【広告】AMAZONからG.W.に向けてスマイルセール!4月22日まで開催

小説投稿掲示版〜!!!!

小説の投稿掲示版です!! あなたの作った小説をどうぞ ご披露ください!!!!

ホームページへ戻る

名前
メールアドレス
タイトル
本文
URL
削除キー 項目の保存


こちらの関連記事へ返信する場合は上のフォームに書いてください。

[1084] TRUE JUSTICE(2) (2/18日更新)
ロキ - 2007年10月09日 (火) 20時28分

中二病の塊のようなお話。
矛盾と人物の性格破綻は日常茶飯事。
恐ろしいお話です。





キャラ投稿・説明は前スレを参照してください。

追加事項
・キャラの性格が想像と違っても勘弁してください;
・年齢が変わってしまう場合もあります。勘弁してください;
・TJ用のサイトを作ってみました。ストーリーを作っていただいている方で、載せてよければご一報ください。
http://loki77.hp.infoseek.co.jp/index.html

↓キャラ
名前【ゼファー】 
年齢【20】
職業【風騎士】
属性【風】
性格【後先考えず突っ込んだりする熱血馬鹿】

経験地【パワー5 スピード8 ガード1 テクニック3 知識3】
その他【武器は鎌が付いた槍『サイズハルバード』、風騎士という職業からわかるように、風を操ることができ、風の刃や風の壁を作ることができる。また、自身に風を纏わせ、超高速移動を可能にする『テンペストブースト』もできるが、体力を大幅に消費するため、何度も使うことはできない】

名前【竜矢】 
年齢【13】
職業【情報家】
仲間に、その敵のデータを教える。
属性【水・炎】
性格【普段は、暗くて、女からは、かなりキモがられているが、自分の好きな事だと、明るくなり、活発になる。メガネをかけている。ちなみに、裸眼での視力は、0,03・・・。】
*性格は詳しく。
経験地【パワー1 スピード2 ガード1 テクニック5 知識11】
その他【ほとんど、戦闘では、仲間にデータを教えるだけだが、本気になると、バレーボールで、相手にぶつける。最大ダメージは、5ダメージ。】

ストーリーは、作者さんに委託します。かなり作りにくい能力ですが、宜しくお願いします。





名前【秀一】 
年齢【17歳】
職業【フェニックスナイツ】
属性【光】
性格【クールで冷酷、眼前の小事にとらわれることなく、
   常に“自分にとっての”ベストを尽くす】
経験値【パワー5 スピード20 ガード5 テクニック20 知識19】
その他【武器は長剣、左手一本で剣を扱う、右手で魔法を操る
    特殊能力:リザレクション・1度やられても、SPを99%消費して復活
    フェニックスナイツ・・・直訳すると“不死鳥の騎士達”だが
    本人のこだわりによりここでは“不死鳥の使い”の意。





名前【神人】 
年齢【17歳】
職業【竜騎士】
属性【風、闇】
性格【外面は熱血だが、内面では常に冷静に物事を考えている
   口癖は『あめえんだよボケェ!』】
経験地【パワー20 スピード5 ガード5 テクニック20 知識19】
その他【武器は槍、魔法よりも肉弾戦を得意としている、
    特殊能力:エアードラゴン・SPを60%消費して飛竜を呼び出し、それにまたがって戦う
    飛竜に乗るとスピードとガードが飛躍的に上昇するが、雷属性に弱くなる





名前【荻野目】 
年齢【17歳】
職業【シューター】
属性【土】
性格【天然だったり詰めを誤ったりするするが、自信家で責任感が強い】
経験地【パワー2 スピード14 ガード18 テクニック11 知識11】
その他【弓術を中心とした飛び道具によるアシストが得意、
    特殊能力・・・思い浮かばなかったんで後はよろしくです・・・(殴



名前【新川 心紅】 
年齢【17歳】
職業【高2】
属性【私立探偵】
性格【母親譲りの勇気、情熱、正義感に満ち溢れる。
   悪があいてだと突っ込む覚悟で大暴れする!】
*性格は詳しく。
経験地【パワー2 スピード10 ガード3 テクニック2 知識3】
その他【根性で体力は底なしと思うくらい不屈の闘志。
    力尽きても立つ!】
    




名前【聖雫(せいな)】 
年齢【12】
職業【風水戦士】
属性【水】
性格【明るくて大雑把(?)で人懐っこい】
経験値【パワー1 スピード10 ガード2 テクニック5 知識2】
その他【武器は“叉刃拐(サジンカイ)”という、トンファーに刃がついた2対のものを使用する
    また、自然の力をかりて一時的に“長所”を強化できる


名前【呉爾羅】 
年齢【18歳】
職業【海棲巨大爬虫類】
属性【竜、水、火】
性格【かなり冷静だが、キレると歯止めが利かない】
経験地【パワー7 スピード1 ガード6 テクニック3 知識3】
その他【武器 放射能熱線、体内放射(至近距離で相手に締め付けられたりする時の脱出技)
肉弾戦も得意
窮地に追い込まれたり、瀕死の重傷を負ったりすると一時的にパワーアップ】




あれ?遅いですか?いいか、遅かったらどうでも良いです
名前【玉賀必人呼ばれるときは『必人』】 
年齢【J  】実年齢
職業【破魔族『やみ属性に強い』】
属性【光/闇】たまに裏切る?
性格【無鉄砲、馴れ馴れしい、戦闘の時は強気】
*性格は詳しく。
経験地【パワー5 スピード4 ガード4 テクニック6 知識8】
その他【普段はおとなしいへんなときに来る】



名前【マグナ】 
年齢【19】
職業【炎剣士】
属性【炎】
性格【本名長谷 健太(はせ けんた)。拓の唯一無二の友。性格は温和で人当たりがよく、低身長で童顔のためか、結構女の子にもてちゃったりする】

経験地【パワー3スピード3ガード2テクニック5知識7】
その他【武器は炎を象った七支刀「カグツチノツルギ」。炎剣士という職業があらわすように、火を自在に操る。必殺技は、刀身から炎でできた竜を召喚し、相手を焼き尽くす『ホムラノケシン』だが、MPが足りないためほとんど使用できない】






名前【サンタマリア じゃんご】 
年齢【14】
職業【ドラマー】
属性【音】
性格【どちらかというとおとなしめ。だが、音楽関係のことが耳に入るといてもたってもいられない。爆走。気分の上がり下がりが激しい。で、たまに天然のボケをかましてしまって恥をかく。】
*性格は詳しく。
経験地【パワー2 スピード4 ガード1 テクニック8 知識5】
その他【必殺技→ミュジックショック=なんでもかんでもドラムのように叩く。相手はそれを聴くと、自然に踊ってしまったりと、神経が異常になり、運がいいと、上手く操る事も出来る。そんな精神的異常を見せるような技。】




名前【竹内 豪】 
年齢【25  】
職業【侍  】
属性【地 】
性格【いたって冷静、追い詰められるとパワーアップする】
*性格は詳しく。
経験地【パワー20スピード13ガード20テクニック8知識8】
その他【凄まじい程の威圧感とパワーが自慢
追い詰められるとパワーとスピードが爆発的に上がる
口癖が『肩慣らしにもならぬわ!!!!』です】




名前【鹿谷 剛史】
年齢【12】
職業【小学六年生】
属性【地】
性格【ムードメーカーでバトルになっても,笑を忘れない】
*性格は詳しく。
経験地【パワー6スピード3ガード6テクニック3知識2】
その他【武田信玄が好きだったので、風林火山をバトルで利用する。風、林、火、山、に応じた能力アップと特殊能力が使える
疾如風の如く・スピードがアップする
特殊能力・攻撃の隙が大幅に減る
徐如林の如く・テクニックと知識が上がる
特殊能力・一定時間敵に見付からずにバトルできる
侵掠如火の如く・攻撃力が上がる
特殊能力・属性に火がつく
不動如山の如く・パワーとガードが上がる
特殊能力・攻撃を受けた跡に仰け反ったり吹っ飛んだり怯まない発動させるには
風・スピリット十分の一
林・スピリット十分の2
火・スピリット十分の3
山・スピリット十分の3
が必要
ちなみに風は逃げるにも使えるwwwww】


名前【山崎 拓矢】 
年齢【12】
職業【スナイパー】
属性【雲 】
性格【鹿谷と同じチームの援護約、ボケようと面白い事を言うが鹿谷に「ばっかじゃねぇの?!」と言われ落ち込む事もしばしば、射撃は正確で近距離に持ち込まれると隠し武器等を使う
全然落ち着けない性格で他の二人に殴られる事もある】
*性格は詳しく。
経験地【パワー1スピード4ガード3テクニック8知識4】
その他【フィールドにあわせて隠れて狙撃ができる 
特殊能力・相手の特殊能力をそのまんま真似する      】

