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小説投稿掲示版〜!!!!

小説の投稿掲示版です!! あなたの作った小説をどうぞ ご披露ください!!!!

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[1267] The sky of Benihas
じゅう - 2008年11月16日 (日) 17時27分

「The sky of Benihas」 











初めて空を見たのは、自分がまだ1人で立てもしなかった頃だったと思う。



目の、脳の、神経のずっと奥深くに、焼きついた景色。
初めて本格的に興味を持った物。 いや、物なんてもんじゃない。

それから少しばかり成長した後、間違いなく確信したんだ。あれが俺の世界。俺の全てだって。



そう言うと言いすぎかもしれないが。


兎も角、あの世界を目指してみたいって、そう思ったのは紛れもない事実だと、胸を張って言える。
小学校の宿題に空の絵を描いて「手抜きだ」って怒られたから、全力を注いで描き直した空の絵が賞を取った。
……まあ、嬉しかったよ、素直に。

もちろん、空ばっかり考えてた訳じゃないんだ。高校の頃はバスの運転手もいいな、って思うようになってて。
安定した仕事なら、いいか、なんて感じになってた時もあった。
そりゃ、俺だって人だからね。一つのことにだけ死ぬときまで熱中できる人間なんか、そうは居やしない。



結局、過去に兵隊やってた俺の祖父が「そんなに空を飛びたいなら空軍に行け」なんぞとふざけた命令を飛ばしやがって、それに流されちまった。
馬鹿だった。民間の航空機の仕事でも十分だったのに。
それに、軍隊なんて人を殺しまくるような仕事だ。空を飛ぶのとは、違う。全く、違う。


――だったんだが。

民間機よりも遥かに早くて、機動性のいい戦闘機。
俺はコイツに魅せられた。強烈なGと、程よい緊張感。

この世界は平和だったから。実戦らしい実戦もなく。
人殺しなんぞせずに、ずっと空を飛べる。
アフガニスタンの辺境で内戦が起こってるなんて、全く実感がなかった。

空軍学校を卒業して、1年。様々な訓練を行い、技術を吸収して。
やっと基地に回されて。


何だかんだで、俺は上手くやっている……と思う。



操縦技術は発展途上。しかし、歳は26。
もうちょい、若いうちに軍学校に入るべきだった、と今は思う。
今年で27だ。おっさんの仲間入りも近い。ちっ。




まだまだ俺はひよっ子だ。
でも、まあ、仲間はいい奴ばっかりで、俺の基地は戦力もかなり充実してて。国を守るために戦える、っていうことも実感できて。
このまま順風満帆でいけるかなー、なんて。



















そうは問屋が卸さない、ってことなんだろうな。





























―― The sky of Benihas ――


















空は取り戻す。
それが俺の誓いだった。


[1268] 推奨BGM『ドッグ・ファイター』 『Stonehenge attack』
じゅう - 2008年11月16日 (日) 17時31分

警告

※この物語の中に出てくる国・人物・地名は実在するものですが、現実のものとは異なります。(完全に架空の物も出てきます)。
いわば、名前だけ同じの仮想の国、仮想の人物、仮想の地名と考えてくだされば結構です。もちろん、実在のものもありますが。
「なぜこの国、この人物がこんな役回りなんだ」「こんな史実、人物は存在しない」「こんな兵器は存在しない」
「あまりにも現実離れしている」……と言う意見も浮かぶでしょうが……
嫌悪感を感じるようなら読むのをやめる事をオススメします。
仮想の歴史などもありますので、ここに書かれたことをそのまま鵜呑みにするのは大変危険です、とも言っておきます。
軍のルールなども結構ブッちぎっちゃったりしてる(隊の編成、規律などは完全にアレンジ入っちゃってるかもしれない)し。配属されてる部隊とかも当然違いますし。いや、調べましたよ?書くに当たって、軍隊の事は。
でも、ほら、限界があるんですよ。
いや、一応、所謂「敵国」は完全なる仮想国にするつもりではありますが、かなり痛々しい名前になっちゃったりしてるという。
ていうか、仮想の国って、あれです。それなりのネーミングセンスがないと痛々しく見えるんですね。初めて知りました。





各話の題名のつけ方が気に入らない人もいるでしょうが、仕様です。
英語をカタカナだけで書くと……ほーら、なんか違和感を感じてきたでしょう?「あー、こいつ意味も文法も知らずに……厨房が」などと思う方続出です。やったね!



いきなり予防線(警告?)張りまくりです。読む気なくなった人多数です。多分。
それでは、それらの条件を許容できる方はどうぞ。





















































1. ――アサルト・アタック――







何故、あんな物が?



その問いに答えられるものは、この世のどこにいるのだろう。







海上から見上げた空。



空を覆った爆炎を、俺は忘れない。






必ず、自分が取り戻してみせる。あの空を。
臭い台詞だが、こうとしか、自分の誓いを表現できないんだ。















たとえ、自分が死んだとしても、だ。
















































「2014年 8月15日 アメリカ バージニア州 [北緯37度04分58秒西経76度21分37秒] <ラングレー空軍基地>」







ラングレー空軍基地には第3航空師団と、それとは別に第12飛行大隊、第22飛行中隊が常駐しており、戦力としてはアメリカでもかなりのものを誇る。
その規模もさることながら、熟練された兵士が多く、特に第3航空師団に属する第1戦術戦闘航空団は、初めて『F-22 ラプター』が実戦配備された部隊としても名高い。
基地運営・警備・航空機支援を行なう為の陸軍も多数配備されている。

基地自体も増設工事が繰り返されており、数十機という戦闘機を運用するのに十分な広さを持つ。
その部隊規模から、それぞれの部隊構成を紐解いていくとキリがないので、この場では割合する。

運用機体は制空戦闘機がF-22、F-15C、F-16C/D、F-35、そして――最新鋭機である、F-41。
攻撃機はA-10Aが主。AC-130などのガンシップも。攻撃ヘリのAH-64まで配備されている。さらにAWACSとしてE-3が一機。その他、対空兵器も多数。
ありていに言って、本当に桁外れの戦力を保有している。

小隊・中隊・大隊はそれぞれ基本的に同じ機種で揃えるのだが、この基地の部隊は完全に同じ機種で構成されている訳ではないというところは、特異な点と言えるだろう。







「さて……」

耐Gスーツを身に着けた1人のパイロットが呟く。今搭乗しようとしているのは、彼の機体であるF-16。
空軍士官学校を卒業して1年になるハワード・イェーガー少尉、今は26歳。今年で27歳。TACネームは『スカイバインド』。空に紐でくくりつけられた男。彼曰く、そういう意味らしい。
いつかは憧れのイーグルドライバーに、あわよくば、ラプターに乗ってみたい、などという途方もない夢を抱いているが、多分、この調子なら当分叶わないだろう。



「少尉、今回はどこですか、見回り」

「ディジリアの国境付近だな。あそこは食糧不足らしくて、お偉いさんが警戒してるんだろ。いつ、略奪を強行してくるかわかんないって」

「そういや、政府が突っぱねたんでしたっけ、食糧支援」

「そ。金が払えなきゃ出せないってさ。あっちの前の大統領がバカやって、財政無視で軍備を強化してから、滅茶苦茶なんだよ。今の大統領も、どうなる事かわかんないし」

アメリカの東のチェサピーク湾と大西洋の狭間に浮かぶ日本約8個分の島国。それがディジリアだった。宗教はカトリックを主に、キリスト、プロテスタントなど、アメリカと似ている。言語は英語、スペイン語。通貨はドル。
盛んに栽培されているのはぶどう、小麦。場所が場所なので、チェサピーク湾名産の殻ごと食べられる蟹・ソフトシェルクラブの輸出が盛んなことでも知られている。

人口は約9800万人。山岳地帯が多く、高層ビルなどの少ない、落ち着いた町並みが特徴。
首都であるディギンズゼアは流石にビルの多さが目立つが、アメリカほどではないだろう。


前大統領が財政を無視して軍備強化を実施し、食糧不足も重なった。元々、それほど食料自給率は高くなかった為だ。
今の大統領はその軍備を維持しつつ、食料や財政難を乗り越えようとしているが、無茶極まりないのは明らか。
軍備をいくつか諦めて食料の輸入を行なえば、まだ何とかマシになるだろうに。

いくつかの慈善団体が支援を行なっているも、雀の涙程度にしかならない。


「幸運を祈ります」

親しい整備兵であるニエロ・フェリップス一等兵がハワードに告げる。

「ありがとう」

『準備は出来たか、ハワード?先に行ってるよ』

「了解」

僚機(ウイングマン)である同期、ガルシア・ギルロイ少尉――TACネームは『アクイラ』――が一足早くアーミングエリアを抜け、離陸しようとしていた。
乗機は同じF-16。第12飛行大隊に属する第38飛行中隊の内の第66飛行小隊『ヘロン(青鷺)隊』。
コールサインはハワードがヘロン1、ガルシアがヘロン2となっている。

