて一時的に“長所”を強化できる

[371]
ロキ - 2006年04月30日 (日) 22時23分

ジリリリリリ…!と金属音のけたたましい音で、俺は眠りから覚醒した。
スイッチをまだ眠たげな意識の中、動かした腕で押さえ込んだ。
カーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいて、ちょうど俺の顔に当っていたせいもあって極めて爽快な朝だ。
時計を見れば、8:45分。とうに学校に行かなければならない時間だが、今日はあいにく日曜日。自由の日だ。
自由の日なんだから、まだ眠る権利はあるはずだ。そうだ。当たり前、俺は寝ていていいはず。
よし、寝よう。

なんて、思ってみたりするのだが。
今日はTJの約束の日だ。今日は9時ごろに奴等が向えにくるのに、もう時間がない。
俺は急いで布団を蹴ぬいで、体をはねおこした。
すぐに洗面所に向かい、光の速さでシャワーを浴びて、洗顔をして、ウイダーを飲む。
ウイダーゼリーというものは俺の好物でもあり、栄養バランスが崩れまくっている俺の栄養を摂取できる唯一のものでもある。
いや、どうでもいいんだけど。
そして洗面所に脱ぎ捨てておいた紺色のリーバイスのジーパンを穿いて、白のシャツを着る。
白のシャツはアイロンをしているはずなのに妙によれよれしている。…うーむ。まぁいいか。
シャツを着て、いつも黒ジャケットを羽織る。
髪もワックスを手のひらに伸ばして、髪につける。今日は毛先を遊ばせるかんじで。
指先でうねうね髪をいじり、鏡に眼をやると、白薙弘毅の完全体の出現は確認された。
朝の情けない風貌と打って変わって、たたせた髪、「キレてる?」と思ってしまう眼の鋭い見慣れた兄ちゃんがたっている。
よーし、いつもの俺だ。

自分の代わり映えを見て、納得している時に車のクラクションが鳴った。

「おーい!弘毅ー!」

静かな朝に、陽太の五月蝿い声が響いた。
カーテンを開くと、窓越しに木山のいつもの外車が外に止まっていてこてまた音が地面に這いつくばっている様なエンジン音をだしている様が見えた。
窓の淵に手をやって、顔を出すとそこから元気良さ気に手を振る陽太。
全く、朝から元気な奴だな。そう思ったら、ニヤリと笑ってしまう。何が可笑しいのだろう、と自分で思っているのだからしょうがない。


「ちょっと待ってろ!今から行く!」

窓を閉めて、ベットに転がっていた財布をジーパンの後ろポケットに突っ込む。
忘れ物がないか周りを見渡してある程度確認する。うん、大丈夫だ。
確認した後、一階に降りて玄関へと向った。
玄関は、先日穿き散らかした靴が散乱している。まぁ、想定内だ。
その靴の中から茶色の皮のブーツを探し当て、足を突っ込む。
玄関を勢い良く開いて、二度目の「弘毅ー!」の声が聞こえた。

「よ、待たせたな」










第四話 閃光 (1)













「…で、今日はちゃんとしたとこ行くんだろうな」

「もちろん」

アクセスをした後、俺達はギルドにいた。
そこで酒を(もちろん味もするし、アルコールもある。データだが)飲みながら、俺たちは会議をしていた。

「今日は、迷いの森に行こうとか思ってんだけど」

「…迷いの森…」

嫌な予感がする。そもそも迷い、という言葉がついている事が怪しい。

「大丈夫だって。方位磁針を持ってれば、迷いっこない」

「本当だろうな…」

「俺を信じろ。きっと大丈夫だ」

自身ありげに言うその姿は間抜けに見えて、疑いの眼で見らずにはいられない。
信じろ、なんて言われてもこの前のこともあるし…心配だ。

「低確率で即死だけどなっ」

口周りにチョコをつけながら、陽太はなにが嬉しいんだか、口元を緩ませて言う。

「…なんでだ?」

持っていたグラスを、カウンターに置く。氷と氷の接触しあって、カランと音がした。

「迷いの森にはな、この前と同じヌシがいるんだ」

「そうそう、なんだっけ。えーと…ラヴィネス、だったかな」

「この前にもいたじゃんか。」

ふぅ、と溜息をついて木山はチビリとグラスの中に入っていた酒を飲んだ。
口に含んだ液体を喉に通すと、グラスを机に置く。
当たり前のことをいうな、というような眼を俺に向ける。

「迷いの森は、雑魚のレベルの割りにボスのレベルは半端ない。」

「へぇー…。」

「まぁ、そいつの出現率は極めて低い。心配する必要はない。」

「ならいいじゃん。陽太余計なこと言うなよ」

「悪い悪い」

謝る素振りを見せようともせず、笑いながら片手を顔の前に立てて頭を下げるが、全く謝られている気がしない。
…そこまで謝らないといけないよいな事でもないんだけど…なんかムカつくな…
すると、木山が思い出したように立ち上がった。

「そろそろ行こうか?」

それにすぐ答えるように、陽太が立ち上った。俺としてはもう少しゆっくりしていたかったが…しょうがない。
ゆっくりと重い腰を持ち上げた。

「そうだな。」

不意に、心臓が高鳴った。…これは、緊張だろうか。いや、武者震いという奴か。
体が疼いてたまらない。自然と、握り拳を作ってしまっていることに気づいた。
握り拳を解くと、じわりと汗がにじんでいる。
ああ、俺はもうTJに染まっているな。と感づいて何故か不思議な気分になった。つい口元が緩んでしまう。
…そういえば、昔はゲームにハマってる奴なんてアホだとか、時間の無駄遣いだとかそんなことを思っていたことを思い出した。
あの頃はそんな事を言っていたけれど、今はこんな状態だ。馬鹿という奴が馬鹿という言葉。その言葉は俺にぴったりなのかもしれない。
固定観念に囚われた、若気の至りって奴だろうか。
なんだこの考え。まるで爺だ。

(…ハン)

心の中で、自分に対するちょっとした文句として、舌打ちをしてみた。

その行為自体にアホらしく感じてしまったような、自分に呆れてしまったような、複雑な気分にだった。






























「いよっと」

木山のランスがモンスターの肉体に突き刺さる音が妙に生々しく聞こえた。
この世界の『殺す』という行為は、恐怖を感じさせるほどリアルな感触だ。
肉を切る感触、血の生暖かさやらがさらに現実味を増させる。

「オラオラオラオラー」

陽太の銃が発する光線が辺りを銀色の光で一杯にさせる、まではいかないがまぁそんな感じだ。
いくら倒してもモンスターが消えることはなく、いくら倒しても沸いて出る。
しかしその沸いて出るモンスターを殺戮を繰り返すことを、木山達は楽しんでいるように見えた。
まるで、殺人鬼。

「弘毅、お前も殺れよ」

彼らの真ん中で立ちつくす俺に、木山が言った。

「そう、言われてもな。」

木山の言葉に、俺は少しいらついた。
いくらトリガーを引いても、あいかわらず弾丸はでることはない銃にもさらにイラつきは増して行く。

「弾丸、出ないんだからなぁ。どうしようもない」

「これじゃ何しに来たんだが―――」

背を向けた瞬間、モンスターは奇襲を試みたがそれは成功することなくモンスターは分断された。

「――わからねぇな」

「なんででねぇんだろ…」

「お前の日頃の行いが悪いんじゃねぇの?」

「それとこれとは別だろ」

「否定しないところが面白いよな」

頭上でランスを扇風機のように回して、その反動を利用してかは知らないがそのままそれをモンスターにぶつける。
モンスターは粉々に砕け、肉片と化した。
不思議に、嫌悪感や同情などは全く感じない。相手がデータということでだろうか。

俺の傍観をよそに、彼らは殺戮の終ることの無い螺旋を閉じようとはしなかった。
しばらく俺は何もせず木山達の行動を観察していたのだが、20・30分は軽くその行動にもっぱら集中していた。
はたから見れば木山達は悪役のような位置にいる。しかも、どうやらモンスター達自身は『攻撃しないかぎりこちらに攻撃をしてこない』ようだ。
ステージのレベルの低さもあるのだろうが、これは多分、製作者の『意図的な感情』があるのではないかと感じた。
それは優越感であり、殺戮で得られる快感を教え込もうとしていようとしていたり、普段のストレスをそのままモンスターにぶつけろという命令にさえも思えた。
何かおかしい、そう感じたのだが、多分それは俺の杞憂に終るのだろう。
第一、ゲームにそんなことをいれてどうする。
馬鹿みたいに考え出す自分の脳に、これがゲームをリアルにした場合の結果なんだな、と結果をつけて思考を閉じた。

「どうよ、そろそろできそう?」

一通り満足したらしい。木山が戦闘を中断して話しかけてきた。

「いやーあいかわらずでねぇわ」

あんなことを考えていた俺も、実は体を動かしたくて仕方が無い。腕が疼いてしかたがない。

「くっそー…。早く俺もやりてぇー!」

「まっ、せいぜい金の無駄遣いにならないような」

意地悪く笑う木山を尻目に、俺は自分の銃に視線を落としていた。

(この銃は、なにか弾丸が必要なものなんだろうか)

とは、思ってみるものの弾丸を込めるようなところは全くないし、陽太なんて弾丸の制限なんてありゃしない。
弾丸なんて必要ないんだろうな。と納得する。

しばらくして、また木山は戦闘を開始した。
金属と肉の擦れ合う音がさらに強みを増す。
…調子に乗りすぎじゃないか?
その心配は、杞憂に終るといいが。





―――ズルゥ






不意に、足にツルのようなモノが巻きついたような気がした。
すぐさま足首にソレを確認する、がソレはまさに緑色のツルだった。

「んだぁ!?これぇ!?」

突然の俺の声に驚いたのか、木山達がすぐに俺のほうを向く。
張り裂けんばかりに見開いた彼らの目が、彼らの衝撃を物語っている。
後ろに、とてつもない恐怖と存在感をビリビリと不必要なまでに感じる。

「弘毅ぃ!」

陽太が放った光線がツルを焼き払うと同時に俺の脚は自由になった。
すぐさま後ろを向く。

「…こいつは…!?」

ラフレシアだと思われる巨大な花の中心に、大きな気味の悪い眼が一つぽつんと無造作に置かれて
葉の変わりにつるが何万本も延びていると錯覚するような大量のつる。
この漫画的展開…、これは恐らく…いや絶対に…
チラリと木山を見ると、彼の口元はこれでもかと言うほど引きつっている。










「まいったな…二回連続ボスに鉢合わせなんてよぉ…」

[381]
ロキ - 2006年05月05日 (金) 11時39分

「こいつがここの主かよ…!」

目前のソイツは、醜悪な雰囲気を物凄く、不必要なまでに恐怖を感じる程のモノだった。
とにかくでかくて、おそらく攻撃を司るのはあの何万本もあるツル。

「…弘毅、逃げるぞ。」

木山が呟く。

「なんだって?」

「逃げるっていったんだ」

「逃げる…だって?敵前逃亡かよ」

「バカヤロウ。逃亡と言う名の戦略だ。」

「…同じだろ。」

瞬間、俺目掛けて一直線にツルが槍の如く襲う。
それをジャンプしてかわす。地面がツルの攻撃で、抉れる。

「ま、逃げるってのは賛成だけどな!?」

「OK。いくぞ陽太」

「へーい」

俺たちは後ろに向って全力で前進した。はたから見れば、どうしようもなく情けない形相だと思う。
しかし俺たちに今そんな事を考える余裕はなく、力の限り地面を蹴飛ばした。
こんなピンチばかりだ。なんだって、こんなことになってんだ!?

「後ろ見んなよ!多分死ぬぜ!」

木山が、絶えず息を吐きながらも振り絞るように大きな声で叫んだ。

「見る暇もねーっつの!」

「つかなんか全然進んでない気がするんですけど!?」

確かに、100mは一気に走った。だが、景色は変わっていない。
それは俺達がどれほど奥にまで来てしまったのかがよくわかる。

「無理じゃね!?これ!死ぬって!間違いなく!」

陽太の悲痛な叫び。

「ばっかお前!あれは植物系だから、溶解液で俺等溶かされるぜ!?」

「…痛みだけじゃすまなさそうだな」

「神経イカれるかもな。リアルでも」

「――洒落にならないっすよ!」

ひたすら、走りに走った。もう1`はダッシュしたんじゃないだろうか。
しかし後ろからはウゾウゾウゾ…と何かがうごめいている音が聞こえる。
出口はまだ見えない。…遠い…!

――頭の中が真っ白になった。

足の爪先が、ゴチリと岩か何かにぶつかる感触に襲われた。
ゆっくり、残酷的に時は進んでいく。地面が次第に近くなっていく―――!

…何がおきた?…いや、そんなこと考える必要はない。
現に俺は、結果として地面に這いつくばっている。

「弘毅!?」

木山が叫んだ。その哀れな視線が痛烈に俺に差し込まれた。
…俺は、こけていた。スピードをだしていた分、大袈裟に、勢い良く。
地面がぬかるんでいて、すぐに俺の足はつるに巻き込まれた。

「やっべぇ…弘毅、大丈夫かよ!」

「っく――…木山、陽太、先行け!」

「「わかった!」」

即答。少しは悩めよ馬鹿野郎ども!
奴等はもの凄いスピードで逃げる、がコレも仕方が無い。漫画のように他人の犠牲になるなんて誰も臨んではいないのだから。

「…っとー…これはどうしようかな…」

ソレの口からでている液体が地面に落ちてブシュウウウウ…と地面が溶けた。
こいつはシャレにならない、怖すぎる。

とりあえず、銃を奴に照準を合わせる。
…多分、これはピンチになると発動するとかいうこの銃の性質なんだ、と思う。
恐らくこれで、この銃は発動する。よくあるだろう。こういうの。

「フゥゥゥシャァァァァァ!!!」

奴のツルが俺に伸びる。鋭い槍のようなソレは、鋭利に、そして素早く。
不思議と心臓は平穏で、焦りなどなく、脳も正常に働いている。
よし――いける!

トリガーを引いて、奴を瞬時に粉砕してやる!





















カチン


















(――でない!?)

銃からは何も、でない。
からっぽのようなトリガーを引く音が、俺の焦りを駆り立てる。
しかし、焦りは一瞬に消え去り、代わりに

痛みが―――!!


「がっ…ああああああぁぁぁぁ!!」

ツルが、俺の肩を貫いた。
焼け付くような痛みが俺を襲う。気絶するような痛み。自分が今、リアルにいることを錯覚させるような痛み。

「―――っ」

痛みが声にならない。

貫いたツルは、俺の肩を抜けずいつまでも俺の体内の中に一部を残したままだ。

(ちっくしょう…これじゃあ…俺が弱い奴みてぇじゃねぇか・・・!)

負けるのは、好きじゃない。たえられない。
しかし、体が動かず、何も出来ない。
…情けない。情けなさ過ぎる。

――何もできないまま、俺の目前にツルが迫った


































「塵となれ。

 ――魂葬光掌」






























ドンッと何かがはじけた音をきっかけに、光が世界を覆った――


































目の前で起こったことが全く信じられない。俺は何が起こったか理解できないでいた。
刹那の出来事、まさに一瞬だった。
先ほどまで俺を殺そうとしていたソレは、光が光った、と思った後一瞬に消滅した。

消滅したモンスターの場所に、一人、ぽつんと立っていた。
2mはあるだろう巨大な体に、整った顔立ち、風にたなびく黒いロングコートが彼を表していた。
闇色と言わんばかりの、紫色の眼が艶やかに俺を見つめている。

「な…なんなんだ…?」

思わず口から、ポロリと言葉がこぼれた。
するとその男は、ふぅーと溜息をついた。

「…やれやれ…」

彼は言葉通りに腕を動かし、首を横に振った。
その行動は俺を貶しているようで、頭にくるが今の俺にキレるような体力は残っていなかった。
それもあれば、彼の威圧感も動けない理由に入る。

「…攻撃もせずにあんな醜態を晒すなんて、情けないな…」

「…誰だ…お前…」

冷酷な瞳はさらに俺を束縛する。

「…名乗る必要はない。何故ならもう二度と会うことは無いから、な。」

いつもならこんな言葉をかける奴には、どんな状況であろうと一発でも殴ってやろうと思うが
体の疲労と彼の威圧感が俺の体を動かそうとはしない。

しばらくの沈黙の対峙。肩の痛みだけが、強まった。

ヒュウゥゥゥゥゥ…!

上空からブオンと激しい風が吹いた。
…日光を遮られ、影が消えた。

――あれは、龍!?

突然現れた、獰猛そうなソレは、ゆっくりと風を乱して着地した。

「…敵か?」

しまった、今俺は動けない。今目の前にいるあいつは俺を助けてくれそうにもない。
これは…ゲームオーバーか。

「いや違うぜぇー」

ドラゴンが喋った。…え?ドラゴンが喋った?

「おい、秀一。勝手にお前が降りるから探すのに手間かかったじゃねぇか」

「…すまない。」

「ま、いいけどな」

ドラゴンの背中から、トンっと着地音をさせて男が一人降りた。
なんだ、あいつが喋ってたのか。ビビるぜ。
先ほどの男と同じくして、いや同じではないのだが、整った顔立ちだ。
隣の男と比較してワイルドさがある。
ドラゴンに乗っていた男のほうが、俺にゆっくりと視線を向けて手を後頭部に向けてポリポリと掻いた。

「あー、悪かったな。そこの少年。コイツがまたなんか手荒なことしたんだろ?」

「…俺は何もしてない…。」

「とかいって、コイツ肩怪我してんじゃん」

「…それはモンスターにやられた奴だ…」

へぇと小さくこぼすと、めずらしいじゃんと言ってもう一度龍に跨った。

「お前が他人を助けるなんてよ」

「…」

助けた?俺を?

「…お前…俺を助けてくれたのか…?」

俺がちょっと弱めの口調で言うと、奴は鼻でフンと蔑むようにしてやれやれ、とボヤいた。
まるで、答えを間違った生徒を蔑む教師のように。

「…モンスターがいた。だからモンスターを倒した。…ただそれだけだ…」

ああ、なるほど。何故か不思議と納得をしてしまう。
するとまたドラゴンの背から今度は別の男が降りてきた。
やさしめな顔で、前の二人に比べると地味な感じのする男だ。

「まぁ、気にしないでくれよ。こういう奴なんだ。コイツはさ」

半笑いで彼の背中をパンと叩くが、彼にじっと見つめられ先ほど来た優しげな男は「ごめん…」と情けない口調ですぐに謝った。
秀一、と呼ばれている男がゆっくりと歩き出し、彼もまた龍に鮮やかに飛び乗った。

「…行くぞ、萩野目。」

「わかった。」

優しげな男もまた龍に飛び乗る。
三人がその龍に飛び乗った瞬間、龍が羽を羽ばたく。
またブオンと風が舞い、辺りの砂が舞った。

そのまま、すぐに龍の残影は見えなくなる。物凄いスピードで何処かへ行ってしまった。
過ぎ去った彼らが通った空を見つめながら、俺はただ呆然とするしかなかった。
今更ながら、自分の非力さを感じ取った。

(…まるで情けない…)

片手に持った銃を凝視する。
何故、コレは動かないのだろう、俺は攻撃もできなかったのだろう、と。
ほとほと情けない、畜生、なんなんだ。この銃も、俺も。



―――…俺はいつまでも、空虚な空を見上げていた…―――

[385]
ロキ - 2006年05月06日 (土) 13時31分

自分自身がちっぽけに思える今、何故か俺はまだTJの世界にいた。
森をただぼうっと歩いていると、平原に出て俺はいまそこにいる。
吹き抜ける風が気持ちよくて、大きな木がポツンと一つ寂しげに置かれている。
その木の下に、俺は座り込んでいた。
いつまにか肩の怪我は痛みも感じず、怪我自体消滅していた。…どうやら時間がたつと、回復するようだ。まさにゲームだな。
広い草原のなか、ぽつんと一人たたずんでいる様子は他人にどう見えるのだろうか。
今まで、喧嘩が強かったとかそんなのはこの世界では通用しないことがわかった。
たかが、ゲームのくせにこの俺を意気消沈させるなんて、中々やる。
たかが、ゲーム。なのに俺のモチベーションはあがらない。

…ふん、やってくれる。この野郎め。…野郎って誰だ?

意味のわからない自問自答を繰り返しながら、ゆっくりと動く現実世界と変わりない空を見上げていた。

(あ〜…戦闘もできねぇし…このゲームやめよっかな〜)

(ってか、なんで俺攻撃できないんだ?なんだコレいじめか。)

(っていうかこのゲーム作った奴ポッタくりなんじゃねぇの?…攻撃できないの俺だけだよな。それはないか)

(何?個人的な恨み?俺、なんかクリエイターになんかしたっけ?…してないよな、うん。きっとしてない)

(くそ。■ハゲ。…誰がハゲだ。■ハゲ)

(…俺、何言ってんだ?…やべぇな俺…)

(…なんなんだよ…あ〜、マジだりぃ。周りはあんなに楽しんでんのによぉ…)

はぁ〜〜〜…と長い溜息を吐く。溜息を吐くと幸せが逃げていくというが、俺の場合はすでに逃げてしまっているようだから別にいい。
あーもう、無に帰りてぇ。

「あーっ!そこの人!こんな女の子見らなかった!?」

突然の張り裂けんばかりの巨大な声が俺の耳を貫いた。
その音源に眼を向けると、そこにはこの世界には似合わない制服を着た女が構えていた。
写真を手に持ち、俺につきつける。
…え、なんなんですかこの人。呆然としていると、ニヤリとその女は笑う。


「黙っているってことは知ってるのね!?」

「え?ちょっ「吐きなさい!」

「ちょおま「何!?カツどん食べたいの!?」

「はなしを「フハハハ!残念ね!私は探偵だからカツどんなんてないわ!」

「ちょっ「さぁ!吐くのよ!吐きなさい!」

「あの「あぁぁぁぁぁぁ!!」

俺の首元を掴みながらも、顔をぐりんと右方向に向けて眼をカッと見ひらく。
ちなみに俺は頭を揺られすぎて気分悪い。

「なにやってんの年増?プッ…だっさーい」

声の先には、身長は低く可愛いっちゃあ可愛い女の子が立っていた。
俺の首を掴んでいる女を貶しているようで、悪魔のような笑顔をしている。

「この生意気っ娘ぉぉぉぉぉぉ!!」

高速の速さで現れた女の子に向っていく修羅のような探偵女。こいつぁヤバイ。早く逃げないとな。

「うわおっそ、なにやってんのおばさーん」

悪魔のようにほくそえみながら、探偵女を蔑む少女。
その少女もダッシュで走りながら逃走を図る。
どちらも尋常でない速さだ。

「私はまだ高2なんだからぁぁぁぁ!!」

「私まだ小6だもーん♪」

俺の周りをぐるぐる延々と走りまわる女子達。
探偵女は、いかにも探偵が持っていそうな小銃を少女目掛けて撃ちまくるが少女は素早くそれをはじく。
…このゲームでは銃をはじくことまでできるようになんのか…。

「大体ね!歳が離れてたら敬うもんでしょう!!」

「私、ゆとり教育だもーん♪」

「関係ないでしょぉぉぉぉぉ!?」

終ることのない銃撃戦。果てし無い女達の闘争。なんだコレ。

「大人の魅力がわからない娘なのね!ハッ!」

「世の中に男性に聞いたら100人中100人、私のほうが可愛いって言うと思うけど〜?」

「いや100人中、度を越えて200人は私のほうが綺麗って言うわ!」

「それじゃあ私は300人!」

「それじゃあ私は1000人!」

「それじゃあ〜」

・・・・・

・・・

・・






「「はぁはぁはぁ…」」

俺の周囲で続いた罵倒のしあいは両者の体力の限界で幕を閉じた。
両者とも髪と服装が乱れに乱れ、女としては最悪な状態だ。

「…いいわ、この男の人に決めてもらいましょう!」

探偵気取りの女が、膝に手をあて前かがみになった状態でそういった。
え、男の人?男の人って俺?え、俺?

「「どっちが可愛い!?」」

「え、いや…」

「「どっち!?」」

「あー…え?」

「「どっちなのよ!?」」

「え…ちょ…」

「早く!もちろん、綺麗な私よね!?」

「もちろん、可愛い私よね〜♪こんなオバサンより私に決まってるよ〜♪」

「だから私、まだ高2だから!」

「私なんてまだ小6ですけど〜?」

「いや…なんつーか…」

「「どっち!?」」







「…どっちも好みじゃないっていうか…知らんがな」









瞬間、強烈はパンチが二発ほどはじけ跳んでくるのを俺は感じた。
すぐさま気絶したらしいから、よくは覚えていない。
…――嗚呼、今日は本当に厄日だ――…






























第六話 厄日




















「…うん。つまり?」

両頬が火傷をしたようにヒリヒリして痛い。
俺は、彼女達を正座させて腕組みをしながら自分で言うのもなんだが偉そうに仁王立ちをしていた。
二人のうち、探偵女のほうはすぐに自分のしたことに気づいて謝ったが、少女のほうはけして謝ろうとはしない。
親の顔が見て見たいね。なんて育て方してんだ、コンチクショウが。
親のせいで俺の両頬がヒリヒリ腫れてんだぞ。どうしてくれるんだ。訴えてやる。
少女は、ふてくされた表情で頬を膨らませながら視線を合わせる素振りさえしやしない。
探偵女のほうが申し訳ないといわんばかりに顔を紅潮させている。

「えーと…ギルドでこの女の子に会って…それでなんか…」

「うん。なるほど。悪口を言われたわけだ。」

「悪口じゃないもん。本当の事だもん」

キッと少女を睨みつける探偵女。あー、なるほどね。これが女の喧嘩なんだな。
つか喧嘩だけでここまできたのか。すげぇな。

「…とりあえず、名前聞いていいかな?」

あっ、はい。と慌てて、鋭かった目つきを元に戻し、俺に視線を合わせた。

「新川 心紅です!探偵やってます!女子高生です!高2です!東京在住です!」

「…いやHNで良かったんだけど…。」

「えっ、あっ、そうですか?すいませんっ。HNも心紅です」

「うん。わかった。それで―――」

少女のほうに視線を向ける。
いまだ不貞腐れていて、こちらを見ようとしない。

「君の名前は?」

「貴様に名乗る名前などない。」

「何、低い声だしてんの」

ラオウばりの低い声をだす少女を初めて見た。…いや、初めてなのも当たり前だよな。
ふぅ、と今日何度目かわからない溜息を小さくこぼして、ゆっくりとしゃがむ。
…相手はまだ餓鬼だ。…優しく、優しく…

「…名前は?」

「…聖雫。」

少し照れてる口調で、唇を尖らせて言う。

「聖雫、ね。OK。」

名前を確認して、俺は木にもたれかかった。

「まぁ、ちょっと落ち着いて。ゆっくりしようぜ。」

あいかわらず頬は痛いが、ここで彼女達を刺激させるようなことをするとまたさっきみたいになりかねない。
彼女達は、まぁ、俺の意見を聞いてくれたようで、彼女等も自分のしたいことを勝手に始めだした。
聖雫は、手鏡を出して髪をセットしなおしていた。小6のくせに…色気づいてんな…

(でも女性は遅かれ早かれあんなことをしだすんだろうから、別におかしなことではないよなぁ…。)

…逆に、変なのは心紅のほうだった。
手帳らしきものを取り出して、何かをメモしていた。
何度も俺をチラ見しながら、何かを書いている。多分、俺の外見をメモしているんだと思うが…
あれが、探偵というモノなのだろうか。

「…ところでさぁ」

聖雫が鏡を見ながら、口を開いた。

「君の名前はなんていうの?」

「…俺?」

そういえば、俺の名前を言ってなかったな。
俺の問いかけに、聖雫は首を縦に動かした。心紅もメモを止めていて、俺の名前を聞こうとしているようだ。

「俺のHNはロキ。名前は白薙弘毅。」

「…弘毅ね。わかった〜」

「弘毅さんですね」

なんで、誰もロキって言わないんだ。…別にいいんだけど。
そして名前を確認すると皆、また自分のしたいことを勝手にしだす。
…しばらくしても誰も喋らない。
微妙に気まずい雰囲気だ。

突如、突風が吹きすさんだ。

「うわっ…風強いねー」

「まぁ、平原だしな。」

「…待って。なんか嫌な予感がする。」

心紅がすくっと立ち上がって、辺りを見渡した。
その目つきは鋭く、プロの探偵というところをうかがわせる。
すると銃を引き抜き、構えた。

「…二人とも、…来るよ」

「来る?」





空気が、震えた。












「オォォォォォォォォォォン!!!」










上空からの突然の奇襲!光線が俺達の頭上に降り注ぐ!
すぐに気づくことができた俺たちはすぐに回避するが、光線が地面に弾けて土煙が発生する。
土煙はすぐになくなり、辺りを見渡せるようになった。

攻撃は上からだった。上に敵がいるはず…!

「あれは…!?」

蛾のような羽を持ち、龍のような体格を持ち、虎のような顔を持ち、奇妙ないでたちのソレ。
上空にはソレがいた。

「なんで…!?あれ、キメラじゃない…!なんでこんなところに…!」

聖雫のほうを見ると、体が震えている。

「…キメラ…!?」

「A級モンスターよ!『冥界』近くに生息してる、ボス級のモンスター…!」

「A級…!?」

「…A級モンスターは知能を持ち、残虐性を揃えているって言うから…簡単にはゲームオーバーにはならないわよ…」

そういうと聖雫は、背中に持っていたトンファーに刃がついた物を取り出した。
彼女の周囲に、風を纏うように吹いている。

「戦うしかないわね…」

心紅も、どこからか堰月刀らしいものを取り出して構えた。
銃では倒せないと思ったのか、銃は何処かにやってしまっていた。

「弘毅…君、銃だよね?バックアップ頼むよ…!」

「…俺、攻撃できないんだよ…!」

二人ともはぁ?と驚いたような声をだす。
そんなわけがない、と言わんばかりに。

「多分、バグなんだ…。」

「…しょうがない…。オバサン、行くよ」

「オバサンじゃないよ!心紅だって!」

二人が、動く。まさに超スピード、で上空のモンスターに向って大きく飛んだ。

「ミカエル…発動…!!」

聖雫がそう叫んだ瞬間、彼女を取り巻く風がさらに強まった。先ほどのスピードをさら陵駕するほど。
このゲーム…本当に年齢なんて関係ない。強いか…強くないか…それだけ、か…。

高速で切り裂く聖雫。だが、それに負けないスピードで堰月刀を振り回す心紅。
どちらも超スピードといえるが、若干聖雫のほうが早く、心紅のほうが力が強い。
素早く、キメラの体に乗り、一気に上半身へ行く。

「ぉー…らぁ!」

心紅の堰月刀が、モンスターの顔面を捉えた。
…が、刃は通らず衝撃波のようなものではじき返される。

「――っ…!」

「オバサン…大丈夫!?」

「――まだまだ余裕っ!」

「おーけー!行くよー!叉刃拐、風迅っ!」

叉刃拐と呼ばれる、トンファーの形状をしているその武器を翳すと風が激しく吹き荒れた。
するとキメラはたじろぎ、油断が生まれた。

「よーっし!いっくぞー!」

0.1秒のスピードで、一気に首に近づき、大きく振りかぶって叉刃拐を突き刺す!