名前【久保田 大樹】 
年齢【12】
職業【死神】
属性【闇】
性格【鹿谷と同じチームの特攻役
職業は死神だがやはり笑い系、3人でギルドに行ってお笑い会議をすることもある、ツッコミ兼ボケの大変な役
やはり落ち着けなくそこまでうるさくは無いが「お前もじゃん」と言い返されるが適当に殴って終わらせることが多い
はっきり言うと勉強が出来ない    】
*性格は詳しく。
経験地【パワー2スピード7ガード3テクニック7知識1】
その他【特殊能力・相手を攻撃した後ライフを吸収する(自動)】

名前【青木 拓都】 
年齢【12】
職業【司令塔】
属性【雷】
性格【鹿谷と同じチームの司令塔、4人の中で鹿谷と青木しか勉強は出来ない、山崎も少しできるが久保田は馬鹿に等しい
笑い系なのは定説であり青木も例外ではない
司令塔としての実力は十分でパワーの低さに困ってる
彼は戦闘はせん!!!!と言っていた】
*性格は詳しく。
経験地【パワー1スピード4ガード2テクニック3知識10】
その他【特殊能力・敵がいないと使用可能,どんな場所でも基地が出来る】
鹿谷と同じで御願いします〜
ストーリはー鹿谷と同じで(笑)




名前【萩尾 広阪】 
年齢【21】
職業【軍師】
属性【灰色】
性格【社交的ではなく冷静 一匹狼 キレにくいがキレると歯止めがきかない 酒、煙草が大嫌い しかし、つまようじに火をつけたものを口にくわえている 突然ゲームの世界に吸い込まれ、現世に戻れない 元自衛隊 戦闘のプロ 
「ドルトン・オームの野郎は…ブツブツブツ…」
「てめぇはバルケノンか?」が口癖(ドルトンとかの設定はおまかせで)】
*性格は詳しく。
経験地【パワー3 スピード3 ガード2 テクニック8 知識4】
その他【弾切れのないマシンガン使用 魔法は使えない。
気絶すると背中からアメーバのような触手をだすが、本人は知らない
召喚獣「千風竜銃撃丸」】

名前【川越 千田】 
年齢【15(1000歳)】
職業【隠れボス】
属性【闇】
性格【社交的ではなく暗い。だが萩尾とは仲が良い。夜と小鳥のさえずりが好き 突然ゲームの世界に吸い込まれ、現世に戻れくなり、ボスとして扱われるが自分はそれでもいいと思っている。現世で外見15歳のまま千年生きている。それを飲まないと人を殺さなければ生きていられない「殺人麻薬」を飲んでいた。】
*性格は詳しく。
経験地【パワー5 スピード5 ガード0 テクニック5 知識5】
その他【人を簡単に洗脳する事が可能 あまり強くない魔法も使用可能 通常は剣で攻撃】



名前[長谷川 卓哉]
年齢[15]
職業[魔剣士]
属性[地・雷]
性格[マイペースで短気だが優しい場面もある。]
経験値[パワー4、スピード4、ガード4、テクニック4、知識4]
その他[魔剣ディアボロスと言う剣を持っていて自分がピンチになると魔剣の刃が大きくなり、威力と経験値が上がる。だが自分に少々ダメージ受ける]
魔剣解放時[パワー5、スピード7、ガード1、テクニック2、知識5]

名前[歌舞伎 大次郎]
年齢[15]
職業[忍者]
属性[氷・風]
性格[自分を「伊達男」と言っており、自分より強い男を見ると抑えられないほど気性が荒くなる。女好きで長谷川に「ナンパ男」と言われている。]
経験値[パワー2、スピード8、ガード5、テクニック4、知識1]
その他「手裏剣、クナイ、短刀を使う、ピンチになると煙玉を使い逃げる。」

名前[極楽 三朗]
年齢[50]
職業[爆忍]
属性[火]
性格[陽気で食いしん坊な中年、だが怒らせると酒を飲み火を吹く、力は石を簡単に砕いてしまう」
経験値[パワー10、スピード1、ガード8、テクニック1、知識0]
その他「TJの経験者でかなりの接近技を持っていて、TJの方でも酒を持つが酒を飲まなくても火を吹く事が出来る。」

名前[カレル]
年齢[28]
職業[魔剣士]
性格[戦いでは冷静になる、戦い以外は陽気、]
属性[風・火]
経験値[パワー5、スピード15、ガード8、テクニック20、知識20]
その他[TJの経験者でランクはA+、剣の名前は正宗と言う長刀
を持っている。魔法はほとんど上級魔法をもっていて剣聖と呼ばれている。]

名前[ゴレス]
職業[斧戦士]
性格[負けず嫌いで短気で怒らせると止められない]
属性[火]
経験値[パワー15、スピード3、ガード13、テクニック5、知識3]
その他[TJの経験者でカレルの友人、カレルには負けているが力はカレルの上である。]


[1085] 悪の申し子
ロキ - 2007年10月09日 (火) 20時31分


 予想以上。

何もかもが予想以上で、ペテンのよう。

体が軽い。おかしいくらいに軽い。羽のようだ。

「――爽快♪」

 聖雫は、叉刃拐を片手に聖雫の体より何倍もあるモンスター達を瞬殺していった。

まず刃の先端が肉を裂き、

その攻撃によって生じた風の刃が鎌鼬のように発生し巨大な刃となって敵を両断してみせた。

「――っ」 

 背後に殺気を感じる。

だが、聖雫にとって0.5秒の間合いがあればそれは既に回避率は高確率だ。

「サイクロプス、かあ」

 振り向きざまに、一つ目の巨人を目視した。

ランクはD。Dというランクの裏腹に、イベント前の聖雫ではまともに立ち会えば瞬殺されていたほどの強敵だ。

しかし、今の彼女は昔の彼女ではない。

鉄の棍棒を振り回し、聖雫を殴りつけようと、サイクロプスの腕が敏捷に動いた。

聖雫の叉刃拐の刃が棍棒と衝突しようとした瞬間、棍棒が氷のように一瞬で砕けた。

だが、それだけじゃ終らない。

風が渦巻き、トライデントのような形状を造り、そのままサイクロプスを貫いた。

内臓が風に巻かれ、ビチャビチャと辺りに散った。

「ばいばい♪」

 小悪魔。――今の彼女には、その言葉がよく似合っていた。


















第二十五話 悪の申し子
















「いやー……凄い凄い。私かなり強くなってる……」

 水が町中を駆け巡り、爽やかさが駆け巡る街、ルリアに聖雫は滞在していた。

聖雫は先ほどまでこの近くの巨人族の巣で狩りをしていた。危険度はC。

前の聖雫であれば、行くのはパーティーでなければ絶対に行ってはならない場所だった。

「弘毅には悪いけどっ……なんかアレだね。漁夫の利?」

 上機嫌ではあるが、実際は草薙 弘毅のことは気にかかってはいた。

始めて弘毅・心紅と組んだ、A級モンスター キメラ種のクラウネスと闘ったとき。

そして、“幻影”。あの化け物を倒した時の草薙 弘毅。

あれは間違い無く弘毅本人の力ではないだろう。聖雫はそう結論付けていた。

クラウネスはランクBのプレイヤー達が5人いてやっと倒せるくらいの上級モンスター。

まだEクラスの弘毅に倒せる力はないはずなのだ。特異な天才型だとしても。

そして、思い出したくも無い……“幻影を殺してしまう寸前の幻影”。

記憶から抹消してしまいたいくらいの衝撃的な映像だった。

 聖雫にとって、いや、誰でもそうだろう。幻影が恐怖とすれば、あの時の弘毅は

絶対的な 死 だった。

「……ふぅ。こんなこと考えたってしょうがないね」

 独り言を呟いてみる。

 そこでようやく気づくのだが、聖雫の正面になにやら一人の少年を囲んでいる青年達の集団があった。

「ちょっ、なにこれ?どうしたの?」

 元々、そんなに正義感があるわけでもないが見過ごすわけにはいかず、

その輪の中の男の一人に声をかけた。

「……あ?……ああ、俺達パーティー組んでたんだがよ。こいつが、レアアイテムを独り占めしようとしてんだよ」

「へー……。いじめじゃなかったんだ」

「あぁ?」

「あ、や、なんでもないです」

 それにしても。

このアイテムを頑なに持っている子ども。幼そうにしてなかなかやるなぁ、と聖雫は思った。

抱いているのは、恐らく闇系の剣だろう。希少価値が高そうだ。魔石もついている。

「そういうわけだ。別にこんな餓鬼からカツアゲなんかしねぇよ」

「あ、それはどうもごめんなさい」

 そんな言い方をしなくてもいいのに、と聖雫は少し男を睨む(ばれない程度に)。

 小さな、笑い声が聞こえた。

くすくすと嘲笑うかのように、幼い声で。

「おい、糞餓鬼。何がおかしいんだよ」

どうやら声の主は少年らしい。

「……いや、あんまりにもアホらしいから……ちょっと」

「あぁ!?」

「なんだこの餓鬼。今、ここで殺っちゃうか?」

「餓鬼だと思って優しくしてやったら付け上がりやがって。これだからゆとりはよ」

「でもお兄さん達、凄い頭悪そうだよね」

 その言葉達が男達に火をつけた。

全員、武器をとりだし少年に突きつける。

「よーしわかった。そんなに死にたいわけだ!!」

一人の男がショットガンと思しき銃をとりだし、少年の頭に近づけた。

 少年は黒い瞳だが、片方の瞳に紫が入っていた。

グレーの髪で、体は華奢なほうだと思う。

(あーあ……、リンチかな。これは。でも、あの子が悪いみたいだし……いっか)