『管制塔、こちらへロン2。繰り返す、こちら、コールサイン、ヘロン2。これより離陸する、滑走路に問題はないか?』

『こちら管制塔、問題ない。離陸を許可する。ヘロン2、幸運を祈る』

『了解、ヘロン2、離陸』

きっちりとしたスタンディング・テイクオフ方式。
F-16がバーナーを吹かし、滑走路を疾走して、ゆっくりと高度を取る。
CCIP改修によって性能を向上させ、未だに現役を張り続ける傑作ベストセラー戦闘機だけあって、安定した飛行だった。
最近はハイ・ロー・ミックスによって組み込まれていたF-16がF-35に生産数・配備数で少し押されているのも事実だが。

ガルシアも只の見回りとは言え、気を抜く訳ではない。魔の11分間(離陸後3分、着陸前8分。世界の航空機事故の7割はこの時間内に発生している)の内は、特に。

ハワード機もアーミングエリアから離れ、滑走路に機体を停止させる。
滑走路に正対。エンジンとフラップを離陸形態へ、ブレーキ解除。離陸開始。


『管制塔へ、こちらヘロン1、これより離陸する』

『こちら管制塔、了解。ヘロン1、幸運を祈る』

『了解、ヘロン1、離陸』

『ヘロン隊の全機離陸を確認、バルーン隊、滑走路への進入を許可する、続けて離陸せよ』

『こちらバルーン1、了解』

第60飛行小隊であるバルーン隊も離陸を開始する。
彼らはカナダ方面の哨戒だ。
ちなみに、バルーン隊とヘロン隊を合わせて第38飛行中隊である。第12飛行大隊は彼らと第56飛行中隊で構成されている。














増槽に積んだ燃料のおかげで、まだまだ大丈夫だ。幸い、ディニスは近いところにある。日本まで飛ぶよりはマシだ。
現在の速度は時速450マイル。100マイルが160kmなのは有名な話なので、時速何kmかは簡単に計算できる。
何しろそれほど離れている訳でもないので、大して高速航行をする必要もないのだ。

武装は最小限。ハワード、ガルシア共に<AIM-120 AMRAAM>が2発のみ。
何時間か経って、チェサピーク湾に差し掛かる。レーダーには、データ入力されたディジリアの国境が薄い線で引かれていた。
この国境線を越えてしまうと、完全な領空侵犯になる。
逆に言えば、この国境線の向こうからディジリアの戦闘機が飛んでくれば、アメリカへの領空侵犯と言うことだ。

「こちらスカイバインド、レーダーに反応はない」

『こちらアクイラ、了解した。だが、あと数十分は哨戒してから帰ろう』

「分かってる……ここら一帯をグルッと回るか」

TACネームで呼び合う。所謂あだ名のようなものだ。別に、コールサインでも問題ないのだが。
F-16が180度ロールして旋回。国境線を沿うように飛行する。
現在の高度は10000フィート。レーダーには未だに反応なし。
見えるのは青い空と雲だけ。写真にとって帰りたいぐらいの景色だ。



アメリカとディジリアのごたごたは、今に始まったことではない。
4年前にディジリアの『ろくでなし大統領』が就任し、財政無視の軍備強化、そして食糧の輸入が滞る。
山が多い。それだけに、まともに農作物を作れない。山を切り開いて果樹園を開く者もいたが、険しい山がほとんどのため、数は少なかった。
昔は平地に農場が多数存在して、土地の状況も良かったのだが――
12年前、軍内部で軍縮を進めていた平和主義者、ミドガルド・シュムエル氏を武力主義者が殺害、そこから軍が『シュムエル派』、武力主義者主要メンバー、ビーン・マクラエル氏(後、内戦の発端となった人物として死刑に処される)に付く『マクラエル派』が対立。

大規模な内戦で大地が焼けた。

その際に農場、食料加工工場などの4割が損失。
弾丸とミサイルの爆炎が耕した大地に、植物が芽を出すはずもない。それ以来は泥沼だ。
食糧を輸入しながら大地の復興を続け、そして、その結末が今だった。

一説によるとその『ろくでなし大統領』はマクラエル派の生き残りで、偽名、『同志達』の工作などでのし上がった男だと言う。
残念ながら、彼は民衆の怒りを買い、過去、シュムエル派だった軍人の「思い知れ」との一言と共に放たれた銃弾の前にくず折れた。



「ま、ディジリアも気の毒だよな」

誰に言うでもなく、ハワードは呟いた。

「こちらスカイバインド、アクイラ。ディジリアのこと、どう思う?」

作戦中にする質問ではないな、と言った直後に思う。
ガルシアが堅物の軍人だったら『作戦中の私語は慎め』だのと言っているだろうが、彼は気の良い好人物として知られていた。

『そうだな……状況が悪すぎる。何十年か前の日本みたいな状況らしいし』

「ディジリア募金、なんてのもあるらしい。俺も10セントほど入れてきた」

『ああ、僕は5ドル寄付したよ。少しは良くなるといいけどね』

「5ドルって……お前」

現在、1ドル約99円。


こういう性格だから人から好かれるのだろう、とハワードは思う。
基地にいる女性士官からの評判も良いし、自分のような人間には到底、人としては追いつけない次元なのではないか、と無念に似た感情を感じるときもある。

(ああ、なんか虚しくなってきた……)

自らの愛機であるF-16の操縦桿を握り締める。F-16が「元気出せ」と言っているような幻聴にまで捕らわれ始めた。
いよいよ、自分を見失いかけているような気がする。

2人はチェサピーク湾の中ごろを適当に巡回する。
チェサピーク湾からラングレー空軍基地なら、戦闘機のスピードを持ってすれば近い。ある程度近づいて高度を上げ、見下ろせば見えるかもしれない。
とはいえ、2人はディジリア国境付近、チェサピーク湾から若干向こうの大西洋上を哨戒していた。
ここからすると、まあまあ遠いかな、と言うぐらいだ。





『こちら、空中管制機サークルアイ。ヘロン1、ヘロン2、聞こえるか?』

ラングレー基地の上空で広域レーダーを使用して策敵をサポートするAWACS(空中警戒管制指揮機)のE-3Bから通信。
操縦士4名の内の1人、ウィリアム・カーベリー大尉が額に一筋、汗を伝わせながら呟く。

『レーダーに接近中の飛行物体。機種不明、データをリンクする、確認してくれ』

「了解。……データ受信。国境を越えてきたのか、こいつは」

唐突ではあった。だが、今まで唐突でない領空侵犯があっただろうか?
恐れていた事が起こったかと、ハワードが舌打ちする。
まずは接近して――などという迂闊な事はしなかった。もし敵機であった場合、不意を突かれて攻撃されれば命は無い。

「こちらスカイバインド、領空侵犯機だ。至急増援を」

『了解。C地区を巡回中のバルーン隊と、基地からトレニア隊を武装して向かわせる。耐え切れ。幸運を』

「ウィルコ」

ウィルコ――了解して実行する、と、ハワードは返答した。
敵をこれ以上進ませず、かつ生き残る。

『こちらアクイラ!敵機にロックオンされた!』

そら来た。
『WARNING、WARNING』と簡単な仕組みの電子音声が告げてくる。そんなことは分かっているのだ。
やっぱり仕掛けてくるか。ハワードは何度目かの悪態をついて、ミサイルを発射可能な状態へ。
敵対行為をしてきた機に対して容赦などしない。話し合いの余地など、ないだろう。
やらなければやられるのはどこでも同じなのだ。

今積んでいるAMRAAMはDタイプ。最大射程は180km。
AWACSの支援を受ければ、ロックオンは可能――!

『サークルアイだ!敵機のロックオンを確認!交戦を許可する!』

「了解、スカイバインド、交戦!」

『アクイラ、交戦!』

向こうも撃ってくる。ミサイルの型は不明だが、少なくとも120km以上の射程はあるようだ。
現代の戦闘機同士の空戦は目視外射程からの射撃が基本だ。しかし、近年は機体の高機動化、目視外からのミサイルを感知し、素早く伝えるレーダーシステム、また、それに反応する訓練も行なわれている為、その限りではなくなってきている。
また、機銃だけだった時代、ドッグファイトが主流だった時代に戻りつつあるのかもしれない。


「ミサイル来るぞ!散開後に射撃を開始する!」

『サークルアイから各機、敵機の数は5、慎重な戦闘を心がけろ、増援が来るまで無理はするんじゃない』

「了解、電子支援頼む」

敵機の放ったミサイルが急激に曲がって追尾してくる。
ハワード機を狙っているのだろう。ハワードはスティックを握り締め、頃合を見て一気にピッチアップ。
急上昇。強烈なGが下腹部を襲うが、そこは流石に軍人だ、耐えられる。
ミサイルの近接信管は作動しない。何とか回避成功。ゲームのように、少しの回避機動だけでは無理だ。
思い切って操縦桿を動かさねば、あっという間にミサイルに補足され――
少なくとも、爆竹を体に巻きつけたまま爆発させるよりは悲惨な事になるだろう。
さらに空対空ミサイルは、戦闘機を撃墜する為に破片を撒き散らし、直撃でなくとも撃墜できる能力が備わっている。
その危険から逃れる為に、必要以上の距離を取るのは基本だ。