「もう一つオマケ!」

堰月刀が円を描いて、鮮やかに首元に突き刺さる!
だが血はおろか、キメラは痛がりもしない。
――効くものか。そう、キメラが言っているような気がした

「オォォォォォォォォン!」

口奥が青く光る!光が収束され、一気に彼女達に向って放たれる!

「―――!」

ドォォォォォン!と爆発音がした。
ドサリ、と地面に何かが落ちる音がした――聖雫!

「っつ――…駄目、動かない。」

「大丈夫かよ…!?」

「大丈夫じゃないって。痛いっつーの!」

彼女の顔には落ちた瞬間についたと思われる、すり傷と土の汚れがついていて、腕はどうやら骨折しているようだ。
たとえゲームだとしても痛みはリアルに感じる。洒落になっていないだろう。

「あの…心紅、助けてあげなよ!まだ戦ってるよ!」

「でも俺は…!」

攻撃ができない、って言っただろう!とはいえるはずもなかった。

「どうにかするの!!何か起きるはずだよ!」

「そんなこといったって――!」

「あんた大人だろ!餓鬼にこんなこと言われていいのかよぉ!」

半泣きで俺に訴える彼女の言葉が、俺の心臓を貫く。
言われていいはずなんかない!
だけど、攻撃ができないんじゃどうしようもないだろう。
どうしたらいい!?
どうしたら…

どうしたら…


どうしたらいいんだ!?

どうしたらいいんだよ!?













『望め。力を』













「――!!」

でた、あの時の、あいつ!

『力を望め。渇望しろ』

頭の中に響く『あいつ』の声。

「…弘毅、どうしたの?」

聖雫の言葉も聞こえる。だけど、あいつの言葉のほうが脳内に染みるように聞こえる。

『望むのなら、私は無尽の力をお前に与えよう』

(早く…急げ…!)

『望むのか?力を』

俺がこんなことをしてる間も、心紅はまだ戦っている。
彼女も奮戦しているが、消耗が激しい上に相手はダメージをそれほど受けてはいない。
倒されるのも時間の問題だ…!

『――力は、貴様の元に――』

すぐに俺は、キメラに照準を合わせた。
銃が呼吸をしているような、感覚が腕から伝わる――!
銃が鼓動をしているのが、わかる。…なんだコレは…!

(こい…急げ!急げ!急げ!)

瞬間、心紅がキメラの体から落ちていくところを見た。
血が艶やかに滴り、ドサリと地面にぶつかる。





「し…心紅!?」



 全身が針に刺されてしまったように俺の体に悪寒が走った。
――人の命が…無くなる!?




(くだらねぇくだらねぇ!なんだよこれ!!ゲームだろうよ!こんなもん!!!)


『生を望むのだろう』



(くそ!くそぉ!なんだよこれ!!!おかしいぜ!なんもかんも全部!)




『―――闘争を、望んでいたのだろう』





(――…あ……)



 空気が抜けていくように、全身から力が抜けた。
 トリガーが冷たく感じられても、それは何か生きてるようで、鼓動をしているようで、滾った。
血がざわめいた。なんだこれは―――!!?








『■を、与えよ』





























銃の怒涛の銃声の後、何かがキメラを突き抜けた。

キメラは跡形も無く消滅した、と思う。薄く見える光景からはそう捉えられた。

俺の意識は遠退き、視界から聖雫や心紅の姿が完璧に消えて視界は墨に染まっていった―――

その墨に染まった光景の中、ポツンと並べられた文字

『強制終了』

…ああ、そうか、またSPが切れたんだな。

っていうか…なんだなぁ。ゲームでも人を守ることに必■になるなんて…なんだかなぁ。

…あーでも、あれだ。気分がいい。最高に清清しい。

なんか…いいな。コレ…。

『清清しい快感を得ただろう』

…あんたか。なんのようだよ。

『それが、お前だ』

…俺、って?

『闘争を求める、修羅だ』

………

『力を求めるのだ』

…はぁ?

『力は、裏切らず絶対だ』

…お前が?

『お前の隙間を、埋めるだろう』

……なんなんだあんた。

返答は無い。

…シカトか。…それかもういないのか。

朦朧とした意識、黒々とした世界。どこだ、ココ。

多分、また誰かの呼びかけがかかるんだろうな。漫画とかだとそんな感じだしな。

「おーい。生きてる?」

ほらやっぱり。ってか失礼だな。生きてる、なんて。

生きてますよ。

「大丈夫ー?」

へいへい、すぐ起きるっつーの。

…あれ?なんか意識朦朧としてきた。あれ?今、ここ意識なんじゃないの?あれ?

あー…駄目だ。意識が…と…ぶ…





















『ゲーム維持不可能のため、危険分子を強制終了しました。データ修正にとりかかります』




















To Be Continued.......!

[386]
呉爾羅山 - 2006年05月06日 (土) 22時00分

名前【呉爾羅】 
年齢【18歳】
職業【海棲巨大爬虫類】
属性【竜、水、火】
性格【かなり冷静だが、キレると歯止めが利かない】
経験地【パワー7 スピード1 ガード6 テクニック3 知識3】
その他【武器 放射能熱線、体内放射(至近距離で相手に締め付けられたりする時の脱出技)
肉弾戦も得意
窮地に追い込まれたり、瀕死の重傷を負ったりすると一時的にパワーアップ】


・・・こんな感じでしょうか
ストーリーはお任せします(自分ではどうにもなりませぬ(笑)
よろしくお願いします〜(笑)

[401]
ロキ - 2006年05月13日 (土) 14時12分

第七話 不具合









東京の中心街にある巨大なビル。150階の超高層ビルで、奇抜なデザインにより今や日本の顔。
様々な一流会社の店舗ももちろん、国の研究所や大規模な図書館、さらにはプール、ホテルなどと使用の用途は様々だ。
窓から見る景色は、ゴミゴミとした東京といえど空を綺麗に映し出すその光景はまさに絶景といえる。
だがその絶景を見ずして、地下一階に巨大な研究施設に今、注目を集めるプロジェクトチームの拠点があった。

−国立True Justice開発研究所−。

その巨大な施設は、たった一つのゲームのために作り上げられた国の特別プロジェクトチームの拠点でもある。
広い室内には大型のコンピューターや、ゲーム機本体、どんな使い方をするのかわからないような機械などで埋め尽くされていた。
スタッフは約100人はいるのではないだろうか。

中枢で著しく巨大なコンピューターの前に、どっしりと深く腰を沈めている男がいた。
30代前後の、渋いながらも大人の魅力といえるその顔はイケメンと属される顔だ。
黒シャツにジーパンと研究室らしからぬ格好で、彼は気だるそうに椅子に座っていた。
煙草をふかしながら、彼はキーボードをずっと打ち続けている。

その様子を見かねたのか、隣のコンピューターに座り書類を見ていた女が立ち上がった。
黒色のサラサラなストレートヘヤーで、彼女を凛々しく見させる眼鏡をつけている。
両手に腰を当てて、男に注意した。

「霧島主任。室内は禁煙になってますが」

「あ〜…悪いね〜…」

返事はするが、その行動をやめようとはしない。気だるそうな外面だが、指だけはしきりに動いている。
女は眉をしかめ、その男、霧島正樹の加えている煙草を没収した。
その煙草を傍にあった灰皿に捨て、大きな声で霧島に言った。

「もしパソコンに悪影響があったりしてっ、データがどうにかなったらどうするんですかっ!?」

「あ〜…悪いね〜…」

煙草をとられても、彼は興味なさげに指をずっと打ち続けていた。
その様子に頭に着たのか、彼女は垂れていた髪の毛を耳にかけてデスクをバンと叩いた。

「ちょっと!聞いてるんですか!」

「…南山。」

ジロリと南山という女性を、にらみつけた。

「なっ…なんですか…!?」

「ブラ、見えてるぞ」

すぐさま、彼女の腕は胸のあたりを交差させて顔を紅潮させた。
恐る恐る見ると、ブラははみ出てない。というか首元まである服なのだからはみ出るはずが無い。
肩をフルフルと震えさせて、彼女はあらんばかりの大きな声で叫んだ。





「ふ…ふざけないでくださぁぁぁぁぁぁい!」





































頬に赤い手形を刻まれた霧島は、その付近を抑えながらまだキーボードを打ち付けていた。
隣でも鼻息を強くしながら、霧島に背を向けている南山がいる。

「…霧島主任が悪いんですよ…」

「…俺なんかしたっけか?」

「セクハラしました。セクハラ」

「あんなもんセクハラなんていわねぇよ。上の階のOLなんて社長に尻触られても何も言わないんだぜ?」

「何も言わないのが以上なんですっ!」

カチャカチャとキーボードの音がピタリ、と止まった。
顎に握り拳を当てて、鼻でフンと息をした。
どうしました?と言おうと、南山は口を開こうとしたがそれは霧島の言葉にさえぎられてしまった。

「…これを見ろ。南山」

顔をそっと、パソコンの前に乗り出させる。
画面に写された映像を眼で追っていく。次第に明らかになっていくソレに南山は眼を見開いた。

「…なんですか?この滅茶苦茶な技は…」

「思うだろ?SPは軽く上限超えてるし、何よりこんなデータ存在しない。」

「こんな反則的な技。あったらゲームバランス崩れちゃいますよ…」

「見ろ。キメラを瞬殺だ」

「有り得ないですね。このモンスター、Aクラスじゃないですか」

「っかしいな〜…。天才型でもここまでのは作ってなかったんだが」

「ところで、この映像どうしたんですか?」

「ん?エラー報告。」

「へぇ、エラー報告機能までついてたんですね」

「ま、今までエラーなんてなかったからな。知らないのも当たり前か」

「完全に作り上げたつもりだったんですけどね」

「所詮はつもりだった、ってことだな」

ふぅ、と溜息をついて煙草を取り出すがそれは南山に制される。
チッと軽く舌打ちをして、もういちど溜息をついた。

「こいつには悪いが、このデータ消しとくか。」

「え…」

南山は驚いた素振りを見せて「それはマズいですよ」とすぐに答えた。

「もしクレームが来たらどうするんですか。評判悪くなりますよ」

「いいよ。一人ぐらい」

「よくありません」

「…たく、生真面目なんだからよ」

カチとマウスを右クリックし、画面からは映像が消えてデスクトップ画面が表示された。

「あ、ちょっと見たいものがあるんで使っていいですか?」

「…ま、いいよ。俺飯行くけど。」

「私は後で行きます」

霧島を見ずに、パソコンを弄りながらソレに没頭しているようだ。
それを見て霧島は眉間をしかめるが、すぐに微笑に変わり彼独特のめんどくさそうな顔に戻った。

「へいへい。」

と、呆れたように彼は出口へと向った。
やはり巨大な室内、出口には200mほどの距離がありめんどくさがりの霧島には苦痛以外のなんでもなかった。
霧島の同僚の佐藤は、健康維持に丁度いいじゃん、と言っていたがこんなことまでして健康を維持していたいのだろうか、と少し疑問を持ったほどだ。
ようやくエレベーター前につき、スイッチを押してすぐにドアは開いた。
すれ違ったスタッフに「お疲れ」と一言声をかけて、エレベーターに乗る。

ガー…と機械音だけの静寂の世界の中、霧島は壁にもたれかかっていた。

(…あのプレイヤー…なんか嫌な予感がすんな…)

チンッと間抜けな音がしたあと、目前のドアが開いた。
食堂らしいその場所はOLや社員でにぎわっていて、時計を見るとちょうど12時で、なるほど。と頷いた。

カウンターに行き、食券を買ってそれを渡す。

(前から思ってたけど…でっけぇビルの割りに食堂、貧乏くさいな。)

適当に空いている席を座り、そこに座る。
煙草を取り出して、こんどこそ、と思っては見るが頭上にある巨大な禁煙の文字に一気にテンションが下がってしまう。
仕方なく携帯を弄っている間にウェイトレスが、頼んだ日替わりランチを持ってきた。
ダイエット食のような簡素なもので、これもまたテンションが下がった。
よくよく見れば、『今日はレディースデイ』と書いてある。社員食堂にレディースデイなんて必要ないんだよ。バカヤロウ。と心の中で舌打ちした。

「お、霧島君じゃないか」

声がする方をすぐ確認した。
これまたアメカジ風の服装の中年男でイケメンの、社員食堂に不釣合いの男だ。

「…社長。」

「社長ってのは止めろよ。同い年だぜ?」

「社長は社長でしょう。天下の笹岩グループの社長を呼び捨てなんてできるはずないじゃないスか」

「俺は社員にはフレンドリーを求めてんのよ。」

「へぇ、そうなんすか」

興味なさげに素っ気に返された返事の顔をしかめる『社長』

「というか社長。今日はなんで日本にいるんすか?」

「久しぶりに俺もTJの運営に携わろうと思ってね」

「…大臣に許可は?」

「必要ないに決まってるだろ。TJの運営は実際笹岩グループがしてるんだから」

「それもそうですね」

霧島は、社長、笹岩が嫌いだった。
苦労したこともないような顔、性格、生まれ持つ能力と金と家柄。全てが完璧の笹岩に霧島は嫉妬に近い感情を持っていた。
嫉妬というより、嫌悪に近いのかもしれない。
そんな笹岩が運営に携わるというこよは、霧島にとってめんどくさいことこの上なかった。
が、実際笹岩の処理能力は物凄く、霧島自身笹岩の介入で仕事が楽になることは間違いなかった。

「それじゃ、これからよろしく頼むよ」

「…はい」

「ところで、何かエラーかなにかなかったかな?」

「エラー、ですか。」

その質問には大人しく答えることにした。
仮にも自分を雇ってる会社の社長。流石に報告はしなければヤバイ。
霧島は今日の件を、笹岩に報告した。

「なるほど。ゲームバランスを崩すようなプレイヤー…か」

「はい。」

コーヒーをすすりながら、彼は報告を聞いている。

「テストユーザーの松井 秀一の能力を一瞬、大幅に超えました。」

「松井秀一?…あー、しょっぱなゲームに文句つけまくった奴ね」

「はい。」

今度はチーズケーキに手をつけて、一口でソレを丸呑みにしてしまうと、またコーヒーを口に含む。

「なるほどね〜。いいよ。俺がそのすっごい技の原因の部分だけ消去しておくから」

「社長が、ですか?」

「ああ」

「…わかりました」

若干気に入らないところもあるが、しょうがない。と霧島は自分の脳に言い聞かせた。
社長にはむかったらまず、クビだ。それも頭の中に叩き込んでおいた。
少しすると、笹岩は立ち上がった。

「それじゃ、ちょっとこの後用事あるから」

「はい。」

「じゃあな」

カツカツ、と高級そうな革靴を音させて笹岩は食堂を後にした。
その後霧島は大変なことに気づく。

「…あの野郎…」

それは彼にとって至極迷惑極まりないものであり、笹岩に殺意を覚えた。
拳がプルプルと振るえ、笹岩がでていったエレベーターをしばらく睨んでいた。

「…勘定置いていきやがったな…」

テーブルの上には、いつのまにか『勘定よろしく!』と書かれたメモが置かれていた。
そのメモをくしゃ、と握り締める。
今日、この1日で霧島の笹岩に対する嫌悪感がいっそうたかまった1日だった――

[430]
玉賀必人 - 2006年05月22日 (月) 16時17分

あれ?遅いですか?いいか、遅かったらどうでも良いです
名前【玉賀必人呼ばれるときは『必人』】 
年齢【J  】実年齢
職業【破魔族『やみ属性に強い』】
属性【光/闇】たまに裏切る?
性格【無鉄砲、馴れ馴れしい、戦闘の時は強気】
*性格は詳しく。
経験地【パワー5 スピード4 ガード4 テクニック6 知識8】
その他【普段はおとなしいへんなときに来る】
強すぎですか?

[431]
ロキ - 2006年05月22日 (月) 18時05分

学校からの帰り道。後ろから車のクラクションが連続して鳴った。
俺はよろよろと体をふらつかせながら、道路わきに動く。
よろよろの足で、電柱にしがみついた。

「…筋肉痛だ」


俺は体のいたるところから湿布臭を漂わせていた。
あのゲーム。中々油断できない。いつのまにか体の全身に痛みが走っている。
椅子に座って、ヘルメットを被っているだけな筈なのになんで筋肉痛になっているんだ。
エナメルのバッグが歩くたびに尻にぶつかるのも、不愉快極まりない。
立ち止まって地面を見つめながら、息遣いが荒いの確かめる。今更ながら自分の体力不足を後悔した。
一度、ふぅと溜息を吐いてまた一歩一歩歩み始める。

ふらふらの千鳥足で、俺は帰路についた。

しばらく歩いてから、ふと見覚えのある顔が目に入る。
制服に、ショートの黒髪が綺麗になびいているが化粧などはしてなく素朴な感じだ。

「…あー…どちら様?」

少し控えめに声をかけてみた。
ドアのほうを向いていた女性が、俺をほうを向く。

「あっ…!弘毅さんですねっ!」

「…そうだけど」

「すいません…。急に押しかけちゃって…」

ペコリと頭を下げた。その時、胸ポケットに差していたシャーペンが落ちた。
その時、ふと見えたその刺繍が入っていた文字。新川。
はて、聞いたことのあるような名前だ。

「えーと、ごめんだけど…」

「…はい?」

「どちら様?」

あっ、と恥ずかしげに顔を赤らめる。

「新川心紅です。この前、ゲームでご一緒した――…」

ようやく顔と名前が一致した。新川心紅。その名前とこの前のTJをプレイした時の場面が鮮明に思い出した。
パッと聞いただけだったが俺の脳内には残っていたようだ。

「あー。あの時のね」

「はい。あの時の、です」

笑いながら、言う。
優しげな笑顔で、えくぼがぽくっとできている。
なるほど。化粧などをしていなくても十二分に可愛い。

「あの時はどうもありがとうございましたー」

「あー、いやいや」

あのキメラの後、俺は気絶してゲームから強制終了させられていた。
気がつけばヘルメットの暗闇で、周りには誰もいなかった。木山達、俺より先にゲーム終了させていたらしい。
なんて奴等だ全く。

「なんかなー。あれはバグっぽいからさ。なんかの幸運だったんじゃないかな」

「まぁ、確かにそうですよねっ!」

…普通そこまでいいきるか?謙遜してもいいと思う。

「んで、何のようだっけ?」

「あ、いえ。住所を調べたらお近くに住んでるみたいだったので…」

へぇ、そうなのか。
そう納得して、新川を見ると恥ずかしそうに俺を上目使いで見ている。
新川は言い出しにくそうにゆっくりと口を開いていく。

「…もしよかったら私とチーム組んでほしいなぁ…なんて」

「チーム…かぁ」

顎に拳をあて、ふーむと言葉を漏らしてみる。彼女は心配げに俺を見ている。
チームというと…木山と陽太。あいつらとの状態の事を言うのだろうか。
先日のあの逃走いらい、奴等とはろくに話も聞いていない。奴等も俺に合わせる顔がないだろう。
もちろん俺も話すつもりもないし、話したくも無い。俺等の友情はこんなもんだったって事だ。
ゲームとはいえ、…いやゲームだからこそ倒れた友人を助けなけなければならないんじゃないだろうか。
…まぁ、俺もそんなことはしないだろうけど。理不尽な考えだ。

「ああ。いいよ。チーム組もうか。」

「ホッ…ホントですか!?」

「ああ。ホントだ」

「ぃや…ったあ!!」

小さくガッツポーズをしてみせる新川。

「そんなに嬉しいか…?」

「ええ!それはもう!」

「…ま、いいか」

「それじゃ…今から行きましょう!」

「今から…どこに?」

「え?」

「いや、どこに行くって?」

「決まってるじゃないですか!」

どことなく嫌な予感がした。彼女の次の言葉を聞こうと、
一寸間を置くと新川と唇がゆっくりと動くのが確認できた。





「もちろんTJをしにですよっ!」



















第八話  繋ぎ目




















体の筋肉痛が酷い。これは前にもいったような気がする。
だのに、彼女は容赦せず俺に悪意を持っているかのように強引にゲーセンに連れて来られてしまった。
節々の痛みが動くごとに痺れる。

今はもう見慣れたこのゲームセンターには、人がごった返していて1000人は入るだろうという広さなのにとても歩きにくい。
歩くたびに肩が触れ合い、痛みが走る。

「…どっか空いてる?」

「あ、あそこ空いてますねっ!」

新川の指差した場所には丁度ぽっかりと二席空いており、そこだけ変な空間の気さえもした。
新川はとられまいと早歩きでそこへ向かい、ドスっと勢いよく座り込んだ。

「弘毅さんも早く来てくださいよー!」

「へいへい…」

「急がないととられちゃいますよ!?」

そこへ向おうとする、刹那。
―――背中が痺れるような感覚に襲われた。
2m近い身長で帽子を深く被っていても独特のオーラを醸し出すその姿。
忘れるはずが無かった。

「―――ヒデカズ…!」

ポツリと声が零れてしまう。
その声は雑踏の中にかき消されてしまい、そのヒデカズはすぐに見失ってしまった。
…今日はゲームで見るかもな…。
どうやら世界は極端に狭いようだ。心紅にしろあの男にしろ、ゲーム内で会う奴が見な近くの人間だとは。
このゲームもネットワークかなにかで全国に繋がっているはず。全国の人間に会うはずなのに。

…特に気にすることでもない、か。

俺は特に気にするでもなく、ヘルメットを装着した。




何度目かのジェットコースター体験して、俺は異次元の世界へと足を踏み入れた。




「…ん?」

ゲーム内に足を踏み入れた時、俺はなんともいえない違和感を感じた。
何か体から何かが抜けていくような、浮遊感を感じるようななんともいえない感覚。
…気のせい、だろうか。

「弘毅さ〜ん」

丁度、心紅も近くにいて容易に合流できた。
合流後、俺たちはいつものギルドで一服していた。
といっても、どうやらいつもというのは俺だけのようで彼女は初めてのようだ。
あたりを見渡しては「へぇー」とトリビヤ並に連呼していた。

「うーん。どうする?今から戦闘行く?」

ソファーに腰を深く埋めて、ドリンクをチビチビと飲みながら口を開く。

「そうですねー。どうしましょうかー。」

質問を質問で返すなとジョジョで教わらなかったのだろうか。…ネタわからないか。
年代が違うってのは悲しいもんだな。

結局俺達は、話し合いの末また例の草原のところへ行くことにした。
そこへ行く理由は二つ、静かだから。
それと、心紅はもう一度。もう一度彼女に会いたいそうだ。
あの時の少女に。
あの少女は今、ゲーム内にいるのだろうか…?





「クシュンッ」

ズズと鼻水をすすりながら、その少女はゲーセンでミルクティーを啜っていた。

「風邪…かな」

口の中に広がった甘い香の余韻に浸りながら、おでこに手をあててみる。
しかし、熱という熱は感じられず気にしないことにした。

ゲーセンに彼女のような少女が一人、アーケードゲームのオンパレードに埋もれているのはとても異様な光景だ。
画像に写されるのは『WIN』と金色に輝く文字。
ゲーム機を挟んで、向こうの男は情けなくうずくまっていた。
少女の後ろには何人もの野次馬が集まっており、ザワザワと声が聞こえていた。
後ろからの「萌え〜」という言葉は聞いていないことにした。

(むー…。やっぱり物足りないなぁ…やっぱりTJじゃないと…)

カチャカチャとスティックを動かしながらただ黙々と目前の敵を倒し続けるのにも飽きてきた。そんな風に言わんばかりに、
淡々と次々に挑戦してくるチャレンジャー達を倒し続けている。
79コンボという、まさに虐めといえる技を決めた後彼女は席をたった。丁度ミルクティーを飲み終わったところだ。

(今日は強い人もいないみたいだし…。帰ろうかなぁ)

むせ返る男臭を潜り抜け、少女は出口へと向かおうとした。
――突然グイっと肩を引っ張られる

「おい。ちょっと待てや」

後ろを見れば金髪にウニのような頭をしているヤンキーがたっていた。
瞼をピクピクとさせて、馬鹿みたいなスカジャンのデザインが奇抜だ。

「…なに?」

「お前んせいでよぉ、金が無くなっちまったんだよ。どうしてくれんべ?」

(うっわー…だっさーい…)

「そんなの私関係ないじゃん」

「お前が俺に勝たせんからよぉ、俺が大量に金使っちまったんだよ」

敗北者の典型、というか聖雫は明らかに大人気ない言葉にだいぶ失望をした。
元々希望などなかったが。
馬鹿じゃない!?と聖雫は頭の中で連呼した。

「あんたが弱いのがいけないんでしょ?ざーこっ!」

「ざこぉ!?お前、舐めるのも大概にしとけやぁ!?」

「あんたがあんなショッボイ腕で私に挑んでくるのが悪いの!わかる!?」

「この…糞餓鬼がぁ…!!」

「なによ!」

「ぶっ飛ばす!!」

「来なさいよ!この○○○野郎!」

ヤンキーが大きく腕を振りかざす。それは今にも聖雫を殴りつけようと向っているところだった。
しかしそのパンチは聖雫に止まって見えていた。
彼女は、仮にも空手の有段者。ヤンキーの素人の大振りのパンチなど効くはずもない。
右腕を引いて、ヤンキーの鳩尾に捻じ込もうとした矢先。
ヤンキーのパンチは振り上げたところで止まっていた。

「…おい。その辺で止めとけ?」

「んだぁてめ…ぇ…」

振り向いたヤンキーは明らかにビビっていた。
ヤンキーの毛穴という毛穴から汗が噴き出ているんじゃないかと思うくらいの汗をかきながら、顔は引きつりに引きつっている。

「あ…ゴジラ…さん…」

ヤンキーがゴジラと呼んだその男は、がたいが大きくまぁゴジラと呼ぶに相応しいといえば相応しい体格だ。
ただ、聖雫は呆然としていた。
ダボダボとした迷彩色のズボンに、緑色のシャツ。確かにゴジラだ。
ゴジラなのだが、何故ゴジラ?そんな考えが聖雫の頭に巡っていた。
その『ゴジラ』はヤンキーを人睨みすると、聖雫に軽くお辞儀をした。

「悪かったな。」

そういうと、ヤンキーの頭を掴みそのままゲーセンの中に入っていた。
片手で男一人を動かすその力は、ゴジラ並と言っても大丈夫だろう。
しかし、やっぱり聖雫はポカンと大きな口を空けて握った拳をブランとさせながら、
緑色のシャツの背中をただ呆然と見尽くしているだけだった。

「…なんだったの…?」

とは言うものの、助かったのは事実だ。
聖雫は心の中で『ゴジラ』に感謝を述べながら、駐輪場に止めてあった銀色の茶目っ気のない自転車へと向った。
それに跨り、ペダルを踏む。

(早く、TJしたいなぁ…)

そう思う気持ちが増すにつれて、ペダルを回す足がしだいに早くなっていた。
シャー…と車輪が爽快に道路をTJのあるゲームセンターへ向って勢いよく下っていった。









To Be Continued.......!

[474]
ロキ - 2006年05月29日 (月) 23時20分

ズドォン…!!