 振り返り、どこかへ行こうとした刹那だった。

「僕、頭悪いヤツは嫌いなんだ」

その言葉が終ろうとした瞬間、闇属性の波動が聖雫の肌を伝った。

危険な臭いがした。聖雫は、叉刃拐を1秒もかからずに引き抜き、風で盾を作ろうとした。

だが遅い。黒の波動は振動を始めた。

「黒朱雀」

少年の足下から黒い霧のようなものが浮かび上がったと思うと、そこから鳥の形をした炎が四方に飛び散った。

「きゃあ!」

「ぐあっ!」

 バチバチバチ!と聖雫の風とぶつかり合い、

最終的にそれを突き破り聖雫は大きく吹き飛ばされた。

だが、青年達はそれどころじゃない。近くにいた者は即死で消えてしまっていたし、

それでなくても大ダメージを受けて動けなくなってしまった者が多数。

周りの建物は瓦礫と変わり、近くにいた通行人にまで被害が渡った。

「なっ…なにしやがんだ!」

 息があった男が怒りにまかせて叫んだ。

「この剣は貰ってくよ。悪いけどね」

「ふ…ざけんな!」

「君等には使いこなせないよ。僕にこそ、この剣は栄える」

 容姿に似つかない言葉遣い。

……なんだこの子どもは……!

誰もが思っていることだろう。

「じゃあね」

一歩踏み出そうとした。だが、その正面に少年にとって障害があった。

聖雫。

吹き飛ばされた後、彼女は世界を舐めきっているようなこの少年にむしょうに腹が立った。

ああ、もう。

倒してしまいたい。

「なに?君も僕に倒されたいの?」

「……悪いけど、私強いからね」

「へぇ。さっきの僕の実力見てそんなこといえるんだから、結構な実力者なんだろうね」

「いーかげんにしなさいよっ! ――風塵!」

 風の刃が少年に向かった。が、剣の一振りで消滅してしまう。

少年は鼻で笑う。

「これで、強い、かぁ。面白いこと言うね」

 そして少年は、剣の切っ先を聖雫に向けた。




「証明してあげるよ。僕のレベルにまで至ってこそ、強いんだと言えるってことをね」





「こっの……!!」

聖雫は叉刃拐を手に持ち、構えた。

この能力になって始めての本気の戦いだった。





「玉賀 必人。いくよ」

[1110] どこかの現実
ロキ - 2007年11月11日 (日) 14時45分

僕は、気づいた時には一人だった。

親はいない。

物心ついたとき、僕は研究所にいた。

その時の記憶ははっきりと覚えている。忘れたことは一秒たりともない。

薬品の臭いと、生物が死んだときに放つ死臭が染み付いた研究室の中に、僕という存在はポツンとおかれていた。

白衣を着た人間達に囲まれ、周りには僕を育てるために使ったのだろうかはわからないが、生活するために最小限必要なものが置かれていた。


 それから僕は、洗脳とも覚えるような教育を受けて育った。

六十数ヶ国語を学び、学という文字がつく学問はすべて学習し、優秀なドクターの指導のもと、最高の肉体の強化を目指し、ありとあらゆる体験をした。

そして、僕という存在は……玉賀 必人という存在は生まれた。



 僕は試験管ベイビー。

まさに、人類の科学と知識の結晶だった。

















第二十六話  どこかの現実















「ハンデ程度に、教えておいて上げるよ。この剣はランクA+の闇の塔の主を征討して得たものだ。

そしてさっきのあの馬鹿達のランクは皆Bランク」

 剣を握り締めていると、刀身の周りに濃い黒の霧のようなものが湧き出てきた。

それが何を意味するのかはわかっているし、玉賀が強いのも圧倒的に理解できた。

「そして僕のランクはA+」

「……だから、どうしたの?」

「わからない?これだから低知能の馬鹿は嫌いなんだ」

だが、聖雫は怖じない。強いものに怯え、恐れるだけではあの時と一緒だから――

「勝ち目は万に一つもない、ってことさ。わかるだろ?いくらなんでも」

「いーかげんにしろぉッ!」

 風塵を仕掛け、聖雫は玉賀へ向かう。

叉刃拐が風を巻き込み、そのまま攻撃へ移す。

「速いね。……けど、それがどうしたの?」

奥の紫色の色素が、どんよりと聖雫を見つめた。

 地面すれすれに切っ先が着きそうになるくらいに、剣を大きく振った。

刀身が、聖雫の顔面の直前まで迫る――

が、やはりソレは当たらないのだ。それがセオリーだ。

「こういうこと、よ!」

一秒で、五メートルは移動できる。ランクアップがそれを可能にした。

玉賀の背後に一瞬で詰める。

 その手に叉刃拐はない。何も武器を持っていない状態だった。

TJにおける武器…とりわけ、固有武器というものは、ユーザーの能力に比例して強くなる。

いくら質量の大きい武器でも、ユーザー自身が強くなければその武器の中身は空に等しい。

イメージで作られる武器は、自身のエネルギーの塊だ。

そして、エネルギーによって魔法などの特殊な技を使う。

逆に考えれば、作られたエネルギーの塊の武器によって、ごく短い時間で“特殊な技”へとの再変換が可能になる。

 聖雫は、それを見逃さなかった。

「ウェーブ・トライデントォォォォぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 手のひらで圧縮された風が、開放された。

一本の棒のように風が連なり、それが螺旋を描く。

そして一本のドリルのようにそれは成った。

先端が衝き、そこから次々に玉賀の肉体を削る。

「くらえぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

全てのエネルギーを衝突させた。

玉賀は空に散り、自分が作った瓦礫に落ちていった。

「……はっ。案外、弱いんじゃん」

空気中に散ったエネルギーが、もとの叉刃拐としての体型に戻っていく。

「……やってくれるね」

「え?」

 忘れていたわけじゃなかった。ほんの油断。

そうだった。この少年は―――A+の、猛者なのだ。

 気づいた瞬間に、玉賀は聖雫の真上にいた。

剣を握り締め、そのままそれを振り切る。

「黒朱雀」

至極当然。これは必然なのだ。

そんな風に、それは聖雫へと刃向かった。

「ちぃ―――っ」

スピードなら聖雫も負けてはいない、が避けるにしても相手の攻撃に気づくのがほんの少し遅かった。

思い切り黒朱雀が地面に叩きつけられる。

地面は割れ、あたりは弾け、聖雫は直撃は免れたもののダメージを負ってしまった。

 玉賀は地面に着地するとともに、剣を突き立てた。

「こんなものじゃないよ?」

一突きした瞬間に、聖雫の両肩と腹部、そして両膝から出血した。

「きゃあッ!」

高速を越える攻撃に、聖雫は避けることができない。

しかも聖雫は元々ガードが少ないタイプだ。通常のランクのプレイヤーよりもダメージをだいぶ受けていた。

それでも、玉賀の攻撃は遠慮を知らない。

「ほらほらほらほらぁ!まだまだいくよぉ!」

連続の攻撃を、聖雫は叉刃拐で弾く―――紙一重のタイミングだ。もし外したら聖雫はゲームオーバーは免れない。

「くっそおおお!!」

剣と叉刃拐の刃が交錯し、ほんの少しの間で聖雫は風塵を玉賀に撃った。

「これが、どうしたってぇ!?」

両手を柄に添え、それを一刀両断に切り捨てた。

風塵は、チリとしても残らずそよ風と消えていった。

「そおら、終わりだ!」

剣を振りかぶった。剣の周りにはそれらしきオーラが漂っていて、今からの未来が簡単に予測できた。

――終わり?