「敵機ロック!」

機体のレーダーがロックオンしたことを長く高いビープ音で知らせてくる。
十分射程内だ、いける――

「FOX3!FOX3!」

AIM-120が真っ白な軌跡を描いて、矢のように飛行する。
ミサイルの位置を示す白点が敵機へと迫って。


いや、回避された。ミサイルの熱源が遥か遠くへ飛んで消える。

「くそっ」

『アクイラからスカイバインドへ。ミサイルアラート、後方からだ!』

「ケツに付かれてる!デカイのぶち込まれたくなきゃ、旋回しろ!」

『言われなくとも!……あぁ、今確認した、そちらにも1発。多分、俺たちと同じAMRAAMだ、これは』

「クソッタレ野郎が!ドッグファイトに持ち込まれたら終わりだぞ、距離を取る!」

数で負けている状況でドッグファイトに移れば、忽ち囲まれて機銃で落とされる。
特定の1機と交戦中に他の機から攻撃を受けるのは最悪だ。そうなれば、1機ずつ、じわりじわりと落とされる。
逃げ続けてもジリ貧だ、いずれは落とされるだろう。

まだ燃料はある。
アフター・バーナー(A/B)を吹かし、加速。
半端ではないGが襲い掛かる。A/Bの加速力は滑走路にロックした戦闘機を無理やり発進させる事が出来るほどなのだから当然のことだ。
しかし、その分燃料の消費は激しい。
数時間航行できる燃料を15分ほどで消費してしまうが、50%ほどの出力増強を見込める。
諸刃の剣、とでも言うべきだろう。

『敵機を視認した。F-16が3機、それと……F-15だ。まずい』

「バイパーは何とかなる!それよりイーグルだ、イーグルの方を注意して動く」

バイパー(F-16の非公式な愛称)も確かに脅威ではあるが、それ以上にイーグルの方が脅威だった。明らかに動きが違う。
システムのアップデート、機体の改良を積み重ねてきているのはF-16だけではない、と言うことだ。

「叩けるようなら、イーグルにぶち込んでやる」

『出来るなら、だけどね。出来るかい?』

「……否定(ネガティブ)。訂正する、逃げ切ろう」

まあ、まず無理だろう。ケツを取られないように回避マニューバを取るのが精一杯だった。
ガルシアは回避機動に関してはハワードより上だった、ハワードよりも幾らか危なげなく敵の射線を掻い潜る。
だが、ハワードの機動は軍人らしい安定したものだ。決して『危なっかしい飛行』はしない。敵機の軌道を読むことが回避の際に重要になるのだが――どうやら、それがガルシアより劣っているのだろう。
その代わり、機体の総合した制御、空間把握は得意な方。自分が次にどう動くかを順序だてて考えるタイプだ。
多少血気盛んな面はあるが、よほどのことが無い限り危険な機動はしない、と彼は誓う。

とは言うものの、もちろんパイロットの操縦技術はもっと有機的かつ複雑なものなので、言葉で説明できるものではない。あくまで大雑把な概要である。



曲技飛行の技術である『ナイフエッジ』に酷似した、右翼の方から地面へ切り込むような機動を見せるハワード。
そこから姿勢を戻してピッチアップ。正面に敵のF-16の側面装甲が見えた。

M61A1 20mmバルカンの銃口が煌く。
空に曳光弾が火線を描いた。その着弾地点に敵機を捕らえようと操縦桿を動かし、必死にレティクルを合わせる。
しかし、敵機もこちらにロックオンされていることは察知している。恐らく、今頃コクピット内ではけたたましいアラームがなっている事だろう。

増槽をパージ。身軽になったハワードのF-16が敵機に追従する。
同時にガルシア機もパージ。2機合わせて、ミサイル残弾は3。

『サークルアイだ。ラングレー空軍基地より入電。基地からそちらにオーロラ隊を追加増援で送る』

「オーロラ?F-41か」

オーロラ隊はつい最近F-41が編入された機体だった。それだけに実力も高く評価されている。

F-41について簡単な説明をする。
なんといってもこの機体の革命的な部分は、『ミサイルパック』を小型化、実装した事にある。
そのためにはミサイルの小型化が必須だった訳だが、それをロッキード・マーティン社所属、デニス・K・リベラ氏が成し遂げた。
威力は劇的と言えるほどに低下したが、F-41は対制空戦闘機をコンセプトとして作られている。制空戦闘機を撃墜するのに、それほどの攻撃力は必要ないのだった。頑丈な爆撃機に攻撃する際は殆ど無力な事は置いて、完全な制空戦闘機として作られたのである。

ミサイルのシーカーなども小型化。その結果、ミサイルパック×4で12発の脅威のペイロードを誇っている。おまけに追加で2発の通常型ミサイル(主にAIM-9)を装着できる
『MMP-6』の名を冠したミサイルは短距離ながらも、小型ならではの追尾性を誇っている。
ただ、その代償としてF-22などにあったステルス能力は一切ない。その代わり、STOL(短距離離着陸)能力を持ち、アフターバーナーをつけずに音速巡航が可能なスーパークルーズ能力を兼ね備え、2つの『S』はきっちり達成していた。
ちなみにアビオニクスはF-35のAN/APG-81をF-41の規格に合わせた物を使用している。
高水準の性能を備えたF-22と肩を並べる制空戦闘機、それがF-41。


とはいえ、一足先に飛び立ったトレニアはまだしも、ラングレー基地からここまで到着するのにはかなりの時間を要するだろう。だからといって市街までおびき寄せる訳にも行かない。

「サークルアイ!バルーン、トレニア両隊のETA(到着予定時刻)は?」

『了解した。距離、速度を考慮すれば……バルーン、後18分。トレニアが後27分。誤差の範囲は2〜3分』

「急がせるように言ってくれ!」

『了解。……バルーン、トレニア各隊、ヘロン隊がもう持たないぞ、急げ』

『……あぁ、こちらバルーン1!了解だ、飛ばすぞ』

『トレニア1了解、待ってろよ、ヘロン隊。落とされても泣いてはやらんぞ』

「落ちてたまるかって!」

『無駄口飛ばせるようなら十分だな?バルーン1、ETAを5分は早めるつもりで行く、遅れるな』

『ウィルコ、バルーン2、もっと飛ばせ飛ばせぇっ!』

何故か異様にハイになったバルーン1が叫ぶ。

『バルーン1、待ってください。アフターバーナーはマズイですって――』

『まだ燃料は有り余ってるだろ、急げよ、遅れたら死ぬのはヘロン隊なんだ!』

『……ええい、くそっ、了解!』

振り回されるバルーン2。そんなことをやっているうちに2分が経過していた。










『ヘロン1、ミサイル残弾ゼロ!こちらも後1発だ』

「機銃をぶち込め、何とか……何とかしろ、くそっ」


機銃の残弾は有り余っている。だが、敵機を撃墜する事が出来ない。
現実での敵機撃墜は本当に難しい。アニメのように、バーッと閃光とともに敵が落ちていく――そんなことは現実ではありえない。
だからこそ、敵機『5機』撃墜がエースパイロットの条件になる。それだけ、難しい。

実戦の経験ゼロの2人が、F-16でF-16・F-15の混成部隊5機相手に被弾ゼロ――これだけでも十分凄まじい。
特にF-15の機動性はかなりのものなのに、性能的に劣るF-16で立ち回っているのは見事と言っていいだろう。

ただ妙なのは、敵機が余り積極的に仕掛けてこない所だ。
もちろん、こちらが決定的な隙を見せれば容赦なく白煙を伴いながらミサイルが飛んでくる。
だが、位置取り、背後への回り込み方が若干甘い。保身に走っているようにさえ見える。
その分回避に徹しているのか、こちらの機銃弾もさっぱり当たらない。5機もいるので、的をうまく絞れない。

そして最後に、『何故5機なのか』、と言う点だ。
ディジリアの食料不足は史上最大規模とも言われ、略奪の可能性は少なからずあった。
しかし、何故略奪を強行するのに『5機』だけなのだろうか?
大国・アメリカには負けるものの、それほどの差はないほど豊富な装備を持っているのだから、それを一気に投入したほうが不意を突けるし、本気なのだということが政府にも伝わるだろう。
当然、強大な威圧になる。

何故5機だけなのか。

どうどう巡りする思考を一旦中断し、ハワードは計器の情報を見ながら、まず自分が今どのような姿勢なのかを把握し、持ち直す。
途端に弾丸が飛んできた。機体を右へ振って回避。
自分の腹を掠めるように飛ぶ弾丸。
一瞬、胃が浮くような感覚が襲うが、操縦桿を左に倒してロール。あえて敵機の方向に突っ込んですれ違い、敵がまたこちらを向く前に距離を取り、時間を稼ぐ。

「燃料は」

『大丈夫だ、しばらくは。ただ、それまでに撃墜されるかもしれない』

「そうだな。……バルーンのETAまで後5分だ、耐え切ろう」

『了解……いや、ちょっと待て、レーダーに友軍機の反応……バルーンだ』

「……あいつら、マジで5分縮めやがったのか」

トレニア隊は若干遅れている。バルーンのほうが戦闘空域に近い場所にいたのだから、当然と言えば当然だ。

『サークルアイ、聞こえるか!こちらバルーン1、戦闘空域に到着!』

『こちらバルーン2、同じく!』

『よし、すぐにヘロンと合流しろ。交戦を許可する』

『了解!ビーファイア、交戦!』

『シグルス、交戦!』

バルーン1、バルーン2――ビーファイアとシグルスが敵機と交戦。
両方ともさっきまで偵察中だったためミサイルは2発ずつだが、それでもかなり心強い。何せ、2人ともイーグルドライバー。つまり、F-15が2機援軍として加わったことになる。
敵機は未だに消極的な動きをしている。押し切れるかもしれない。