爆裂音が、平原に木霊した。鳥達がざわめき、何処かへ飛んで行ってしまった。
その平穏などほど遠い場所で、今戦闘が行われていた。
巨大なモンスターと、チームらしき三人の男達。その男達の強さは、圧倒的だった。
二人の男が、圧倒的に巨大なモンスターを押しながらもう一人の男がフォローを加える。
彼らのコンビネーションは完璧だった。
彼らとモンスターの大きさを割合で表すならば、1:100の大きさで普通ならば相手にもならない差だった。
だが、彼らは一歩も引かない。それどころか今まさにその巨大なモンスターを倒す直前だ。

そして、終止符を打つように一人の男が翳した手から、またも爆裂音が弾けた。
その爆裂をじかに受けたモンスターはぐったりとうなだれてゆっくりと地面にはいつくばった。
地面の緑がゆっくりと赤に染まっていく。

「っしゃ。OK。」

「お疲れー。」

「…」

その三人のチーム名は、『チーム南里』。今TJ内でも上位に入るチームだ。

「そろそろキメラも余裕に倒せるようになったな」

「余裕?お前なんにもしてねぇじゃねぇか!何にもしてねぇ奴が、そんな口聞くなんざあめえんだよボケェ!」

「俺だって結構やったじゃんかよ!」

「ハッ!よくいうぜ!怖くて支援しかできなかったんじゃねぇのか!?」

「んなわけねぇだろぉ!」

地味目の男。萩野目が、地団駄踏むと神人は嬉しそうにその様子を見ていた。

「…」

その傍ら、秀一は静かにキメラの死体を観察していた。

「どうした?秀一」

「…このモンスター…」

スッ…と秀一が見続けたその場所に指をなぞらえた。

「…おかしい…」

秀一が見ていた部分は、先ほど彼が浴びさせた爆発の後中身が抉れた部分だった。
その中身は巨大な心臓があった。しかし、その心臓はもうすでに機能していない。

「…何がだ?」

「…おかしいと思わないのか?」

「だからなにがだよ」

「…このモンスター…リアルすぎる…」

神人はその屍骸をゆっくりと見渡した。
確かにリアルだ。骨、心臓、内臓全てにわたって鮮明に生物を表現している。
だが彼は、違和感は感じなかった。それが、当たり前の光景だったからだ。
神人にとって秀一の考えていることがよくわからない、違和感だった。

「…リアルじゃ悪いのか?」

「…とても人間が創ったものだとは思えないんだが…」

「最近はCG技術も発達してるからなぁ。これが普通なんだろ。」

「…」

「あんまり気にすると禿るぜ!秀一!」

神人は秀一を豪快に笑い飛ばして、また萩野目を虐めるためにそちらへ向った。
だが、当然秀一が納得するはずが無かった。
細部にわたる肉体の表現。血管、内臓。全て克明に、まさに真実のように描かれていることもあれば、
先ほどの攻撃の時に感じた感触。それはまるで人間のような、生物の感触だった。
そして何より悲鳴。死ぬ間際の悲痛な叫び声。それが確かに秀一の胸に劈いた。
あれは感情のない“モノ”では出せれない叫びだった。 


その全てに、違和感を感じられずにはいられない。秀一は、何故かその考えを振り切ることはできなかった。



―――確かにあのモンスターは“生きていた”―――




秀一は心の中で、ボソリと呟いた。






















第9話 違和感



















冒険者が集まる場所。ギルド。その店が置かれてある町に、戦闘の疲れを癒すべく秀一達はそこにいた。
ファーストシティより先にある、冒険者が造った町『アーティック』。
鮮やかな自然に包まれていて、この町を作っている職人達のセンスを感じさせる。
噴水、壁、道路、店、公衆トイレ。すべてに職人芸が際立つ。
その町のギルドもやはり冒険者が運営していたりしていて、他の店も冒険者によるものだ。
まさにアーティックは冒険者が創り、冒険者による町だった。

その店のテーブルに偉そうに足を載せて、豪快に笑う神人が特に目立っていた。

「だ〜…!さすがに一週間ずっとゲーム内にいるってのも疲れてきたな…」

「俺はもうすでに満身創痍だよ…」

「…」

17歳、神崎神人。彼の手には巨大なジョッキが握られていた。
中には黄色い泡立つお茶がなみなみと注がれている。
その豪快な様に萩野目は呆れたように肘をついてその様子を眺めていた。
そして手に持っていた神人と比べ物にならない小ささのグラスに入ったグレープフルーツジュースをちびりと飲んで、口を開いた。

「…っていうか…神人。お前それは犯罪だぞ〜?」

「そんなの知るか。俺がルールだ」

「…神人…」

なんて自己中心的な奴だ、と心の中で思いながらも口には出せないでいる萩野目。
哀れ萩野目。

「…」

二人が話している傍で、秀一は一人何かを考え込んでいた。
それに神人は気づいていたが、彼は秀一という人間は自分で結論を出さないと納得を人間だということを知っていたために放っておいていた。

(今日はまた一段と考え込んでんな…)

フ…と静かに微笑んで

(…ったく、時々は頼ってくれよな)

そう思った数秒後、突然騒がしくなった。
このギルドにまた新しい客が来たのだ。
その客は五人の団体で恐らくチームを組んでいるのだろう。中々に仲がよさ気だった。
二人は剣を持ち、二人は銃を持っていて、一人は眼鏡だけというどこか謎なパーティだ。

「ギャハハハ!それはない!絶対ない!」

「いやいやいやマジであったんだって!ゲロ味のカップヌードルがだなぁ!」

「はいはい嘘嘘」

「ちょっ、おま」

ギャハハハハ、と大きな声が神人達の声に聞こえないはずもなかった。
神人はその集団の男達の大声が一瞬で大嫌いになった。
まず、男達の外見。よっぽど気持ち悪い顔ではないが、格好よくはない。
さらにその話の内容も、神人の嫌悪感を強まらせた。
まったく、最近の餓鬼はマナーがなってない。その言葉を喉の奥に押し込んだ。

(…)

だが神人は、さすがに大人だった。よく見れば彼らはまだ中学生のような体つき。
恐らく神人より年下だ。それを確認した神人は、しずかにジョッキに口をつけた。
さすがに年下をぶっ飛ばすなんて行為はしない。

(ここは我慢だ…)

「つーかこの前うちん家のトイレが爆発してさぁ!」

「はいはいネタだな。」

(…我慢我慢…)

「いやマジなんだって!」

「「はいはい」」

(我慢…)

「くっそー!なんで信じないんだよ!」

「誰が信じるかよ」

(…)

「信じろよこのやろー!」

その騒音にプチン、と神人の中で何かが切れた。
以外に短気だ。神崎神人。

「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

ビクゥとハンマーで頭を打たれたように驚く男達。
その男達には萩野目と秀一も入っている。それほど驚く叫び声だった。

「お前ここは静かに男達が語り合うとこなんだよ!五月蝿ぇんだよ!あめぇんだよボケぇ!」

「えっ…?」

五人はとてつもなく驚愕していた。
それも当然だろう。気分よく話していたところでいきなり、叫び声を上げられなにやら叫んでいるのだから。

「とりあえず黙っとけ!!」

神人が振り上げ、用意した踵落としが少年Aの脳天に直撃した。
へぶし!、と大袈裟に倒れこむ少年Aを衝撃の眼差しでみつめるその店の面々。
特に萩野目は面食らっていた。

「ちょっ…!何やってんだ神人!?馬鹿か!?」

「うるせー!この餓鬼共に店でのマナーっていうものを教えてやる!」

「子供相手にムキになんなっつーの!PTAに訴えられるぞ!」

「安心しろ!俺もまだPTAの管轄内だ!」

「そういう問題じゃねぇー!」

この口論の間、秀一はゆっくりと傍観していた。
暴れる神人、抑える萩野目、怯える少年達。
何もかもが平和に見えて、TJの中にいるということを忘れて心が穏やかになっていることを感じていた。

「じゃあ!じゃあせめてTJプレイヤーとして戦闘でケリをつけろ!な!?」

ピタリ、と神人の動きが止まった。

「…TJ?」

「そう、TJだ」

しばらく考えた様子で、何かに気づいたように指をパチンと鳴らした。

「…よし。いいだろう。おい餓鬼ども。準備しろ」

萩野目はふぅ…と息をつくと、ゆっくりと少年達のほうを向いた。
え?と未だによくわからずにいる少年達は、情けない言葉を溢した。
萩野目はその様子を見て「頼むよ」と一言、言う。
それを聞いた一人が、(意味わからないけど…)といった風にこっくりと頷いた。

「…なんか…やるしかないっぽい…な」

「…あ…ああ…」

「…ってか…なんで俺かかと落とし喰らったんだ…?」

「…ドンマイ。」

ぽかんとするしかない、少年達。
嗚呼、哀れ。俺達と関わったばっかりに。萩野目はそう切なそうに呟いた。







場所は闘技場。プレイヤー同士が戦うために設置された設備だ。
中世のコロシアムを彷彿とさせるそのデザインは、中々にセンスがよい。

「勝敗は、相手が動かなくなるまで。相手を完全に倒してはいけない。
 …それと、最初は神人だけで戦う。神人がヤバくなったら俺達参戦。…OK?」

萩野目が両者の中間地点に立ち、神人に向って忠告するように言った。

「あめぇんだよボケェ!俺が負けると思うのか?」

「…いや、そういうわけじゃねぇけど」

「大丈夫だ。お前等の参戦はねぇよ」

「そうだといいけど」

「一人で充分だ」

自身有り気に、彼の武器の槍を取り出すとブゥンと撓らせた。
その様子に若干、五人組の少年達は腰が引けている様子で神人はさらに得意げになる。

「んで…、君等のチーム名も聞いといていいかな?一応戦うわけだし…」

その質問を彼等に聞くと、困ったようにざわつき始めた。
チーム名って何?や、つかリーダー誰よ?とかそんな会話が萩野目に届いた。

(あちゃ〜…。こりゃ、神人の楽勝かな…)

すると一人の少年が、スッ…と挙手をした。
眼鏡で、少し痩せているあまり覇気のない顔だ。

「それじゃ〜…竜矢と愉快な仲間達、で」

「はぁ!?」

「馬鹿か!?」

「アホじゃねぇのか!?」

「死ね!」

罵声の嵐。…あの子はクラスでもあんな立場なんだろうか…萩野目は少し心配になった。

「まぁ、しょうがないな。それでいいぜ」

一人の少年が、頷くと他の少年も次々に頷く。

「おーい。まだかよ?」

後ろから声がして、萩野目はちょっと違和感を感じた。
こんなにも神人が、冷静じゃない場面なんてそんなに出くわすことじゃない。
ましてや相手が中学生の団体なら尚更だ。

(…なんだかおかしいな)

だが、神人の滅茶苦茶の論理も微妙に慣れた萩野目はあまり気にしないことにした。
ま、いつものことさ。そう頭に括りつけて。

「よし!…バトル始めるぜ。」

「「「「「はい!」」」」」

(…元気だな。竜矢と愉快な仲間達)

これからぼこぼこになるのに、苦笑いしながら肺にスー…と息を集めた

「バトル…開始!!」

「悟!義人!撃て!」

合図と同時に、竜矢と名乗る少年が神人を指差した。
合図された二人は両手に持ったマシンガンを持ちうちはなつ。
連続した弾丸が神人を襲う!
…が、神人にそんな銃弾も効く筈もなく槍で全弾弾き返す!

「ハッ!奇襲で俺を倒そうなんて――――!?」

「それだけじゃないっすよ!!」

マシンガンを撃った二人とまた別に、二人の少年が剣を片手に連続して神人を斬りつける!

「っ―!」

だが百戦錬磨、神崎神人。たかが二人の少年の斬撃程度避けるのは容易い。
体を大きく動かして斬撃を回避する。

「今度は俺からいくぜぇ!―――!?」

構えなおした瞬間、目前にはロケットランチャーを構えたマシンガンの二人の少年がいた。

「まだまだ終らないですよっと」

ドカァァァン!と大きな爆裂音とともに、弾丸が発射された!
その弾丸を神人は槍の刀の部分で、その弾丸を分断させる!
二つに分かれて右左に跳んでいき――爆発する。

(ちっ…くしょうが!!)

煙で周りが見えずに、槍で煙をはらう。
だが、その行動を彼等は見逃さなかった。
――突然、光が神人に差し込んだ。

(煙…なくなったか!?)

光と同時に刃が、神人の頭上に白銀の刃が神人を襲う!

「喰らえ――!」

ブシュッ…!!と神人の肩から血が噴出する。

「てっ…めぇらぁぁぁぁぁ!!!」

ブオンと槍が空を切る音が聞こえた。
彼等はスピードが早く、怯んだ神人の攻撃を避けるのも間一髪だったが中々に素早いスピードだ。
さらに加えれば、いつもモンスターに対しては先制攻撃ばかりだったから神人はあまりガードに慣れていない。
それも斬撃を浴びる理由に入るだろう。

それを回避した後、間髪いれずにどんどん斬撃を繰り返す!
素早く動きながら避ける神人はさすがだが、息つく暇もなく繰り返される乱撃に神人は疲労を覚えずに入られなかった。
どうにか二人からの攻撃を避けれて入るが、そろそろ疲労もピークだ。

ふと、斬撃が止んだ。
気づけば彼等は神人の目前にはいなかった。
一度、彼等は集合しハイッタッチしていく。その行為が神人の勘に触った。

「ぜってぇ…ぶったおしてやる…!」

竜矢という少年が、クイ!と眼鏡のフレームを指で持ち上げた。
まるで彼が、『計画通り』と言わんばかりに。

それがさらに、神人の怒りのボルテージを上げていく!

「オラァァァァァァァァァ!!」

槍を掲げ、彼等に突進を駆ける!
だが、その捨て身の攻撃も彼等『竜矢と愉快な仲間達』には通用するよしもなかった―――







「…信じらんねぇ。あの神人が…」

傍観していた萩野目が思わず言うまいとしていた言葉を漏らした。
仮にも神人は、超人的な身体能力を持った天才だ。
TJで、周りの進化が著しくとも神人も常に進化しているし周りが追いつくはずもない。
萩野目が衝撃の声を漏らすのも当然というものだ。

「…」

秀一は目の前で起きている戦いを見て、また一人で何かを考えていた。

「…なるほど。そういうことか…」

「…そういうこと?」

「…あの眼鏡をかけている竜矢という少年。…あいつが司令塔だ」

秀一が指差した方向には先ほどから一歩も動かずに、指示ばかり出している少年がいた。

「まさか」

そう答えるのも無理はない。
動かない者が司令塔なんて、いつの話だ。スポーツでも、司令塔というのはエースがいつもするものだ。
萩野目は思っていた。

「…闘いでは」

「闘いでは?」

「…闘いでは、参謀という役職がいることは知っているな」

「そりゃそうだ」

何を当たり前の事を。秀一らしくもない。
そう言おうとした時、また神人が劣勢になっているのを見て口がふさがった。

「…参謀というのは、相手の弱点を観察でき自軍を優勢に導くことが出来る…。そんな能力を持っている奴がすることだ。」

「…それをその竜矢っていう奴はその能力を持っている、と?」

「そうだ。…恐らくあいつの特殊能力は、観察する能力他ならない。
 神人を最初から興奮させていたのもあいつの仕業だろう」

「そんな馬鹿な…」

だがその言葉を真っ向に否定する術を萩野目は持っていなかった。
現に、あの神人が苦戦を強いられているのだ。充分に有り得る話だ。

「…チームワークの重要性を軽んじたな…」

「…」

「どうやら神人はあの少年達から学ばされたようだ」

萩野目は言葉がでなかった。
たしかに、最近はチームワークというものを考えていなかった。
個の強さばかりを追い求めていた。それも事実だったからだ。

「まさかこんなチームに学ばされることになるとはな…」

秀一の顔を見るとビクッと体が痙攣したように、体が反応した。

(――秀一…笑ってる?)

萩野目の見た秀一の表情は、笑顔というような一般が言う笑っている、という表情ではなかった。
だが確かに、萩野目の目には『笑っている』そう見えたような気がした。

少し動揺している萩野目を横目に、ゆっくりと秀一が立ち上がった。

「…そろそろ行くか」

「あっ…。んじゃ、俺も」

――トンッ、と萩野目の肩を秀一が押さえた。

「…萩野目は…いい。」

「…え?」

「…俺達も教えてやらないといけない。舐められたままでは、チーム南里のメンツに関わる。」

―――見上げたその男の眼は、艶やかに、そして獰猛に光っていた―――




















「――教育してやるさ。…格の違いというものを…!」






















To Be Continued.......!

[482] 武ちゃんが消えたって!?気のせいだよ!
埴輪 - 2006年05月31日 (水) 23時08分

名前【マグナ】 
年齢【19】
職業【炎剣士】
属性【炎】
性格【本名長谷 健太(はせ けんた)。拓の唯一無二の友。性格は温和で人当たりがよく、低身長で童顔のためか、結構女の子にもてちゃったりする】

経験地【パワー3スピード3ガード2テクニック5知識7】
その他【武器は炎を象った七支刀「カグツチノツルギ」。炎剣士という職業があらわすように、火を自在に操る。必殺技は、刀身から炎でできた竜を召喚し、相手を焼き尽くす『ホムラノケシン』だが、MPが足りないためほとんど使用できない】


やっぱり厨二臭いや!けどそれがいい

[490] 投稿っ!!
幻影 - 2006年06月03日 (土) 21時28分

名前【幻影】 
年齢【見た目は16歳】
職業【ボス】
属性【夜】
性格【極度の楽観的主義者、そして何事も楽しめる変人】
その他【武器 掃除機
    必殺技 「闇蛍」
    無数の紫に発光し浮遊する球体を発生させる
    球体の大きさはボーリングの球ほどで攻撃目標
    を見定め一斉に襲い掛かる。
    攻撃以外にも密集させ盾にしたり
    浮遊している球体を足場にできたりできる】

[569]
ロキ - 2006年06月26日 (月) 14時16分

どこか、頭のすみっこで、彼等に勝てる気がしていた。
頭脳プレイというものが好きだったし、今までもずっとそんな風にして勝って来た。
そしてたった今も、あの“最強”に勝てる気がしていた




ほんの数秒。彼の姿が僕の眼球に写るまでは。





背筋が、今までのどんな戦いよりも、ゾッと、恐怖が走った。

僕の思考は、雁字搦めに絡まった。

彼の視線に、僕は地面に括りつけられた。



僕達の目の前にいるその人の眼光は、明らかに、



―――違ったんだ



作戦とか力の差とか才能とかそんなもの全部関係なんてなくて、

もともとの根本から、違ったんだって

たった今、本能が理解した。

逃げ場がない、崖っぷちに立たされている様な、絶体絶命の危機。

そして、理解すると同時に納得した。








閑黙の戦士







存在するだけで威圧するその圧倒的な力








背に見える、彼のプレッシャー









なるほど










これが、静かなる不死鳥












―――マツイ ヒデカズ―――




















第十話 格の違い


















「…すまないが、乱入させてもらう」

秀一のその一言で、先ほどまでの大乱戦が嘘のように静まり返った。
静かに、周りは一言も声を発せずに秀一を見つめていた。
倒れこんでいる神人の前に、秀一は歩み寄って手を差し伸べる。

「秀一…!?」

なんででてきた、そう言わんばかりに神人は秀一をにらみつけた。

「神人。お前もまだまだ爪が甘いな」

「んだよ…お前が入るってのか!?」

勢いよく差し伸べた手に手をぶつけ、それを掴んだ。
引き上げられた神人を一瞥するとハン、と溜息をして首を縦に振った。

「…やれやれ。派手にやられてるな。」

「うっせぇ…」

ばつが悪そうに神人は目をそむけると小さく舌打ちをした。
秀一は小さく笑みを溢して、その様子を見ていた。

「神人」

「…なんだ?」

訝しげに、秀一を見つめる。
秀一は表情を変えずに淡々とした口調で、言い切った。

「今日はもういい。下がれ。」

…はぁ?その言葉を発する前に、秀一の言葉に制された。

「お前は今日、頭に血が昇り過ぎている。…今日は休憩だ。神人。」

「…俺はまだ闘れる!コケにさせられたままなんざ嫌なんだよ!」

「神人」

「―――っ」

歯を食いしばり、一歩後ずさる。
彼自身、冷静さを欠いていたのも自覚していたし怪我が酷すぎる今の状態ではろくに戦えないだろう。
彼はまるで苦虫を噛み潰したような顔して、萩野目のところへとゆっくり歩いていった。
秀一は、竜矢達に背を向けたまま神人を静かに見送った。
そして、ゆっくり豪胆な威圧感を放ちながら秀一は竜矢達を睨みつけた。

「―――さて」

鋭い眼光が、竜矢を捉える。
そのプレッシャーに、心臓の鼓動が高く跳ね上がったことを竜矢は感じた。

「身内が世話になったな」

ズシリ、秀一が一歩踏み出した瞬間、竜矢の背中には重力が何倍も跳ね上がったように感じられた。
(…なんていう…プレッシャー…)
腰が抜ける、そんな状態だった。
恐怖なんて今まで何度も味わったはずだった。だが、今の“コレ”は恐怖なんてものじゃない。
―――そんな言葉で括れるものなんかじゃない!
そのずば抜けた何かに、縛り付けられている。そんな感覚を竜矢は覚えていた。

「勉強になっただろうな。あいつにも」

シュー…と刀身が鞘から解き放たれた。

「―――だが」

その刀に呼応するように、(ハッ…!)と体が自由になる。
瞬時に脳をフル回転させて、僅か3秒で作戦を構築させて喉の奥にグッと力を込めた。


「皆!作戦E!隊形作って!」


それを叫んだ瞬間竜矢達と秀一の間合いは一瞬にして僅か1mほどに縮んだような錯覚を覚えた。
彼のプレッシャーが竜矢達を縛り付ける。
銀の刀身が太陽の光をまんべんに受けいて、竜矢達を薄く照らした。

土が皺を寄せて、秀一の前足が地面に沈む。



「―――舐められたまま、というのは趣味じゃないんだ」






悟、と呼ばれていた少年がいつの間にか腹を抱えているところを竜矢の眼が捉える。

「悟――!?」

何ていう速さだ、そんな言葉も浮かばずにただ状況の異変にパニックを起こしていた。
すぐに周りを見渡す。悟以外誰も攻撃を受けた様子がない。
それとともに秀一の姿も見えないのが竜矢の気にかかるところだろう。


(…だがまだ大丈夫だ!)


ほんのコンマ何秒で竜矢は作戦を構築し直しを完了した。
悟・義人の打撃コンビ。射撃コンビの昇一と俊太。
その中で悟が今潰れた。今この状態で、遠く離れている射撃コンビを攻撃するのはまず考えにくい。
次は…義人、だ。
竜矢は、混乱するその空気を吹き飛ばすくらいの勢いで肺に力を込めた。

(義人――!)

声にならなかった。
それを見つけた瞬間に、肺にためたはずの力がまるで風船のように空気が抜けていく。

捉えた残像。

動く暇もないその瞬間。


気づいた時には、秀一の掌が義人の腹部に捻じ込まれていた。


「―――っ!!!」

濁音だらけの悲鳴と黄色い液体が義人の口内から零れ出た。

「義人!!」

叫んだ瞬間、すでにもう遅く義人は地面に這いつくばっていた。
義人が持っていた剣がカラン、と地面に音をさせた。

(早すぎる…!格が違う…!!)

だが、まだ諦めるのは早い。そうとも。まだ諦めるのは早い!まだ勝てるさ!
竜矢は諦めかけた自分の脳に言い聞かせる。
素早く地面に落ちた剣を拾い上げて、再度頭をフル回転させてた。

(次は必ず、射撃コンビを狙う!戦力を削ってくるはずだ―――!!)

そう結論づけるやいなや、拾った剣を射撃コンビに向って全力で投げた。

(声を上げるのでは遅いんだ、危険を自ら創りあいつらの回避を促せばいい!)

空気を切りながら、その剣は射撃コンビに一直線に向っていった。
顔面に突き刺さるようにとんでくるそれに気づいた二人は大袈裟に体を動かした。

――ブオン

拳打が空振る音が、鮮明に聞こえた。
秀一を、ほんの少しだが竜矢は彼の眼で秀一の像を捉えた。
それがいた場所は、コンビがいたところ。片方の鳩尾を狙って拳を打っているところだった。
丁度その攻撃を真横に避けるように、コンビは回避をしていたことが幸いとなり回避を成功させていた。

(―――よし!…――!)





竜矢はその眼で、今度は確かに確認した。



秀一が、ニヤリと口を歪ませて微笑んでいた事を。






風船が破裂したような、それらしい音が空気を振動させた。

一瞬瞬きをし、世界を改めて確認すると秀一の足の甲がコンビの片方の頭に接触をしているところ。
もう片方は気づいていないのか、何故剣を投げたのかという視線を竜矢に向けていた。

そして1秒後、彼は驚愕の表情に変わることになったのだが。

「俊太ぁ!!!」

蹴りを引いて、軸足を思い切り回し丁度昇一に背を向けるような状態になった。
そこに昇一が銃を構えて、撃とうと構える、が

そのまま軸足を鋭く切り返し、腹部に思い切り蹴り込む!
昇一は大きく空中に浮遊し、背後にあった木にぶつかると静かに木にもたれかかってしまった。

(全滅…だって!?)

全員潰れた今、次の標的は…


(――もう、僕しかいない!?)


そう思った後、竜矢は手元にあった剣を強く握り締めた。
竜矢は元々、参謀として作った能力。戦闘力は絶望的なことは当然竜矢は自分で理解していた。

(…だけど、そう簡単にはやられない…!!)

すでに秀一の姿は見えない。彼はもう攻撃のための移動を始めたのだろう。
竜矢は背を猫背気味にして低めに剣を構えた。せめて、一傷だけでも浴びせてやろう。

(行くぞ…!マツイ ヒデカズ…!)

ふと気づけば、秀一の姿が数m先に目視できていた。
彼は息切れもしれいなければ、汚れ一つついていない。先ほどまで超スピードで動いていたとは思えない様子だ。

「…あとは、お前だけだな」

「くっ…流石、ですね…」

「フ…お前達も中々やっていたと思うぞ」

「ここでそんな風に言われても、説得力がないですよ」

秀一はフ、と鼻に抜けるような笑い方をして少しの笑みを溢した。

「それもそうだな。悪かった」

その言葉を聞いて、竜矢は若干プレッシャーというものが薄れていくような感覚を覚えた。
恐らく、秀一の態度からして次の一撃で俺はゲームオーバーだ。
そう確信していたからだ。

(自分が敵わないのはわかってるさ。だったら…最後の一撃。これに賭けてやる!)

決して下がることの無いように、体の重心をすべて足に集中させる。
その様子に気づいたのか、秀一も少し前足に体重を乗せたようにみえた。

「さて、そろそろ行かせてもらう。」

何度目かわからない、心臓が鼓動した。

「えぇ、どうぞ?」

不適に、生意気に、震えを抑えて、微笑んでみた。
その行動に意味があったのかはわからないが、やらなければならない。そんな気持ちだった。

刹那、秀一の姿が肉眼で捉えることはできなくなった。
秀一はもう、竜矢に向っているだろう。後、0.5秒もすれば彼の攻撃が竜矢に接触するだろう。
強く剣を握り、刺し違える気持ちで、竜矢は大きく叫んだ。





「いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


















































「さーてと、帰りますか。」

「…」

何人か倒れているその場所で萩野目は、よどんだ空気を破り捨てるかのように明るく言った。
竜矢達は、静かに寝かされており回復術が施されていた。
怪我した様子もなく、彼等は静かに寝息をたてて寝ている。
萩野目の呼びかけに、答え秀一と神人はゆっくりとその場を後にした。

歩いている途中、萩野目の隣にいる神人は、さっきからずっと仏頂面で思い切り沈んでいた。
その空気に耐え切れず、萩野目はどんな会話をするべきかずっと迷っていた。

「ま…彼等も中々よくやったんでない?負けちゃったけどさ」

「チーム力に頼りすぎだったな。もう少し個人が強くなければ、上にはいけないだろう」

苦笑いしながら、秀一の背中を叩いた。

「あいかわらず辛口だねぇ」

「…いいチームではあった、が」

へぇ、と萩野目は小さく驚くような顔をしてみせた。

「秀一が褒めるなんて。珍しいな」

「…能力を高めることで、もっといいチームになるだろう」

「知能も高いみたいだしなぁ」

「…その点、神人は修行不足だったな」

「…うるせぇ…」

悔しさがまじる表情で、応答した。
ククッと萩野目が笑うが、すぐにやめてしまう。神人が睨みつけていたからだ。

「萩野目なんて今回、何にも出番なかったじゃねぇか!」

「なっ…!やられキャラよりマシだっつーの!」

「やられキャラだぁ!?あめぇんだよボケェ!!」

「本当のことだろ!?」

「あぁ!?ぶっとばされてぇのか!?」

「あ!?暴力!?暴力ですか!?暴力はんたーい!!!」

「こっ…んの野郎ぉぉぉ!!」

「フ…やれやれ…」

喧騒の中隣で秀一は呆れながらも、こんな日もたまにはいい。そんなことを考えていた。
いつもの緊迫した場面もいいが、こんな柔らかな毎日も、たまには。
そんなことを考えながら、彼等は町へ向って歩みを続けた

[571] 参戦希望
サンじゃ - 2006年06月29日 (木) 23時27分

チャットにたまにしか顔ださない俺が参戦希望しちゃいます(ェ

名前【サンタマリア じゃんご】 
年齢【14】
職業【ドラマー】
属性【音】
性格【どちらかというとおとなしめ。だが、音楽関係のことが耳に入るといてもたってもいられない。爆走。気分の上がり下がりが激しい。で、たまに天然のボケをかましてしまって恥をかく。】
*性格は詳しく。
経験地【パワー2 スピード4 ガード1 テクニック8 知識5】
その他【必殺技→ミュジックショック=なんでもかんでもドラムのように叩く。相手はそれを聴くと、自然に踊ってしまったりと、神経が異常になり、運がいいと、上手く操る事も出来る。そんな精神的異常を見せるような技。】

[598]
ロキ - 2006年07月23日 (日) 16時33分

 賑やかな東京の繁華街に珍しい車が、風を切り裂いて疾駆していた。
国産車が何台も走っている中、派手色のロールスロイスが日本の国道を走っているというのは極めて異質な事だった。
それが通る度に人は次々と振り向き、驚愕の表情を示した。
自慢、という意図があるにせよないにせよ、その場に居合わせた人は嫉妬のような気分を持ったに違いない。
持ち主はとんでもない金持ちと予測するのは簡単な事だ。口々に人は、金持ちか。とばつの悪そうな顔で舌打ちをしてみせた。

「風雲児とは君の事を言うのだろうね」

そのロールスロイスの中に、スーツに身を包んだ60代ばかりの老人は愉快そうな表情で口を歪ませた。
無表情だった隣に座る若い男は、急に照れたような苦笑いをしてみせ頭を掻いてみせる。

「いえいえ、私のような小僧には勿体無いお言葉です」

「君の実績が謙虚さを皮肉に変えてくれるな」

若い男困ったなぁ、と呟くともう一度頭を掻く。

「それでは私はどう答えればいいんでしょうか」

「君は胸を張っていいのだよ。」

顎に拳をあて少し考えると、若い男は老人を向いた。

「そうでしょうか」

「そうだとも」

「私のような若輩が胸を張っていいとは思えませんが」

「心にもないことを」

「いえいえ、そのようなことは」

 半笑いで答えてみる。実際、若い男の笑みは自身に不動の自信があるような表情だ。
その堂々とした姿に、老人は満足しているようだった。
老人は眼鏡を指でかけなおして、柔らかい椅子に背中を預けた。その時、眼鏡が日光を反射した。

「どうだね。その…てぃじぇいというのは」

「順調ですよ、不思議なくらいにね」

「利益も相当なものと聞いているが」

「半分ほどは税金にとられますが、利益は…そうですね。兆単位と思っていただければ」

「それは心強いの」

「ええ。もちろん」

それが当たり前のように、若い男は微笑んだ。
老人は、白い髭をあたりながら静かに呟いた。呟いた、といえども若い男に聞こえるようにだが。

「そうか。それならば、よい」

「…何がです?」

 若い男は、訝しげな目で老人を見た。老人は、年配の男特有の笑い方でその視線を吹き飛ばした。

「いやいや、大した事ではないのだよ」

「そんなことを言われたら気になるじゃないですか」

「いやぁ、なんというのかね」

一呼吸置いて、緩んでいた口元が引き締まった。老人の表情には、百戦錬磨の貫禄が滲み出ていた。

「ワシの次の跡継ぎに、と思ったのだがね」

「ハハハ。遠慮しておきますよ」

若い男は遠慮なしに、即答をしてみせる。軽い言葉に、断固とした意味が入っている事は老人にわからないはずもなかった。
老人はいつもどおりの反応だ、といわんばかりに苦笑いをして静かに嘆息した。

「…残念だな。笹岩君」




























第十一話  疑惑



















 ボサボサの髪を振り回しながら、彼は大きな自動ドアの玄関をくぐった。
中に入れば受付に座っている女性達が大きな声で挨拶をするが、彼はまったくの無関心でその場を通り過ぎた。
その場所にいる他の人達は、スーツなどで身を固めているというに彼はよれよれのTシャツとブルージーンズで場違いの雰囲気を出していて
周りから白い眼で観られている。彼はそのことをわかっていたが、気にするのも面倒くさい。そう思って、あえて無視をしていた。
霧島はエレベーターの前に立つと、深く落ち込んだ。今日もエレベーターに乗るのか…と。
仮にも、彼は国家主体の大掛かりなゲームの主任。そして今から行くのはそれの本部。
簡単に地下一階にいけるわけではなく、最上階に行って、そしてまた別のエレベーターに乗り移る必要があるのだ。
深く嘆息して、重い足取りで足を踏み入れた。
ポケットに手を突っ込んで、エレベーターに乗り込む。先客は、一人いた。顔見知りの男だった。
ムースか何かでガチガチに固めた頭で、オールバック。片手に大きな鞄を持ち、もう片手に携帯を持っていた。
彼は一瞬、貧相な姿に顔を顰めたがよくよく観察すると彼も顔見知った男だと気づいたようで、
男は「おっ」と気づいたように手をヒラヒラとさせた。

「あ、おはようございまーす」

「おはよう。霧島君」

「お。新しい立派なスーツっすねー。」

「ああ、これかい?」

 霧島が挨拶した男は、自分のスーツの襟元をめくってブランド名が描いてある刺繍を見せ付けた。
F、と特徴のある刺繍で霧島はその刺繍に見覚えがあった。
イタリアの、FANTASTICというブランド。このビルにも支店はある。有名なブランドメーカーだ。
ウン百万はするのだろう、と霧島は呆れ気味にそれを見た。

「いくらするんすか?ソレ」

値段は聞かずともある程度はわかっていた。だけど、あえて聞いた。
それがこの男には気持ちがよいのだ。

「特注のスーツだからね。600万程度だったかな?」

「ハハ。流石、IT社長は違うんすねー」

「まぁ、ね。という君も、給料貰ってるんだろう?たんまりと」

「そうでもないっすよ」

霧島は嘘をついた。TJという空前絶後のヒット作をだした会社の、しかもそのゲームの責任者。
彼の給料は一億どころではなかった。
だが、ここで下手すればそこの金井の不評を買いかねない。そう思った。

「ところで」

またスーツの襟元を掴んで、乱れを整えた。

「はぁ」

「笹岩クンは最近どうなんだい?」

「ウチの社長っすか」

 これまためんどくさい事を聞いてきたもんだ、と霧島は奥歯で歯軋りをした。
社長の行動は、社員達に筒抜けだが他の人間には口外無用の機密情報なのだ。
彼はそれを承知で聞いている。霧島が笹岩のことをよく思っていないことをしっていたから。

「まぁー、気楽にやってますよぉ。この前なんてご自分でTJに参加したりしてね」

「フン。あの男はいつもそうだ」

 蔑むように、彼はそう吐き捨てた。
霧島の会社の社長である、笹岩は敵が多い。独立独歩で会社を育て上げ、他社からの妨害をものとせず
今やIT関連の業界のトップ。そして、人気商品TJと、彼は王座を不動のものとしている。
そんな彼を妬む人間は少なくなかった。

「いづれはIT業界のトップも私が頂くよ、と伝えておいてくれ」

「あぁ、ええ。了解っす」

 あんたじゃ、あの人の足下にも及ばねぇよ。霧島は哀れな視線で、金井を見た。
彼の業績と実力を見れば、他の会社の社長といえども格差は明らかだ。
嫌いではあるが、笹岩の存在というものは絶対不可欠のものであった。
後、少々の雑談をして、もうすぐ金井の目的の階につくな、と気づく。
ここらで区切りをつけてしまおう。

「ま、頑張ってくださいよ。応援してます」

微笑み、丁度チンッと空いたドアを降りた金井に一言声をかけた。
感情は込めたつもり、だがその感情には空虚という空っぽなものだ。

「ふふふ。君も僕の会社に引き抜こうかな?」

「ははは」

 愛想笑いを(苦笑いを)して、ともかく笑ってみせる。
金井は、出て行くまぎわに「それじゃ、また」と言い残し、ドアも前を横切っていった。
ガァー…という機械音と共に、金井の姿は見えなくなったことを確認して、ボソリと呟いた。

「…冗談じゃねぇっつの」

 誰がお前がいるような二流会社なんかに、そう思わず口に出しそうになった。

(…くだらねぇやつ))

 微妙な苛立ちを感じて、ふと、口の中がむずむずとした。
溜息まじりに、後ろポケットから煙草とライターを取り出して、口にくわえた。
それに火をつけることで、どうにか満足することができた。

(…煙草、やめねぇとなぁ。イライラするたびにこれじゃあ、すぐに肺が死んじまうっつーの)

 煙草をふかして、数分。複雑な経路から、ようやくあと数分で研究室に着く。
長い通勤を終えて、霧島はようやく着くといったふうに微妙に安堵の表情を浮かべた。

 霧島は、再び開いたドアをくぐり暗い室内に足を踏み入れた。
毎度、この暗い空気にはどうかなりそうだ、と霧島はこの部屋に入るたびに思わせられる。
静かで、キーボードを押す音しか聞こえない。広い部屋の割りに、意外と人数は少ないこの部屋。
それでも何故か息が詰まりそうになる。

「おはーっす」

「おはようございます」

帰ってきたのはニ、三人の小さな声。この部屋の住人からアクティブな声色は期待できなさそうだ。
だが、不思議とその言葉には緊張がにじんでいた。

(…?)

