[1267] The sky of Benihas |
- じゅう - 2008年11月16日 (日) 17時27分
「The sky of Benihas」
初めて空を見たのは、自分がまだ1人で立てもしなかった頃だったと思う。
目の、脳の、神経のずっと奥深くに、焼きついた景色。 初めて本格的に興味を持った物。 いや、物なんてもんじゃない。
それから少しばかり成長した後、間違いなく確信したんだ。あれが俺の世界。俺の全てだって。
そう言うと言いすぎかもしれないが。
兎も角、あの世界を目指してみたいって、そう思ったのは紛れもない事実だと、胸を張って言える。 小学校の宿題に空の絵を描いて「手抜きだ」って怒られたから、全力を注いで描き直した空の絵が賞を取った。 ……まあ、嬉しかったよ、素直に。
もちろん、空ばっかり考えてた訳じゃないんだ。高校の頃はバスの運転手もいいな、って思うようになってて。 安定した仕事なら、いいか、なんて感じになってた時もあった。 そりゃ、俺だって人だからね。一つのことにだけ死ぬときまで熱中できる人間なんか、そうは居やしない。
結局、過去に兵隊やってた俺の祖父が「そんなに空を飛びたいなら空軍に行け」なんぞとふざけた命令を飛ばしやがって、それに流されちまった。 馬鹿だった。民間の航空機の仕事でも十分だったのに。 それに、軍隊なんて人を殺しまくるような仕事だ。空を飛ぶのとは、違う。全く、違う。
――だったんだが。
民間機よりも遥かに早くて、機動性のいい戦闘機。 俺はコイツに魅せられた。強烈なGと、程よい緊張感。
この世界は平和だったから。実戦らしい実戦もなく。 人殺しなんぞせずに、ずっと空を飛べる。 アフガニスタンの辺境で内戦が起こってるなんて、全く実感がなかった。
空軍学校を卒業して、1年。様々な訓練を行い、技術を吸収して。 やっと基地に回されて。
何だかんだで、俺は上手くやっている……と思う。
操縦技術は発展途上。しかし、歳は26。 もうちょい、若いうちに軍学校に入るべきだった、と今は思う。 今年で27だ。おっさんの仲間入りも近い。ちっ。
まだまだ俺はひよっ子だ。 でも、まあ、仲間はいい奴ばっかりで、俺の基地は戦力もかなり充実してて。国を守るために戦える、っていうことも実感できて。 このまま順風満帆でいけるかなー、なんて。
そうは問屋が卸さない、ってことなんだろうな。
―― The sky of Benihas ――
空は取り戻す。 それが俺の誓いだった。
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