「く……そぉ……!」

下唇を噛んだ。ほんの少し血の味がした。

剣は今にも聖雫を襲おうと息巻き、聖雫を睨む。

 聖雫は竦んで動くこともできない。

「そこらでやめておいたらどうだ?」

 玉賀の背後に、人の気配がした。

(――っ!?今日はよくよく気配が感じれない日だ!)

 背後を斬りつける、だがそれは空を舞った。

「人助けというものは趣味じゃないんだ、が。これもしょうがないことか」

「……なんだ。あなたか。相変わらずのご登場ですね?」

「相変わらずはお前のほうだ。またPKなんてものをしているのか?」

「僕は最も効率のよい方法を選んでいるだけです。それに、ルールとしては違反でもないはずですし? ねぇ?秀一さん」

 そういうと、玉賀は剣を構えた。

「無謀だな?玉賀」

ロングコートが、風に靡く。

松井秀一はなれた口調で、玉賀を煽った。

 玉賀は気づいたように溜息を吐いて、剣を鞘に入れた。

周囲を見れば、いつものメンバーがいることに気づく。神人と、荻野目。

さすがの玉賀でも、このチームに単体で挑むことはしない。

「ああ、なるほどね。あなたが複数で僕を囲むということは、そんなに僕をどこかにやってしまいたいわけだ」

「そういうことだな」

「秀一さんが、あんな女に興味があるとは。ロリータ趣味でしたっけ?」

荻野目が言う。

「まぁ、秀一ってそんな傾向あるよな」

「馬鹿野郎。よくこんな空気でそんなこといえるな!」

はぁ、と神人がため息をついた。

「わかりましたよ。僕もそこまで無謀じゃない。この場は去りましょうか」

 玉賀が手のひらを開くと、それと同時に翼のようなものがでてきた。

「秀一さん、あなただってそろそろ気づいているんでしょう?」

「……なんのことだ?」

「Sランクの高みに立って、何が見えました?」

「……」

「僕がゲームなんかに参加させられているのだって、ただのお遊びなんかじゃないんだ」

「……」

「一つ、教えてあげます。――“僕らの世界”は、そろそろ終ります。準備、しておくんですね」

その翼がひらひらと宙を舞い、ゆっくりと地面に落ちていく。

地面に触れた瞬間に玉賀の体が爪先から分解されていくように消えていった。


「また、会いましょう」


そうやって、玉賀は完全に消えた。

「ちっ、相変わらず気味のわりぃ餓鬼だな」

ぽかん、と口を空けているだけだった聖雫だったが、激痛に目を覚まされて顔を歪ませた。

秀一はそんな聖雫を見つけると、近づいて手を差し伸べる。

「……大丈夫か」

「えっ、あ、はい」

「突然なんだが」

 秀一が聖雫を引っ張り上げると、荻野目が聖雫に回復魔法をかけた。

淡い光が傷を包み、肉体がゆっくりと再生していく。

「……今、この前の男……いや、“ロキ”はどこにいる?」

「……ロキ?」

 言った後で思い出した。ロキ、弘毅のHNだ。

あまりに本名で呼びすぎていて、忘れていた。

「あっ、ああ。ひろっ……じゃなくて。あの人はあの日のうちに、スタッフに連れてかれて。それっきりです」

「……連れて行かれた、か。なるほどな」

「えっ……どういう意味ですか?」

「気にすることはない。時間をとってすまなかったな。神人、荻野目。行くぞ」

 ロングコートを翻して、秀一は聖雫に背を向けた。

それに追々、神人と荻野目はついていった。

「あ……あの!」

聖雫の声に、秀一は立ち止まった。

「……あの、助けてくれて、ありがとうございました」

背を向けたまま、秀一は言った。

「非難される覚えはあれど、感謝される筋合いはないな」

「え?」

「俺達は、お前達の戦いを邪魔したんだからな。……これはゲームなんだ。助ける必要は、本来なかった。助けてはいけなかった。」

そういって、秀一達はどこかへ消えていった。

 

 この世界の青空は晴天で、上を向けば爽やかな世界が広がっているのに、下を向けば瓦礫と苦しみに悶える人間たち。

苦痛で苦しんでいる者達は回復するか、ログアウトするしかその痛みから逃れる術はない。

しかし、それらさえ実行すれば逃れられる。そこが、この世界と僕ら世界の違い。


この世界が、ゲーム?


聖雫は、どうしても理解できなかった。














 

[1126] 大きすぎる事実 小さすぎる自我
ロキ - 2007年11月25日 (日) 16時48分


 東京都内、私立高校。

そこに草薙弘毅は姿を見せた。一般の衆目に身を晒したのは約一週間ぶりだった。

普段どおり制服を着こなし、少しの勉強道具が入った軽いバックを肩にかけて校門をくぐる。

 時折、彼をものめずらしそうに見るものがいる。

それは大抵同学年だったり、一緒のクラスの者だったりする。

約一週間の無断欠席だ。それに弘毅は友達は少なくない。それなりに話題にはなるはずだ。

喧嘩も多い。どこぞのヤクザに殺されてしまったのではないかという噂が広まっても不思議ではない。

 そんな視線も気にせずに、一歩一歩快活に歩く。

「よぉ、草薙」

 金髪の男が、弘毅に声をかけた。

ピアスの穴が無駄に大きく、下品な金色をしている。

「どうしたんだよ?一週間も学校さぼってよぉ?」

ニヤニヤといやらしい顔が、癪に障る。

 しかし、弘毅はそのまま通り過ぎた。

男は弘毅の肩を掴んで、威嚇した。

「シカトしてんじゃねぇぞコラァ!!」

ポン、と弘毅の肩を男の手が押した。

弘毅はその手を振り払うと、静かに

「さわるな」

そう言った。

「あぁ?カマトトぶってんじゃねぇ……ぞ……」

 男の手首に激痛が走る。

赤い斑点がそこらじゅうに現れ、彼の顔はみるみるうちに青くなっていく。

足が崩れ、蹲った。彼は手首を押さえて悶えた。

「ひっ……」

 弘毅が、男を見下ろした。男はその目に怯えるかのように、涙を溢し始めた。

「いてぇ……いてぇよ……」

 弘毅はそのまま男を捨て置き、歩みを進めた。

 人通りの多い校門前での、その出来事はただの事件としてすまされた。

その後、男の右半身が麻痺してしまったのは全く弘毅には関係ない話だ。

例え関係があったとしても、弘毅にとって取るに足らない話には変わりはなかった。





















第二十七話 大きすぎる事実 小さすぎる自我




















『――この件は、内密にね?』

 笹岩から言われた言葉が耳に離れない。

あの優しい笑みにどんな裏があるのかと思うと、不安で心臓が破裂してしまいそうだ。

(――……俺はどうなっちまうんだ)

 以上に発達した弘毅の肉体。

おそらく弘毅が本気を出してこの学校の壁を蹴ったとしたらその衝撃波で学校が崩壊してしまうほど、決定的な破壊力を持ってしまった。

冗談のような事実ではあるが、これが真実なのだ。

「なぁなぁ、こんどTJで大会あるの知ってるか?」

「来週だろ?お前参加すんの?」

 HRを終えた後の、クラスの男達の会話だ。

「やー……補習あるけど、サボって参加する」

「ヘッ。だろうな。でもよー、東京地区はレベルたけーからなぁ…。まず俺らじゃかてねーだろ」

「どんだけ〜」

「なんで今のタイミングで使った?」

(……大会、か)

 あの日、笹崎と会話した内容もソレに纏わることだった。

しかしだからと言って特に弘毅がするべきこともなく、なにをするべきでもない。

傀儡のように、傍観しているしかなかった。


 そして、教師が教室に入ってきた。

生徒達は自分の席へと着き、退屈な授業を聞くために口を動かすことをやめた。

もはやどうでも良い世界の慣習が、今日も始まった。



















「と、いうことなの」

 新川心紅が話したことは、どこでどう調べたのかはわからない。

だが、どうやら信用に値する事実のようだ。聖雫はそう納得した。

「つまり、あの後あの人は偉い人達に拘束されて、んで色々尋問みたいなことを受けて、なんか凄いことなった、と」

「……うーん。まぁ、そういうことかな? とにかく、大変なことになりそう」

「なんで? 大会が開かれることがそんなにやばいことなの?」

「……いい? あの不可解な企画の不気味さを見たでしょ?TJっていうのは、やっぱりそこらのゲームとは違うの」

「それはわかるけどー……。ただの最新技術だとか、演出とかそういうのも可能性としてはあるんじゃない?」

「それは、ないっ。……聖雫も思ったでしょ?あれは、普通じゃなかったって」

 マックでこんなことを話してる女子高生と女子小学生の組み合わせってどうなんだろう。

そんなことを考えながら、聖雫は心紅の一言一言を丁寧に汲み取って、冷静に考えていた。

ポテトを一つまみ、一噛みするたびに思考はこんがる。

確かにそうだ。普通じゃなかった。だから?それが?そこから何に繋がる?