疑問に思いながら、霧島もまた、静かに自分の持ち場に向った。
そこで、この緊張感の理由が納得できた。
いりくんだ機器を抜けて、自分の人より大きなパソコンへと向うと、そこにはいつもは目にしない男が
自分の座るはずの椅子に座っていた。

「…笹岩社長。」

「や」

小さく切り返すと、椅子を回転させ彼は霧島に体を向けた。

「どうしたんすか。こんなところで。似合いませんよ?」

「うーん。まぁ、思うところあってな」

「思うところ、っすか」

「まぁねー」

素早く動く片手がキーボードを打ちつけながら、笹岩は霧島に向いていた。
まるでその片手が別の生き物のように思えた霧島は、ディスプレイに視線を上げた。
TJプレイデータのイベント構築の画面。霧島しか知らないパスワードを必要とするページだった。

「…ハッキングっすか。社長」

「だね。こんな簡単なパスワードじゃ駄目だ。もっと複雑にしなきゃ。」

「申し訳ないっす。複雑すぎると覚えにくいんすよね。」

「おいおい。主任。頼むよー?」

霧島は内心、舌打ちを繰り返していた。あんたのスキルがやばすぎるんだよ、と。
パスワードは十文字の不規則でランダムに選んだ文字で、特定するのは全く不可能と考えていたパスワードだったからだ。

「それで…何してるんです?」

「ん?…まぁ、ちょっとしたイベントでも作ろうかと思って」

「イベント、ですか」

また、突発的な行動しやがって、と何度目かわからない舌打ちをした。

「このまんまじゃつまらないじゃん。もっと刺激を与えてやろうと思って…ね」

「…社長」

思わず、口にだしてしまいそうになる。

(神様のつもり、かよ?)

喉の奥に、静かに飲み込んだ。
吐き出したくなるような衝動を抑えて、霧島は溜め込んでいた別の言葉を捜した。

「どんなイベントなんですか?それは」

「ま、見てみな」

ディスプレイを、霧島が見えるほうへと押しやると、笹岩はどかっと椅子にもたれかかる。

「…DIFFERENT WORLD?異なる世界、ですか」

「そう。異なる世界」

「…どういう意味なんですか?」

「自分で考えてみたまえよ」

ククッと、意地悪そうににやける笹岩。

「・・・俺の考えですけど、多分、異なる世界ってのはTJ本体のことを表してるですよね?」

「流石だねぇ。即答だ」

「社長の考えなんてそんなもんでしょう?」

「それもそうだ」

 小さく含み笑ってみせる。
だが霧島は、画面に夢中でそんな様子に気づく間もなかった。
ある程度、ソレに眼を通した後霧島のマウスを握る腕が小刻みに震えだす。

「…なんなんすか。…この企画は…!?」

「何って…何が?」

勢いよく笹岩の首元に掴みかかる。
笹岩は予想通りだ、といわんばかりに淡々とした目つきだ。

「あんた…このゲーム壊す気かよ…!?」

「壊す?この俺が?…はは。冗談だろ?」

「じゃあ…なんなんだよ!」

襟を掴む力がしだいに強まる。
笹岩はその腕を振り解こうともせず、ただ霧島を見つめていた。

「…なんなんだよ!これは!」

室内にいた人間は、声の方向に驚いたように視線を向けた。だがそんな事も気にせずに、襟元に力を注ぐ。
ただ、霧島は途方もない憤りを胸の中に渦巻かせている。
今まで積み上げてきたこのゲームを崩壊するような真似――社長でもさせてやるものか!
その一心で、霧島はディスプレイに手を押さえつけた。

「…この企画参加者全員が敗北した場合、ゲームオーバーになることなく…ゲームの中に永遠に彷徨うことになる…!?」

「そうさ。面白いだろ?」

「あんた…何言ってんだ?」

「…ん?聞こえなかったのか?」

「そんなこと言ってんじゃねぇんだよ…!!頭イカれちまってんじゃねぇのか!?」

「頭がイカれてる?…俺に言ってるのか?」

「当たり前だろう…!?こんな馬鹿みたいなイベント…、国規模の問題になるに決まってんだろ!?」

霧島が掴んだ腕を、笹岩が力強く握り締めた。霧島の腕の皮膚が皺を寄せる。

「問題ない」

一言呟くと、さらに力を加えた。霧島の顔が、苦痛の色を見せる。
だが、笹岩の腕を振り解こうとはせず、痛みに耐えて笹岩の次の言葉を待った。

「人間は本能的に闘争を求めるものだ。倫理的に間違っていたとしても、必ず賛同する。そんな生き物なんだよ。
人間とは、な」

その言葉を聞いた瞬間、霧島は胸の中に憤りの渦が巻いている感覚を鮮明に覚えた。
噴出す感情を抑えて、かすれる様な声で言う。

「そんなモン…ただの妄言だろうが…!」

「妄言?それを裏付ける証拠はあるのか?」

「常識的に考えて、そうだろ!?ありえねぇんだよ、そんなイカれたゲームに賛同するってのは!」

「常識…?ククッ…常識だ?わかっているのか?今、お前はもっとも愚かな言葉を言ったんだぜ?」

「…んだと…!?」

「それなら、その常識ってので考えてその言葉をユーザーは信じると思うのか?
 ユーザーはただ単に企画のサブタイトル…恐怖を煽るだけの言葉と思うだろう。
 それに――」

 霧島は頭に痛みがほとばしっているような感覚に襲われていた。
この男は一体何を言っているのだろう、理解に苦しむ霧島には目眩が続いていた。
震える拳を握り締め、沸き起こる何かを必死に押し止めている。
 笹岩は何を怒っているんだ、といかにも退屈気に椅子にもたれかかっていて静かに霧島を見つめていた。

「――会社を作ったのは誰だ?TJを作ったのは誰だ?再び日本の経済を復活させたのは誰だ?」

「…?」

「―――全部だ。全部俺だという事をわかっていて―――…」

一呼吸置いた。その行動に、霧島は心臓にナイフを刺されたような感覚を感じた。

「常識、という言葉を使っているのか?」

「…何が言いたい」

「常識ってのは、その世界の中心が決めることなんだぜ?」

「…何を言ってんだ」

「俺の言いたいことがわからない?マジか?」

「…」

「俺が常識。言わないでもわかるだろ?」

当然のように、言い放つ。瞳には揺らぎようの無い、何かがあった。
霧島は、本気で言っているのだろうと核心した。

「―――…」

呆れてものが言えない、そんな状態だった。何を根拠に、彼はそんなことを言えるのだろう。
ただの性格破綻者じゃないか、口々にそう何度もいってやりたい。

「まぁ、平和ボケしたお前にはわからないかもだけどな」

けらけらとふざけて笑う笹岩に、霧島の胸中に憎悪が渦巻いているのを確認できた。
いい加減限界という風に、霧島の拳は震えに震え、今にも爆発してしまいそうだ。

笹岩は霧島を一瞥すると、またククッと意地悪そうにニヤリと微笑んだ。

「安心しろ。TJが崩壊するなんてことは俺の計算上0.1%も、ない」

「俺はっ――…!そんなことを言ってるんじゃない――!!」

途切れ途切れにしか出ない言葉。喉を締め付けられているんじゃないかと霧島は錯覚した。




「お前の意志の否応が無く――、祭は始まるぜ。必然的に、な?」





暗く闇が深い室内に、悪魔の笑いが大きく木霊した――

[615]
ロキ - 2006年08月01日 (火) 11時17分









「え?参加者募集…って、参加すんの?」

「もちろん!!」

チームを組んで、数日。
俺たちはある程度、親密さが少しずつ増していっていた。

何故か通常に弾丸が撃てるようになり(たとえば、ガンマンが打つようなのもあれば、
魔法みたいなものを打てるようになったり)通常戦闘も結構、楽になっている。
前みたいな強力な技がでてこないのは残念ではあるが、今の状態のほうが純粋に戦闘を楽しめるので
こちらのほうが嬉しいといえば嬉しい。レベルもそこそこに上がってきていることだし。

彼女もどうやら地がでてきたようで、最初の礼儀正さなど欠片も無い状態となって来ている。
それはそれで寂しいものだが、まぁ仲が良くなったということでまぁいいんじゃないかと思っている。

それで、俺たちは今公園にいるわけだが。
TJの待ち合わせは、絶対ここで。家には押しかけないように。これも心紅との約束だ。
このようにでもしなければ、彼女は家に押しかけ俺の両親に誤解を与えかねない行為を何度もする。
…まぁ、そういう奴だと最近認識して在る程度慣れたが。

「えー…と、なに?内容とか書いてないし…なんだこれ。
 “敗北すれば永遠にこの世界に彷徨うことになるでしょう”?」

「その売り文句がいいでしょ〜!?」

ブランコに座っている心紅。今日は私服だが、この前なんてパジャマでうちに押しかけてきたりもした。
彼女曰く、「突然、TJがしたくなった」だそうだ。

「なんかめっちゃ怪しいんだけど…。これ。」

「臆病ね〜。そんなはずないじゃない。冗談か何かでしょ」

こんな変な冗談を普通するものだろうか。

「まぁ、別にいいんだけどよ」

その言葉に満足したようで、腰に手を当てて満面の笑みでうなずいた。

「じゃ、行きましょうか!」

「…またか?明日でもいいんじゃね?」

俺は気だるそうに、頭を掻いた。その仕草に隠された言葉を彼女は気づいてくれない。
それどころか、彼女は甘い!と叫んで、俺に人差し指を突きつけた。

「思い立ったが吉日!知らないの!?」

「…はぁ〜」

なんだ、この前もあったようなこの状態。デジャブ?

「つーか、これどういうイベントなんだ?内容も書いてねーし」

「行けばわかるでしょ!」

ブランコから飛び降りて、ズボンのお尻の部分をはたいた。ブランコがキコキコと寂しく軋む。

「いやだからそれが不安だっていってんじゃねーの」

「チキンね。そんなんじゃ、探偵になんてなれないよ?」

手に持っていた空の紙パックの野菜ジュースを握りつぶしてゴミ箱へと投げ捨てた。
それはストライクゾーンには入らなかったが、きっと他の誰かが入れてくれるだろう。
…俺は環境にやさしくないか?

「誰も探偵なんかなりたくねーっつの。」

重い腰をゆっくり上げる。最近、心紅につき合わされまくって足がフラフラだ。
心紅は、あんなに毎日はしゃいでいてどうしてこんなに動けるんだろう。
どうしてそんな元気なんだ、と聞くと嬉しいことが一杯あるから、と
彼女は相変わらず元気よく大きな声で答えた。



















第十二話 スタートライン



















「…ん。あ、この前の」

同時刻。聖雫は超衝撃的な出会いにでくわしていた。
彼女は今、別次元の世界にいて、ある程度の事では驚かないだろうというほど、その世界では衝撃を何度も受けていた。
だが、今目の前で起きていることを目視して驚かないほうが可笑しいだろう。
見た目そんなに驚いていなさそうだが、静かに脳内ではあわわわ、とパニクっていたりする。
深呼吸して、体を落ち着ける。息をついたとき、体の緊迫がある程度抜けていったのがわかった。

「あー…えっと、お久しぶり?です。…ゴジラ?さん、でしたっけ?」

「うん、まぁ、ゴジラだけど」

「なんていうか…凄い、です、ね」

「…そう?」

そのゴジラという男は、爬虫類の(某怪獣の)姿をしていて奇抜だったが、驚いているところはそこではなかった。
何人もの瀕死状態の人間を積み重ねて、そのピラミッドの頂点に腰を落ちつけている。
その圧倒的な暴力表現に、彼女は驚いていた。
ただ、驚いているだけで恐怖とかそんなものは不思議と感じなかった。

「えーと…それ、は?」

「…それ?」

「あのぉ…ゴジラさんのお尻に敷かれてるヤツ…です、けど」

「あぁ」

ゴジラは、これか、と頂点にいる男の頭を叩いた。

「なーんか、ふと気づいたらこうなってたんだよねー」

「そ、そーですか」

凄いですね、と言おうと思ってはみたが、そんなことを言うのもおかしなことだな。と思って彼女は寸でのところでとめてみせた。

「そういえば、君の名前なんだっけ?俺の名前は知ってるみたいだけど」

「えーと、あっ、はい。聖雫、っていいます」

「聖雫…へぇ…聖雫」

それを聞くと、彼は心ここにあらずといった風に遠くを見つめた。
何か…あるのだろうか、と聖雫は少しの不安感を抱きつつゴジラに声をかけた。

「そ…そうですけど…な、なにか?」

「いや、別に」

そういうと、ゴジラは煙草を取り出した。この世界にそれがあるのか甚だ疑問のマイルドエイトの黄色。
火をつけてグレーの煙がゴジラの口から噴き出る。

「煙草、吸うんですね」

「んー…消そうか」

「いやっ…あのー…似合わないなぁ…と思って」

「そう?」

ちらりとほんの一瞬聖雫を見て、また遠くを見つめた。
その“遠く”に、向かってグレーの煙は静かに、包み込むように消え去った。

「現実では吸わないんだけど」

もう一度、煙を吐く。
ゆっくりと――何かを意識したように、それは、また空へと吐き出される。
今度は、その煙が何か獰猛なものに見えて、聖雫は少し身震いをした。

「落ち着かないのさ。こっちでは吸ってないとね」

そ、そうですかと、また、素っ頓狂な声を出すしかなかった。

(駄目だ。この人は…この人はマイペースすぎるよ…よくわかんない…)

とは思うものの、何故か聖雫はこの場を逃げることができずいた。
できればもう早くどこかに行きたい、そう思うのだけど彼のマイペースにどこか巻き込まれている節がある。
(っていうか、この雰囲気で無碍に逃げられない!)
もう、いいやと聖雫はその場に静かに腰を下ろした。

(どうせならここで休憩してよう…かな?)

空を見上げてみた。空は、驚くほど快晴だった。
雲ひとつない、快晴。今日は良い夜になるだろう。そう、呉爾羅は予感していた。














































「ドゥハハハハハ!!!」

「誰だお前」

「小暮閣下の真似」

「俺の前でそんな愚劣なマネするんじゃねぇ」

「そんなこと言うなよぉ。俺だってよ、雰囲気明るくするためにやったんだぜ?」

「見ろ。お前のモノマネを聞いたあの秀一の暗い顔を」

「あれは朝からずっとじゃん!」

彼らはいたって普通、いつもと同じようにTJのダンジョンをクリアしていた。
今現在巨大な平原の中心にある人気のない休憩所に、彼らはいる。
そこでは、無駄に明るい萩野目、ツッコミ役の神人、そしてそれを傍観する秀一。
その中の秀一は何故か一人、椅子にうな垂れて青い顔をしていた。

「秀一…どうしたんだ?っていうか秀一こんな顔するんだな。冷血かと思ってたけど」

秀一の顔を覗き込むと、なるほど、やっぱり青いな、と萩野目は再確認した。
確かに、いつも冷静な秀一と違う、悲痛な症状だ。

「余計なこというな。アホ萩野目。」

「なっ…誰がアホだアホ神人!」

「あぁ?お前が俺に口答えなんか百億万年はえぇんだよ。あめぇんだよボケェ!」

「五月蝿い…黙ってろ…」

今にも消え去りそうなくらい声。秀一の声はただでさえ大きくはないためそれはほんとうに微小なものだった。

「なー、どうしたんだよ?」

「…悪寒が続くんだ…朝からずっとだ。」

蒼白の顔を手の平に埋めて、秀一は言った。
神人は、その秀一をものめずらしそうに見ていた。こんな秀一を見るのは、始めてだ。と。

「なんか風邪っぽくはないけど…なんだろうな。なぁ神人」

「俺に振るな。」

とは言うものの、なんだか何かに怯えているようだ。
そう言おうと思ったが、わざわざそんなこと言って士気を下げることもないだろう。
それに秀一に限ってそんな、怯えるなんてことはありえない。

「ま、あれだ。もう少ししたらイベントが始まる。それまで頑張ろうぜ」

「…わかってる。このイベントは逃さないさ…」

「それでいい。まぁ、お前のためにイベント逃すなんて有り得ないけどな」

「…お前はそういう奴だよ」

秀一は軽く口の端を歪ませると、またうな垂れた。
心の中で、駄目だ。と秀一は呟いた。正確には、秀一の中の何かが駄目だ、と秀一に言っているようなもの。
秀一は本能的に、何かに、駄目だ。そう、何度も諭されている気分だった。
(一体何が駄目なんだ)
何度そう問いかけても、返事は返ってくることはない。
いつまでも、手の届かないものを追いかけている気分だった。

(この悪寒はなんなんだ…)

背筋の寒気は、未だ取れずに秀一に纏わりついていた。

―――風邪なんだ、ただの風邪だ

滅多に感じない不安をかき消すように、そう何度も頭の中で呟いた。































暗闇の室内。モニターの光が、笹岩の顔を写した。
モニターには、Shadow of Phantomと映し出されていて、それは怪しくうごめいていた。
しばらくキーボードをたたき、STARTの文字が現れるのを確認するとEnterキーの上に指を置いた。
余韻を楽しむかのように、肩を大きく回して背伸びをしてみせると手に持ったコーヒーを一口、
口に含むとニヤリと笑った。



「準備は整った。DIFFERENT WORLD、スタートだ」




―――渦巻くは狂気、木霊するのは悪魔の囁き

   闘争の火種は、撒き散らされた―――










To Be Continued.......

[621]
玉賀必人 - 2006年08月07日 (月) 19時09分

↑は間違いです・・・
ロキ様申し訳ありません


名前【竹内 豪】 
年齢【25  】
職業【侍  】
属性【地 】
性格【いたって冷静、追い詰められるとパワーアップする】
*性格は詳しく。
経験地【パワー20スピード13ガード20テクニック8知識8】
その他【凄まじい程の威圧感とパワーが自慢
追い詰められるとパワーとスピードが爆発的に上がる
口癖が『肩慣らしにもならぬわ!!!!』です】


ストーリーはお任せです
お願いします

口癖からして25は無いだろうか
まぁいいか

[622]
ミヤ - 2006年08月07日 (月) 20時41分

>玉賀さん
能力値の配分は5つの数値の合計が20となるように設定するように書いてあります。もう少し説明をしっかりと読むようにしましょう。他人の方の小説に書き込むのならそれなりの責任も伴います。

あと間違ったのなら削除キーにパスワードを入れておくと編集・削除することも出来ます。書き込むときはあらかじめパスワードを入れておくとよいです。

[623]
玉賀必人 - 2006年08月07日 (月) 21時11分


名前【竹内 豪】 
年齢【25  】
職業【侍  】
属性【地  】
性格【いたって冷静、追い詰められるとパワーアップする】
*性格は詳しく。
経験地【パワー9スピード1ガード8テクニック1知識1】
その他【スピードの低さはパワーで補える?
凄まじい程の威圧感とパワーが自慢
追い詰められるとパワーとスピードが爆発的に上がる
口癖が『肩慣らしにもならぬわ!!!!』です】
特殊能力【パワースピードガードが爆発的に上がる
特殊能力名は『戦極ドライブ』】

ストーリーはお任せです

削除キーの使い方が分からないんです
[621]も消してもらわなければ

[631]
ロキ - 2006年08月10日 (木) 11時41分

PLAYERS DATE




NAME:HIROKI KUSANAGI

HN:LOKI
 
JOB :Evilgun User

RANK:E

ATTRIBUTE:DARK

EXPERIENCE: UNKNOWN UNKNOWN UNKNOWN UNKNOWN UNKNOWN

SEX:MALE

AGE:18 years




NAME:

HN:

JOB :

RANK:

ATTRIBUTE:

EXPERIENCE:POWER SPEED  GUARD  TECHNIQUE  KNOWLEDGE 

SEX:

AGE:



NAME:TAKU MISAWA

HN:HANIWA

JOB :KNIGHT

RANK:C

ATTRIBUTE:SOLDIER

EXPERIENCE:POWER C SPEED B GUARD G TECHNIQUE D KNOWLEDGE D

SEX:MALE

AGE:20 years



NAME:NO DATE

HN:TATHUYA

JOB :INFORMATION SPECIALIST

RANK:D

ATTRIBUTE:WATER&FRAME

EXPERIENCE:POWER G SPEED F GUARD G TECHNIQUE D KNOWLEDGE A+

SEX:MALE

AGE:13 years



NAME:KENTA HASE

HN:KENTA

JOB :2 sword style SAMURAI

RANK:C

ATTRIBUTE:FRAME

EXPERIENCE:POWER E SPEED E GUARD F TECHNIQUE C KNOWLEDGE A´ 

SEX:MALE

AGE:19 years




NAME:NO DATE

HN:TAKE

JOB :NINJYA

RANK:A

ATTRIBUTE:DARK

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SEX:MALE

AGE:24 years





NAME:HIDEKAZU MATHUI

HN:MATHUI

JOB :PHOENIX KNIGHT

RANK:S

ATTRIBUTE:LIGHT

EXPERIENCE:POWER S SPEED S GUARD S TECHNIQUE S KNOWLEDGE S

SEX:MALE

AGE:17 years



NAME:KAMIHITO KANZAKI

HN:KAMIHITO

JOB :DRAGON KNIGHT

RANK:A+

ATTRIBUTE:WIND&DARK

EXPERIENCE:POWER S SPEED D GUARD D TECHNIQUE S KNOWLEDGE A+ 

SEX:MALE

AGE:17 years



NAME:INSUKE OGINOME

HN:OGINOME

JOB :SHOOTER

RANK:A+

ATTRIBUTE:SOIL

EXPERIENCE:POWER G SPEED B GUARD A+ TECHNIQUE C+ KNOWLEDGEC+ 

SEX:MALE

AGE:17 years




NAME:SHINKU SHINKAWA

HN:SHINKU

JOB :HIGH SHOOL STUDENT

RANK:E

ATTRIBUTE:DETECTIVE

EXPERIENCE:POWER E SPEED B´ GUARD E TECHNIQUE F KNOWLEDGEE 

SEX:Woman

AGE:17 years




NAME:NO DATE

HN:SEINA

JOB :HU-SUI SOLDEIR

RANK:D

ATTRIBUTE:WATER

EXPERIENCE:POWER G SPEED B GUARD F TECHNIQUE D KNOWLEDGE E 

SEX:Woman

AGE:12 years


NAME:NO DATE

HN:GOJIRA

JOB :GOJIRA

RANK:A

ATTRIBUTE:DRAGON&WATER&FARAME 

EXPERIENCE:POWER S SPEED F GUARD A TECHNIQUE E KNOWLEDGE E 

SEX:MALE

AGE:MALE



NAME:NO DATE

HN:GENE-

JOB :Boss

RANK:UNKNOWN

ATTRIBUTE:NIGHT

EXPERIENCE:UNKNOWN UNKNOWN UNKNOWN UNKNOWN UNKNOWN

SEX:UNKNOWN

AGE:UNKNOWN













*注意*物語の進行、成長度を考慮しての能力値です

[655]
ロキ - 2006年08月23日 (水) 14時27分

 ある湿地。肉が裂ける音と、剣の金属音だけがそこに響いていた。

 はたから見れば、それは恐ろしい残虐行為。そこは殺戮の現場だった。
だがこの世界でそれは、まさに当たり前の光景でしかない。
そんな事は今や誰でも常識の範囲内で、異論を唱えるものなど誰もいなかった。

「うはははっ!マジ余裕!」

刀身が紅に染まる。
異形の物体達は、尽く地に伏せて息絶えていた。ゆうに50はいるだろうか。

「お前調子乗りすぎじゃね?」

 男の背中をポンと叩いて、苦笑いした風にもう一人はおどけて見せた。

「そんなこといって、お前も殺しすぎだろ」

「あ、ばれた?」

 苦笑いをした男の背にも血の塊は、いた。
男の倍に、血の池が広がり無残に転がっているソレは生々しいものだった。
小さく悲鳴を上げているモノもいれば、静かに憎悪を彼らに向けているモノもある。
異臭やら、血の匂いやらが鼻を劈く。
だが、それすら彼らにとっては日常風景と同じようなものだ。気になるようなものではなかった。

「これなんかリアルでもやっちゃいそうな予感」

「うわっ お前それ犯罪だろ」

「流石にやらないっての」

「知ってるよ」

死体を前にして、2人して笑い倒している彼らを一般の人がどう思うのかと考えてしまうほどその光景は異質すぎた。
ふと、気づいたように彼らは周りを見た。何処か、雰囲気が違う。

「…なんか…雰囲気ちがくね?」

「あ…あぁ…」

 彼らは直感した。今からここから逃げなければ、大変なことになる―――

「ちょ…もう終るか」

「だな…って、おい、あれ見ろ!」

 暗い霧が、死体から浮き出る。
その霧は、男たちに向かって縛りこむように彼らの周りを動いた。
血がざわめき、憎しみが渦巻き、死者の念が、彼を包む。

「なっ…なんだよ…これ…!」

「霧…これ…霧か…!?」

「って…身体が…」

「きっきっき…消え…る!?」





その時、暗闇は舞い降りた






























第十三話 舞い堕ちた黒羽





























「ね、ね。なんかおかしくない?」

 ちょっと考えてみて、何が?と俺は答えた。
心紅は深く考えた様子で、顎に握りこぶしをあてがい探偵らしい風貌でいた。

 俺たちは街中でカップルのように、ギルドで休憩をしていた。
実際はカップルとかそんなのでは全くないのだけれど、他人から見たらそんな風なのだろう。
第一、男女のパーティなんてそんな事しかないだろうけど。 
周りの視線は気になりはしたが、TJ内にもそんなパーティいくらでもいる。いちいち気にしていたら負けだ。

「とくに変わったことなんて…ない、けど」

何がなんだかよくわからず、あやふやな答えを言う。我ながらアホらしい返答だ。

「いや、絶対なんかおかしいよ」

「いや…だから何が」

「わかんない?」

「全然」

周りを見渡してみた。変化はない。太陽が照って、街はコンピューターの町人でにぎわっている。
空を見た。雲ひとつない快晴だ。気分がいい。
どこがおかしいものか。いつもとかわらないTJの世界だ。

「どこがおかしいのかさっぱりわからん」

「観察眼、ないね」

はぁ、と呆れ顔で俺を見つめる。そんな表情で俺を見るな。

「うっせぇっての。…で、どこがおかしいって?」

「周り見てみなよ」

一度見たっての。そう思いながらもう一度確認する。違和感一つ感じない。

「だっからー…どこがおかしいんだって!!」

「人、いないじゃん」

人、いない。二つの単語が俺の脳内に積み木のように積みあがった。
ああ。そういえば。人いないな。
けれども、違和感というまではいかない。

「今日はたまたまいないだけかもしんないじゃん?気にすることねーだろ」

キッと、心紅は俺を睨みつけた。えっ、俺なんか言った?