『トレニア隊、ETAまで後約10分。彼らも急いでくれている。踏ん張るんだ』

トレニアは2012年に配備されたF-35で組まれた小隊だ。統合先進攻撃技術、通称JAST計画によって設計された戦闘機。
ちなみに彼らはF-35A型である。


『よし、スカイバインドは無理するなよ、ミサイルがないんだろ』

「機銃は残ってる」

『お前が敵機にレティクルを合わせるのが下手なのはよーく知ってる。適当に回避機動取ってろ』

「まだ俺は発展途上のヒヨッ子なんスよ。これからに期待ってことで」

『こちとらこの道6年だ。なめんなよ』

ビーファイア――トーマス・スタンフォードは30歳。年があまり離れていないのだが、実際の所、26歳で空軍士官学校を卒業したハワードよりも早く空軍士官学校へ入り、訓令過程を修了しているためだ。士官学校は4年間通うことになる為、スタンフォードは20歳の頃に士官学校へ入ったことになる。

彼のウイングマンであるシグルス、マーカス・カニンガムはハワードと同じく空軍学校を卒業して1年。25歳だ。
ついでに言っておくと、ガルシアは現在27歳。ハワードよりも誕生日が早いためだった。
ここにいる4人はいずれも法律による推薦適任基準をクリアして入学した者たちである。
現在、士官学校に入学するのに歳は関係ない。(あまりに歳をとりすぎている、若すぎる場合はそもそも法律で弾かれる)管制官を目指す者、パイロットを目指す者、AWACSの搭乗資格を得る者もいる。そして大抵1人は天才が発掘されたりするものなのだ。そうした過去のエースパイロットたち――彼らに憧れ、パイロットを目指すものも少なくない。


『こちら航空管制室。バルーン、ヘロン各隊、聞け』

「うん?何だよ」

『黙っていろ、ヘロン1。オーロラ隊が敵編隊の横腹を突く様に移動している。F-41の航行速度なら、後17分だ。その間、敵機をその場から動かせるな』

「オーロラ隊が来る前に全機撃墜してもかまわんのだろ?」

『もちろんだがな、ヘロン1。F-41の実戦データは貴重だ。無理はせずに、彼らに任せてもいいんだぞ』

「あー、あー。分かった分かった。交信終了。……ったく、あの堅物が」

航空管制室所属のサラ・ガブレスキー中尉。24歳。18の頃に士官学校に入学した。根っから軍人。軍歴2年。米人にしては珍しく、少し肌色が日本人寄り。赤みがかった黒でセミロングの髪。どちらかと言えば黒い。
いわく、父親に日本人の血が流れていたそうだ。名前は思いっきり米国人なのだが。
ハワードと同じく父親が軍人だったわけだが――どういうめぐり合わせか、母親まで軍人だった。
どちらも空軍所属だったらしく、子供の頃から母親の昔の職である管制官になる為の教育を受けちゃったりしたちょっと可愛そうな子。もちろんいろんな意味で、である。
普通の親に育てられていれば、今頃大学で素敵な人生を歩んでいたことだろうに。

ハワードは、彼女が自分とほぼ同じ境遇だと知った時、例え境遇が似ていても、ちょっとの誤差で人は大幅に間違った方向(性格的な意味で)を突き進んでしまうんだなぁ、などと、少し切なくなったりする。
10歳ごろから父親に軍人になるための基礎訓練を受けたハワード。
かたや、物心がついた頃から少しずつしみこまされていったサラ。
どうでもいいが、戦争の悲惨さを知る『軍人』の父親から『軍人』になるのを止められていたガルシア。
どうでもいいが、海軍だった父親への嫌がらせで空軍に入ったトーマス。
何か普通のマーカス。

本当に、人は面白い。面白いのだが、こんな所でそんなことを考えている余裕はなかったり。


『バルーン1、FOX3!』

無線から声が漏れてくる。トーマスの声だ。気迫は十分。
見れば、彼の放ったミサイルは敵のF-16の側で近接信管を作動させ、破片をぶち当てていた。

『どうだ……?』

ディジリア軍のF-16は煙を吹いていた。
やがてエンジンが停止し、単発式のエンジンノズルから見えていた光が完全に消え去り、推力を失った機体がまっ逆さまに海面へと落ちていく。
撃墜だ。

『よし、これで撃墜スコア1……』

「流石、とでも言っときますよ」

『褒めても何も出んぞ』

ちなみに、トーマスはイランやアフガニスタンに派遣されたアメリカ軍に属していた時期があった。
2011年ごろ、ゲリラ側が出所不明の戦闘ヘリや戦車を持ち出してきたりして、やたらきな臭い戦場の真っ只中で、トーマスは敵の戦車を4台、ヘリを1機の撃墜記録を残した。とは言え、戦闘機の撃墜スコアは未だなかった。
恐らく、彼らに裏で兵器を横流ししていた組織、もしくは個人があるのだろうが、戦争では日常茶飯事だ。もっとも、まともに訓練をしていないゲリラが完全に乗りこなせる訳もない。
時々動きの鋭いゲリラのヘリを目撃したそうだが、そのパイロットは実は元軍属で、アメリカ軍も被害がゼロ、というわけではなかったそうだ。


4機になった事で、敵のアドバンテージが少し薄れてきている。そして今1機撃墜したため、戦力は完全に互角となっていた。
マーカスが敵のF-16の後ろを追っかけまわし、F-152機は様子を見ながら、同じF-15に乗るトーマスとガルシアが奮戦。
残るF-16は、ハワードが牽制して――

「うおっと」

右翼を敵の弾丸が掠める。
戦闘機は脆い。特に一般的には軽量な制空戦闘機などは、一発の機銃の弾丸が致命傷になりうる場合もある。
しかし、F-15は片方の翼がへし折れたのにもかかわらず基地へ帰還した記録がある。
だが、それは残念ながらF-15の揚力を得やすい特有の形状、推力重量比が1を越えると言う驚異的なエンジンのパワーがあってこそなので、F-16の片翼が折れた場合は――諦めるしかないだろう。

『ヘロン2、後方援護頼む』

ガルシアのF-16がハワードの後方の警戒に当たる。
時々機銃を撃ってプレッシャーを与え続ければ、敵の攻撃の手も若干萎縮してこようと言うものだ。
特にF-15が2機参戦したことは大きかった。

『バルーン2、ミサイル来てるぞ!』

バルーン2――マーカスがミサイルアラートが鳴った事に対して、反射的に操縦桿を動かす。
F-15が急激なロールをし、そのままピッチアップで右方向へ回避。
彼も熱心に勉強はしているようだ、F-15が最大効率で旋回できる速度(コーナーベロシティ)をきちんと知っている。
若くしてイーグルドライバーに慣れたのには、イーグルに乗れるだけの素養があったから、ということか。

『回避します!敵機の足を止めてください』

『了解、任せろ。ヘロン1、5時方向の敵機に機銃を打ち込め!期待はしないでおいてやる!』

「してくださいよ!」

『こちらヘロン2、敵機は攻撃に消極的だ、やれる』

相変わらず、敵機は積極的には仕掛けてこなかった。
不気味な沈黙が、度々戦場を支配し、その度、耐Gスーツに冷や汗が染み込む。



そして、永遠とも思える約10分間。

何とか耐え切った。
その間、1機も撃墜する事は出来なかったが、天使の声が響く。あいにく、男の低い声だったが。

『こちらトレニア1、ガウェインだ。サークルアイ、交戦許可を頼む!』

『トレニア2、ユーウェインです。交戦許可を求む』

『了解だ!交戦を許可する!』

『こちらガウェイン、了解。ガウェイン、交戦』

『了解。ユーウェイン、交戦』

F-35。最新鋭機だ。
間違いなく現戦力では最強を誇る機体だった。
更にTACネーム『ガウェイン』、ジェームズ・デベリーヴと『ユーウェイン』、ニコラス・フェルナンドはどちらも軍歴9年。
双方ともに34歳、優秀なパイロットだ。トーマスのように内戦地帯での戦闘経歴もある。

これなら、負けはしない。まず、誰かがヘマをしない限りは。


『ユーウェイン、FOX3!』

『ガウェインだ、ヘロン、バルーン各隊へ。全機撃墜などは考えるな、すでにチェサピーク湾に近くの基地から対空地上部隊が配備されている。撤退を優先するんだ、わかったな』

「言われなくとも!こちとら、ミサイルは一発もありませんし」

『ははっ、初撃墜は当分先かな、ヘロン1』

ジェームズは気さくかつ軍人としての規律、才能を併せ持つ有能な人間だった。
こうして肩肘を張った者に軽い冗談を飛ばすことも珍しくはない。


『ビーファイアだ、ヘロン隊は一足先に離脱しろよ。少しでも行動を早くして、F-16の速力をカバーするんだ』

『こちらヘロン2、ウィルコ』

「ああ、了解。仕方ない、サラの希望通りにしてやるか」

おどけた口調でハワードが言う。
後ろからミサイルが飛んできやしないか、と不安になるが、F-35が軽快な機動でF-15を1機撃墜――無敵の戦闘機は、いまや無敵ではなくなった――したのを見届け、幾らかホッとした。




「ん……?」


撤退しようとしたのもつかの間、程なくして敵機が撤退していく。不利を悟ったのだろう。
こりゃ、F-41の実戦データが取れるのは、少し先延ばしだな。
とにもかくにも、助かった。



『よし、敵機の撤退を確認した』

トレニア1、ジェームズが敵機の戦闘空域離脱を見て呟く。

『だが、戦争が始まるぞ。ああ、なんてこった』

絶望したように嘆くトーマス。過激な勤務、戦闘がこれから待ち構えているのは目に見えている。
果たして、自分が生き残れるのかどうか、そんなことは神に聞くしかないだろう。
平和な空は、当分お預けだろう。


『こちら、サークルアイ。戦闘態勢解除、各機の判断で帰還しろ』

サークルアイからの通信を全員が了解、Uターンして基地へ戻る。















数秒後。
一瞬、何が起きたのかは分からなかったが――『空が破裂した』。

そう表現せざるを、得なかった。













「何だ………しまった!」

まず最初にハワード機がその爆風に『食われた』。
機体がバラバラにひしゃげ、右翼部分が吹っ飛んで空に舞う。機体はそのまま燃え上がりながら四散した。

何かが飛んできた。ミサイル……?