「……けど、けどさ。それにしたって、何が起こるかわかんないし、そもそも私達にできることなんてあるの?」

「わからない。……から、こうやって相談してるの」

「う〜ん……」

 正直いって、私達がすることじゃないんじゃない?といいたかった。

彼女の正義感と使命感が、聖雫の首を絞める。

「……うん、わかった。とりあえずさ、その大会に参加してみようよ」

「えっ?」

「それで、何か不審なことが起きたらそれを止めに入る。それが一番シンプルでいい案でしょ?」

 心紅は深く考えるそぶりをしてみせ、それから頷いた。

「うん、それがいいかも」

(実際は私が大会でどれだけ通用するか確かめたいだけなんだけどね)

 その後、彼女たちは適当な雑談で過ごした。

お互い歳が離れているとは言え、精神年齢的にはだいたい同じくらいのようで、会話は中々弾むようだ。

「で、さあ。話戻すけど、大会っていつあるの?」

 その言葉に、心紅は素っ頓狂な声を出した。

当然ではある。普通ならばTJをやりこんでいる聖雫がそんなことを知らないはずもない。

「そんなこともわかってなかったの? 来週の日曜だよ。24日。」

「日曜……か」

 その日までに、コンディションを整えよう。

その大会では少しでも上に立ちたい。



聖雫は密かに心の中でそう決意した。







 その日が、常識の終焉が訪れるとも知らずに。











[1144] ルール:そこまで行き着くまでの過程
ロキ - 2007年12月02日 (日) 17時34分











第二十八話 ルール:そこまで行き着くまでの過程


















 12月24日。

クリスマスイブ。

世界は愛と平和に満ち溢れているはずだのに、新東京ドームには溢れかえるほどの熱気を感じる。

寒く、肌を刺すような冷気とは無関係で、クリスマス?そんなもの知るか。

そう言い放つように、老若男女がここに集っていた。

凡そ10万人はいるだろうか。しかし、東京湾上空に浮いた巨大なドームの容量には半分にも満たない。

何万台とある機械がスペースをとっているが、まだ余裕だ。

 
 ゲームの会場としては、異質すぎる。

その場にいた草薙弘毅は、VIPルームで防弾ガラスごしに下の群集を眺めた。

「オタクの集団……とかそんなものだと思ってたんだけど。なんてことない、普通の一般人みたいな人もいるじゃないか」

弘毅はその場を振り返り、高級なソファーにふんぞり返る笹岩に問うた。

「このゲーム……いや、そもそもこれは、“TJ”はゲームなのか?」

「……クッ。それは君が一番わかってるんじゃないのかい?」

 笹岩が頬杖をついて言う。

「身体に影響を及ぼすなんて、普通は考えられないだろ? 常識…おっと、常識なんて言葉は嫌いなんだが」

一度、ゴホンと咳をする。

「まあ、そうだな。敢えて言おう。君等も常識で考えれば、“危険な何か”と考えるはずなんだがな。如何せん日本人は己で考えるという精神が欠如している」

 ガラスに指を添えてみる。人差し指から伝わる感触は確かに、以前の己と同じだ。

自分を確かめるように、弘毅はその感触を確かめた。

 下をもう一度覗けば、まるで文化祭が始まる前の高校生たちのような期待ぶりだった。

「彼等も被害者だが、一番は君だな」

 そうだ。俺は被害者だ。

いますぐ笹岩に近づき、やつの首を掴み眼球を抉り取って耳を引き千切りそのまま首をもぎ取ってしまいたい衝動に駆られる。

こんなものに関わらなければ、俺は今も変わらずに一般の高校生をしていたはずだ。

「俺は、俺の世界を壊した、お前を殺したいよ」

「そうかい」

「ああ。そうだよ。 ……なんで俺はこんなものに参加しちまったんだろうな」

「運が悪かった」

「運か。そんなもんで俺はこんな目にあってるわけか」

「そうだな。30代にさしかかろうとしているオヤジと話しているのも、入場するだけで100万はとられるこの部屋にいるのも、全部運さ」

「よほど運が悪いんだな、俺は」

「そうだな」

 笹岩は、不敵な笑みで笑う。

まるで人が不幸なのを楽しむかのように。

だが、弘毅はそれに対抗する術を知らない。知ることができない。

「君は、死刑囚のようなものだ」

 弘毅はまだ楽しげに笑う人々を見ていた。

指をガラスに添え、憂いを帯びた目で。

「そうだな」

 ガラスに、一筋の亀裂が入った。
































「さてー……、まぁ、そうですね。たいした前書きはいらないでしょう」

 10万の観衆の衆目に晒してもなお、このような不敵な態度をとれる笹岩はやはり大物だ。

霧島は呆れながら笹岩を見た。

「皆さんも開会式なんてめんどくさいもの、したくないでしょ?私もそうなんです」

会場から笑いが起きる。

「ということで、もう始めてしまいましょう」

笹岩が指を鳴らす。

すると、一斉にTJの装置が作動した。

機械に光がともり、蛍光色が東京ドームを埋める。

熱気がさらに強まった。

「んでも、一応この大会の説明しとかないと部下に怒られるんで一応しておきます」

また笑いが起こる。

「今回のTJは特別なプログラムを組んでいます。一つの会場が用意され、
 そこで定員になるまでバトルロイヤル方式で闘ってもらいます。
 勝ち残った者が次のトーナメント式の闘いに出場できるわけですがー……
 そ れ で 、一応のルール確認をしておきましょうか。 

 バトルロイヤルに於いては 
 1.なにしても可 

 終わり。」

どよめきが起こる。人間、なにしてもいいと言われたら戸惑うものだ。

「チーム組んでもよし、闘わずに逃げてもよし、不意打ちよし、裏切りよし、なんでもよし。
 ……ということですね。わかりました?わかりましたよね。うんうん。

 で、は」
 

 そして、TJ全ての機械がライトアップされ、どこぞの小気味のよい音楽が流れ始めた。

「賞金は!」

笹岩が少しボリュームを上げて、マイクに向けて言い放った。

「1億!もちろん円だ!」

うおおおお、と歓声が馬鹿みたいに湧き上がる。

笹岩は愉悦に満ちた微笑みを見せた。

「金だけじゃない!優勝者には、TJ内の世界に於いて“国”を与えられる!

 そこで街を造り、TJの世界を恐怖政治で支配するのもよし!

 なんでもできるようになるのさ!

 理想だろ!?自由だろ!?そんな世界をこのTJで作り上げてくれ!」

 ボルテージは最高潮だった。

もはや群集は何がなんだかわからない状況に違いない。

個人にとってそんなに喜ばしいことではなくても、周りが興奮しているから。

そんな連鎖的反応で興奮している者もいるに違いない。

「さぁ!始めてくれ!バトルロイヤル、スタートだ!」

その声に反応して、全てのものが機械へと走った。

途中、こけたりそこから踏まれたり踏んだり、そんな事態が起こったが、誰もそんなことは気にしない。

目先の利益を得るため、全てが走った。

人の皮を被った欲が、渇きを知らない井戸を潤すために、仮想世界へ走った。







 幕開けた地獄は、ゆっくりと近づいていた。





[1150] 西風
ロキ - 2007年12月08日 (土) 22時51分

 