「弘毅アホじゃない?ここ街じゃん。人少ないはずないでしょー。ユーザーは100万人以上いるんだよ?」

「アホとはなんだ。アホとは。…まぁ、そう言われればそうだけど…」

「でしょ?こんなに人数少ないなんてありえないって…あっ」

心紅の視線の先には慌しく駆け回っている男たちがいた。
彼らの表情は強張っており、俺たちには目もくれず何処かへ走りさっていった。

「あ、もしかしてイベントかな?」

「それにしては表情が変だったけど…」

「もしかしてもう始まってるんじゃない!?」

「そうかもなぁ」

すると、彼女は俺の腕を引いて男たちが走っていった方向へと駆け出した。

「ちょっ、どした!?」

「早く行かなきゃヤバイよ!終るかもしれない!」

足がもつれ気味になって、こけそうになるがなんとか耐えて見せる。
―――嗚呼、また振り回されてるよ…情けな…俺…












「えーと…ここ、何処だろ?」

「・・・」

「もしかして…迷った?」

「もしかして、じゃねぇだろ」

アホじゃないのか、と言ってやりたい。アホじゃないのか。
だいたいおかしいと思ったんだ。追いかけてた奴を追いかけようとして、正反対の場所に行くし、人っ子一人いやしねぇし。

「人影も見あたらねーし、こりゃ完璧だ」

俺の言葉に、心紅はふむと親指と人差し指の間に顎を挟んだ。

「やるわね…あの人。私の尾行を巻くなんて」

それはギャグで言っているのか!?とつっこんでやりたい。やりたいが…無駄だろうな。この女には。
心紅は、焦りながら周りを見渡しているがいくら探しても人がいる気配はない。
恐らく、いや絶対この辺りでイベントとやらはないだろう。

「元の場所、戻るか」

「えー?この先進めば絶対あるよー?」

「それはギャグで言ってんのか?」

あ、言っちまった。

「なにソレどういう意味ー!?」

「そういう意味ですが、何か?」

こんな他愛もない会話の間にもイベントは進んでいるんだろうな、と思いつつそれに気づかない心紅には言わないでおいた。
ぶっちゃけ怖いから。イベント。ぜってぇ強いボスとかいるし。

「もう帰ろうぜ?誰もいねーし、モンスターも見あたんねぇじゃん?」

「情けないわね!もっと根性いれて捜すよ!」








































弘毅達の会話の、約一時間前。郊外に人が何百人も集まっていた。
一人の男を囲む形で、その様子はまるでリンチ。これがもし現実であるなら、どうほど酷い惨状となるだろうか。

「んだよ。こいつ倒すだけでSランクになれるわけ?」

「そう聞いたけど…なんか嘘っぽくね?」

「だよなぁー」

「ありえねーありえねー」

「なに?デマかよ。イベントって」

「いや、それはありえないっしょ?公式サイトに載ってたわけだし…」

「それ自体が壮大な釣りだったりして」

「それだったら俺は訴えるぞ」

「勝手にしろよ」

何人もの人間が、一人を囲みそれを観察している。
その一人は、彼らが想像としていたモノと正反対で獰猛な素振りなど全くなかった。
それは黒く渦巻いた霧のようなものに包まれ、微動だにしない薄気味悪い男だ。
周りはその男を訝しげに、そして悪態をつきながらそれの出方を待っているのだが、彼此1時間。
男は動く様子など全くなかった。

周りの人間の一人が、小さく呟いた。

「なぁ…とりあえずよぉ。こいつ殺せば…こいつを殺した内の一人が…Sランクになるんだろ…?」

隣にいた男は、自信はなさげだが小さくうなずく。表情は、欲望に支配された醜悪な顔だ。

「なら…さっさと殺っといたほうがいいんじゃねぇか…?」

「で…でも、もしすげぇ強かったらどうすんだ?出方を待ってからのほうが…」

「ばっか。それで弱かったらどうすんだ。手柄横取りされちまうだろうが」

「よ…よし。行くか…?」

「おう!いくぜ!」

人ごみの中から、2人が急に飛び出した。それに呼応したように中心の男に向かって他の人間も飛び出した。
飛び出した瞬間に武器を取り出し、矛先を男に向ける!

「SランクGETぉぉぉぉぉ!!!」

刃を振り上げて、男の顔面に滑らせる!

「しゃあぁぁっぁぁぁぁぁl!!…ってあれ?」

しゅううう…と音をたてて、男は消滅した。1回の攻撃で、さほどダメージもないであろうその攻撃で。
そんな敵がボスであるのだろうか。そこにいる全員は思った。

「なんつーか…あっけなくね?」

「お…おう」

「俺…これでSランク?」

「いや、ないと思うけどよ…」

―――刹那、その場にいた人間達の背中に悪寒が駆け巡った。

「なっ…んだ?この寒気…」

「気味悪ぃ…!」

男は、ちょうど後ろの、振り向いたら丁度真正面になるだろうその場所に何かがいるんじゃないか、という不安が頭をめぐった。
不気味な空気と、威圧。それだけでも、彼を不安にさせるには十分な要素だった。
喉に溜まった唾液が通る。毛穴から汗が一斉に噴き出た。

「に」

げようぜ、その続きを言おうと彼は口を開いた。
だが、その言葉は口内に置き去りにされたまま消え去る。

いや―――

男の存在、そのものが、ゆっくりと、激しく、一度に、








「―――闇蛍―――」









消え去るのは、それの瞬間の後だった















To Be Continued.......!

[662]
玉賀必人 - 2006年08月28日 (月) 00時48分

追加投稿

名前【山崎 拓矢】 
年齢【12】
職業【スナイパー】
属性【雲 】
性格【鹿谷と同じチームの援護約、ボケようと面白い事を言うが鹿谷に「ばっかじゃねぇの?!」と言われ落ち込む事もしばしば、射撃は正確で近距離に持ち込まれると隠し武器等を使う
全然落ち着けない性格で他の二人に殴られる事もある】
*性格は詳しく。
経験地【パワー1スピード4ガード3テクニック8知識4】
その他【フィールドにあわせて隠れて狙撃ができる 
特殊能力・相手の特殊能力をそのまんま真似する      】

名前【久保田 大樹】 
年齢【12】
職業【死神】
属性【闇】
性格【鹿谷と同じチームの特攻役
職業は死神だがやはり笑い系、3人でギルドに行ってお笑い会議をすることもある、ツッコミ兼ボケの大変な役
やはり落ち着けなくそこまでうるさくは無いが「お前もじゃん」と言い返されるが適当に殴って終わらせることが多い
はっきり言うと勉強が出来ない    】
*性格は詳しく。
経験地【パワー2スピード7ガード3テクニック7知識1】
その他【特殊能力・相手を攻撃した後ライフを吸収する(自動)】

名前【青木 拓都】 
年齢【12】
職業【司令塔】
属性【雷】
性格【鹿谷と同じチームの司令塔、4人の中で鹿谷と青木しか勉強は出来ない、山崎も少しできるが久保田は馬鹿に等しい
笑い系なのは定説であり青木も例外ではない
司令塔としての実力は十分でパワーの低さに困ってる
彼は戦闘はせん!!!!と言っていた】
*性格は詳しく。
経験地【パワー1スピード4ガード2テクニック3知識10】
その他【特殊能力・敵がいないと使用可能,どんな場所でも基地が出来る】
鹿谷と同じで御願いします〜
ストーリはー鹿谷と同じで(笑)

[663]
ロキ - 2006年08月28日 (月) 11時59分

え〜と…その投稿されたキャラっていうのは、玉賀さんの友人の方達を想定して作られているんですか?

[665]
玉賀必人 - 2006年08月28日 (月) 18時36分

はい、許可も一応取りましたが
友人からの要望の職業にしました

[666]
ロキ - 2006年08月28日 (月) 19時05分

え〜と…ですね。
複数投稿になりますので、キャラの扱いは他キャラと比べ扱いがやや粗末になってしまう可能性があるのでご理解のほどをお願いしますね。

[667]
玉賀必人 - 2006年08月28日 (月) 19時14分

やられキャラは慣れてるでしょう
そう伝えておきます
ご迷惑をかけました

[731]
ロキ - 2006年10月13日 (金) 18時35分

気が付けば私は、道端で睡眠を貪っていたようだ。
ゴジラさんは静かに上で、煙草を吸っていた。煙草の吸殻を座っている男の口に入れているところから、
彼の極めて高い残虐性。もしくはドSの資質が見てとられる。
むしろ、そんなプレイをしているゴジラさんにある意味の尊敬を覚える。

 私が起きたのに気づいたのだろうか。ゴジラさんは私を見た。
煙草を座っている男の頬に擦りつけると、ゴジラさんはその山から降りて私の下へと歩みをよせた。

「おはよう」

「おっ…おはようございますっ」

「よく寝たね」

「え…そ、そうですか?」

「んーや、そうでもないか」

な…なんなんだろう?この人は。

「えーと…何を言おうとしてたんだっけ…」

彼はゆっくりと地面に腰を落ち着かせて、そうだと小さく溢した。

「なんつーかね。今日はあれだ。」

ゴジラさんは髪の毛をくしゃくしゃと鷲掴みにすると、また少し考える素振りをした。
そして、ああ、と小さく呟いてもう一度聖雫に視線を戻す。

「イベント?みたいなのがあるらしくてねー」

「はぁ」

「まぁ、あれだ。そろそろなんか来るからさ」

「…何か、くる?」

「君も、逃げたほうがいいと思うよ」

「は…はぁ…」

 ゴジラさんの目は虚ろだ。まるで、世界に呆れかえっている様に目に光がない。
私は立ち上がろうと、体を起き上がらせた。
…体がだるい。寝た後特有の気だるさが体に残っている。

「あの…一つ聞いていいですか?」

「…何?」

「…どうして、何か来る、ってわかったんですか…?」

「…なんとなく、かな」

「なんとなく、ですか」

 私は、その後に続く言葉を見つけることは出来なかった。
ゴジラさんのあまりに興味のなさげなその視線に、私は耐え切ることができなかったのだ。
いや、むしろ私の質問にゴジラさんが耐えることができるのだろうかと、不安になるところもあった。
今にもゴジラさんは死んでしまいそうな、そんな生気の無さだったからだ。

 会話が途切れ、私はゴジラさんに一礼するとくるりと半回転し近くの町へと歩き出した。
まだ自分はそんなに強くない、イベントというものに参加するのは得策じゃないだろう。

「…か…た」

「…え?」

ふと、後ろから小さなボヤキ声。
気になり、私はもう一度ゴジラさんを見た。

「どうしたんですか?」

「…なにか、来た」

ゴジラさんの言葉に、私は周囲を見回した。人気はない。

「人はいない…みたいですけど…」

「…いや、来るよ」

――気配がした。先ほどまで無かった“人の気配”だ。

「…っと…あれ。やっぱあいつじゃん」

 微妙に聞いた事がある声。脳の片隅に、この声は残っていた。
声の発生源を探そうと、その声の方向を見る。
黒いコートのようなものを羽織っている男と、見覚えのある女のカップル。

「…あ…ホントだ!聖雫!」

「…誰?」

「えー!?覚えてない!?」

いや…見覚えは、あることはある。けれども、その記憶はおぼろげだ。
…赤髪に、この奇抜に見える探偵のような服…
確かに、確かに見たことはあるのだ。

「ホラ!私!」

フラッシュバック。ああ、この人は―――。

「…心紅?あの時の…?」

「そう、あの時の!」

頭の上の電球が現れたようだった。
私の言葉を聞いた彼女は、とても嬉しそうに満面の笑みを見せた。

「…あの時の、オバサンかぁ」

「おばさん違う!」

「まぁまぁ、そう怒るなって!」

 心紅の隣にいた男が、彼女を宥める。手馴れているようだ。
しかし、私が彼女等とであった時というのはまだ三人とも初対面だったはずだ。
それが今や、2人でパーティを組んでいるとは…

「…もしかして、2人。付き合ってるの?」

 …どうにも私は、爆弾に火をつけたようだ。
心紅の顔が見る見るうちに真っ赤になっていく。隣の男はポカーンと、私を見ていた。


「そんなわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


心紅の声が、平原に木霊した。
























第十四話 ACTION1






















「うんうん。なるほどね」

 心紅の必死の弁解と、弘毅のもはやどうでもいいような弁解の板ばさみにされ、ようやく私は板ばさみから解放された。
未だ心紅の顔は紅潮している。彼女はこういう話に慣れていないのだろうか。

「でもなんで、それで弘毅とチーム組むのかわかんないなぁ。普通、女の子とかと組むでしょ?」

「だって…友達にTJしてる人なんて滅多にいないし…」

「へぇー。そういうことってあるんだな」

「…どういうこと?」

「今や、日本の人口の100人に1人はユーザー登録してるらしいし…そんなの珍しいんじゃないか?」

そんなの初耳だ。まぁ、確かにTJが置いてあるゲーセンではどこも盛況しているし、不思議ではないかもしれない。
8歳ぐらいの女子から80歳ほどの老人までもがこのゲームをプレイしているということだし。

「んまぁ…それはどうでもいいんだけどよ」

「何?」

「あの人は誰なんだ?」

弘毅が指差した先には、当然というようにゴジラさんがいた。
ゴジラさんはまるで、私達がいないかのように静かに1人で地べたに座っていた。

「えーっと…なんかちょっとしたきっかけでお知り合いになった人」

「…お前あれだぞ。…体は大事にしろよ?」

「…うっさいな!この変態!そんなことするわけないでしょ!」

「おま…っ!心配してやったのになんてこと言うんだよ!」

「それは心配って言わずにセクハラっていうの!」

「…ぐ…ぐぅ…」

 しかし、どうしたのだろう。
ゴジラさんは先ほどから微動だにしない。本当に、私達という存在を感じていないかのようだ。
いくら弘毅や私が騒いでいても、彼は全く気に留めていないという感じだ。

「で…あの人はなんなの?」

「え?」

心紅がゴジラさんと山積みにされている人間達の山を交互に見ていた。
なるほど。あれを忘れていた。

「あー…。よくわからないけど…そんな感じ。」

心紅は一瞬戸惑ったような顔をしたが、もう一度ゴジラさんと山を見ると、深くうなずいた。

「なるほど。そんな感じね」

「えっとね。名前は、ゴジラっていうんだって。TJのレベルも高いみたい。」

「へぇ…ぜひ一戦交えたいな」

「やめといたほうがいいよ。あんたじゃ瞬殺だろうし」

「んだこの糞餓鬼。やんのかコラ?」

「TJじゃあんたに負けないよぉ?あんたランク何?」

「Eだよ。なんか文句あんのか?」

「E…しょぼっ」

「上等だこらぁぁぁ!!血ぃ見せてやんよぉぉぉおべし!?」

バキッ、殴打された音が私の目の前の男から発生した。

「小学生相手にムキになんないの!馬鹿じゃない!?」

「…自分だって追い掛け回してたくせによ」

「あれは年齢知らなかったから…」

「無知っていうのはなんでも許されるのかー?横暴だー」

2人の喧嘩を尻目に、私は疑問に思っていたことを考えていた。


――何故、このように人気が少ないのだろう


ありえない。五分に一度は人が行き交うこのステージ。このように人気が少ないはずがない。
まるで、本当に存在しないかのように――…

「おい」

ゴジラさんの低い声が、辺り一面に鳴った。

「少し黙るんだ」

 シン…先ほどまで騒ぎ立てていた二人が、急に静かになってしまう。
ゴジラさんの言葉には何か、鬼気迫るものが感じ取れた。
静かに腰を上げて、ゴジラさんは何かを待ち構えているかのように身構える。

 弘毅たちは何がなんだかわからない様子で、ゴジラさんを見ている。いや、実際私も何がなんだか、という感じなのだが。


 沈黙が、続く。


「…おい。一体どうしたんだよ」

 弘毅が、やっとの思いで口を開けた。重苦しい空気の中、喋るという行為にいたるまで大変だったのではないだろうか。

「…」

ゴジラさんが喋る気配は一向にない。まるで無我の境地に達しているかのように、彼の眼は遠くを見ていた。
う、弘毅が一瞬呻き声をだした。さっきも言ったが、それほどゴジラさんは鬼気迫っている。





――木々がざわめく。


 広い平原の先から、何かに、息を潜めている悪魔に、静かに、恐れを抱いたような自然達。

恐れが、風に乗り私達に伝わる。

…どうした…ことだろう。何かが…何かを感じただけで、この世界の光が完全に閉じられてしまったように…

暗闇が、私達を包む…。




 足が、すくんで動かない。何かが、確実に迫っているのに。足音もなく、迫ってきているのに、逃げなければいけないのに、足が、動かない。
ヒタ、ヒタ。音もなく、私に恐怖が近づく。

きっと、きっと、弘毅も心紅も、同じ思いをしているはず――。


「来たか。待ちかねたぜ」


ゴジラさんの声が、静寂の中に響いた。


目の前に存在しないものに向かって、ゴジラさんは呟いた。


「俺は…この瞬間を待ってた…」


 刹那、風は私を薙ぎ倒すかのように吹き荒れた。
周りの木々が撓り、草は風に流され、それはあたかも台風のようにその中心を目に、暴力的に荒れた。
思わず、縮こまっていたはずの腕が目を隠した。砂埃が酷い。

 台風の眼は、暗闇に閉じ込められ、球体の形をしている。
その球体は生きているかのように、鼓動しており、その鼓動に呼応して風が吹き荒れる。











そして、暗闇は現世に姿を現した。










「…なっかなか、気合の入ったヤツだな。あんた」


















To Be Continued.......

[737]
ロキ - 2006年10月21日 (土) 19時37分

 静かな威圧感が、2人の間で激突する。
闘争の空気が場を支配し、力なきものはその場に立ち竦んだ。
今、この場に存在しえる生物は、2人だけ。

 2人は、初対面であるにもかかわらず淡々と会話を続けた。

「そうか?自分では…冷静に…やってるつもりなんだがな」

「いやいや。アンタほど“空気読める”ヤツが、俺に啖呵切れるなんて。やるねぇ」

「…お前、一体なんなんだ?」

「お前ぇ…?俺はお前っていう名前じゃないぜ。これでも一応、幻影っていう名がついてんだからよ?」

ゴジラは、不愉快そうに舌打ちをする。

「…OK。すまない。言い直そう。幻影さんよ。―――お前、一体なんなんだ?」

 ふふん、と幻影が鼻で笑う。ゴジラはそれにピクンと目を鋭くさせたが、何も言わずにいた。
幻影は、自分の眉間に人差し指を当てて不気味に笑い始めた。

「…ククッ…そんなことはよ。聞かなくてもわかってるんじゃないの…?」

 周囲にいる人間、弘毅や聖雫、心紅は全くもって今の状況を理解できなかった。
まるで2人が、今まで知り合いだったかのように、まるで運命によって2人をあわせたかのように、2人は意思疎通を可能としているからだ。

「―――化け物、だろ?」

今まで、いの一番に言いたかった。そういわんばかりに、声に力が入っていた。

「違うとは言わせねぇぜ。幻影」

「OKOK。いいぜ。正解。大正解。ベリィィィィグッド!」

ぱち、ぱち、ぱち。小さな拍手が、沈黙に響いた。そしてにやけた、不気味な薄笑いで幻影はゴジラに言った。

「それで?どうする気だよ」

「…どうする、だと?」

「おう。どうする気だよ」

 ゴジラは、拳に力を入れた。筋肉が強張る。

「お前も、俺と殺る気なんだろ?わかってんだぜ。お前のその気合の入りっぷりでな?」

「は…ハハ…は…ははははは!!」

突然の笑い声。今までの閑黙が嘘のように、ゴジラは声を上げて笑った。
いつまでも、いつまでも、その声が途切れるまで、ゴジラは笑った。
口元が歪み、笑みが表情に表れて、もう何かが吹っ切れたように。
 そして、笑い声は止んだ。

「はは…はっ……はっ…!」

息切れをしながらも、彼の表情笑みが消えた。

「ハハッ!待ったぜ…TJを始めてから…感じたこの“俺と似たこの感じ”…!」

拳を自分の顔面の前にやり、さらに力を込める。








「ずっと…待ってた…!」










 ドッ…―――!!












「…へぇ?中々じゃんよ。バッチコイだぜ」

















鬼神の心臓が、鼓動を始めた。




















第十五話 待望
























「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

幻影へ一直線の突進!右手から大きく振りかぶった拳が幻影を襲う!

バチィッ!

幻影の掌に押さえ込まれたのを感じた瞬間、右から回し蹴りを繰り出す!

「やるねぇ!」

低くしゃがみ、回し蹴りを回避したと同時に鳩尾に入れ込む――が、ゴジラが肘で叩き落す。
ゴジラが正面蹴りを放つと、幻影もその蹴りに反応したように入れ込む!
2人の蹴りが重なり合い、衝撃で2人とも宙に浮かぶ――!

ズザァッ…!

砂塵が、舞う。

「ククッ…確かにいいが、お前そりゃ人間用の闘い方だろ?」

「ハッ…そりゃそうだ!化け物のあんたにこんなんで敵うはずがねぇ!」

 ぶぅ…ん、鈍い音を放ちゴジラの体全体が赤い膜のようなものに覆われた。
体内放射。ゴジラの肉体に、自らの熱線をめぐらせて攻撃するものだ。

「十万度の灼熱だ。通常のプレイヤーにとっては一撃必殺の技。…あんたなら、どうだ?」

「…さぁ?どうだろ?」

「…跡形もなく、焼き尽くしてやるよ」

「お。いいね。楽しみだ」

「余裕ぶっこいてんのも、今のうちだぜ?」

 拳を、突き出した。その拳は濃い赤色をし、澱んでいた。

「いくぜ。ぶっ倒す」

 ゴジラは瞬間、足に力を込めた。地面の雑草が、じゅっと音を立てて消え去る。
そして、ゴジラは大きく、そう、とてつもなく大きく飛躍した。

「おぉ。こいよ」



刹那、二つの闘気は激突した。

























「…なんだよ…あれ…」

 弘毅は、空いた口がふさがらなかった。
彼等の目の前に、最高レベルの闘いが繰り広げられているだけでもなく、あの“幻影”に何の怖気もなく立ち向かったゴジラを尊敬の眼差しで見ていた。
確実にあのモンスターは、今回のイベントのボスだろう。弘毅は確信した。

「次元が…一つも二つも違う…」

 TJとは、ここまでの俊敏で、尚且つ実際には使えることもないであろう特殊能力をここまで使いこなして闘うものだったのか。改めて弘毅は痛感した。
今までの弘毅の闘いなぞ、彼等にしてみればおもちゃ…いや塵同然なのだろう。
それは聖雫や心紅も同様の考えをしていた。
 
 弘毅は、地面の雑草を強く握り締めた。
何故俺は、あのようにできないのだろう。俺も、早くあんな風に…

「俺も…」

弘毅の中で、何かが芽生えた。それは、弘毅自身も感づいたことだろう。

「………」

 “闘いたい”その言葉を、口にすることはできなかった。
腰が抜け、臆病に恐怖に怯えているこの自分に、闘いたいなど、場違いにもほどがある。
悔しさが顔に滲む。

「いつか…」

また、その言葉がいえない。
胸が張り裂けそうで、どうしようもないこの感情。
弘毅は、静かに下唇を噛んだ。





シズカニ、カレノシンゾウモマタ、コドウヲハジメテイルトモシラズニ―――









 拳と拳が衝突した。2人の波動が、傍観者にも直に伝わる。
10万度の灼熱を持った、絶対の死を司ったその拳は化け物には通用もしなかった。

「…ふぅっ…。」

ゴジラはわかっていたかのように、静かに溜息をついた。

「まぁ、これくらいの技が効果抜群だ!とか言われても困るけど」

 そして、ゴジラは嬉しそうに笑みを溢した。
ゴジラの体内の、紅は衰えることはなかった。

「ですよねー。…ってかな。俺だって仮にも、ボスなんだぜ。“あの人”直々に創られたこの世界の番人――」

幻影の威圧感が、まるで霧のように、世界に蔓延した。

「この世の均衡を保つためのプログラムだ。そう簡単に死にやしねぇぜ」

「それでこそだ。…それでこそ、殺しがいがある。そうだろ?」

「マジお前威勢が良いよな。超いいぜ。お前」

「そうか?それは褒め言葉として受け取っとくが、それでいいか?」

「おう。そうしてくれ」

 ―――突如、ゴジラの体全体に筋肉の筋が筋張った。
心臓部分に当たる核らしきものが、赤く燃え滾るように光った。

「こいつは俺がまだ誰にもしたことがねぇ技だ。化け物のお前に効くんだったら…たいしたもんだとおもわねぇか?」

幻影は小さく、苦笑いをした。

「俺にお前のお得意の熱の攻撃はきかないぞ?」

「そうか…」

 ゴジラはそう呟くと、顔の正面で掌を勢い良く合わせた。パンッと空気は破裂するような音を出した。

「でもよ」

合わされた掌に、力を込める。血管が浮き出るほどに、ゴジラは力を込めた。
バチバチと掌の周りを走る電流。それは次第にゴジラを護るかのように包む。
 ―――ゆっくりと、その掌を離す。

「お前も、存在消されちゃ終わりだろ?」

 ゴジラの両手の間に生まれた、球体型に渦巻く焔。
なあ、幻影。お前は俺を楽しませてくれるのか?

「―――“レイディエイションランプ”。俺からのプレゼントだ。受け取れ」

そして、ゴジラは大きく手を開いた!それに伴い、渦巻く焔が巨大化する!
その炎の球体は勢いよく肥大化を続ける――ゴジラは、薄気味悪く笑った。

――いくぜ




ゴジラは、瞼を閉じた。



まるで、今のこの状況に甘美的な快楽を感じているかのように、彼は満悦に瞼を閉じた。



そして、ゴジラは決心をした。











今、この状況を断ち切る、と。










ゴジラは全力で、殺意を幻影に衝突させようと―――


―――渾身の力を腕に込めた







「If this is finall...........」








「Good bye?and...Good death。」





















To Be Continued.......

[749]
ロキ - 2006年11月04日 (土) 23時32分

爆音が、辺りに木霊した。それに伴い、石やら草やらが当たり一面に分散した。
ヒュッ…石が聖雫の真横を通り過ぎる。

「倒した…の…?」

 聖雫が爆音の後、一片の欠片を残さずに消滅した幻影の存在していた場所を見つめながら言った。
確実だ。あの巨大なエネルギー体を受けて、無事でいられるわけがない。回避できるはずもなく、
そこにいないというのならば、幻影の存在は消えた。そう“■んだ”。そう捉えていいはずだ。

 だが、弘毅は背中の悪寒を取去ることができずにいた。
どこか違和感を覚えずにいられない。こんな簡単に、アレが■ぬものだろうか。
その、呆気なさに弘毅は不安を覚えていた。

(絶対になにかあるはずだ…絶対に…)

本当なら、アレが■ぬことを切に願うものだ。
それほど幻影は畏怖すべき存在であり、強大な存在であるからである。
だが――いや、だからこそ、この程度では■なない。■なないはずだ。弘毅はそう確信していた。












第十六話 真打ち



 












 ジッポの火が灯る。
煙草の先端がチリチリと燃えて、煙が昇った。
ゴジラはそれを口にくわえると、前進した。

「…」

 ゴジラは、大きくへこんだ地面に近づくとそこを指でなぞった。
丁度、幻影が立っていた場所である。

「…■んだのか?」

 呆気なさすぎやしないか。まだ、早すぎるだろう。
ゴジラは聞こえはしない声で、叫んだ。
データだけの存在のくせして、人間のように呆気なく■にやがって。お前は、仮にもボスだったんだろう。
もっと、白熱したバトルを繰り広げさせてくれるんじゃないのかよ。

「そりゃ、大技を使ったのは俺だけどよ…」

彼はくると踵を返し、窪みを背にした。

「俺を殺してくれるんじゃなかったのか…」

悔しそうに、煙を吐いた。
煙は空気に散り散りになり、それは空虚へと消えた。











消えた煙は―――








紫煙となり―――








邪気を強く、放った。





「――――っ!?」

煙から、まるで向こうに別世界が存在するかのように、それは伸びてきた。
煙から伸びる腕!それがゴジラの首を強く絞める!

「か…はっ…」

「いいかい?俺はただのデータだ。それは、人間である必要もない」
                    ・・・・・
手の奥にある闇が、声を発していた。

「それは…他の存在になることもできるということだ」

「他の存…在に…なることも…できる…だと…!?」

「その通りだ。気体になることさえも可能だぜ…?」

ゆっくりと、煙は幻影へと姿を変えていく。

「いい攻撃だったぜ。レイディエイ…なんだっけ。まぁいいか」

さらに、幻影は指先に力を込める。ゴジラの首に、痛々しく食い込んでいく。

「俺を殺しきるにはまだまだだったな。」

 ゴジラは抵抗をしなかった。足を動かすでもなく、腕を動かすでもなく、目は幻影を見据えたまま目を離さなかった。
幻影はその様子を見て、ニヤリと唇を歪ませる。

「“俺を殺してくれるんじゃなかったのか――”そう言ったな。」

一呼吸置いた。

「OK。いいだろう。殺してやるさ。」

「 捻 り 殺してやる。」

「が…あっ…」

 汗が噴き出て、胃から嘔吐感を覚えた。
だが、それでも反抗はしない。
何故なら、今この状況が自分にとって1番の状況。甘美な空気なのだから。

 弘毅や聖雫、心紅が何かを叫んでいる。それはゴジラに聞こえた。
“逃げて”
その叫びが聞こえていた。確かに、聞こえていた。

(そんなものはくだらないだけだ。■ねばいい。それが、すべてだ)

 身体の苦しみは、意外と苦にはならなかった。
ふっ…そんな音をが聞こえたような気がした。
目の前は真っ白になり、外界の光を閉じようとした――――












 刹那、上空から無数の金色の矢が降り注ぐ!
幻影はそれに気づき、ゴジラを掴んでいた手を上に翳した。
紫の膜が張られ、金色の矢はそれに触れると消滅した。
ゴジラは地面に音をたてて倒れこむと、苦しそうに咳き込んだ。

「お邪魔しちゃったようで悪いね〜!」

 金属に宝石をちりばめた、豪華な弓を持っている男が陽気に言った。

「俺、荻野目。よろしく」

そういうと、弦を引いた。引いた弦と金属の間に矢が発生した。
恐らく、あの引いた弦を離せばあの矢は幻影を襲うのだろう。

「…あんたも、いい度胸してんなぁ」

「まぁ、今もマジでびびってんけどね。頑張ってるよ」

幻影は、少し、ニヤリと笑った。

「いいね〜。やっぱ後半らへんになるといいモン持ってる奴多いな」

「お褒めに預かり光栄ですな。ハッハッハ」

「…で、その弓を引かんの?」

「えー?引いたら、お前。俺殺しに来るだろ?」

「だな」

「俺、接近戦とかてんで駄目だからよー。こういう風にするしかないんだわ」

「それじゃ、闘いは始まらんくない?」

「うーん。まぁね」

 幻影は足に力を込めた。今に、殺してやろう。そう殺気を込めて。
 二人は互いに牽制をしあっていた。お互い、敵をまだ良く知らない。
荻野目は、冷や汗を掻きながらも相手を見据えていた。

「おい…。げん…えい…」

 倒れこんでいるゴジラからの声。それはかすれながら、か細い声だった。
幻影はゴジラのほうを振り向かず、小さく“なに?”と言った。
ゴジラは、強く歯軋りをした。悔しさが、滲み出ていて、それは何故か哀れに聞こえた。
 
 ゴジラは腕を、伸ばした。伸ばした先に、幻影の足がある。それをゴジラは大いに渇望した。

“その足を掴んだならば、俺の願いは果たされるはずだ――”

ガシッ!