『おい、何が起きた!状況を報告しろ、サークルアイ!』

トーマスが大慌てで状況の確認を求める。
爆風で機体がガクガクと揺れるが、そこはそこ、ベテランならではの操縦で切り抜けていた。

『分からん!何かが飛来している……?対空巡航ミサイルなのか!?全機、避退だ、避退しろ!』

E-3のレーダーにも映っていない。熱源探知にすると僅かな反応があるが……ステルス機能を持った巡航ミサイルだとしたら……?

『なんて爆風だ!飲まれるぞ、避けろ!』

ジェームズがニコラスを急かし、A/Bを吹かして加速、ミサイルをすべてパージし、少しでも重量を軽くする。

『ヘロン1、応答しろ!』

1人、ガルシアがハワードへの応答を求めるが、応答なし。

『もういい、ヘロン2!逃げろ!』

『トレニア1!ヘロン1が見当たりません』

何発の巡航ミサイルが飛来しているのか、それすら分からない。

『こちらサークルアイ……』

『こちら航空管制室!スティーブ中佐だ!敵巡航ミサイル!シー・スキミングを推奨する!逃げろ、逃げろ!』

サークルアイから通信してくるウィリアムの声を遮り、航空管制室の実質上のトップ、スティーブ・バーグマンがさらに急かしてくる。
シー・スキミング、海上を低空で飛行する飛行方法で、ミサイルなどにも利用されている方法だ。
ガルシアも未練を残しながら、低空へ避退。
海面に波を立てながら、機体を飛ばす。

『飛ばせっ、早くーっ!?』

トーマスの声も動転していた。
マーカスは喋る事も出来ないようで、只無言のまま、手を振わせつつミサイルの爆炎から逃げる。

『こっちまで飛んでくる、逃げ切れ!』

ジェームズ機が自分の左翼を巨大な巡航ミサイルが通り過ぎていったのを見て、目を見開く。
そのミサイルが前方で爆発、機体が大きく揺れる。何とか耐えしのいだ。

『ヘロン2!右だ、右!お前から見て3時方向!』

いつもは冷静なニコラスさえも焦る、何時機体が吹き飛ばされてもおかしくない状況だ。

『くそっ、くそっ!』

ガルシアも悪態をつきながらスロットルを上げる。
一体、ハワードがどうなったのか、それもある。

しかし、この恐ろしい攻撃が、これからアメリカ軍にどう作用してくるのか。
想像するだけでも恐ろしかった。

こんなものがあっては、海上での制空権は完全にディジリアの物だ。

『敵の攻撃が収まってきたぞ!ラストスパートだ、飛ばせぇぇぇぇぇぇっ!』

時速900マイル以上に加速したトーマスのF-15が爆風で軋む。
この高度で空中分解したら、まず、助からない。
それでも加速するしかなかった。そうしなければ、分解どころか丸ごと吹き飛んでしまう。


5つの機影が、蒼い海に波を作った。
















「……はぁっ、はぁっ……」

海上に浮かぶ人影。ハワードだった。

寸前でベイルアウト出来た。機体の破片が右腕に裂傷を作ってしまったが、大きい傷ではない。海水が傷口にしみるのが痛いが。
十分な高度を取っていなければ、海面に叩きつけられて死んでいただろう。
そもそもベイルアウトしても完全に安全というわけではなく、弾き飛ばされたキャノピーに激突したり、凄まじいGで背骨が折れたりと、何かと危険なのである。
しかし、何とか生きている。

パラシュートの切り離しが一番不安だった。パラシュートの紐が絡んで溺死するパターンは良くある。
今はライフジャケットの浮力に感謝するしかない。


「……………」

空を見る。


爆炎で空が赤く染まっていた。
このミサイルは、自分から空を奪おうとしているのだろうか?いや、自分だけでない、全ての人から空を――

ミサイルの黒煙が、自分に向かって『諦めろ』と告げているようだった。


諦めて、たまるか。






数時間後、ハワードが救助隊に救出されるまでの間。


ディジリア軍部は、アメリカに対して正式な宣戦布告を告げた。
それが、ディジリア現大統領の意思だったのか、それは、誰にも分からなかった。
分からないことだらけなのだ。あの兵器も。







夕日ではなく、人工の爆発物が作り出した赤い空。














人々はその『紅蓮の空』を見て、何を思ったのだろうか。















































1. ――アサルト・アタック――     ……END

































後書き

2次創作を書く事に嫌気が刺しました。久し振りに完全オリジナルです。
はー、しっかし、登場人物が多い多い。絶対途中で読むのやめたくなるんじゃないかしら、これ。
兵器の説明とかごったごただよ!
でも必然的にこうなっちゃうんですよねー。あぁ、やだやだ。見てらんないんじゃないの byスレッガー中尉
流行に乗って『ゆっくりしていってね!』とか言って見ますが、東方とか知りません。
というか、ニコニコ動画で人気な動画の7割は何故人気なのか理解できません。
細々とエースコンバットとか見てます。地球防衛軍とか、ANUBISとか。



さて。
今回書くに当たっていろいろな物に影響されている訳ですが。エースコンバット然り。
出来るだけ「現実から遠ざける為」の要素を投入してあります。
だって、フィクションなのにあんまり現実じみてると、せっかくの『創作』が台無しになってしまうような気がするのと、言い方は悪いですが、現実から一時的に逃げて一息つく場所でもあると思うんですよ、漫画とか、小説とか、ラノベとかの創作物は。そこら辺は譲れないですね。

この小説(?)をフィクションとしてみる為に、強烈なスパイスを突っ込む必要があったんです。出来事は架空でも、実在の国とか出てるんで。
まず1つ、架空国である『ディジリア』とアメリカの戦争。これ、第一ですね。初めはどっかの実在する国と戦わせようと思ったんですが、やっぱまずかろー、ということで却下。
2つ目、敵側の所謂『超兵器』。ステルス巡航ミサイルですね。あんなバンバン撃てるモンじゃありません。
軍備に財政をかなり割いているディジリアだからこその荒業です。あとなるべくコストダウンする技術も必要ですね。

3つ目。F-41。ミサイルパック(笑)。しかも1話は出番なし、出そうで出ない。

はい4つ目。これが1番大きい要素。


サラ・ガブレスキーの存在である…………っ!!(ゴゴゴゴゴ……)


もうね、あんなん実際におったらここに連れてこいっちゅーねん、と。
女性はあんな堅物になれるのか?否、不可能だ。同じく綾波レイとか、長門有希とか、所詮空想上の人物なんですようけけけけけ(最悪)
現実に何か活発そうな少女がみんなの前で「只の人間には興味ありません」とか言ったら間違いなく張り倒されますし、「私が死んでも、代わりはいるもの」とか言われても「( ゚д゚)?」な顔しか出来ないです。
でも涼宮ハルヒの憂鬱って見たことありません。この期に及んで内容知りません。そんなに知りたい訳でもないけど。ラノベはフルメタしか読んでないからです。へっ!
後ノンフィクション小説の『17歳の硫黄島』。戦争の悲惨さが描かれています。おすすめです。
多分、これ見るとガンダムSE○Dとかまともに見れなくなります。方向性が違うにもかかわらず、何故か『なんで戦争がこんなぬるいの?』って思うこと請け合いです。
連合兵がザフトに射殺されるシーンとかありましたが、あれの数倍悲惨です。
サイクロプスで爆発する兵士ぐらいしか張り合えるとこないです。

こういう時、どんな顔していいか分からないの。
ポカーンとすればいいと思うよ。

ああ、話が脱線しました。
いや、世界中探せばいるかも知れんけど、幼少時から軍に入るための教育とか狂気の沙汰としか。
じつは彼女の両親の教育の中に『親として最低限のやるべきこと』が含まれているっていうのは……後ほど。

とにかく、彼女は限りなく現実から離し、それでいて最低限の現実味は持たせる、ぐらいの勢いで行きます。
もうね、彼女だけはどう扱っても構わんから気が楽ですよ。
そんな訳でいきなり発狂したり、「私は多分、3人目だから」とか言い出しても不思議じゃありません。寧ろ発狂してるのは俺です。