 第二十九話 西風














「うーん…この緊張感、たまんない」

 街中のようだ。あたりに家々が立ち並び、噴水や木々が色どりを飾っている。

昭和ごろの日本と言ってもいい。昭和生まれでもない者でも、ここはそういう雰囲気を醸しているはずだ。

よほど広いステージなのだろう。あれほどいた参加者が、いまや誰も見えない。

新川心紅と奈良原聖雫以外は、目視できる場所にいなかった。

「なんだか、いつもの世界みたい」

 心紅は辺りを見回すと、そういった。

聖雫も頷き、続ける。

「でも、隠れながらの戦いがしやすそうだよね。こんなに建物があると」

 コンクリートの壁がそこらにあり、十字路のように交差する道もたくさんある。

ある種、迷路のようだ。

ゲリラ戦をするというのならこれ以上適した場所はないくらいに、この辺りは入り組んでいた。

 しかし、そんなことはどうでもいいとばかりに聖雫は言った。

「それにしても……一応、チーム登録はしといたけど……。どことなく心もとないよね」

「だね。お互いBランクになったっていっても……」

「え?心紅ってBなってたの?」

「もちろん!聖雫と同じくらいのランクで、経験値も一緒だったんだから当たり前じゃない!」

「あーね。そりゃそうでした」

 よく見れば、心紅の服装はだいぶ変わっていた。

前回は何故か学校の制服のようだったのに、今は白いジャケットにホットパンツ。

「……え?てか、それ私服じゃん」

「だって。私の職業探偵だから。やっぱり二次元的なそういうのはないかな〜と思って」

大して聖雫のは、ゲームでデザインされていそうな装備だった。

ちなみにかなりの高級装備である。属性:風の『精霊の衣』定価3500000ウェル。

見た目の軽そうなそれと裏腹に、かなりの防御値を誇る。

「ゲームの中に入ってるってこと忘れちゃうよ。心紅といると」

「でも見てよ、この武器!」

 心紅の手には、青龍刀が握られていた。

「可愛かったから勝っちゃった♪」

「か……可愛い……?」

絶句するのも当然だ。

大きな刃に龍の飾りがごつい、いかにも攻撃力が半端なさそうなその刀をどう解釈すれば可愛いと感じることができるのだろう。

魔石をふんだんに使い、異常な硬さを誇るそれは『微塵刀』という名称で売られている。

ちなみに値段は5000000ウェルである。

見た目の通り破壊力は半端なく――そう、例えていうのならダイヤモンドを微塵切りできるくらいのソレだ。

「心紅、言っちゃ悪いと思うけど……センスないよ」

「えっ、嘘!可愛いのに!」

「いやいやいや……かなりのゴツさでしょ。女の子の武器としてどうなの、それ」

 心紅は首をかしげ微塵刀を見た。

「確かに……そうかも。ちょっと、ごついかもね」

「ちょっとじゃないよ、ちょっとじゃ」

 ふと、心紅は気づいた。

思えば、そこらから違和感を感じる。

上手く溶け込んでいる絵の具が、意地悪で別の色になってしまったような……そんな、変なもの。

地面の砂利を靴で踏むと、真正面に光るものを見つける。

「聖雫、ちょっと待って」

「え?」

 心紅は微塵刀をもち、それ目掛けて一振りした。

ぷつん、と張り詰めていた糸が切れた。

「……ピアノ線、みたいだね」

「――!? トラップ!」

「待って聖雫。今動揺したら、敵の思うツボだよ」

「じゃあ……どうするの?」

「まかせて」

 心紅は微塵刀を背中の鞘に戻し、両手を合わせた。

バチバチと火花が散る。火属性の魔法を使用する際の、紋章も現れた。

「ちょっ……何する気!?」

両手を広げた。火の弾がちょうど手を広げた広さの中間に浮いていた。

「一気に―――炙り出す!!」

 それを地面に叩き付けた。

その衝撃があたり一面に伝わり、コンクリの壁や木造の家々、木々を吹き飛ばした。

「すっご……」

どこかで聞いたかは忘れたが、Bランクから上は格が違うと、誰かから聞いた。

その通りだと、聖雫は思う。自分の能力を含めてだ。

前まで怯えていた私達じゃない、違う私達だ。聖雫は奥底からあふれ出る何かを感じていた。

「……うん、予想通り。やっぱり……」

「いたね。あきらかに」

 回避したらしく、怪我らしきものはしていなかった。

男三人の女二人の5人チームだ。成人した大人のような、自分達とは違う雰囲気を持っている。

「予想GUY。やっぱりMMOのようなオンラインゲームとは違うようですな」

「サバイバルゲームのような緊張感です。興奮する」

 だが、見た目的にどうやら“その筋”のようで、そんなにいい容姿をしているわけではなかった。

「じゃあ奏華とジェイブリーさんと僕はオフェンス、カスミンさんととっしーさんはバックアップってな感じのいつもどおりで!」

「了解ですNEETさん!たこ殴りにしてやりましょう!」

 装備から察するにそこそこのレベルを持っているようだ。

聖雫と心紅は顔を見合わせ、頷いた。

「「ここは逃げれない。戦うしかない」」

思惑が一致した。

各々で武器を取り出し、構えた。

じりじりとお互いを睨む。大人たちと、女子高生と女子小学生の喧嘩。シュールだ。

 聖雫が飛び出した。目にも止まらない、自慢の速さで。

叉刃拐の刃がジェイブリーを狙う――!