力強く、それを掴んだ。

「俺…を…殺してくれよ…」

「…殺してくれ?」

「ああ…はやく…」

「OKOK。待ってな?こいつ殺したら――」

「 後 じ ゃ 遅 い ん だ よ ! ! 」

 ゴジラが叫んだ。耳を刺すように、それは鋭利に劈いた。
幻影は、一瞬驚いたような顔を見せたがそれはすぐに微笑へと変わる。

「……しょうがねぇな」
 
 くるりと踵を返した。荻野目がいるにもかかわらず、あまりにも無防備に、背を向けた。
幻影は、ゴジラに手を向けた。瞬間、掃除機らしいその物体が現れた。

「殺すとはちと違うが――、まぁ。他の魂と仲良くしてやってくれよ」

“掃除機”をゴジラに向け、無表情で幻影は言い放った。

「――“人間掃除機”。先の暗闇を特と味わえ。」



―――ヒュンッ



荻野目の弓矢が飛んできたのを、幻影は感づいていた。
その弓矢は、幻影に近づき―――そして消滅した。

「その程度だったんか…。警戒する必要なかったな」

失望を露にした声が、地を這った。

「さて…と。やっちゃうか」

 幻影は、ゴジラを見た。
ゴジラの顔が、異様に暗い。■を望んでいる男でも、直前となれば恐怖するのか。

――否。違う。それは違うのだ。

それは、太陽の日光を遮られた哀れな難民。祝福を受けられない聖職者。
光を遮る“者”が創る、暗闇。そう、彼等の上空には壁が存在した。

「おらぁぁぁぁぁぁ!!!」

 ズドンッ、重く響いた。砂が、煙たい。

「おせぇぞ神人!」

第二閃。心臓へと直線を進んだ突。幻影は、その突を素手で掴んだ。
血が、先端部に滴る。

「…さっきから邪魔が多いなぁ。なぁ、ゴジラ」

槍を引っ張って、神崎の体を幻影に寄せる。

寄せた瞬間に、感じた。



―――背後の、鋭い殺気―――!


「…すまないな。闘いの邪魔をして」

「い――ってぇ!?」

バキ、バキバキ、骨が砕ける音が、鮮明に聞こえた。
背中に手を翳されているだけ。それだけなのに、幻影の背は壊滅的な破壊を受けた。

「どうやら見てるだけにはいかなくなってしまったようでな…」

 血が、鮮血した。
剣が幻影の胸を貫き、白銀の刀身が姿を現した。

「クク…クククッ!なんかすげぇな!誰だあんた!」

「…俺はMATSUI。松井 秀一だ。宜しく頼む」

「ククッ…。OK。秀一、だな?」

 気づいた瞬間、秀一の目の前から滴る血液だけを残して幻影が消えた。
背後からだいぶ距離をとった場所に、いつの間にか彼はいた。











「―――お前は、俺と釣り合うのか?松井 秀一?」
















To Be Continued.......

[768]
ロキ - 2006年11月17日 (金) 13時45分

「――神刀、紅き羽根。朱雀翼」

 鮮血が、剣を伝った。

「…“冥界”の最深部に、封印されていたTJ内で恐らく最強の剣だ。
  ――…さて、幻影」

 ゆっくりと、剣の切っ先を幻影に向ける。

「これでは役不足か?」
 
 ――それは、それらはあまりにも果敢であるのに


あまりにも勇敢すぎて


あまりにも混沌としているから


目の前の悪魔と闘おうとしているのに


たじろぎ一つしない


「神人。荻野目」


それは


強さなのか


表の虚構なのか


はたまた


好奇心であるのか


わかることは、ない


「征くぞ」


わかるのは、一つ

互いに、黒く禍禍しい闘志を持っていること。ただそれだけ。

















第十七話 SHADOW














 
 

 荻野目の弓矢が、空を切り裂いた。それは、一瞬で鋭い一撃。
その弓矢が一陣の光を放ったと思えば、分散し四方に飛び散った。

「全面攻撃…か。」

幻影は、瞬き一つせず微動だにしなかった。
弓矢は案の定、消滅してしまった。
 それを感じたのかは知らない。だが、消滅したコンマ1秒後幻影は荻野目へ向かって走りだした。

「遠距離攻撃が1番めんどくさそうだ。殺しとくぜ。あんた」

「ひえー!?マジかよ!勘弁!」

怯えた様子を見せると、荻野目は弓矢も掛かっていない弦を指でビンと鳴らした。
すると、幻影の周囲に光を放つ幾千の弓矢が出現した。
幻影の動きが一瞬、戸惑いを見せる。
 荻野目は、言った。

「さっきも言ったようにさ。俺、接近戦駄目なんだわ。近寄らないでくれる?」

パチン。指が鳴った。
無数の、何千の弓矢が幻影を襲う。いくつかの弓が幻影と接触した。
だが、多くの弓は空を切る。そこに、幻影の姿は無かった。

「ま…マジ?」

それは当然のようなものだった。
瞬時に、幻影は荻野目の隣にいたのだ。

「神人ー!」

 幻影が気づいたその後、神人は行動を始めていた。

「DEEP IMPACT…!」

神人の呼応と共に、槍の先端が幻影に接触をした。

「ぎ…がぁ…!」

「うおおお!?」

 幻影は、空を舞った。が、それは数mにしか過ぎず「この程度」という表情をしていた。
荻野目は、紙切れのように上空へと飛んでいっていた。

「おい!このかみんちゅ野郎!何俺まで巻き添えにしてんだよこんちくしょうが!」

「あめぇんだよボケェ!あんな近くにいて巻き添えくらわねぇなんて思うほうがおかしんだよ!」

「もっと繊細に俺を扱え!俺のガードは、ガラス並だぞ!?って――」

 いつの間にか、荻野目じゃ幻影の真後ろにいた。

「俺を無視ってのは酷いぜ?荻野目さん?」

「お前変身中にヒーロー殺せばいいとか考えるタイプだろ!」

荻野目は、拳を開いた。掌に、赤色の紋章らしきものが現れた。

「ブレイクアース!」

荻野目がそう叫んだと思うと、地中から土が盛り上がり槍のように幻影へと向かっていた。
ドガァ、鈍い音をさせる。

「くっ…!」

「ガトリングフレイム」

 神人が、手の平を幻影に向けたかと思うと“赤く”光を放った。
炎が、無数に幻影を襲う。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

それはダメージが多いわけではない。
だがしかし、無数の攻撃であるなら蓄積されていくダメージは一つのダメージより大きなものとなるだろう。

――だが、それも0であるのなら全くを持って無駄なものであるといえる。

「無駄だ!」

 幻影は、何かをしようと握り拳を開いた。
が、それよりもわずかに彼の行動が早かった。

「――ヘルシング」

 秀一が、言った。

「一億万度の灼熱に**。幻影」

 幻影の周囲を、炎が包んだ。
天に昇る不死鳥の如く、それは残酷に美しく煌びやかに炎が舞った。
焼ける音が、バチバチと音をたてた。

「油断するなよ。荻野目。神人」

 低い体制を構えた。

未だに炎は燃盛っている。
3人は確信していた。恐らく奴は、この程度では死にはしないのだろう。
また虚をついてくる。
あの炎の中から、必ず悪魔のように這い出てくるだろう――。

 瞬間、炎が消えた。何かをきっかけにしたのかわからない。
消えてしまったのだ。瞬間に。 

「ククク…」

 幻影の笑い声が、静かに聞こえた。

「クク…カカ…ハ…ハハハハハ…はははははははははあっははははははははあはあはははははははは」

「…何がおかしい」

「くく…ははは…ぎゃははははははははははははははははははは!!!」

「…なんだ…?こいつ…。狂っちまったのか…?」

「気味悪ぃ…」

 幻影は、狂ったように笑い始めた。
顔を歪め、狂おしいような表情で笑う。笑う。笑う。

「もう駄目だ!もー駄目だ!」

幻影は薄気味悪い表情を浮かべて、いやらしい微笑を浮かべて、悪魔のような冷酷な目を浮かべ、慈しんだ。


「もー本気だすしかねぇ」


 空が真っ黒に、染まった。

闇が世界を蔽い、神様は息絶え、悪魔がのさばる世界へと変貌を遂げた。
一瞬の出来事。この広い世界を、真っ黒に変えてしまった。

「これは…!?」

 上空から、太陽が消えた。もう秀一達にも、光は注がれなくなった。

「 ねぇ。もう誰も彼もこの黄昏の中で、死に絶えるしかねぇ」

「…なんだと?」

「本気なんて出したくなかったんだけど…」

幻影は、先ほどと打って変わって悲痛な表情をした。

「お前等があまりにも強すぎるから…もう殺すしかなくなったから…」

「…お前、さっきから何を言っているんだ…?」

神人が訝しげな表情で、言った。

「俺は――」

3人は、態勢を整えた。いつ、攻撃に打って出るんだ?どんな技をしかけてくる?

「この世界の守護者。この“世界の住人”の番人。秩序の僕…。殺戮は止めなければならない」

 幻影が立つ周りに、シャボン玉のように紫色の球体が浮かんできた。
その球体は、艶やかに光っている。球体が、幻影を囲む。

「この世界の悪。お前等を悪と認識して、お前たちは“吸収しない”」

(…吸収…どういうことだ?)

 秀一は、顔を顰めた。何なんだ。さっきからこいつが言っている事は…?

「お前達の肉体と精神は、一片たりとも残さず打ち殺す」

 闇が、深くなった。
その暗闇は、全てを飲み込んでしまいそうで、大きすぎる。
奥にどれほどの闇があるのか、わからないぐらい。
目に見える闇が、目の前にあるのに、本当にこれは闇なのかがわからなくなるぐらいに
その奥にある闇が怖かった。

















「さよならだ」

















To Be Continued.......























おまけ













神人が、手の平を幻影に向けたかと思うと“赤く”光を放った。
炎が、無数に幻影を襲う。

神人「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」

幻影「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」

荻野目「ロードローラーだ!おッ潰れよぉ!WRYYYYYYYYY!」






秀一「…何やってんだ…こいつら…」






完!

[818]
ロキ - 2006年12月06日 (水) 18時20分

「闇蛍」

 小さな言葉と共に暗闇の中、しゃぼん玉のように紫の小さな光が浮かぶ。
それは艶やかに紫を放ち、悪意の塊のようなものだ。
遠目から見る弘毅達でも、闇蛍は確認された。

「なんだろ…?あれ…」

 心紅は目を凝らして、それを見つめた。

「綺麗…」

聖雫が惚けた顔で、言った。
心紅は聖雫表情に驚いていたが、改めてみてみると確かに魅力のある色だと思った。
まるで吸い込まれそうな深遠の中。奥深い色だ。
引き込まれるような、そんな感覚。

「でも、ちょっと怖い…かな」

そんな艶やかなそれ。引き込まれる境界線を、ぎりぎりで踏み止めたのを感じた。












第十八話 血溜まりの池の中でもがく白鳥のように













「浮かべ。」

 幻影の号令に呼応し、闇蛍は宙に浮かんだ。
不気味にも美しいそのフォルム。神人は息を呑んだ。

「こいつ…想定外の強さだぜ…」

荻野目は、同意、と言ってうなずく。

「ダメージ一つ受けてなさそうだし…」

秀一は目にかかる髪をかきあげると、剣を強く握った。

「だが、今の攻撃でダメージを受けないことは全くありえない。この調子で行くぞ」

「「了解」」

そして、3人は幻影の出方を待つ。微小の期待と不安を抱きながら。

幻影は掌を秀一達に向けた。

「征け」

闇蛍。それが、秀一達に一直線に向かっていく。
秀一達にすれば、それは“速い”という域には入らなかった。
 神人が、大きく飛躍した。

「――召喚。“Air Dragon"」

その言葉の後、竜が姿を現した。
神人は、その竜の背中に乗る。

「怒涛の神龍の手前。お目見えしてやるぜ」

 まさしく直下。竜は、風を巻いて幻影に向かった。
直下とともに、槍の先端に風が渦巻く。その渦巻いた風が、大きな刃の形へと変貌した。

「エアーダガァ!」

放たれた刃。ギロチンのようにそれは放たれた。

「くらうか!」

闇蛍が刃と衝突した。風が大袈裟に散る。
 攻撃はまだ続いた。竜の直下からの一閃の槍。
紫に包まれた幻影の拳。接触した瞬間、その世界が捻じ曲がったような衝撃。
連続し螺旋を描く弓矢が幻影を襲う。もう片方の腕で薄い紫色の膜を出す。
弓矢のスピードは一気に減速し、その場に落ちる。

「これくらいの攻撃でなぁ!怯むわけねぇだろがぁ!」

幻影が体全身に力を込めた瞬間、衝撃波が彼等を襲った。

「がぁ…!」

「闇蛍――来い!」

幻影の掌に闇蛍が出現した。
それを維持したまま、神人に向かう。その速さは、獲物を捕らえる豹のような速さだった。

「…速いぞ。幻影」

 幻影が気づいた時にはもう遅い。
すでに、秀一に懐までの侵入を許していた。
速さが仇だった。秀一の振りぬく剣が、幻影の胴を両断する。

「…感触がないな。気体に擬態したか」

「よーし。俺の出番だな」

 荻野目が、空気中に魔方陣を描いた。
その魔方陣が、赤く光り効果を発する。

「“グラビティウォール”」

「な…に!?」

 幻影は地面に這い蹲った。
気体といえども幻影自身の質量は変わらない。
地球の何十倍もの重力を与えられたのだから仕方ない。それは当然というものだ。
幻影は姿を人間に戻すほかなく、その重力から逃げることを最優先とした。
 ――だが、幻影の表情は愉悦に満ちていた。

「あんた…これ、重いんだけど…どかしてくれるか!?」

 周囲に散乱していた闇蛍が、荻野目を襲う!
もう避けられる距離ではなかった。

「うおあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

バチバチと電流のような衝撃が、荻野目を襲った。
心臓にまで響くような、痛み。肉体的と精神的。両方が、荻野目に食いつく。

 秀一が剣を振った。幻影の首を狙う鋭利な一撃。

「効くかよ!」

ガキィ。鉄と鉄が合わさったような、鈍い音がした。
幻影は腕で剣を受ける。その腕は、銀色と変貌していた。

「闇蛍、ダブルでプレゼントだ!」

両手に持った、闇蛍。秀一の両耳にぶつけるかのように、合わせた。
直撃。さすがの秀一もダメージは隠しきれなかった。

「今までのお返しいくぜ!」

拳打拳打拳打。右左から繰り出される攻撃。蹴りも織り交ぜられていた。
その猛攻に、秀一はガードをするしかない。
 だが、神人がそれを見ているはずなわけがない。
竜ごと、幻影へと突撃する。

「調子に乗ってんじゃねぇぞ!」

 幻影はその声に気づくと、秀一への乱打を止める。秀一は、宙に浮かんだ。
槍先に渦巻く風圧。そして、槍の一閃。
二重の衝撃を、幻影に直撃させる

「お前が、な?」

――はずだった。

「――やっちゃっていいか?」

 手を合わせた。バキバキと、電流の走る音。
離した瞬間、一回り大きな闇蛍が発生した。
物凄い速さで移動している神人。もう既に遅い。直撃は避けられない。




「ぶち殺しちゃってさ?」




「―――ぁあ!?」

 グシャッ

 何かが潰れる音が、鮮明に聞こえた。

「がっ…あぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ!!!」

「殺す!ぶち殺す!それが俺の存在理由――」

 闇蛍の圧力が強まった。バキリ、また何かが潰れた音がした。

「ってかぁ!?」

顔面に回し蹴りが直撃。首が限界まで曲がった。

「が…はっ…」

「おっ潰れろぉ!」

瞬時に、闇蛍が発生した。
 神人は始めて脳裏に過ぎった。――俺は死ぬのか

バキィ

神人の槍が横からの攻撃で、幻影に向かった。
が、幻影の腕によって防がれる。淡い攻撃だった。

(あ…)

 間抜けな話だと、自分で思った。
いつもなら、この状態なら腕ごと幻影を吹き飛ばすことができるはずだ。
だが、幻影だから。幻影だから、そういう理由で諦めている。

ない。
・・

それは、ない。



諦める?



そんなもん、あるはずがない。



馬鹿だろ。俺。




あめぇよ




 彼の眼光がそれを成した。
一瞬だ。0.01秒。その本当の一瞬だ。
幻影は、ほんの、ほんの一瞬。全身の動きが静止した。
刃が物理的接触を、闇蛍とを可能とした。

――それは、自分自身への叫び



「あめぇんだよボケェ!!」




「んだぁ!?」

バキバキバキと、木々が次々と折れていく時のような音がそこらじゅうに響いた。
神人の槍が野球バットを振るように大振りで――渾身の力で。

「てめぇコラァ!俺舐めんじゃねぇぞ!!」

 力が分散していくかのように、闇蛍が小さく縮小していく。
幻影は驚喜の表情を見せ、口元を歪ませる。

「力勝負か!?いいねぇ!」

 破裂音が、さらに強まる。幻影の闇蛍が強さを増しているかのようだった。

「ぅっだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

筋肉が撓る。神人は今までだしたこともない力。火事場の馬鹿力という奴だ。
 だが、幻影にはそれは今ひとつ役不足だった。
幻影は、掌に力を込めた。それを通して、闇蛍が鼓動する。

「ひ弱だぜ!?神・人・君!」

 押され始める。だが、力は減るはずが無い。

「ひ弱!てめぇ、それは俺にいっちゃいけねぇ言葉だぜ!」

俺が。

「てめぇはもう何秒かしたらこう泣き喚く!」

絶対に負けるはずが無い。
 
「――びえーん神人様はやっぱり強すぎたってなぁ!」

その確信が、神人にはあった。

 瞬間、幻影は空を仰ぐ。
何があった?…知っていた。飛ばされた。
今の今まで、貧弱だった人間の力に。

――やるな。人間。

 薄気味悪くニヤついた。

そして、神人の渾身の一撃が完全に幻影の身を捉えた。

「ぅるぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 砂埃が、一層舞った。幻影の姿が、砂塵で消えてしまうほどに。

 神人は、息切れしつつゆっくりと立ち上がった。

(呼吸が定まらない。だが、疲労感は吹っ飛んだ。今の爽快感のおかげか)

槍を地面に刺し、それを杖代わりにする。足には疲労感というより、震えがあった。
それを一笑いし、周りを見た。秀一と荻野目はどうしているだろう、そう思って。
案の定彼等は、ダメージは受けているもののまだまだ闘える状態にあるようだ。
なにせ、彼等は神人の真後ろに立っていたのだから。
 
 二人は、神人の肩に手を置き言った。

「流石だな!神人」

「…よくやった」

 フッ、いつも秀一がしてるような笑い方で神人は笑ってみせた。

「なぁ秀一!負けっぱなしは趣味じゃねぇよな!」

 大声で、幻影にも聞こえるような声。
秀一も微笑む。

「当然だ。」

「やり返してやろうぜ」

「当然だと言っている」

「おう。当然だ。やり返す。兆倍にしてよ」

3人は、攻撃の準備をした。
さっきとは違う、確信。幻影は強い。恐らく、秀一以上に。
だが、3人はだからこそ闘志が沸いた。

「第二ラウンドだ」

 不適な笑みを溢して、神人は構えた。





To Be Continued.......
















おまけ













「てめぇはもう何秒かしたらこう泣き喚く!」

絶対に負けるはずが無い。
 
「――びえーん神人様はやっぱり強すぎたってなぁ!」

幻影「あっそ」

バキ!

神人「あべし!」

荻野目・秀一「・・・・」




完!!

[823] 番外編
ロキ - 2006年12月09日 (土) 19時40分

今回は番外編です。
疲れた大人が、ストレスの余り変質者や犯罪者になってしまう今の世の中。
性癖をもてあます異常者。
それらを開放するのが、TJの世界。
無秩序な世界は、弱肉強食を元に強いものは弱いものを蹂躙していくのです。
たとえ、どんな手を使えども勝てばよい。
それがこの世界なのです。

己の正しい道を、正義を見据えて変質者達は今日もTJで闘うのです。

重度の下ネタにご注意ください。R15程度です。






※下ネタ注意※



※下ネタ注意※



※下ネタ注意※



※下ネタ注意※












 敏 兎太。43歳。もう、いい加減歳だ。
会社の行き帰りを何十年か続け、もう飽き飽きしている。
お見合い結婚した妻は豚のような女だ。そして私はもやしのような男。
お互い、愛はない。子供はいるが引き篭もってしまっている。
会社に行けば、部長に怒られ部下に影口を叩かれ、もう散々だ。
頭の毛根はほとんど死滅している。
ムスコはもうピクリともしない。あの醜い妻とのセックスもしたくはないが、オナニーさえもできやしないのが辛い。
あと定年まで17年間。…その間に一体私の髪はどれほど抜けるのだ。
将来の私など全く想像したくも無い。

 年金も家と車のローンなど合わせて、給料は少ない。
小遣いは月3万。昼食などを合わせれば、遊ぶ金などありはしない。
ましてやリ○ブ21んに行くことなど!
親父狩りされても金はないんだ。
金はないんです本当にないんです勘弁してくださいあっこのアメでよければあっいや舐めてるわけではなくていや本当にすいませんごめんなさい…



 …歳だ。本当に歳だ。



 だが、最近私は変わった。
若々しく、初々しく、私はヤングマンへと。

 TRUE JUSTICE。今評判の、世界最先端の技術を集めた科学の結晶といえるゲームだ。
最初はゲームごときにそんな知識を使ってしまうのは税金の無駄遣いだろうと、思っていた。
しかしながらこのゲーム。凄い。凄いのだ。

 TRUE JUSTICE。…略してTJと呼ぼうか。
 それをしだして、私の人生は大きく変わったのだ。









TRUE JUSTICE 番外編『疲れた大人』









「うおおお!」

「おりゃ!」

 二人の男が闘っていた。PK。片方は斧の男がプレイヤーキラーである。
だがしかし、PKの男は同じレベルの相手をわざわざ選び“モラルあるPK”であった。
剣と斧が衝突する。火走りが起きた。

「んどぅぅぅらぁぁ!」

「んぉぉぉぉおおおお!!」

 力押し。お互い力に押されて、態勢が崩れ始めた。

「魔法!ファイアインパクト!」
 
 剣の男が叫んだ。すると、剣先が赤く光る。
ボッ と小さな音を立てて、爆炎が起きた。

「ぬおっ」

「オラララララララ!!!」

連続しての剣戟。
素早い攻撃に、PKの男は防戦一方になるも一撃も攻撃を受けてはいない。

すると、PKの男は一度剣を受けると柄を思い切り叩く。
剣が回転しながら上空を舞った。

「しまった…!」

「くらえ!!」

 男が斧を振り上げた。その瞬間――

「まてぇーい!」

「――!?」

 男達は、あまりにも素っ頓狂な事態に行動を止めた。
突然、ロン毛すぎる40代半ばの男が彼等の間に入ってきたのだ。
ロン毛男は、昔のヒーローのような今ではアホらしく感じるようなピチピチの服だ。

「我は天界から降臨した眩いばかりの光を浴びた使者であり、お前等のあらそいをt

「お前は誰d「まてぇーい!セリフの途中だ!」

「したがって我は貴様等を倒し争いを止めるということだ!」

「「な、なんでだよ!」」

「それが私の使命であり、運命なのだ!神が与えたもうたこの力を平和の力を使わずになんとする!
 天界から舞い降りた正義の使者の鉄鎚を受けるかどうか貴様らはd

**んだよお前!喋r「まてぇーい!セリフの途中だ!」

「いいか!私はお前等とは一つ、いや三つも四つも高い位置にいる男なのだ!!
 私は…天から加護を受け、闇を裂き暗闇を照らし大地の恩寵を受け、この世界の命運を背負った男なのだよ…」

 ロン毛男は悦の表情だ。
 ロン毛男は、誇らしげにポーズをとった。指を天に向け、手は腰に。足の広さは肩の幅。
まさに昭和時代だ。

(こいつ聞いたことがある…。)

(なんだと…?)

(いちいち御託を並べて、若い奴を狩る“ヤング狩り”…“ヤング狩りの二階堂 薫”)

(なんだよその昭和をにおわせる名前は…)

(知るかよ…だけどな。こいつのランクは確かAだったはず…)

(な、なんだって!?)

 ロン毛男は突然仕掛けた。
素早い攻撃。ロン毛は彼等の背後に回った。

「男なら!拳で自分を見せろ!」

 右フック。片方の男が態勢を崩した。

「うわっ!?」

「男なら!背中を見せるな!」

そして、蹴り飛ばす。

「男なら!潔く死ねぇぇぇぇ!!」

股間からショットガンを取り出す。ポロンと、何かがはみ出た。
男達はそれを見て見ぬふりをした。

「な…何をするきだ…や…やめろぉぉぉやめてくれぇぇぇぇぇ!!!」

「問答無用!聖刺ビィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィム!!!!」

ゲッター張りのその叫び。
上下運動を二回。ニ擦り半。

「うっ」

 瞬間、ショットガンは黒くなり肥大化した。
それはまるで本当のショットガンかのように、銃の形をして。

「い(逝)くぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「もう!止まらない!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」








 …ガァッン








 それは、恐ろしく散弾した。
まさに、恐ろしく。本当に恐ろしく。
まるでみさくら なんこつ(良い子は調べちゃ駄目だよ!)のように。
全てのものを白雪のように染めるかのように、散弾したのだ。
二人の男は、脱力したかのように地面に横たわる。

「うへ…うへへへ…」

「………」

 彼等の社会復帰は、いつになるか。それは、精神科医のみぞが知りえるのだ。





























 私は若返った!
髪の毛は!毛根は再復活し!筋肉はつき、力はついた!
子供はアニメの専門学校に行かせることができ、引き篭もり脱出!!
私のムスコは華麗にビッグにエグレッシブに甦った!
もう怖いモノなど何も無い!
親父狩りだって怖くない!返り討ちだ!!
リーブ21に行く金だってTJで余裕で稼げる!

うはははは!!


うはははははははははは!!




あっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!!!




私は強いんだ!最強だ!現実でも強くなった!知識もついた!金も相当たまったローンも全額返済した!
風俗だって何回も行った女の経験もいっぱいおっぱいだうへへへへ!
TJの中でも強いんだ!私に勝てる奴などいない!うははは!!!

 重役なんてぶちこせるぜ!!部下なんて皆蹂躙してやる!!
私のお茶に泥水を入れた奴は金で援交できた!!!




 もう私に怖いモノなどないんだ!うわはははは!!!




TJ最高だあああああああああああああああああああ!!!!!












TJ番外編『疲れた大人』編 終わり

[853] 投稿
LDHT - 2006年12月30日 (土) 17時16分

名前【萩尾 広阪】 
年齢【21】
職業【軍師】
属性【灰色】
性格【社交的ではなく冷静 一匹狼 キレにくいがキレると歯止めがきかない 酒、煙草が大嫌い しかし、つまようじに火をつけたものを口にくわえている 突然ゲームの世界に吸い込まれ、現世に戻れない 元自衛隊 戦闘のプロ 
「ドルトン・オームの野郎は…ブツブツブツ…」
「てめぇはバルケノンか?」が口癖(ドルトンとかの設定はおまかせで)】
*性格は詳しく。
経験地【パワー3 スピード3 ガード2 テクニック8 知識4】
その他【弾切れのないマシンガン使用 魔法は使えない。
気絶すると背中からアメーバのような触手をだすが、本人は知らない
召喚獣「千風竜銃撃丸」】

名前【川越 千田】 
年齢【15(1000歳)】
職業【隠れボス】
属性【闇】
性格【社交的ではなく暗い。だが萩尾とは仲が良い。夜と小鳥のさえずりが好き 突然ゲームの世界に吸い込まれ、現世に戻れくなり、ボスとして扱われるが自分はそれでもいいと思っている。現世で外見15歳のまま千年生きている。それを飲まないと人を殺さなければ生きていられない「殺人麻薬」を飲んでいた。】
*性格は詳しく。
経験地【パワー5 スピード5 ガード0 テクニック5 知識5】
その他【人を簡単に洗脳する事が可能 あまり強くない魔法も使用可能 通常は剣で攻撃】




[859] ごめんね。お母さん頑張ったけどこんな完成度だから。ごめんね。
ロキ - 2007年01月04日 (木) 23時10分

 闘いは熾烈を極めた。

秀一、神人、荻野目。三人での闘いは過酷かつ厳しい闘いだった。
荻野目が弓を飛ばし、神人が牽制し、秀一が止めを刺す。
今までの闘いでは、そのコンビネーションで敵を倒していた。

 だが、知識を持ち、なおかつ戦闘力が特に高い幻影相手にそのコンビネーションは通じなかった。

強大な敵を目の前にしながらも三人は創意工夫の闘いぶりを見せた。

――それでも

それでも、幻影には通じなかったのだ。








第十九話 不■鳥








 目の前が真っ暗になりそうだった。出血が多すぎて倒れそうだ。
睫毛に掛かった血が、ポトリと落ちた。秀一は手の甲で瞼の辺りを拭う。

「…強いな…」

息切れをしつつ、秀一は剣を強く握り締めた。掌が痛い。

「お前も中々よくやったよ、俺相手に」

「…“よくやったよ”? まだ勝負はついてないぞ。幻影」

「はぁ。まだやる気か?お前」

「当たり前だ」

 荻野目は地に這い蹲り、神人は立ってはいるがすぐにでも倒れそうだ。

「…自分にとってのベストを尽くす。これが俺の信条なものでな」

「諦めろよ。その体で何が出来る?肋骨は折れているだろうし、自己回復もできる状態じゃないだろうよ」

「…諦めろ?諦めろだと?」

「そうだ。諦めろ。お前の勝算は九分九厘ないぜ」

 幻影は虚ろの目で秀一を見た。まるで地を這う羽虫を見ているような目だ。
秀一は乱暴に剣を地面に刺した。柄に手をやり体を起こす。

「なるほどな。人間でないお前らしい言い草だ。」

「…なに?」

「…諦めるというのは、■ぬまで筋を通した奴だけが使える特権だ。俺は――」

地に深く刺さった剣を抜く。

「俺はまだ■んじゃない」

「…」

「――人間を舐めるなよ。幻影」

「言ってくれるなぁ。たかが人間がよー」

 幻影は、手を顔に当てた。自分の顔を握りつぶすかのように、強く。
指の間から見える目が、殺意をおびていた。

「人間ごときが偉そうによー」

額の青筋が目立つ。目が蛇のように尖っているに見えた。

「最高っにむかつくぜー」

「…フッ。お互い様だ」

 秀一が余裕を見せた一瞬だった。幻影は、瞬時に秀一の前に現れた。
満身創痍の秀一はそれに対応しきれなかった。足を動かす瞬間、幻影の指が眼前に迫る!