次は解説回を設けてみましょうか。
それじゃ、果たして最後までいけるか分かりませんけど、出来る限り書いてみますかねー。



出来る限り短く終わらせたいな。


[1270] 推奨BGM:「なぜなにナデシコ」
じゅう - 2008年11月23日 (日) 00時54分

番外編1.  ――お前の解説で天を突け!――
















どうも。
サラ・ガブレスキーだ。




番外編とは名ばかりで、実際は本編の解説などを行なっていく。
こんな役目は私にしか出来んからな……(扱い的な意味で)

ちなみにこの番外編は本編と完全に隔離されている、いわば楽屋裏だ。


「あれー?なーに1人で喋ってるのサラ。病気か?」

ハワードが後ろから話しかけてくる。貴様と言う男は。

「黙っていろ。私は今、重大かつ困難な任務を遂行中だ。貴様には出来ん」

「お前の固い口調聞いてると、読者諸君が飽きるぞ」

「お前の軽口を聞いてると、読者諸君が呆れる」

「バーカ、分かってないな。読者諸君は軽いノリを求めてるんだよ。故にお前みたいな――」

「いいだろう。私も丁度『全弾込めた拳銃でロシアンルーレット』と言う物をやってみたかったところだ」

「……ねぇ。目が本気……アッー―――!」


だんっ!(銃声)



だんっ!だんっ!だんっ!だんっ!(何故か追加で銃声)




ふぅ。すっきりした。これで日頃の仕事のストレスも少しは晴れると言うものだ。
隣でスティーブ中佐が「救護班!救護班、はやくしろーっ!間に合わなくなっても知らんぞーっ!!」などとどこぞの星の王子のような事を言っている。そんなに重大なことでもないだろうに。
どうせ、次の番外編ではひょこっと出てくるのだろうから。ギャグキャラは死なんのだ。

……その定義で行けば、私は死んだらそれっきり、ということか?

まあいい。


では、まずF-41の説明から始めるとしよう。






最初に、この機体のフォルムからだ。
外形は幾度とない前例のある肩翼配置のクリップトデルタ翼。F-15を想像していただければありがたいな。
今まで数々の戦闘機が開発されてきたが、この機体はそれらの形状などを流用している部分が多い。
外見としては、前半分がF-22(もちろん、翼はF-15に類似しているが)、後ろ半分がF-15という風貌。大体、だが。(実際はもっと複雑なのだが、こればかりは作者の脳内でしかイメージが確立していないので説明を断念する)
コックピットは大きく盛り上がっている。こうすれば、360度の視界が確保できるからだ。
ヘルメット・マウンテッド・サイト(以後HMS)。要するに、パイロットのつけるヘルメットに直接照準装置(サイト)を取り付けてしまうことにより、機体正面に捉えなくとも、パイロットの目線が敵機を追うことが出来れば、常にロックオン出来る、という技術だな。
これを搭載している以上、広い視野は必須となる。

アビオニクスはF-35の物を流用した。アクティブ方式のフェーズドアレイレーダーがあるため、前述のHMSも加えてオフボアサイト(ロックオンしていなくともミサイル発射可能)能力に秀でている。

この機体の代名詞とも言える『MMP-6 高機動ミサイル搭載パック』についてだが、まず威力が低い。とんでもなく低い。本当に、低いのだ。
頑丈な爆撃機やガンシップ(AC-130などだ)に対しては全く無力。ぱんっ、と爆発するだけで、相手にとっては痛くも痒くもない。

ただ、制空戦闘機に対しては十分撃墜可能な威力だ。どちらから言うと爆発力ではなく近接信管作動時に撒き散らす破片、直撃によるインパクトで敵機を落とす。
ファイア・アンド・フォーゲット能力(撃ちっぱなし)もあるので、敵機をミサイル命中までロックオンする必要がなく、発射した後、すぐ回避行動を取れる。(HMSがあるため、撃ちっぱなし能力がなくても比較的早い回避行動が取れるのは大きな利点だ)

おまけに、小型な分高機動なので、敵機を凄まじい勢いで追尾してくれる(ただし、射程距離は短い。固体燃料ロケットなのだが、小さい分十分な燃料が詰めないのだ。せいぜい25kmと言った所だろう。ただ、これだけ小型化してAIM-9Xサイドワインダーよりも長い射程だ、その点を考慮すれば、十分と言えるかもしれない)
まあ、誘導式爆弾や一般的なミサイルも積めない事はないので、装備に関しては作戦に応じて変えることによって万事解決する。
重量によって機動力が多少低下するのは否めんがな……。
私が思うに、それなら完全なる対戦闘機用の機体として運用したほうが割に合うような気がするぞ。上層部に意見できる立場ではないが。

エンジンは2012年(F-35ロールアウトの年)に開発されたF135-PW-1000が採用された。出力は大幅に増加している。現在F-35/A・B・Cに搭載されているF135エンジンの平均的な出力と比べて、30%増しだ、こうして数字にすると驚異的だ。
ノズルは推力偏向ノズルを採用。この点はF-22の物だ。しかし、ただこうやって過去の機体の真似をしている訳ではない。
機体そのものの質の向上、システムのアップデート、究極的なまでの空戦能力の追及――それらを求めた結果、場合によってはF-22をも上回る空戦能力を持ったこの『モンスター』が生まれた訳だ。
ただ、ステルス能力はない。ここが残念な所だな。それを差し引いても十分すぎるスペックを誇るが。
ステルスによる不意打ちではなく、驚異的な機動力とレーダーシステムを持ってして、敵機の視認・探知可能距離外から先に敵機を探知し、死角から一気に接近して、先に撃つ。先述の通り射程が短いので、速力も優れている。
所謂『ファーストルック・ファーストショット(先に発見し、先に射撃する)』に特化しているのだな。


こんなところか。もっと開発に当たって起こった秘話や、その裏での苦労、開発費なども詳しく説明してもいいのだが、飽きられそうなのでこのぐらいにしておこう。




「あれ。中尉、何喋ってるんですか、1人で」

「……マーカスか」

マーカス・カニンガム少尉、25歳。何気に私より年上なのだが、性格、階級の関係で、彼はいつも敬語で私を呼ぶ。当たり前といえば当たり前なのだが、何となく複雑な気分になる事もあるな……。
彼は若くしてイーグルドライバーとなった。F-15に対する適正がばっちりだったそうだ。
パイロットの操縦技術や癖によって、どの機体が適しているか、実際にどの機体に乗ることになるのかが決まる。
要するに、あのガキ(ハワード)よりも、操縦が上手い。
いや、そもそも、何故あいつが隊長などをやっているのだ。ガルシアのほうが客観的に戦場を見られるし、純粋な戦闘機動ならハワードより上だろうに……。(※あくまでサラの視点からである。実際のハワードの技能はガルシアと拮抗している)
いざとなれば報告書にでも書いてやろう。

「ほっとけほっとけ、コイツはモニターの向こうに向かって延々と喋り続けるのが仕事なんだよ」

「は、はあ……?」

マーカスに向かって、間違ってはいないが私の脳天にカチンと来るようなことをほざいたのはトーマス・スタンフォード大尉。私より階級が上だし、年齢も上で、経験豊富だが、この性格だ。内心、実に忌々しい。敬語を使わねばならぬのがさらに忌々しい。
確かに頼りになる。なるのだが、この性格は私にとって大嫌いなタイプだ。

「大尉、そうやって人に嫌味を言うのが仕事ですか」

「お前こそ嫌味言ってんじゃないかよ……。ったく、軍の規律に染まりすぎた女ってのは、これだから」

今すぐ私の手に握られた愛銃・コルトM1911A1(銃器の使用免許はもちろん持っているが、管制室に持ち込むのは禁止だ。だが、番外編なので問題などないだろう)をこの男の脳天に叩き込みたい衝動を必死に抑え、震えた声を絞る。

「……邪魔です」

「ああ、怒ったか。すまん、そんなつもりじゃあなかったんだがな……まっ、気負いすぎるのもダメだってことだけ言っとくぜ?」

「とりあえず、消えてください」

「分かった分かった、行くぞマーカス」

「あ、はい。……すいません、中尉」

こういうときのフォロー役は決まってマーカスだ。

「お前が気にする事ではない。行っていいぞ」

……しかし、まあ、トーマス自身も悪い男、と言うわけではないのだ。
ただ、私とそりが合わない、ということなのだろうな。人望も厚い。少なくとも私よりな。

彼は操縦技術に関しても卓越した物を持っている。過去乗ったことのあるF-16で、ゲリラの駆る戦車などを数機破壊したと言う話だ。
それでいて、制空戦闘もそつなくこなす、所謂ベテランだな。

そんな彼よりも技能が上な男が、現在第1話の時点で登場している。

「おお、サラか。頑張っているようだな(解説的な意味で)」

「少佐。いえ、たいした事では」

「中尉、そう気張らなくていい、お前はお前の仕事をやっている。それでいいからな」

「はっ」

ジェームズ・デベリーヴ少佐。F-35を駆っている。
彼は実に優秀で、内戦地帯で戦果を大きく上げている上に、幾つか勲章も貰っていた。
機動の鋭さ、命令の的確さ、人柄、どれをとっても『完璧人間』と言って差し支えないのではないだろうか。
私がこのラングレー空軍基地内で尊敬する人物の1人だ。