「ふんっ!甘いっ!」

 彼の取り出した武器は、ナイフだった。小型の無数のナイフ。

指の間間に挟み、叉刃拐の刃と交錯させた。

「指の力には自身がありましてね!」

「へぇ!?だから!?」

軸足が綺麗な渦を描いて、弧を描いて裏回し蹴りが頬へ向かった。

 当たった感触はあった。だがそれは、男の手の指だった。

「こういうこともできるってわけですよ、お嬢さん!」

「ちぃっ!」

「君のようなロリータにはこのゲームはまだ早すぎる!もっと成熟してから参戦したまえ!」

ジェイブリーが袖口から出したのは、魔石。黄色に輝く魔石だった。

「アイテムを駆使し!バックアップの魔法によって自らを一定のレベルより高くする!それがこのゲームで生きる道なのですよ!」

 魔石が光る。男のナイフに電撃が走る。そして、男の片目が金色に光る。

「ライジング・スタァァァァァッ!」

星のように小さい電気の球がそこらに溢れでて、聖雫を襲う。

「うわあっ!」

「いかかです!魔石の力は!」

「なんちって♪」

「えっ」

 聖雫の右ストレートがジェイブリーの右頬に、こんどこそクリーンヒットした。

「ぐはぁ!」

「あんたの辞書に一つ付け加えておくことね。装備しているものの観察も必要だってことを、さ!」

続けざまのアッパー。顎を跳ね飛ばし、男はしりもちをつく。

さすが高級防具だった。ほとんどダメージを食らっていない。

 ちらりと心紅のほうを見る。彼女も始めているようだった。

「やってくれるじゃないですか!しかしロリータに痛めつけられるというのも中々よいものだ」

「それ以上喋れないようにぶっ飛ばしてやるから。この変態やろー」














「二人がかりっ……きついなぁ!もう!」

 微塵刀があるし、恐らくレベルも彼等より上なのだろうが、存外に苦戦する。

それは心紅がPK慣れをしていないからだった。人間とモンスターの思考は違いすぎる。単純にはいかない。

「女子高生かあ。いいなあ。私も三年前までは大学生だったのに」

 女――奏華と呼ばれている女が、やたらと槍で突いてくる。

「あーあ羨ましい。私もあなたぐらいの歳のときには、輝きに満ち溢れていたのにね」

「うっざいなぁ!」

ぶうん、と空を切った。その隙を付け入り、男……NEETは巨大なハンマーを心紅の脇腹に入れた。

肋骨がみしみしと悲鳴をあげ、胃液が喉に込み上げる。

「この鬼鬼鎚(おにきづち)の威力はどうですかな!?」

「痛い!重い!それだけ!」

 心紅は一度距離を置いた。

「NEETさん……だったかな?」

「ええ、そうです。そちらの女性が奏華さんですよ」

「あなたは、その貧弱な身体の割りにそんな重いもの振り回せるんだね」

 NEETの外見は決して筋肉がついていそうな身体ではなく、やせ細っていて文化系のイメージが強かった。

下半身……つまりは足。ふくらはぎやふとももなどはすぐ折れてしまいそうだ。

「こう見えても、インナーマッスルには自信があるんです」

「そうなん、だ!」

 心紅は素早い動きでNEETに飛び掛った。NEETは鬼鬼鎚を振る。

微塵刀の柄がその金属部分に触れ、心紅は吹き飛ばされた。

「無駄ですよぉ!」

 NEETは薪を割る樵のように構えた。

吹き飛ばされた体を地面に擦り付けると同時に、心紅は態勢を立て直した。

そして全力で地面を蹴る。地面を低空飛行した。

「ぬおっ」

 目標は彼の細い足らしかった。ブレードが地面を擦りつつ、それは振られた。

「獲ったあ!」

がきぃと音がする。撓った槍が微塵刀の刀身を押さえつけていた。槍の刃の半分くらいまで微塵刀が傷をつけている。

「チーム戦ってこと、忘れてない?」

 奏華が得意げな表情で心紅を見た。

「……しょっぱな、だいぶ辛い闘いだなぁ」

「いやいや、辛くなるのはこれからですよ」

 NEETもまた、得意げな表情で心紅を笑う。

その表情に非常に腹をたててはみるものの、今の状況から何かできるわけでもない。

打開策が必要だ。だが、冷静に考えることは今の苦境からして、難しい。

 そんなことを考えているうちに、NEETがとんでもない言葉を発した。

「実は、仲間はこれだけじゃないのです」

「えっ」

「まだいるんですねぇ。ホントに。ええ、事実ですよ」

「おりゃあ!」

 どすん、とジェイブリーが倒れた。聖雫の叉刃拐の攻撃だ。

ジェイブリーをNEETが引き起こすと、ジェイブリーは申し訳ないと二人に謝った。

「このロリータ、中々強いですぞ」

「そのようですな」

 そういうとNEETは笛を取り出した。

「ここはもう、本気を出すしかあるまい」

甲高く細い音が当たり一面に鳴った。

ざわざわと辺りが騒々しくなる。そう思うと続々と人が集まってくる。

もう、それは何がなんだかわからない。

聖雫と心紅は50人ほどの大所帯に囲まれていた。

「ありゃりゃ」

「これはー……もうやばいね」

「いかかです。秋葉 大! 連合の結束力は!」

 NEETは誇らしげに言う。彼の持った鬼鬼鎚も誇らしげにゆれ、酷く憎たらしげに見えた。

絶体絶命、まぁ、まず負けるだろう。聖雫は決心した。

しかしホントに「タコ殴り」で負けるのは少し悔しい気がした。

そもそもこのようなゲームの世界でしか活躍できないような彼等に負けるというのはプライドが許さない。

強く叉刃拐を握りなおし、聖雫はまっすぐNEETを見つめ、目に闘争の色を宿した。

 心紅には心紅の決心もあり、負けるわけにはいかなかった。

「聖雫、頑張ろう」

「もちろんっ」

 総勢57人の秋葉 大 連合は構えた。すでに呪文を唱え始めているものもいる。

「さぁ!一斉攻撃ですよ!」


 どうしたことだろうか。みな、動けない。

というか、世界の時間が一瞬、止まった。

そんな気がした。

 NEETは歓喜の声と共に上げた手を天に掲げたままだし、奏華は地面に刺した槍によりかかたまま不敵な笑みを崩していない。

ジェイブリーはナイフを指に挟み、今にも投げそうな勢いで、隣の男は大砲を持って聖雫に照準をつけていた。

だが、総じて彼等の表情は固まっている。決して時間が静止したわけではない。

それでも、世界の時間は止まった気がしていた。


 まだ形を残していた家屋の残骸の上に、影が見えた。

槍のような棒状な武器の柄に鎌がつけられており、危険なデザインが栄える。

「卑怯なマネは神様が許して悪魔が許して万が一この俺様が許しても!」

 突然の叫び声。誰も彼も呆然としていた。

「やっぱりこの俺様はてめぇらを許さねぇ!」

 いい終わった後、NEETが固まった状態で何とか声を出した。

それが何を伝えたかったのかはわからないほど、かすれた声あであったが、周りの者には伝わったようだった。

一斉に、突然乱入した男に向かって攻撃した。

様々な弾丸、魔法がそこを目指し飛び散っていった。

着弾すると同時に炸裂し、花火のように次々に爆発していった。

既に廃屋となっていた家屋は形を失われ、それを構成していた木々は燃えに燃えていた。

 
 しかし、そこに男の姿はない。


「いいかあよく聞け!」

 NEET達の集団が向いている正反対の場所に、男の姿はあった。

「勝敗を分けるのは力でも防御でも賢さでも運でもねぇ!」

 男は、低く屈み左手を彼等に向かって突き出し水平に手の平を構えた。

そして右手にその狂気的なフォルムを宿す“サイズハルバード”持つ。ちょうど、それも水平になるように。

男の目は活気に満ち溢れていた。今にも爆発してしまうような生命力を持ち、それが身体全体にみなぎっているようだ。


「速さと、俺だ!」


――ゼファー。世界への新風が、吹き荒れた。


[1274] BABY PLANET
ロキ - 2008年12月29日 (月) 17時04分









第三十話 BABY PLANET





 夕焼け空はいつまで経っても変わろうとしない。
昭和風なこの世界は、まったく変わらない。時間という概念がないのだろうか。
そうだったらどんなにいいだろう。老いを知らず、変化を知らず、まるで理想の世界だ。
 秀一は空を眺め、そう思った。

秀一、神人、荻野目の三人組は、ドラ○もんにでてくるような空き地にいた。
土管が二段に積み上げられ、ジャイアンよろしく神人が土管に座り、荻野目は
土管の中に寝そべり、秀一は一段目を背もたれにして体操座りのような姿勢だ。

「なぁ、秀一。俺らも戦いに参加しようぜぇー。暇じゃん!時間の浪費じゃん!」

 荻野目は大きくあくびをしながら、そう言った。
秀一からの返事がない。

「おーい、秀一君。堂々の無視っすか」

「サバイバルなんだからよ。無理に戦う必要はねぇよ」

「なにっ、神人はいつからそんな消極的になってしまったんだ。俺は悲しいぞ!」

「■」

 事実、秀一たちのチームはこの世界(TJ内)では有数のチームとなっていた。
遠くからその様子を探るチームは数多くいるが、無理にしかけようとはしてこない。
理解しているのだ。自分たちと、彼らの実力差を。

 正直言って、自分より弱い相手を倒したところで何の楽しみもない、と秀一は感じていた。
退屈を貪るよりか、答えのでない問答を一人でしていたかった。
あの異変から二週間弱。秀一は考えた。
アレは一体なんだったのだろう、と。






『…お前は一体…なんなんだ!!!』



『私か?私は、私だ』



『…帰る…だと…。てめぇみたいなヤツを受け入れるッ…世界が…どこにあるってんだ…ッ!』



『生きるためだよ。それ以外に何があるというんだ』



『糞は、貴様だろう?なぁ。傀儡』





 今思い出してもぞっとする。本当の恐怖とは、アレだ。
秀一は人生で始めて、巨大な壁にぶちあたったと言ってもいい。
ゲームバランスの崩壊を促すような、圧倒的な力を持っていた。秀一はそれを傍で見ていたのだ。
おぼろげな視界で、その惨劇を見ていた。脳髄に、その光景は焼き付けられている。
現実と寸分違わないこの世界での地獄での光景の恐ろしさは、想像に難くない。

「でもよ、秀一。ここで時間を潰してても、荻野目の言うとおり時間の浪費だぞ」

「確かにな。だが――心配する必要はない」

「神人には返事するのかよ。俺悲しい……」

 荻野目を無視して、秀一は変わらない夕焼け空を見つめた。

「神人、きたぞ」

「あ?」

 
 一陣の風が吹いた。神人の頬が釣りあがる。最上級の笑み。
定められた照準は秀一、神人、荻野目たちの眉間を狙っている。


 空き地を包囲されていた。恐らくパーティーだとか、そういったものではない。
強いチームを確実に倒しておこうという、利害の一致からの作戦。敵の敵は見方の論理。
誰とも馴れ合おうとしない秀一たちのパーティーへ効果的な攻撃方法。

 秀一は立ち上がった。手のひらから炎が吹き上がる。火の鳥が羽をばたつかせたように、炎は散った。
炎は瞬間に、剣に変化する。

 神人も武器を手にした。

「オーケイ。面白い展開だぜ」

 実力差を、再理解させてやる。獰猛な男は、牙を向けた。
























 風が吹いたのは、男の俊敏さ故。
サイズハルバードは風に乗り、NEETの脳天を目指した。

「くあっ……!」

 体を反り、ぎりぎり避けた。

「どけっ、NEET!」

誰かが叫んだ。赤い光が辺りを包んだかと思うと、爆発が起こった。砂埃が舞い、視界が不明だ。
 NEETは爆心地から素早く退避していた。多少のかすり傷を負っている。

「どけって言うんなら、少しは待つでしょう!普通!」

 誰に向けるでもない、ぼやき。この大所帯だから、チームワークはさほどあるわけではない。
それはわかっていたが、今この状況を顧みて、不味いな、と気づく。

想定した相手はあの二人の少女。
大所帯の集団というのは、突然のアクシデントに非常に弱い。
組織系統がしっかりしていなければ一度に統率は崩れる。そうなってしまえば100人でも1000人でも烏合の集だ。

「一旦下がるんだ! ねぇ、話を聞いてください! 下がれ、下がってください!」

 誰もが興奮している。声は聞こえているだろう。しかし、脳が神経に指令をださない。
ここに来て、NEETは後悔した。なぜ、小隊制にしなかったのだ、と。
いまさら後悔しても遅い。これでは指揮なんでできない。




「大丈夫ですか?」

 メガネが印象的な少年が、気づいたら彼女たちの隣にいた。
彼の手は緑色の光を放っている。心紅と聖雫はその光を知っていた。
防御系の空間魔法の属性色。それは防壁を周りに張り、彼を含めた三人を物理攻撃以外を防いでいる。