「お前に一つ種明かしをしてやるよ」

がしりと大きな掌で秀一の顔を包んだ。ゆっくりと秀一の足が地面から離れる。

「ぐ…ぁ…」

「お前たちに共通の言語があるように、俺たちにも共通の言語がある。
 俺にはさ。奴等の叫びが聞こえるんだ。
 助けてくれ。助けれくれよって。
 だけど俺はそれを無視した。
 …何故か?
 ――楽しんでたからさ!!」

 幻影の指先に力が入る。皮膚に指がめり込んでいく。

「俺には関係ないことだからよ!!お前等に感謝してるぜ!?モンスター殺しに殺して俺を生まれさせてくれたことをよ!!」

「く…が…」

「だーけどよぉ!いい加減もうさっさと殺しちゃわなきゃな!」

 腕に紫色の膜が現れた。秀一は顔面に無数の針を刺されているような痛みを感じた。
幻影の手に覆われ秀一の顔は確認できないがわずかに見えた顎から血が滴り落ちていた。

「流石にもう可哀想だなあと思うんだよな!ハハハハハ!!!」

指が皮膚を破り、肉に達していたのは明らかであったが秀一は悲鳴を上げなかった。
 地面に這い蹲っている神人と荻野目はその様子を恨めしそうに見ていた。どうしようもない憤りが二人に彷彿した。

「おっ■!」

幻影の勝ち誇った顔が悪の権化のように、神人達には見えた。










 苦しい。胸が鎖に縛り付けられてるようだ。
呼吸が整わない。けれど走らないといけない。
俺は親友を助けるわけでもない。まして邪知暴虐の王を恨んでるわけでもない。
ただ倫理と道徳の己の理念に突き動かされて進む、思念の塊。
 助けなければならない。この世界の俺はそれを要求したのだ。









「どけええええええ!!!!」

 夢中に走り抜け、そして幻影に体当たりをした。
非力な自分はわかっている。だからこそ今俺は動かなければならない。
どこかが電気のように痺れているように感じた。構わない。ただ筋肉に力を込めて、少しでも時間を稼げばいい。
 現実の俺は人を助けるだとかそんなヒーローのようなことをする善者ではない。
汚い空気を吸い、汚れた世界の中で生きた生ゴミのようなそんな存在だった。
カッコつけてるわけじゃない。だけど、どこか突き動かされた。それだけだ。
俺じゃない。今この体を動かしているのは多分俺じゃない。俺の内側にいる、内側の俺。もう一人の俺。

 ヒーロー志望なわけじゃない。人を助けたいわけじゃない。
なのに、俺の何かが俺を先導するんだ。
所詮ゲームだぜ。ゲームのくせにここまで真剣に■ぬ気で行くなんてどうかしてる。
俺とあのボスの力の差は圧倒的だ。■ぬ瞬間の痛みはないだろう。
 こんな感じで突っ込んだ奴は間抜けに■ぬってのが相場だ。
英雄気取って誰かを助けようとする奴は必ず■ぬ。100%。
だが、こいつの邪魔をしないと駄目な気がする。駄目なんだ。どうしても。

 飛びついた瞬間、小さい言葉が聞こえた後幻影が倒れた様な気がした。それとドスンとした誰かが倒れる音。そして後ろから聞こえる女性の叫び。

「…あ?何してんだお前」

 電撃、か。体を痺れさせる痛みが俺の体を蝕んだ。

あれ?

「きゃあああああああああああ!!!」

痛ぇ。









 
 名前も知らない男が自分を庇いそして■んだ。
秀一を庇った男は、幻影の闇蛍に触れシャボン玉のように破裂した。
内臓が酷くリアルだ。この世のものと思えるように。

――どうなっている。

TJでは本来、ゲームオーバーになると■体は残さないはずだ。データとして消えるはず。

「ハァッ…ハッ…」

 秀一の顔が鮮血に染まる。地面に血が水溜りのようになっていた。

「あーあ。なんでこう…ここでとどめ!ってところでいっつも邪魔がはいんのかな?」

 秀一は血の抜けた頭で考えた。
今までの意味のわからなかった幻影の言動。そして不可解な現象…。

「そうか…。そういうことか…」

 ふとあの広告が思い出された。“敗北すれば永遠にこの世界に彷徨うことになるでしょう”

「あれは…そういう脅し文句じゃなかったってことか…」

「ああ?」

「脳とこのゲームを経由しているプログラムをストップさせてしまえば意識は肉体に戻らず何処かへ彷徨う。
 この祭…半端ではない、な…」

「まぁーそういうことだな!このイベントは俺の誕生祭みたいなもんでさ。お前等が一定数の…そう、お前等でいうモンスターを倒すまで待ってたんだよ」

「その言い方…お前がまるでモンスター達の魂の塊とでも言いたいのか?」

「そうさ。俺は俺の体に一億の魂が宿るのを待ってたのさ。ずっと待ってた」

「通りで…何回殺しても■なないはずだ…」

「まぁーな。一億の魂だぜ?あんたらは強かったけどな。一億回も殺すなんて無理だろうよ」
 
 幻影はもう何度目かわからない意地悪い笑顔を見せた。
それが本当に、本当に酷く悔しかった。秀一は歯軋りをしてみる。濃い鉄の味がする。

「その様子だともうわかってるみたいだな。お前等は、もうゲームオーバーじゃおわらねぇってことをよ」

 当たり前だ。ここまで圧倒的な違和感を感じさせておいて、感づかないほうがおかしい。
感づかなくとも「何かがおかしい」そう思うのが当たり前だ。

「一つ聞かせてくれ」
 
「なんだぁ?いい加減諦めろよ…」

「いいから聞かせてくれ。冥土への土産として」

「はー…まぁいいぜ。俺は心が広いからよ」

「これは…このイベントは人間が首謀者なのか?」

「あったり前だ。俺を作るプログラムを作ったのもそいつだ」

「TJを構築するプログラマー…いや、笹岩征治か…」

「まっそいつがどんな奴かは全然しらねーけどな」

「そうか…」

幻影は肩をすくめた。その表情にはもうだいぶ余裕がある。

「なーんか興ざめしちゃったけどよ。もういいよな?■よ」

「ああ…」

 秀一はゆっくりと立ち上がった。手で頬を叩く。血が足りず、足がおぼつかない。だいぶ苦しい。
神人を見た。だいぶ、というより物凄く悲壮な顔をしていた。悔恨がおびているようにも感じる。
荻野目は意識はないのだろう。地面を見つめて俯いていた。

 もう、いいんだ。
 
 俺は征く。

「やーっと終るのか」

 幻影は周囲を見渡すと満足そうにうなずいた。

「後は雑魚だけっぽいしな。まぁちょっとは名残惜しいけど」

 周囲に散在していた闇蛍が浮遊した。もう避けられないだろう。秀一は闇と同化した双眸を閉じた。そして覚悟する。

「あばよ」

指を鳴らした。闇蛍が秀一へ向かう合図。

 ――そして、走る。幻影へ。まっすぐに一直線に。

間合いはもう1mもない。幻影はそれに対処しきれなかった。

「――!! てめぇ!!」

そして飛躍。幻影の背丈を軽く越える大きなジャンプだった。一回転し、幻影の背後へ回る。首に片腕をかけてヘッドロックの形になった。

「悪いな…俺は諦めが悪いんだ」

「―――!?」

「そして利用されて■ぬというのも断じてお断りだ」
   ・・・・・・・・・
「…はっ。聞いてなかったのか?お前がいくら気張っても俺が■なないことはわかってんだろ」

「■なない?■なないとはお前はいっていなかったはずだが?」

「まさかお前、一億回俺を殺そうとか考えてるんじゃないだろうな?やめたほうがいいぜ?」

「貴様こそ聞いてなかったのか?」


 
 俺は

 

「人間、舐めるなよ?――そう言ったはずだ」




「何をするつも――!?」





 燃え上がる炎を滾らせた。もう彼を止める術は存在しない。

見えた炎は不■鳥。何度討ち倒されても、不屈の炎の鳥。

炎は、闇を包み込み、そして浄化する。

 炎の醸す光は闇を砕き暗闇を打破しえる。





「…俺は不■鳥。紅く光る、明の羽根」





 幻影の体に、渦巻く炎のような痛みの螺旋が響く。

理解するのに一秒もかからなかった。この炎は避けきれない。そして、危ない。危険な炎。

自らの身をも焦がす諸刃の炎。

――コイツはヤバイ!!

「何を!何をするつもりだ!?」

「…俺と一緒に心中だ。幻影」

「なっ…に!?話せ!くそ!!気体に…!!」

「もう遅い」


 時間が止まった気がした。だいぶ世界がゆっくり遅く見える。
宵闇に覆われたこの世界が酷く儚げに見えて、どうにかしてると自分で思った。

 さあ 征こう

「う…うわああああああああああああ!!!」

 悪の悲鳴が、初めて轟いた。









To Be Continued.......

[873] 短めだけど、まぁ誰もみてないかもしれないしいいか!
ロキ - 2007年01月27日 (土) 13時36分


 …誰だよ。お前。

え?…俺?俺は…誰だったっけ。

もういいよ。なんか俺にはもう名前は必要ないような気がするから。

二度と俺が俺の名を必要とするような機会はもうないと思うから。

 …いいのかって…そりゃ、俺だって。

生きたいさ。こんなくっだらねぇことで死ぬなんて嫌だ。ゲームで死んじまうのかよ。だっせぇ。

でも終っちまったことはしょうがないだろ?なぁ?

 …しつこい奴だな。もうどうしようもないって言ってんだろ。

諦めるなたって、どうすりゃいいんだ。

 つーか、ここどこだ?

…死の世界?なんじゃそら。俺は夢の世界の住人かよ。

 俺はさ。ちっちぇころから諦めが早かったんだ。できねぇことはできねぇ。

それは絶対に覆せねぇ事実だからさ。

だからさ、止めようぜ。今更そんなかっこ悪く足掻くなんてよ。

 …もういいって、お前。どうする気だ。俺をどこへ連れてく気だよ。

俺はもう何もやろうとは思ってねぇぜ。何かするんなら一人でやってくれよ。

…え?なんだって?聞こえねぇ。…聞こえねぇよ。

おっ、おい。俺の体をどうする気だよ!おい!聞けよ…!おい!

 …なんだよ。その目は。

 …今更自分の体に未練があるのかだって?

……ねぇよ。持ってけよ。持ってけばいいじゃねえか。勝手にしやがれ!












第20話  誕 世












「やりやがったな…糞野郎!!」

 そこには疲弊した幻影の姿があった。血反吐を吐き、呼吸は乱れ先ほどまでの余裕は何処かへ消えてしまったようだった。
傍らに秀一が倒れている。幻影は秀一をゴミのように何度も何度も蹴る。
もはや応戦する力も残っていない秀一は、ピクリとも動かなかった。

「何回死んだかわかんねぇよ、畜生」

 尖った闇蛍を出現させると、秀一の肩ごとそれを突き刺した。
血がどくどくと流れるが顔を歪ませるだけで、叫び声を出さなかった。
幻影は秀一の四肢にそれを繰り返す。冷静な態度を崩さなかった今までの幻影とは違い、余裕のない表情で。
 悪魔は、酷く焦っていた。

「こんな技…想定外だったが…いや、しかしまだ大丈夫。ストックはまだ十分にあるしな…」

「…焦ってるな。幻影」

「…てめぇ、まだ生きてやがったのか」

 幻影は今にも襲い掛かりそうな目で秀一を睨んだ。
 秀一は余裕を含んだ笑みで微笑んでやると、幻影を嘲笑った。

「…フ。すっかり乱暴な声だな。余裕気取るのはもうできないか?」

「黙れ。**

「俺の大技だ。ソウルエクスプローション…SPは殆ど使ってしまったが…いい技だったろう?使うのは初めてだったが、この最後の大技のためにSPをなるべく使わないようにしていたんだ。なにせ、これはSPを大量消費するからな…」

「――五月蝿い」

 蹴りが秀一の顔面に弾けた。バキィ、そんな音を出して、唇から血が噴き出る。

「調子に乗ってんじゃねぇぞ糞。てめぇがどんだけ頑張ろうと俺には勝てねぇんだよ」

「勝てないと解っているのにあれほど焦ったのか?だというなら大した役者だな」

「っ…」

「お前は過ぎったんだろ?感じたんだろ?…死を。感じたこともない感覚を」

「五月蝿い…って言ってるだろ!」

「…それを感じさせた…俺の、勝ちだな」

「うるせえええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 目を充血させて、腕や足を我武者羅に暴れさせた。衣服に、肌に、拳に血がへばりついていく。
いくら殴ってもいくら蹴っても、秀一の視線はずれなかった。
 
 ――気に食わない!なんだコイツは!

 最初から、違う雰囲気を醸している男だとは思っていた。
しかし、これほどまでだったとは。想定外だった。

――なんで…なんで俺はここまでも…乱してるんだ…認めてるじゃねぇか…糞…!!

 だが、止まらない。もはや自我の領域を超えていた。

 何十発殴っただろう、秀一の意識はもうないのではないだろうか。深く沈黙していてその様子は確認できなかった。客観的にみれば、それは気絶しているように見えるのだが。
狂気に満ちた存在がまた狂ったように暴れるその姿は、まさに修羅だった。

「殺す殺す殺す殺す殺す絶対ぶち殺す…俺は死ぬわけにはいかねぇ俺は死んじゃいけねぇこいつは生かしてちゃいけねぇ」

 ゴスッゴスッゴスッゴスッゴスッゴスッ

 地を這うような低い音が辺りに響く。その残虐的な景色に、傍観者――いや、心紅と聖雫はただ見ているしかなかった。
 足が動かず腕が動かず、なおかつ“私達が行ってなんになる?”その言葉が頭にあるのだ。
 このTJという世界、格差社会なんてものじゃない。力があるものは上へ昇り、力が無いものは底辺に這う。
小細工など一切通じず、純粋な暴力で構成されている。女・子どもだからどうした。だれかれ構わず倒す。その概念が念頭にあるのだ。
だからこそ皆はそれに興味を引かれた。が、本当に命を晒された時、人はかくも弱い。
単純な弱肉強食の世界は、制限と律に守られた現代人には荷が重過ぎたのだ。
 
 指が動かない。武器を手に取ることができない。
決して臆病な人間じゃない。だけど、絶対的な敵を前にして動けないのは必然だった。

――命が無くなる

 本能的なわかった。この恐怖――。

「やめやが…れ!このオタンコナスがぁ!」

 幻影の後ろに神人が立っていた。あまりにも消耗していたために、気配は感じていなかった。感じる必要がなかった、というべきか。
槍を頭に叩き付けた。グラリと揺れる。

「はぁーっ…はぁーっ…」

――駄目だ…全く効いちゃいねぇ…

 素早い動きに気づいていたが、動くきになれなかった。幻影の蹴りが腹に直撃すると、神人は数メートル吹っ飛んだ。
荻野目はもう意識はないだろう。元々遠距離攻撃で防御は弱いほうだった。あれほどまでの攻撃を喰らっていれば、しょうがないことではある。

「…糞。今度ばかりは…」

 諦める。その言葉が頭に過ぎった。
 さっき言ったばっかりだ。諦めることはない、と。
しかし、精神がいくら叫んでも肉体は疲弊しきり動こうとはしない。
 …死ぬ、のか?
 
(動けよ…頼む…動けよ…おい…)

 目の前が真っ白になりそうだ。視界に網がかかったように薄れ行く。
 
――あれは、なんだ

 幻影とは違う、黒く禍禍しいものが辺り一面に“咲いた”
 濃い赤を噴出させて幻影と秀一の周りを取り巻いて、それは豪快に暴れる。

 ノイズのような音が、聞こえてきたようだった。












「…だけどよ。あんた、どこに行く気だ」

「…世界へ」

「…返答になってねぇぞ」

「お前の世界に、私は行く」

「俺の…世界?…」

「私は生きなければならない。だからお前が死ぬことはあってはならない」

「…はぁ?意味がわかんねぇよ…なんだよそれ」

「お前は感じていたはずだぞ。私の存在を」

「…なあ。あんたは何がいいたんだ」

「闘争の本能を。鋭く尖った刃を。ぐつぐつと煮え滾る奥底の闇を感じていたはずだ」

「…あんた…なんなんだ?」

「私は、お前の媒体。そしてお前は私の媒体」

「…は?」

「お前と私は相対であり、絶対だ」

「俺とあんたが…相対?絶対?矛盾しきりじゃねぇか」

「そうだ。お前と私は矛盾した存在。世界に二つの魂が器の中に存在するのだから」

「…なんだよそれ」

「言わずとも、自然と理解していくだろう。それがお前自身なのだから」

「これから理解していくことなんてないと思うぜ。俺は死んだんだからさ」

「無駄だ」

「…はぁ?何言ってんだ」




「お前が生を望まなくとも、私は生きるのだから。器よ、死の否定を続けろ。生への渇望には、私が征こう」




「――!おいっ…!どこ行くんだよ!」

「今、お前が犯されている死の鎖を絶ち切りに」

「俺が…死の鎖、だと…?」

「それでは、私の奥底で眠るがいい。さよなら、私の器」

「なんだっt―――――――――…」





「さぁ、合い間見えようか。闇の根源の傀儡よ」








 

END

[927] やっつけ仕事
ロキ - 2007年03月25日 (日) 17時05分

 正義とは、己の信念と等しい。

信じる道こそが、己の正義となる。

だからこそ、個々の正義が相対することもある。

それにより正と悪が存在するようになり、お互いが衝突する。

 だが、正と悪に唯一の共通点がある。

それは




生きること




もしくは




■ぬこと




それをなくして、信念は無い。




そして信念を通しきったものが、本当の正義と成り得るのだ。

謳え。勝利の唄を。

そして叫ぶのだ。後悔の糾弾を。










第二十一話 生きること










 火山が噴火したのか?そんな錯覚を覚える。

あれは、なんだ?霧か?海か?空か?

赤い、世界。
 
 どう解釈すればいい。この世界を。

薄れた視界の中で、松井秀一は混乱していた。

「…誰だ?…てめぇ」

 かすかに見える幻影が、向けている視線を追った。

黒いぼろぼろのマントが風に靡き、髪が随分と長い男だった。

黒鉄の砲身の長い銃が、特に目立っている。

 男は手を広げ、嬉々とした表情で言った。

「やぁ。幻影君。始めまして。私は、…そうだな。バグ、とでも呼んでくれたまえ」

まるで初めての出会いに喜ぶ女性のように、男の目は輝いて見えた。

「…■よ」

 闇蛍が、男へ向かった。

「残念ながら、私は■にたくないな」

 幻影の後ろにいた、バグ。銃口が後頭部に突きつけられた。

そして爆ぜた。

 秀一にも血が飛んでくる。

すぐさまバグは幻影の頭を掴んだ。

クシャリ。そんなマヌケな音を奏でて、潰れた。

 幻影は、かろうじて動いた指先で闇蛍を操ることができた。

バグに向かう。

 だが、避けられる。必然的に、幻影はもう一度■んだ。

そして心臓を抉り取られた。もう一度■ぬ。

再生しようとした。だが頭を切り取られた。

逃げようとした。足を切り取られた。

闇蛍動かそうとした。腕を飛ばされた。

気体に擬態しようとした。する前に弾き飛ばされた。

とにかく動こうとした。体中を穴だらけにされた。

バグの顔を確認しようとした。目だけに銃弾を喰らった。

息をしようとした。なにか大きな攻撃を喰らい、■んだ。

「もはや、ゴミだな」

 蹴り飛ばされ、幻影はまさにゴミのようにてんてんと転がった。

――恐怖だ。これが、圧倒的な、恐怖…!

幻影は、動くことが出来なかった。痛覚などもはやあってないものだった。

「…お前は…」

口が動かない。どうしようもない。逃げれない。動けない。

「…お前は一体…なんなんだ!!!」

バグは、きょとん、とした顔で答えた。

「私か?私は、私だ」

そして、もう一度、幻影は■んだ。

















「さぁて。あと何回殺せば、私は帰れるのかな?」

 バグは辺りにあった岩の上に座った。銃を膝の上に乗せ、気楽の表情で。

幻影は、再生の最中だ。呼吸する器官があるのかはわからないが、幻影の呼吸は乱れきっていた。

「…帰る…だと…。てめぇみたいなヤツを受け入れるッ…世界が…どこにあるってんだ…ッ!」

「受け入れる?それは違うぞ幻影君。私を受け入れるのではない。私が世界を受け入れるんだ」

「うるせぇよ…くそっ…!」

「君が聞いたのに、うるせぇとはわからん話だな。全く失礼だ」

「…なんだよ…てめぇ…。なんのためにでてきやがった…!」

「生きるためだよ。それ以外に何があるというんだ」

 単純明快、とはちょっと違うが。頭が真っ白になるくらいに理解しやすい答えだった。

「畜生ッ…。あんたら人間は生きて…俺は■ぬってことか…」

「私は人間ではないが、まぁそういうことだな」

「……ク…ククク…マジで…やってらんねぇよ…ハハ…」

「まぁ、そう気を落とすな。たかが君という存在が消えるだけだ。そこまでたいした事じゃあないだろう」

「クハッ…あんた頭おかしいんじゃねぇ?笑える冗談だぜ。俺にしちゃたいした…たいした…たいした事すぎるんだよ!!」

「…?そうか。まぁ、私にとってはたいしたことじゃないものでね」

「この…糞野郎が…」

 バグは、フッと鼻で笑う。

銃口を幻影に向けて、いつでも放てるようにトリガーに指をあてがった。

銃の周りの空気が騒ぎ立てるように、どこか物々しい音が鳴る。

 幻影がバグの表情を確認した時。その時バグの表情は、改心の笑みだった。






「糞は、貴様だろう?なぁ。傀儡」

 






―――GAME OVER







 その場にいた全ての人間の意識が、元の世界に引き戻された瞬間だった。











To Be Continued.......?

[1051]
ロキ - 2007年09月22日 (土) 19時28分

 気づいたら、こうなっていた。
それがどうこうとかそういう問題じゃないんだ。
問題は、そう。俺がここからどうするか。
どうしようかとか、そういうのもあんまり関係ないような気もするのだが、俺は考えていた。


この状況をどうやって打破しようかと。


第一、俺は犯罪を犯したわけじゃないし、
何か悪いことをした覚えも……ないことはないが、そんな大それたことはしていないじゃないか。
どこをどうしたこんなことになってしまうんだよ。
俺の人生はどうなってんだ。

 誰か教えてくれ。

何故俺は、こんなところで拘束されているんだ?











第二十三話 LOVE and PEACE










広い室内で複数の人数に囲まれて、なおかつその囲んでいる男達が屈強な男達だというから彼は辟易していた。

ふと目が覚めてから、こうなっていたのだ。その前のことはなにもしらない。

ただ、男達の視線から見て草薙弘毅は決してよい印象をもたれているわけではなさそうだ。

喋ることも許される空気ではない。

空気を喋っても多分、むなしく室内に消えるだけで、男達は反応してくれないのだろう。



 ガチャリと扉が開く音がした。

今、弘毅は振り向くことができないが足音からして、こちらへ向かってきている。

すぐの対面になるようだ。


「ふーん……。こんな少年かあ」

「はっ。草薙弘毅、18歳高校三年生、指導・補導暦あり。父・母との三人家族。喧嘩早い性格のようですが、能力が劣っていると小さくなって――」

「おい。もういいって」

「はっ」


 後ろで声がするも、弘毅はただぼおっと地面に座り込んでいるしかなかった。


 ようやく弘毅の前に現れたのは、まだ若そうだがピシャリとスーツを着た男だった。

隣には秘書らしき男性がいて、その男もまた若く、顔立ちはよかった。

男――胸に笹岩とネームをつけている。

笹岩は弘毅を舐めるように見まわして、改めて「うん」と頷いて見せた。


「OK。歓迎するよ。草薙君」









 *









「大反対だったんだぜ。俺は」何回も言うけどな。

 そうやって霧島は、南山に愚痴をこぼした。

「そもそもゲームのくせに命の危険を帯びるなんて馬鹿げてる!

こんなの、どこかの倫理団体から抗議がくるに決まってる!そうだろ!?」

南山は酷く破損したプログラムを修復するために絶えず指を動かしているが、
霧島の愚痴を聞くことにあまり苦労はしていないようだった。

「もう終ったことじゃないですか。結局、プレイヤー側が勝ったから皆生還したんだし……」

「それは結果論であってな!?……あいつは本気だったぜ。命をなんとも思っていないような顔だった」

「めったなこと言わないでください。誰かに聞かれたら大変ですよ」

とはいえ、この室内には霧島と南山以外人はいなかった。
TJの構成プログラムは国家秘密の域にあり、幹部しか閲覧禁止の事項だった。
末端の社員(それでもエリート達だが)には、スーパーコンピュータに触ることさえも許されない。

「しかもなんだ?団体やプレイヤー側から抗議の電話が一本もきてないんだぜ?……一体どんな洗脳したんだか」

「それはありますよね。実質、“何かが起こった”というのは皆感じていたでしょうから」

「中の途中経過はイベント発言当初から俺達は閲覧ができないようにロックがかかっていたし、

後で状態を確認したらこんなにも世界がぶっこわれてやがる!意味がわからねぇ!」

「まあまあ……」

「落ち着けねぇ!ああ!なんと言われても落ち着けねぇ!それで今度はなんだ!?

プレイヤーを集めて大会開くだ!?舐めてんのかあのボンボン!」

「そんなこと私に言われても……」

 霧島は、血が昇って赤くなっていた。

そんな自分に気づいたのかはわからないが、深呼吸をして一呼吸置いた。

会社の社長だ。そして、国から信頼をおかれ国を挙げての一大プロジェクトに取り組む最高責任者として任せられた男だ。

そもそもそんな危険なはずはないのだ、が。

疲れてる。解っていた。だが、どうしても考えずにはいられない。

笹山が一体何を考えているのか、何をしようとしているのか。

それはわからない。だが、一つだけわかっていることがあった。

「いいか。ぜったいあいつはまた何かやらかす。その時ヤツをを止めるのは、俺達しかいないんだ」

 霧島は肘をついて、ディスプレイを見つめながら言った。

数秒たっても返事は返ってこないし、南山は頷かなかった。

ああ。わかってる。

「今のは、独り言だ」

[1053] 遅れてるかもしれませんが・・・
はせピン - 2007年09月26日 (水) 15時33分

遅れてるかもしれませんが・・・

名前[はせピン]
年齢[15歳]
職業[ガンナー]
属性[大地/雷]
性格[のんびり屋で落ち着きがある、だが時には落ち着きがなくなる]
経験値[パワー3、スピード6、ガード4、テクニック5、知識1]
その他[武器はショットガンとマグナムをもっている。]

ストーリーは作者さんにお願いします。

[1067]
ロキ - 2007年09月29日 (土) 21時08分

 快適なゲーム環境が一瞬にして崩れた。一体、これはどういうことなんだろう。

奈良原聖雫は深くため息をついた。そして、力なくうな垂れる。

彼女は年齢のわりに顔も趣味も大人びていた。

それはもちろん性格も例外でなく、小悪魔のような内面の割りに中身はしっかりとしていた。

だからこの事態がまずい状態にあることも、彼女には理解できていた。



 向こうの世界から目覚め、心地よいユーザーシート(座席)の上で見たこちら側の世界は随分と慌しげだった。

席は離れていたが、一緒にチームを組んでいたゴジラという男は意識不明のままどこかへ搬送されてしまったし、

草薙弘毅はまだプレイ中のはずであるのに無理やり回線を切り離され、

こちらは混乱状態のまま拘束され黒服の男達にどこかへ連れて行かれてしまった。

そしてなによりの衝撃は、自らのユーザーカードだった。

イベント達成と金色の文字で映し出された画面には、あの恐怖と相当数の経験値が表記されていた。

いや、表記されたというのは少し語弊がある。それは随分と力のないものだった。


 獲得経験値:9999999

 獲得資金:9999999


限界点ぴったり。このような数字をこのゲームで見たのは初めてだった。

いや、これがあと三桁すくなかったとしてもまだ聖雫には見たことのない数字であったのには変わりは無い。

思わず息を飲んだ。

聖雫は震える手で、ユーザーカードの挿入口の隣にあるボタンを押して、カードを取り出した。



 赤い文字で記されたランクB。


ランクDからの予想以上の飛び級に、聖雫は口をポカンと開けているしかなかった。















第二十四話 長い一日の終わりから始まった一日
















 本来であるなら、一日一時間プレイしていたのならランクを1つ上げるのに一年かかる。

そしてそれが上に行くことにランクを上げることは難しくなっていく。

しかもE D C B B+ A A+ S と、階級は八段階。(一定の特殊条件を満たすとさらに上がある)

Sになるのには四年や五年では足らないといわれている。そもそも最上級のボスを倒さないとAランクからのランクアップは難しいのだが。

それらを確認して言えば、聖雫は約三年分の短縮をしたということになる。

“何にもせずに、ただ呆然と生き延びた企画のお陰で”


(……冗談じゃない……。こんなの、私望んでないよ……)


 誰だってそうだ。呆然と見ていただけなのに報酬を貰えるなんてありえない。プライドが汚された。


 だから聖雫は、同じ状況であったはずの新川 心紅を探していた。

しかし、探せども探せども彼女はいない。

この広いゲームセンターをもう何週かは歩いたが、彼女の姿はどこにも見えない。


(……もしかしたら、弘毅と一緒にどっか連れてかれちゃったのかもね)


そう思うと、馬鹿馬鹿しくなってきた。 

聖雫は足をとめて、空いてる席を探した。

こうなってしまった以上、この格段に跳ね上がった能力を活用させてもらうしかない。

試しに、誰かと闘ってみよう。


「あ、痛ッ」


 ドスン、と誰かにぶつかる。

少なくとも聖雫よりは身長は高いようで、聖雫は思わずふらついたが、ぶつかった男は聖雫の三倍も跳ね飛ばされた。


(……あ、そっか。TJの世界の能力の上昇とこっちの世界の能力の上昇はある程度同じなんだ)


 心なしか力がみなぎっているような気がする。全く、人体にまで影響を及ぼすとは、反則なゲームだ。

だいぶ力が上がっていることを自覚したとついでに、聖雫は吹き飛ばした男を見た。


「だっ、だいじょうぶ?」

「えっあっおっうっ、うんっ!だだいじょうぶ!」


男はだいぶ挙動不審で、どこか情けなかった。


「え…大丈夫?怪我したの?」

「いいいや!全然大丈夫だっから!」

「ホントに?」


男のソレはあきらかに健常者ではなかったが、そういう男なのだろうと聖雫は結論した。


「ほほんとにだだいじょうぶですから!ええ!それでは!」

「えぇ!?」


男は猛スピードでどこかへ消えてしまい、聖雫が一人ぽつんと取り残された。

その後、ああ。そうだ。と自分の目的を思い出して、一つ呟いて聖雫はその場を後にした。

「うん。……ちょっとキモかったな」





















「あああああああああああああああああしまったああああああああああ!!またきょどってしまった……」

 さきほどの場所とはだいぶ離れた場所で、竜矢は後悔した。

竜矢は女性が苦手で、普段快活に話せないでいた。

「僕はオタクじゃないのに……オタクという皮を被った天使なのに……くそう」

 今日はなんて日なんだ、そう竜矢は嘆いた。

朝からそうだ。昨日、無理して夜中までアニメを見ていたせいで今日の最大級のイベントに参加できなかったし、

そして女子と話すチャンスがあったのに、またきょどってしまったじゃないか!