その隣にいるのがニコラス・フェルナンド大尉。彼もまた優秀だ。任務に実直な性格で、軍人らしい男である。もちろん、パイロットの技能については有機的すぎて言葉で説明できないが、とにかく、F-35を駆るにふさわしい能力は持っている。

「中尉、これをやろう」

その折、ニコラス大尉が何かを差し出した。

「は。……?これは?」

「のど飴だ。喋りすぎると喉を傷める」

……何故、こうも気遣いの利く人物が未だ『大尉』なのだろうか。少佐クラスでもおかしくない。人物像的には。
無愛想ながらもこういう一面を持っている彼は、『一部の女性士官』から密かな人気を得ていたりするのだが――説明する事はない。

「ありがとう、ございます」

どうも私は、こういうことに対して礼を言うことに慣れていないような気がする。

「いや、いい。職務(解説)を全うしろ、それだけだ」

「了解です」

そう言って2人は去っていった。
……さっきから( )内にある言葉が気になってしょうがないのだが、置いておこう。どうせ今日はここらで終わりだ。
番外編は説明ばかりだから、短く終わらせたほうが読者にとっても気が楽だろう。


「おい中尉!ちょっとこっちへ来い!どうしてハワードを撃ったんだ!」

……スティーブ中佐だ。くっ、流石に番外編でも罪は避けられんか……!本編に影響はないだろうが。
さて、ここらで番外編1話『お前の解説で天を突け!』はおしまいだ。
どこぞのドリルでどこまでも突き進む熱血アニメのようなタイトルだが、終始これで通すらしい。無理があるだろう。





次回予告!

「俺、実は基地に恋人がいるんスよ!」「馬鹿野郎!その台詞を言うんじゃない!」「おいおい死ぬぞぉ!?」
将来のレギュラー候補トリオが登場したりなんだったりハチャメチャ展開!キーワードは『弓』だ!
そもそも今後の見通しは立っているのか!行き当たりばったりで書き進める作者の運命は!?
ラングレー空軍基地内で繰り広げられる衝撃的軍事バラエティ!
因みに来週もハワードは撃たれるぞ!
ん?ガルシアの説明?それは次回だ!
新しいコーナー?それはいつになるかも分からん企画だ!まだ言うな!
よし、次回「私が説明するって言ってんだ!」ご期待ください!
(※全部棒読みです)









「……スティーブ中佐。ハワードを撃った罰ゲームとはいえ、こういう台詞を私に喋らせないで頂きたいのですが」

「罰『ゲーム』で済ませてもらっている分、ありがたく思え」

「まったくだ、いきなり人を撃ちやがって。このサディストが――」

だんっ!(銃声) だんっ!(駄目押し) だんっ!(もういっちょ!)

















あとがき


へっ。
見事にサラを解説役に仕立て上げてやったぜ……
彼女はこのためだけに存在するのだ。そうだ、我々ナチス・ドイツにしか彼女をこの役にする、ということは成し得なかったのだ。
ハイル・ヒトラー。サラ・ガブレスキーは永遠の解説役だ。ハイr



なんかいきなりドタマに弾丸ぶち込まれました。

とりあえずハワードの扱いが悪いような気もしますが、番外編などにおける主人公の常でしょう。


F-41に関しての説明が主でした。まあ、こんなんに興味持つ方は少ないでしょうし……
読み飛ばしても可です。「ああ、こんな感じなのね」程度で受け止めて置いてください。
その点を考慮して、詳しすぎるスペックについてはあまり言及してません。


各人物の人物像に関しては今後のストーリーを経て確立していくつもりです。行き当たりばったりなんですよね、これがな。
結局今は「あーあ、2話どうしよっかなー」と考え中です。

[1273] 推奨BGM「なし」
じゅう - 2008年12月15日 (月) 20時02分

2. ――ブラック・ファクト――

















「よく生きて帰ってきた、暫く休んでいろ」

帰還したハワード・イェーガー少尉が最初にかけられたのは、そんな言葉だった。
腕の裂傷はさほどの問題にはならない。
ただ、数時間もの間、夏とは言え冷たい海水に浸かりっぱなしだったのだ。肉体的な疲労に関しては言うまでもない、というところである。

政府は今頃、大慌てだろう。
もうこうなった以上は戦争しかない事も目に見えている。一度武力が振われた以上、どちらかが屈服するまで戦いは終わらない。

元来、戦争とはそういうものだった。

ガルシア達、あのミサイル攻撃を受けた者達に一瞥し、簡単な体のチェックを受けてから基地内の宿舎にある自分の部屋に戻る。


「ああ……」

それぐらいしか声が出なかった。生還した事に対する喜びや、こうして暖かいベッドに潜れるありがたみを感謝する声すら喉から出ない。
海水の冷たさで下半身が痺れているような感じだ。幸い、身体機能自体への影響は無いそうだが。
下半身は冷たかったが、海水に浸かっていない上半身はギラギラと燃え盛る太陽の下にあった。

暑いし、冷たい。
そんな訳で彼は今、これ以上なく疲れきっていた。
機体のほうだが、とりあえずハワードには予備機が手配される。前と同じF-16だ。
こんな状況下だし、軍にとっては一つでも多く稼動機が欲しいのだろう。配備は思いのほか早かった。


しかし、引っかかるものを感じる。
普通、宣戦布告をするのは軍部と言うより、政府だろう。
それなのに、何故ディジリアの軍部が宣戦布告をする権限を持っていたのか。何故政府が何も言わないのか。

それら全てが胸のうちで引っかかり、言い様の無いもやもやとした感じを作り出す。

(ディジリアで何が起きたんだ)

『食糧不足の軍事大国』。
そんな一見矛盾した言葉を体現したあの国は、今、一体どうなっているのだろうか。

そして、あのミサイル攻撃の正体は、一体なんなのだろうか。


堂々巡りする思考は、彼を捕らえて離さなかった。









そのディジリアで、何が起こっているのか。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

















ここはディジリア。この島国の中で南の方に位置する村、ギドル。……の、少し東の道中。

僕はサマナ・グリード。13歳。
趣味はサッカー……って言っても、壁相手に蹴り続けるだけだけど。


今、この国は大変な事になっている。僕の住んでる村も、貧しいにもほどがあるってくらいだ。古臭い石造りの家。
食っていけないわけじゃない。でも、かなり厳しかった。

ディジリア内で起きた内戦。それは12年前の話?違う。『つい1ヶ月前』にも起きた。
厳重な報道規制によって、他の国は全くそのことを知らない。外国から来たバカな記者が情報を持ち帰ろうとして、射殺された場面を見たこともある。
そして射殺した兵が『こいつのようになりたくなかったら、国に帰ってもこのことは喋るな。いいか、何を聞かれても今から俺が言うとおりに答えろ』と囁くのだ。

飛び散る脳漿を見ても、特になんとも思わない。自分は、そんな光景いくらでも見た。
「報道魂」?死にに来るような物だ。
帰ってこない記者の行方を他の国が尋ねてきたら、ディジリア側はこう言う。

『我が軍の装備に触れ、その銃器が暴発した。遺体は返す。身元の確認を』

これを少なくとも『6回』は言ったはずだ。生き残りの記者も兵士に脅されているので『本当だ』などと証言する。
その内入国規制が始まったため、記者が入ってくることすらなくなった。

たまたま軍のある一隊がこの村の近くでキャンプを開いていた。興味本位で見に行ったら、そのキャンプの端っこに捨てられてたビニール袋から『誰かの指』が見つかったんだけど……まあ、大方射殺した現場を国外にリークしようとしたディジリア人の口封じに一本持っていったんだろう。


今、実際は軍部がトップといっても過言ではない。大統領は――
生きている事は確かだろうが、表舞台には出ないだろう。

旧マクラエル派と、それに追従する者共。彼らは今、切札を従えている。
DW-113。そんな感じの名前が付けられた主力戦闘機もある。何でも、あのラプターに対抗できるとか何とか。もし本当だったら大変な事だ。

さっき、村に近くにキャンプが開かれていたことがあるといったが、今でも軍の一部がこの村の近くで駐留している。
そこでよく耳にするのだ、『切札』の噂を。

『低コストのステルス巡航ミサイル』――コードネーム『インビジブル』。

その特殊な機構の発射装置はミサイルの連続発射が可能で、そのミサイル自身が非常に高機能なステルス機能を搭載。
ただ、その分シーカーが積まれてなくて――早い話が、敵機を追尾できない。ミサイルと言うより、ロケットかな。
でも、ディジリア軍はアレをミサイルと言い張り続ける。ま、どうでもいいんだけど。
その代わり、指定した座標へ割りと正確な攻撃を敢行できるんだ。爆破範囲もそれなりに広いし、戦闘機があの爆風に飲まれたらひとたまりもないだろうね。


この情報は所謂「ブラック・ファクト(存在しない事実)」に指定されてるはずだ。
それを喋るとは――程度の低い兵士で助かった。



ちなみに。

ここ、ギドルから首都、大統領官邸のあるディギンズゼアはかなり近い。せいぜい50kmも進めば着く。
首都はビルが結構建ってるって言うのに、ここは貧困層の住む土地だ。格差を見せ付けられてるみたいで、なんか、やだ。


「もうすぐ着くぜ」

ああ、もうそんなに走ったか。
テイパー・ヘルベルト1等兵。僕が今乗っているこのジープを運転している人だ。
この人は所謂、僕の『同志』。いや、正確には僕達の、だけどね。

ヘルベルトはあの軍のキャンプに駐留してる訳じゃない。服装は完全に一般人だし。
彼は今、『軍人として認められていない』兵士だった。
僕たちが向かうのは、大統領官邸。

「しっかしなあ、何で付いて来るんだよ。お前。物好きだなぁ」

「断らないでしょ、あんたも」

「そうだな。ハハハ。いやはや、敵わんわ」

彼はそうやって朗らかに笑う。普通の好青年、と言った感じだ。

「ん……ねえ、着いた?」

「まだだって。黙って寝てろ」

「………」

本当に黙って寝た。
乗り物酔いの酷い僕の姉はいつもこんな感じだ。ミレ・グリード。16歳。
何か、張り合いのない姉。僕の家の2軒隣の家に住んでるピリエさんのとこでは、毎日のように姉と弟が争ってるっていうのに。
まあ、後部座席にはもう1人おまけがいる。僕の悪友。

「おお、見えてきた、見えてきた」

どこか活発的な印象のつり目と逆立った髪の毛が特徴的な、ジルウェ・ディード。僕と同い年だ。
彼はどちらかと言うと黒人寄りで、いかにも子供っぽい顔立ち。
僕は普通におとなしそうな金髪なんだけど。
傍から見ればいじめっ子といじめられっ子の構図に見えるような気がしないでもないな。



それから30分ばかし車を走らせる。
大統領官邸には、警備兵1人としていなかった。何も事情の知らない人間が見たら何事かと思うだろう。
今、この国の実質上の最高権力者である軍部は、大統領が何をしようが興味がないらしく、監禁する事もなく警備兵を全て軍に編入したそうだ。

1人の人間より、大勢を見つめようとするのは結構だが、そのおかげで僕たちが付け入る隙が出来た。



僕たちは今、大統領の部屋の前にいる。姉はまだ眠たそうだ。

「失礼します」

ヘルベルトがそういってドアをノックし、入室する。
僕たちはその後に続き、その部屋の中を見渡した。

一面を埋め尽くす人、人、人。ちなみに、部屋の外までぎっしりだ。
それら全てが『元』軍人であり、『現』軍人でもあった。

「……揃ったかな、少佐」

大統領――ベン・サンダース氏が、おもむろに口を開いた。

「はっ。全124名。揃いました」

「そうか。……?そこの子供達は?」

サンダース氏が怪訝そうな顔で僕たちを見つめる。ヘルベルトが敬礼したままの姿勢で

「強いて言うなれば、真実を後世に残すための目撃者であります」

へえ。芝居がかってるし、よく聞くようなフレーズだけど、上手いフォローだ。今僕たちが立たされてる苦境を思えば、なおさら。事実ではあるけれど。
彼にこういう才能があるなどとは知る由もなかったが、とにかく、大統領は思慮深げな顔で勝手に「そうか」と納得してくれた。

確かに僕たちは、この目で真実を見るためにここに居る。
何も知らない人達に、この内情を伝える為に、僕たちは、この目に彼らの姿を焼き付けなければならない。
今はまだ小さい僕だが、いつか所帯を持ったとき、自分の子供へ語り継ぎたい。この物語を。

13歳の思考とは思えない、って笑うかな。
でも、僕は平和な国に暮らす人よりも、ずっとずっと多く人の死を見て、死に際に残す一言もたくさん聞いてきた。
そりゃ、少しは達観するってもんさ。

何もそれだけじゃないんだ、理由は。
僕たちだけじゃなく、他の村、町にも『同志』はいる。
反政府軍……と言うのは正しくないな、何せ、その『政府』のトップが、ここにいるのだし。

今の軍部に反感を持つ人はいるけど、それ以上に政府を嫌悪する人のほうが多い。
このベン氏も、悪い人じゃないんだが……如何せん、軍の装備を減衰させずに食糧危機を乗り越える、なんてバカな方策を打ち出しちゃって、それが祟って、今は軍部が最高権力者だ。
彼が自分の方策が絶対に無理だってことに気づいたのは、政府が打倒されてからだった。


彼らは旧シュムエル派。もしくは、旧マクラエル派に賛同した兵士と袂を違えた兵士達。
僅か124名。

124名しかいない。

ここだって安全な訳じゃない、時々、民間人がガラス瓶なんかを投げ込んできたり……そのおかげで、官邸の庭はゴミが散乱してる。
でも、水面下で動く僕らを、その水に入って調べようともしない猫が気づくはずもなく。
軍部には気づかれていない。今のところは。


「アメリカに喧嘩を吹っかけたんだろ、軍は」

空軍出身の――今は戦闘機がないため無力な――アッシュ・ミゼル少尉が力なく呟いた。
哀れむような声。それは誰に向けた哀れみだったのだろうか。

「正直、戦況は分からんね。切札もあるが、DW-113もある。とはいえ、やはりアメリカは強大だ。ねじ伏せちまうかもな」

アッシュは壁に体を預けたままそう言った。

「聞いたかよ、ミゼ。先手はディジリアが取っちまったんだぜ。あのミサイルで」

ヘルベルトが『ミゼ』ことアッシュに言い聞かせるような口調で言う。

「でもF-16はまだしもさ、F-15までアメリカは撃墜したんだ。航空戦力なら負けてやしないさ」

「だからさ。ご自慢の航空戦力をあのミサイルで砕かれたら、士気もガタ落ちだろうって」

まるで自分の国が勝つのを心配しているような口ぶりだが、実際、その通りだった。
軍部がアメリカに打ち負かされてくれれば、力は弱まり、行動がしやすくなる。
今は、雌伏のときだ。待つしかない。今行動を起こしても、それこそねじ伏せられてしまう。
まずは同志を募る。
力を蓄えなければならない。もどかしいが。

僕は、といえば。
とりあえず拳銃ぐらいなら扱える。こんな小さい体で銃なんか撃ったら、反動で骨が折れてしまいそうなものだが、最近は反動の軽い銃だって出回っている。まだ13歳の僕にでも使えるような。
あまり使いたくはないけど、護身用としてはいいだろう。

姉は……無理だろう。
表面だけではまだ『のんびりした人』程度に見られるかもしれないが、彼女も戦争で心を病んでいる。
前はもっと活発だったはずだ。最近は口数が多少少ないし、おとなしくなった。
だからこそ不気味なのだ。人をいとも簡単にこう変えてしまうものなのだろうか、戦争は。

ジルウェは心配ない。そもそも、彼は何かを思いつめるような人柄ではないし、ストレスを発散する方法もきちんと持っている。
いつもは壁を相手にボールを蹴る僕だが、たまにジルウェとひたすらパスを繰り返す。それだけでも、随分気持ちいい。
僕の使っているボールはもうボロボロだ。が、愛着もあるし、暫くはこれを使う。というか、他に新しいボールを買う金などない。


僕らの行動範囲は確かに小さい。破壊工作も出来やしないし、そんなことをすれば、全ての計画がバレてしまう。
だが、時が来れば。時が来れば、一気にマクラエル派を叩きのめすことも、出来る。
僕達の組織はレジスタンスではない。『インビジブル』と同じ。
そう、僕ら自身が『ブラック・ファクト』。存在しない事実が、存在しない事実を打ち倒そうとしている。
この兵士達は、決して諦めない。僕も。



だから、アメリカの兵隊さん。
頑張ってください。それしか、言えることはありません。
あなたたちが、軍部を十分に弱らせてくれたら、後は僕達が精一杯、やれることをやる。


意思疎通の出来ない共同作戦。
それが成功するのかどうかは、結局の所、『敵国』にかかっていた、ってことだ。









―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――











「ハワード」

自室で休養中のハワードを訪れたのは、ガルシアだった。
布団に被って寝ていたハワードだったが、眠りが多少浅かったせいか、すぐに起床する。

「ブリーフィングだ、疲れてると思うけど、我慢してくれよ」

「んーん、了解。……でも、なんのブリーフィングだ?」

「ディジリアの攻勢、チェサピークの沿岸だ。航空機とフリゲート、空母、イージス艦。よりどりみどりらしい」

「……イージス艦に、空母だぁ?ったく、金をそんな方向に傾けるからああなったんだろうが……」

空母やイージス艦はかなり高価な戦力だ。それを惜しげもなく投入してくるとは――『軍』だけは潤っているらしい。

「航空機は数不明、でもF-15タイプが出てくるのは確実だろうし、まだその全容が明らかになったない以上、深く攻めるのはやめといたほうがよさそうだ」

「あのミサイルもある」

「そうだね、だからその対抗策を、今から練るのさ」










彼らとディジリアの初の大規模戦闘。そして、その水面下で動く者達。




これは、只の戦争ではない。










人の思惑が絡みついた末の、末路だ。













2. ――ブラック・ファクト―― ……END






































あとがき


短い。

短い。

分かりにくい。

3拍子揃ってます(?)



ちなみに書き進んでない訳じゃありませんよ。3、4話も構成は完成してるし。只納得行かないので推敲中。それだけです。


前回の番外編で出た「弓」は次で出番かな?かな?かなぁ?



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