「……いや、そもそも待てよ。……そうか!僕は女なんかいらない!二次元があるじゃないか!」

 喜ばしい結論に至ったわけだが、彼はもちろん愚痴をいいつつ悔しがるためにこのゲームセンターに来たわけじゃない。

TJをプレイにしにきたのだ。

 竜矢はユーザーシートに座り、カードと紙幣を挿入口に入れ込みヘルメットを着けた。






本日、午後三時五分。




その時刻での全国総プレイヤー350394人が、その世界に足を踏み入れた。




残酷な闘いがあったその場所を、彼等は無垢な感情で過ごしていた。

[1071] すいませんやっぱり変えます
はせピン - 2007年10月03日 (水) 15時20分

名前[長谷川 卓哉]
年齢[15]
職業[魔剣士]
属性[地・雷]
性格[マイペースで短気だが優しい場面もある。]
経験値[パワー4、スピード4、ガード4、テクニック4、知識4]
その他[魔剣ディアボロスと言う剣を持っていて自分がピンチになると魔剣の刃が大きくなり、威力と経験値が上がる。だが自分に少々ダメージ受ける]
魔剣解放時[パワー5、スピード7、ガード1、テクニック2、知識5]

ストーリーはロキさんにお願いします。

[1073] 新たなる始り
はせピン - 2007年10月04日 (木) 18時37分

(トゥルルルル!ガチャ!)

長谷川「はい、長谷川です。」

歌舞伎「長谷川!俺だよ!俺!」

長谷川「歌舞伎か・・・何だ?」

歌舞伎「なんだじゃねえよ!それより極楽さんから電話があってさ!」

長谷川「あぁ!あのかなりでかいオジサンね、どうしたんだ?」

歌舞伎「今すぐ近くのゲームセンターに来いって、言ってたぜ!」

長谷川「ゲームセンター?まさか最近話題になっている、あの謎のゲームか?」

歌舞伎「そうじゃねえか、とにかく行こうぜ!」

長谷川「あぁ、わかったよすぐ行く!」

長谷川は玄関のドアを開きゲームセンターに向かった。

ゲームセンター

歌舞伎「長谷川、遅いぞ!」

長谷川「すまん!すまん!それより極楽さんは?」

極楽「お〜い!卓哉君、大次郎君!ここだよ〜!」

長谷川が見た先は身長は195pくらいで体格は相撲より横幅のおじさんだった。

長谷川「相変わらず、でかいですねぇー!」

極楽「ははは!それよりTJやらんか?」

歌舞伎「俺はやるぜ!もしかしたら違うゲームセンターでこのゲームやっている女性にあったら・・・へへへへ・・・」

歌舞伎はにやけながら言った。

長谷川「おい!顔にやけんなよ、このナンパ男!」

極楽「おい、おい、大次郎君はやるが卓哉君は?」

長谷川「まぁ、俺もこういうゲームやってみたかったし、やります。」

極楽「おー!さすがだね、じゃあ千円入れてヘルメットかぶれ」

長谷川「千円!?高いなー」

歌舞伎「何だ?まさかお前百円しか持ってきてないとか?」

長谷川「そんな訳ねぇよ!ちゃんと持って来てるよ!」

長谷川は財布から千円を取り出し、金を入れるところに入れ、ヘルメットをかぶったら、ヘルメットから声がした。

長谷川「何だ?画面出して説明してくれよな〜!」

長谷川はそのあといろいろ説明を聞いた。

長谷川「名前〜?そこまでやるのかよ?え〜っと、長谷川っと!」

長谷川「次は年齢?15歳っと!」

長谷川「最後は職業か?俺は剣士や騎士などもいいが俺は剣と魔法を使えるのがいい、だから魔剣士にしよう!」

長谷川「最後に属性?俺は地と雷だな!」

長谷川はボタンを押した。

「登録完了ーそれでは無限の戦いをお楽しみください」

長谷川「無限の戦いか・・・まさにウォーゲームだな」

長谷川の意識はプツンと消えた。


一話 終

[1075]
はせピン - 2007年10月06日 (土) 13時09分

第二話

長谷川「ここがTJの世界か〜!」

あたりを見回したらすぐ近くに機械だらけの街があった。

極楽「いや、ここはワシがここでランクアップにちょうどいい町、ミュートシティだ!」

歌舞伎「へぇ〜!でもなんで極楽さんがこんなところでランクアップしてたんだよ?」

極楽「いい質問だねぇ〜、ここの街にギルドって言うのがあってここでチームを作ったりするんだよ。」

長谷川「それじゃあ、とにかく行ってみよう、」

三人はミュートシティに入った。

長谷川「すげぇー!!」

極楽「ははは!ここのモンスターはほとんど機械だからな、」

歌舞伎「ここっていっても単なる討伐でしょ?」

極楽「まぁ、そうだなほらここだ!」

長谷川「それじゃあ、入りますか!」

極楽「おっと!卓哉君はワシの後ろにいてくれ、荒っぽい奴がいるからな、」

(ガラン!)

極楽「失礼するぜぇー!!」

?「あれ?極楽さん久しぶりじゃないですか!」

極楽「おぉ、横溝!元気か!」

横溝「まぁ、まぁですね。僕はもう現実に戻れないんですから」

長谷川(現実に戻れない?どういうことだ?)

長谷川は首をかしげながら思った。

極楽「そうだな、お前たしかCランクの機械モンスターにやられたてデータとなって消えるはずだが消えずにここにいる立場だからな」

歌舞伎「なぁ、極楽さん、なんでこの人現実に戻れないんだ?」

横溝「ははは、それはですね。どこかの廃工場でエアバスターと言う巨大な機械モンスターがいて、そいつの必殺技でやられたんです。噂では殺された人はデータとなって消えるはずなのですがなぜか消えず、僕はこのままここで情報を入手し、ここに来る冒険者達に教えてあげてるんです。」

極楽「まぁ、現代に戻れないのは残酷だがデータとなって消えないのはありがたいからな」

横溝「はい、それでもありがたいです。僕は戦えるのですが経験値が少ないものであんまり役に立ちません」

長谷川「それじゃあ、ちょっと教えてもらいませんかねぇ〜」

横溝「はぁ、なにをですか?」

横溝は首をかしげながら言った。

長谷川「とりあえずあんたは戦えるはずだ、」

横溝「はい、ランクはEですが・・・」

長谷川「俺と歌舞伎はGだ、だから俺達のランクアップのためにちょっと手伝ってくれないかな?」

極楽「なるほどな、Gランクの二人を横溝が二人に丁度いい場所に連れて行き、ランクアップと経験値を上げるように協力してほしいということか」

長谷川「流石!極楽さん!」

横溝「なるほど!そういうことですね、ありがたくお受けします。」

歌舞伎「流石、長谷川だな〜!」

横溝「それではまず、Gランクに最適のジズ工場に行きましょう。」

長谷川「ジズ工場?」

横溝「はい、最近ここの冒険者に被害を与えている、最悪な工場です。そこの警備ロボを潰し工場を爆破すれば成功です。」

歌舞伎「なるほど、そういうことか」

横溝「しかし、これは悪魔でも体感型人ゲームで相手の攻撃をくらったら、貴方方にダメージが喰らいます。注意してください。」

長谷川「と、言うことはモンスターの攻撃が強力だったら、自分に強烈な痛みが来るということか」

横溝「そういうことです。なら行きましょう。」

三人はジズ工場に向かった。


ジズ工場

長谷川「でけぇなぁ〜!」

歌舞伎「警備員は変な服着てやがるし!」

横溝「気をつけてください、奴の手につけている鉄の爪はビームマシンガンを出せるし、接近戦にも使えるんです。」

長谷川「そうか、なら相手にビーム出される前に倒せばいいんだな!それじゃ、行くか!」

横溝「ちょっと待ってください!」

長谷川「な、何だ!」

横溝「長谷川さんたしか魔剣士でしたよね?」

長谷川「そうだけど、それがどうしたんですか?」

横溝「貴方、魔法使えますか?」

長谷川「魔法?全然わからない・・・」

(どてん!)

横溝「ちょっと!魔剣士で魔法を知らないってどういう意味ですか!?」

長谷川「そう言われたって、俺ここ初めてだし、全然わかんねぇよ!!」

横溝「まぁ、簡単に教えますが頭の中で想像してやればいいんです。名前を言えば。」

長谷川「名前?」

横溝「はい、簡単に貴方の属性は雷と地ですね。なら雷ならば雷の呪文らしい言葉を言えばいいんです。」

長谷川「雷らしい言葉?」

横溝「私ではあんまりわからないので極楽さんに聞けばいいと思います。」

長谷川「横溝さんじゃわからないのかい、ならとりあえずここの工場を爆破させよう、行くぞ!!」

三人は工場に入った。

警備員「侵入者ハッケン!ゲキタイセヨ!」

長谷川「ちっ!見つかったか!」

(ビビビビ!)

警備員はビームを撃った。

長谷川「うぉ!危ねぇ!」

長谷川は横っとびでビームを避けた。

横溝「長谷川さん凄いですねぇ!」

長谷川「いや、今のは単に避けただけ、それじゃあ、一丁やるか!」

長谷川は剣を取り出し、警備員を・・・

(ズバ!)

長谷川「よっしゃー!」

歌舞伎「すげぇー!」

横溝「まだ喜ぶのは速いですよ・・・」

長谷川「なんじゃ、こりゃあ!!」

歌舞伎「ロボットかよ!!」

警備員二人と警備員の間にいるロボットにビックリした。

横溝「あれはスイーパーです。この工場のガードロボでしょう!」

長谷川「それじゃあ、壊すしかないな」

歌舞伎「それじゃあ、警備員は俺に任せろ!丁度俺も魔法を使えそうだ!」

横溝「えぇ!歌舞伎さん!貴方は忍者でしょう!!」

歌舞伎「だからそれに合った魔法だよ!訳して術だ!」

警備員「ハイジョスル!」

警備員二人は歌舞伎を襲いかかった。

歌舞伎「よし!丁度二人一緒か、行くぜ!妖風!!」

歌舞伎が叫んだ途端、竜巻が警備員二人を襲い、吹っ飛ばした!

歌舞伎「おっしゃー!!できたぜ!」

横溝「歌舞伎さん、忍者だからと言っても術を使えるなんて・・・」

長谷川「俺も使ってやる。」

スイーパー「ムォン!」

スイーパーの腕から煙がでた。

長谷川「うわ!前が見えねぇ!」

横溝「多分、煙で視界を防ぐつもりでしょう!」

歌舞伎「よし、また術を使うぜ!妖風!!」

(ビュオォォォ!!)

歌舞伎の竜巻で煙があとかたもなく消えた。

長谷川「サンキュウー!歌舞伎!行くぜ!ウラァ!」

長谷川はスイーパーの腕を斬り落とした。

スイーパー「ムォン!」

両腕を斬られたスイーパーは逃げようとするが・・・

横溝「逃がしませんよ!」

横溝がスイーパーの頭を斬った。

長谷川「ナイス!横溝さん!!」

横溝「とりあえず最深部に行きましょう!」

長谷川「行きますか!!」

三人は工場の最深部に向かった。

最深部

長谷川「おっ、あった!」

横溝「これが爆破装置ですね。」

歌舞伎「長谷川、押せよ!」

長谷川「あぁ、わかった。」

(ピコ!ビー!ビー!侵入者!撃退せよ!!)

長谷川「なっ、なんだ!?」

横溝「僕たちはここの関係者じゃないから侵入者なのでしょう」

長谷川「いや・・どうみても俺達侵入者だろ・・・」

(ビー!ビー!ガードスコーピオン作動!)

長谷川「なっ、何だ?」

歌舞伎「シャッターが・・・」

横溝「開いていく・・・」

シャッターが開いたそこにはサソリ型の機械が襲いかかった。

第二話 終




[1076]
はせピン - 2007年10月07日 (日) 10時32分

第三話 

(ビー!ビー!侵入者撃退せよ!!)

横溝「どうやらあのサソリのロボットがこの工場のボスのようですね。」

歌舞伎「あいつに弱点あんのかよ。」

長谷川「とにかく、眺めている暇もないようだ。」

ガードスコーピオン「侵入者は排除する!!」

(ウイィィィン!)

ガードスコーピオンの体のライトが長谷川を照らした。

長谷川「うわ!何だよ」

ガードスコーピオン「ピピピ!ターゲット完了、レーザー発射!」

(ピシュウン!!)

ガードスコーピオンの手からレーザーが出て、レーザーは長谷川の肩をかすった。

長谷川「うっ!」

横溝「長谷川さん!?」

長谷川「大丈夫!かすり傷だ。」

歌舞伎「ウラァ!」

歌舞伎はガードスコーピオンに攻撃し、スコーピオンの体の部品を壊しまくった。

ガードスコーピオン「ムォン!危険!危険!これよりカウンターモードにうつります。」

ガードスコーピオンは尻尾を上げた。

歌舞伎「なんだ、ありゃあ何の真似だおい、」

横溝「なんだかわからないですけど・・・」

長谷川「攻撃するしかないだろ!オリヤァ!」

(ザシュ!)

長谷川がスコーピオンの足を斬った途端、スコーピオンの尻尾の先端が光り、長谷川に定めてレーザーを発射した。

(ピシュウ!!)

長谷川「ぐわぁ!!」

横溝「長谷川さんの肩にレーザーが・・・」

スコーピオンのレーザーが肩に直撃し、長谷川は当たった肩を押えた。

歌舞伎「おいおい!まさかあのサソリ、俺達が攻撃したらレーザーで返す気だぜ」

横溝「だとしたら、あの尻尾がやっかいですね。」

長谷川「はぁ・・・はぁ・・・」

横溝「長谷川さんは休んでてください、ここは僕と歌舞伎さんがやりますから」

歌舞伎「でもよ、あのサソリ、まだ尻尾上げてるんだぜ攻撃したら返されるよ。」

長谷川(くそ!あのときカウンターが来ると知ってたら・・・)

(力を出せ)

長谷川(なっ、何だ!頭の中から声が響く!)

(当たり前だろ、お前が俺の力を求めているんだろうが)

長谷川(だけど斬る以外にできることがないんだ)

(お前は魔剣士だろ、魔法が使えるはずだぜ)

長谷川(でもどうやったらできるかわからないんだ)

(じゃあ教えてやる。あのサソリの尻尾に定めて、魔法を唱えな!)

長谷川(だが、名前が知っていないんだ)

(そうならそういえよなー!じゃあお前に初級の雷魔法の名前を教えてやるよ!名前はライトニングだ)

長谷川(わかったライトニングだな、)

(あぁ、だがまだお前は俺の魂が宿っている剣を持っていない、速く俺を手に入れてくれ、)

長谷川(魂が宿っている剣?なんだそれは!?)

長谷川は頭の中で叫ぶが声の気配が無くなっていた。

長谷川(ライトニング、そう言えばいいんだな)

長谷川はスッ!っと立ちあがった。

横溝「長谷川さん何をする気ですか!?」

長谷川はスコーピオンの尻尾に指を向けて言った。

長谷川「ライトニング!!」

(ピシャアン!)

長谷川が叫んだ途端、ガードスコーピオンの尻尾に雷が落ち、スコーピオンの尻尾は壊れた。

ガードスコーピオン「制御不能!制御不能!」

ガードスコーピオンは動きが遅くなり、あたりを暴れまわった。

横溝「すごい・・・なんて雷魔法だ・・・」

長谷川「トドメだ!!」

歌舞伎「おい!ズルイぞ一緒に止め刺そうぜ!」

長谷川「じゃあ、行くぞ!ライトニング!!」

歌舞伎「氷刃!!」

長谷川の雷がスコーピオンの体に直撃し、歌舞伎の術は地面から氷の刺が出て、スコーピオンの体を貫いた!

ガードスコーピオン「制御不能、制・・御不・・能・・・」

ガードスコーピオンは完全に止まり、体の部品が全て外れてしまった。

長谷川「やったのか・・・」

横溝「恐らくそうでしょう、」

歌舞伎「と、言うことは・・・」

長谷川「俺達勝ったんだー!!」

歌舞伎「横溝さん、俺達レベルアップしたのか?」

横溝「それは一回現実に戻らないといけないですね。」

長谷川「えっ、なんで?」

長谷川は首をかしげた。

横溝「登録してから無事に現実に戻ったらカードをもらえるんです。それにランクを見れば上がったかわかると思います。」

長谷川「へぇー、カードもらえるのか!」

横溝「はい、でも僕はもう戻れないし経験値も上がらないので意味ないでしょう、とりあえずミュートシティに戻って極楽さんにいいましょう。」

長谷川「そうッスね!戻りますか!」

三人はミュートシティに戻った。

ミュートシティギルド

極楽「ほぉー!すげぇな、おい!」

横溝「どうですか?」

極楽「あぁ、中々じゃねえか横溝!それと二人とも!」

長谷川「いやぁ、それほどでも・・・」

極楽「そう言えば卓哉君、肩どうしたんだい?」

長谷川「あぁ、これッスか?これは工場のボスロボットにやられて・・・」

極楽「うわぁ、こりゃあまずいよ!現実に戻っても痛みが続くんだから」

長谷川「わかってますよ。」

?「ちょっとそこのキミ」

長谷川「えっ、なんでしょうか?」

長谷川が振り向くとそこには白い髪で片目を黒い眼帯をつけている男だった。

?「その肩、回復してあげよう。」

長谷川「えっ!いいですよ!別に・・・」

?「いいからちょっと肩をこっちに向けなさい。」

長谷川「は、はい」

長谷川は男にケガした肩を見せたとき男は長谷川の肩に手を当て魔法を唱えた。

?「フルケア」

男がそう言った途端男の手から白い光が出て長谷川の肩に触れた途端、傷が無くなっていた。

歌舞伎「すげぇ!大けがしてた肩が・・・」

横溝「一瞬にして治った・・・」

極楽「・・・・・」

長谷川「あ、ありがとうございます!」

?「いや、いいんだよ。また円があったら会おう!」

男はギルドから出て行った。

長谷川「あの人、凄いよ!」

極楽「あぁ、あの上級回復魔法を使えることは相当な奴だな。」

長谷川「極楽さん、どうしたんですか?」

極楽「いや、別に、とりあえず現実に戻ろう、横溝、じゃあな!」

横溝「また来てくださいねー!」

三人は現実に戻った。

「ゲーム終了、ランクGガードスコーピオン、戦闘員3人、スイーパーを倒したので850の経験値と1000イェンです。」

「二人協力でしたので経験値、イェンを半分にします。」

「両者経験値400、500イェンです。」

「両者ランクアップFと経験値アップです。」

長谷川「やったー!1ランクアップした。」

「またのご利用お待ちしています。」

長谷川「ご利用じゃなくて、プレイだろ、これ!」

歌舞伎「ふぅー!長谷川もランクアップしたか?」

長谷川「あぁ、1ランクだけどな」

極楽「まぁ、いいじゃないか!ランクアップしないよりはマシだろ?」

長谷川「まぁ、そうッスね!それじゃあ僕帰ります。」

歌舞伎「俺も帰るか!極楽さんまた誘ってねー!」

極楽「おぉ、暇があればな!」

帰り道

長谷川(おかしぃ、何故あのとき頭の中から声が響いたんだ?錯覚かな?」

長谷川は不安になりながら家に帰って行った。

第三話 終




[1077] ここで最終話ですが、わがまま言って申し訳ありませんでした。
はせピン - 2007年10月07日 (日) 16時04分

第三話 魔剣ディアボロス

長谷川「あぁーあ!今日歌舞伎誘ってTJやりに行こうかな!」

(ピンポーン!)

歌舞伎の母「あら、長谷川君!どうしたの?」

長谷川「歌舞伎君いますかぁ?」

歌舞伎の母「ごめんねー!さっきゲームセンターに行っちゃった。」

長谷川「あいつ一人で!?そうですか」

歌舞伎の母「本当にごめんねー!大次郎に言っておくわー!」

長谷川「いえ、いいんですよ!俺も行くところなんですから!」

長谷川は笑いながら言った。

歌舞伎の母「あら、そうなの?なら良かったわね。」

長谷川「それでは行きますんでさよならー!」

長谷川はゲームセンターに向かった。

ゲームセンター

長谷川「おぉ、あった、あった!早速、カードと千円を入れてと、」

(ウイィィィン!)

長谷川「それでヘルメットかぶってと、よし今日も頑張るぜー!」

ミュートシティ

長谷川「よし、早速ギルドに行こう」

長谷川はギルドの中に入った。

横溝「あれ?長谷川さんじゃないですか!」

長谷川「横溝さん、今日歌舞伎ここに来ませんでした?」

横溝「歌舞伎さんならさっき来ましたがここの張り紙にある、討伐モンスターを見て、ランクFのモンスターの討伐に行きました。」

長谷川「へぇー!でもあいつ一人で大丈夫なのかな?」

横溝「さぁ〜、歌舞伎さんここから出るとき、僕に俺にはとっておきの術があるんだ!誰にも負けたくねえからなって、言ってましたけど」

長谷川「とっておきの術〜?」

横溝「まぁ、前みたいな術を強くしたんでしょう。」

(ガタン!)

?「失礼するよ、横溝君!」

長谷川「あれ、あんたは・・・」

長谷川が見た先は初めてTJをし怪我をしたがその怪我を直してくれた人であった。」

横溝「カレルさん、どうしたんですか?」

長谷川「カレルさん?」

横溝「はい、前来たとき他の人達が驚いてたんで名前聞いたら、剣聖カレルって言われたらしいです。」

長谷川「マジかい、でもなんでここに?」

カレル「ちょっと君に話があってね。ちょっと聞いてくれるかい?」

長谷川「はぁ、いいですけど・・・」

カレル「よし、なら座って話そう、立って話すのは嫌いでね。ははは!」

カレルは笑いながら椅子に座り長谷川も座った。

カレル「実は君に手伝ってほしいんだ。」

長谷川「えっ、何をですか?」

カレル「ある人物の依頼でこの宝石を隣の街のファーストシティに届けてほしいと言う依頼がね、」

長谷川「それで?」

カレル「私と一緒にファーストシティに行こうと言うことさ!」

長谷川「でもなんでFランクの俺が?」

カレル「まぁ、君に見せたいものがあるんでね。君が行くなら成立だが君が嫌なら仕方がないがどうする?」

長谷川「うーん、まぁ、困っているみたいだし、手伝いましょう!」

カレル「よし、商談成立だな早速行こう、トラックを用意してあるんだ。」

二人が外を出た途端、すぐ前にトラックがあった。

カレル「乗りたまえ。」

二人は後ろの席に乗ったらそこには四人の剣士たちがいた。

男「カレルさん、その人は誰ですか?」

カレル「私の協力者だ。」

長谷川「宜しくっす!」

長谷川はお辞儀し近くに座った。

カレル「運転手!ファーストシティに行ってくれ!」

運転手「はい、わかりました!」

運転手がそう言うとトラックは動き出しミュートシティがどんどん見えなくなっていった。

それから30分

長谷川「カレルさんあと何分でファーストシティに着くんですか?」

カレル「あと三十分だがどうしたんだい?」

長谷川「いや、ただ聞いただけです。」

カレル「そうか・・・」

二人が話終わり、また沈黙が続いてたとき、

(ドォン!)

長谷川「なっ、何だ!?」

運転手「カレルさん!後ろからドラゴンが!」

カレル「やはり来たか、このルートじゃ、流石に見つかるだろうな退治する。」

長谷川「俺も行きます。」

カレル「そう言うかと思ってたよ、君が死んでもすぐに生き返らせるからな。行くぞ!」

トラックはストップし、二人は外に出た、目の前にいるのは緑色の体と強靭そうな羽をもったドラゴンがいた。

ドラゴン「キシャアァァァ!!」

カレル「やはりな、だがここで終わらせてやろう、」

カレルは腰にある刀を抜いた、刀は長谷川と違い二倍長い刀だった。

(ズバ!!)

ドラゴン「グオォォォ!!」

ドラゴンは右翼を斬り落とされ怒り、長谷川に襲いかかった。

長谷川「ライトニング!!」

(ピシャアン!)

長谷川の雷がドラゴンに当たるがドラゴンは怯まず長谷川の腹を・・・

(ガブ!ザシュ!)

鋭い牙でかまれた長谷川は即死しドラゴンは長谷川を投げた。

(ドシャア!)

カレル「やはり、Fランクは即死か・・・だが約束は破らん今生き返らせるぞ!レイズデッド!」

倒れた長谷川の上に白い魔方陣が現れ長谷川を包み、長谷川を生き返らせた。

長谷川「あいててて、あれ?傷が無くなってる!」

カレル「最後だくらえ!」

(ザシュ!ドシャア!)

ドラゴンは首を斬られ、首はものすごい音をたて、落ち、長谷川はカレルの強さに呆然としていた。

カレル「速く中に入れ、風邪ひくぞ。」

二人はまたトラックに入り、トラックは再び動きだした。そして三十分後、

ファーストシティ

カレル「着いたぞ、ここがファーストシティだ。」

長谷川「うわぁ!ミュートシティよりすげぇ!」

カレル「ここが依頼主の家だ。」

(ガチャ!)

執事「これはカレル様、例の者ちゃんと持ってきましたか?」

カレル「このとおりだ。」

カレルは赤いコートのポケットから紫色の宝石を取り出した。

執事「ほぉー、さすがこのまぶしい宝石は間違いなく、ダークネスクリスタルですな、」

カレル「約束どおり、ゴレスに会わせてもらおう」

執事「いいでしょう、旦那さま、カレル様がおめどおりにかかれましたよ。」

執事が叫んだ途端、ドアから出てきたのは茶髪の長い髪で茶色いコートを着ている男だった。

ゴレス「よぉ、カレル!ん?そっちは知りあいか?」

ゴレスは長谷川に指をさしながら言った。

カレル「まぁな、それより宝石を持ってきたんだ、あの剣見せてくれないかい?」

ゴレス「なにぃ!魔剣ディアボロスを見せろだと!やめておけ、あの剣は誰にも手にすることができないのだぞ!」

カレル「いや、見せるだけでいいんだ、」

ゴレス「うぅ、わかったよ!だけどソイツに持たせんなよ!資格無いもの剣の妖気で死ぬんだからよ!」

カレル「ありがとう、君も上がれ、」

長谷川「あっ、はい!」

二人はゴレスの家に上がり、ゴレスに着いていった。

ゴレス「ほらよ、この部屋に魔剣ディアボロスがある。」

長谷川(なんかいやな予感がする。また頭が響いてきた。)

(よぉ、いよいよだなー)

長谷川の頭の中から声が響いた。

長谷川(お前はこの前の!)

(あぁ、そうだいよいよお前が俺を手にする時が来るとはな!)

長谷川(なぜ、俺が魔剣を持つんだ?)

(まぁ、落ち着けよ。俺とお前は同じ匂いがしてな)

長谷川(はぁ?なんだよそれ?)

(まっ、詳しくは剣を手にする時だな、じゃあな!)

長谷川(おい!待てよ!)

長谷川は叫ぶが気配がなくなった。

カレル「どうしたんだい?」

長谷川「はっ!何でもないです。」

カレル「そうか、入ろう!」

二人は部屋に入った。

ゴレス「ほらよ、あそこに飾ってるのが魔剣ディアボロスだ」

ゴレスが指さしている方向を見るとそこには黒い鞘があり、剣は抜いてみなきゃ分からなかった。

長谷川(なっ、何だ!?意識が・・・)

長谷川は魔剣を見ると何かに誘われ長谷川の意識は朦朧としていた。

長谷川(剣が俺を誘っている!?いやだ手にしたくない・・・)

長谷川は魔剣にどんどん近付いた。

カレル「おい、何をしているんだ!?」

ゴレス「まさか、剣気に触れて正常な意識をなくしている!?」

カレル「そうだとしたらまずい!」

長谷川(くそ!止まれよ、俺の足!)

長谷川の意識はそう言っているが体はだんだん魔剣に近づいていき、最後に魔剣の近くに来ていた。

(お前何逃げようとしたんだ?)

長谷川(当たり前だろ、俺は死にたくない!)

(お前はその気持ちでTJに行ったのか・・・)

長谷川(えっ?)

(いいか、よく聞け!このTJの世界ではそれぞれ、このゲームをやりに来たやつらがいるんだ!それにこのゲームをやりに来たやつはほとんどいい奴ばかりじゃねえんだ!!)

長谷川「いい人ばかりじゃないって・・・)

(あぁ、前にも集団で襲った奴がいたがその集団で襲った奴らは一人の男にやられた、しかもその集団で襲った男はこんなバカなことを言ってたぜ!)

長谷川(馬鹿な事?)

(そうだ、見せてやるよその冷酷さを持つ男をな!)

謎の声は長谷川にそ言ったことを見せた。そう、秋葉連合のボスが松井秀一に命乞いしてるシーンだった。

秋連のボス「ひえええぇ・・・こ、殺さないでくれ〜!?」

秀一「それだけの覚悟が・・・お前にあったのか?」

秋連のボス「た・・・頼む、命だけは!!死んだら経験値が半分になってしまう・・・!」

秀一「経験値だと?・・・お前にとって死ぬとはそういうことなのか?」

(シュン!)

(まぁ、こういうところだ、)

謎の声はシーンを消し再び話しかけてきた。

(お前もこのまま俺に言われなかったら秋葉連合の奴みたいになってたんだぜ!)

長谷川(俺も今の命乞いしてた奴のように・・・)

(だからよぉ、いってんじゃねえか!ここに必要なのは覚悟!そして冷静さだ!)

長谷川(覚悟、冷静さ・・・)

(そうだよ、お前もそのようになれば強くなるし、あわてることもなくなる。)

長谷川(強くなれる、あわてることもない・・・)

(もし、そうなりたいなら意識を取り戻し、俺を抜けよ!)

長谷川(俺は誰にも負けない!強くなってやる!!)

長谷川は意識を取り戻し、飾ってある魔剣を抜いた。

カレル「なっ、なんだ・・・」

ゴレス「鞘に触れてもくるわねえって・・・」

(強くなりたんだな?)

長谷川(あぁ、それとあと一つ、お前に言いたいことがある。」

(ん?なんだ?)

長谷川(弱き者を助けれる力を!!)

(わかった。貸してやるよ!俺の力とお前の力を合わせてな!!)

(ザシュン!)

長谷川は魔剣をどんどん鞘から離し最後には刀を出した。

カレル「なんということだ、あの魔剣が・・・」

ゴレス「あいつに抜かれるとは・・・」

長谷川「やっと見つけたぜ!俺の力と本意をな!」

カレル「ふっ、これは面白くなりそうだ。」

カレルは部屋を出た。

ゴレス「カレル!!どこに行くんだよ!!」

カレル「ふっ、魔剣を抜いたと言うことは資格あるものだからな、私も負けられん!」

カレルは去ってしまった。

長谷川「俺は誰にも負けない魔剣士になる。」

            終

名前[カレル]
年齢[28]
職業[魔剣士]
性格[戦いでは冷静になる、戦い以外は陽気、]
属性[風・火]
経験値[パワー5、スピード15、ガード8、テクニック20、知識20]
その他[TJの経験者でランクはA+、剣の名前は正宗と言う長刀
を持っている。魔法はほとんど上級魔法をもっていて剣聖と呼ばれている。]

名前[ゴレス]
職業[斧戦士]
性格[負けず嫌いで短気で怒らせると止められない]
属性[火]
経験値[パワー15、スピード3、ガード13、テクニック5、知識3]
その他[TJの経験者でカレルの友人、カレルには負けているが力はカレルの上である。]


あとがき

わがまま言って申し訳ありませんでした。ここからロキさんにストーリを任せるのでわがまま言ってすいませんでした。





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