 しかし、聖雫は光だけに見覚えがあるわけではなかった。
その光を放っている少年にも、見覚えがあった。
 
「あれ、君は……あのときの」

「あっ!」

 少年はばつが悪そうに聖雫から目を背けた。

「知り合い?」

「知り合いっていうか、うーん……。どうなんだろう」

 ドォン、と防壁が揺れた。遠隔攻撃だ。
気づけば砂埃は無くなり、視界は明瞭になっていた。

「あ、え、そ、そうだ。今はそんな話をしてる場合じゃありません!……僕の名前は、竜矢といいます」

 少年はメガネの縁を持ち、いいですか、と続けた。

「僕“たち”は少なくとも今はあなたたちの味方です」

「どうして?なんで助けてくれるの?」

 もう一度、攻撃を受けた。連続した攻撃に変わっている。砂埃の効果はほとんどなくなっている。

「助けるのではありません。これは、お互いの利益の一致による共闘ですよ」





「あんたが避けれるんなら、俺でも避けるさ。そうだろ?」

 背後にいたのは、先ほどの男。登録名:ゼファー。

「ぬおおおおおおお!!」

 鬼木槌をぶん回した。もちろん、その巨大なハンマーは辺りの味方を巻き込んだ。
そして、彼にとって最悪なことに、ゼファーには当たらなかった。

「なにすんだNEET!」 

「す、すいません!」

 言葉に中身がこもっていない。NEETの思考は、ゼファーの居所を探っていた。
見つけた。……上空。

「そんな鈍い攻撃で俺を捉えると思ってるのか!」

 サイズハルバードを投げつけた。一人にそれが突き刺さり、そしてその男は消滅した。
消滅した男に気を取られる。一瞬ゼファーから視線を逸らす。再び視線を戻したときにはもう遅い。

「―――いない」

「ここだ!」

 またもや背後に、ゼファーはいた。
振り向いた瞬間には、NEETの目前に拳が迫っていた。
ラッシュ、たこ殴り、ひたすらに殴り続ける。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ……オラァ!」

ドゴッ、と音がした。ゼファーのフィニッシュかと思ったが、違った。
逆に、ゼファーが攻撃を食らっていた。まるで紙切れのように、ゼファーは吹き飛んだ。

「ちくしょう!やっぱり物理攻撃は弱いのかよ!やってられねーぜファック!」

「な、なんだ。聞いてください、皆さん!この男、防御力は紙キレのようですぞ!」

「うるせいうるせいうるせい!当たらなければいいんだよ!」


 鬼木槌が頭上に落ちる。瞬時に避ける。確かに、あの鈍い攻撃ではゼファーには当たりそうにない。


「確実に急所を狙えば、いくら防御力が高くてもゲームオーバー! だろ? なぁ!」


再びサイズハルバードを手に取った。鋭く尖ったソレが背筋を凍らせる。
実に狂気的なフォルム。NEETは息を呑んだ。

 秋葉大連合は、一人の男によって、翻弄され続けている。もはや、集団ではない。
一人ひとりが悪い意味で、独立してしまっている。

そして、その上に、ゼファーだけではなくなってしまった。

「ウェーブ・トライデント!」

 ずがあん、と凄まじい音がした。聖雫の攻撃だ。広範囲に、そして秋葉大連合は多くの被害を受けた。

「いい気味だねっ」

心紅は大技は使わなかったが、地道に一人ひとり確実に潰していった。

竜矢はたまに受ける攻撃を避けながら、聖雫や心紅をバックアップしていた。
「このような大きな集団は、個別に強いプレイヤーはあまりいません。いても、リーダー格ぐらいです。
 だからこうやって負けないように群れを成す。心配はいりません。ボコボコにやっちゃってください」


NEET以下、ほとんどの者は混乱していた。数で押せばどうにかなる、そう信じていた。
しかしどうだ。名もしない少数に、今度は自分たちがタコ殴りだ。
――現実は甘くない。
そう、それは現実で学んだのだ。まさか、ゲームの世界でもそれを思い知らせられることになるは…!


「ち、ちくしょおおおおおおおお!!」


 NEETは叫んだ。その数秒後、聖雫の叉刃拐によってゲームオーバーになった。


















「準備はいいかな」

「良くなかったら、待ってくれるのかよ」

 草薙弘毅は、そうやって皮肉っぽく返した。笹岩は笑顔で首を振った。

「君はラッキーだね。六十億分の一の確立で、日本に生まれ、そして、バグを発生させた。
 これは紛れも無い奇跡だよ。ああ、俺は感動だ。こんな奇跡に立ち会えるなんて」

「確かにね。奇跡的にアンラッキーだよ」


 草薙弘毅は、TJ本体に座り込んでいた。まだヘルメットはつけていない。
普段のそれと違い、周りのスーパーコンピューターに接続されており、仰々しいものとなっていた。


「大丈夫。安心してくれよ。君の家族、友達、君に関わる全ての人たちが、幸せになることを保障する」

「頼むぜ。わざわざ俺の人生を犠牲にしたんだ」


スタッフらしき人間が数十人体勢で、この草薙弘毅が接続する本体を管理している。

 笹岩は嬉々とした表情で、言った。

「さぁ、地球を壊そう」

[1275] BREAK OUT
ロキ - 2009年02月18日 (水) 19時44分









第三十一話 BREAK OUT




「笹岩!」

 暗い室内に、突然、声が響いた。笹岩は最大限の笑みで切り返す。
他のスタッフは室内に入ってきた男に視線を向けた。

「何か御用ですか、総理」

「何か、じゃない! 貴様、何をする気だ……!」

「質問の意味が理解できません。総理。何を、とは?」

「つい先ほど、匿名の書類が私の執務室へ届いた……! あの世界とこの世界の中和が起きているというは本当なのか」


 ああ、霧島だろうな、と笹岩はほくそ笑んだ。
こんなに早く状況を把握できるのはあの男くらいしかいない。

―――都合の良い男だ。


「ええ、もちろん」

 総理は、叫んだ。

「ふざけるな!何がもちろんだ!」

「私は大真面目ですが」

「別次元が存在していたことは、日本史上最大の国家機密だ。いや、世界でもこれは類を見ない。
 この存在を露呈してみろ! 日本は終わりだ……、いや、そもそも中和が起きてしまえば別次元に日本が飲み込まれる!
 そうなれば……どうなるか君にもわかっているはずだろう!」

 笹岩は、ふう、とため息をついた。

そして、笹岩は総理に微笑み掛けた。

 口元が大きく歪み、目元に皺ができ、これ以上もないくらいに笑顔を見せる。
しかし眼光は鈍く、白目はほぼ黒目に飲み込まれていると勘違いするくらい禍々しい。

精悍な顔つきのその男は、悪魔だった。誰もが思った。

「笹岩……」

「総理……、私の生い立ちをご存知でしたかな」

「無論だ」

「ああ、そうだった。だって、私を造ったのはあなた方政府でしたからね」

「何が言いたい」

「いやあー、私は感謝しているんですよ。人類稀にみない遺伝子操作によって私は世界唯一の天才となれた。
 おかげでこの世界に存在している次元の割れ目を発見し、あの世界を見つけることに成功した。
 僕でなければ、それは見つけることもできなかったし、そもそも偽体によるあの世界への干渉装置を作るなんて
 僕以外ではとてもとても……」

 笹岩は首を横に振った。

「そうだ。お前の発見で、日本は救われるはずだったのだ! しかし今、この状況でそれは一変した!」

 総理は顔を真っ赤になって、笹岩に訴えかけた。
笹岩の笑みは止まない。

「いいか、笹岩……今すぐプログラムを変更しろ! そうでなければ……」

「どうするんですか」

 ニコニコとした、子供のような笑み。

「私をもう一度殺す気ですか」

 ニコニコニコ

「今度は人格だけでなく、肉体までも」

 ニコニコニコニコニコニコ

「ああ、私は幸せだなあ………」

 笹岩は手を広げ、神からの祝福を感謝した。
十字を切るふりをして、そして、満悦の表情。

「感謝していますよ。総理」

 ニコニコニコニコニコニコニコニコニコニコニコニコニコニコニコニコニコニコ

「ここまで同情の余地を与えさせてくれないなんて、ね」

「笹岩!」

 総理は銃を取り出した。構えようとしたところを、黒いスーツを着た男たちに取り押さえられた。

「貴様ぁぁぁぁぁ!」

「総理。あなただけは私が殺してあげようと考えていました」

 黒服が持っていた銃を笹岩に手渡す。
笹岩は照準を合わせた。眉間。ちょうど、瞬殺できる。
総理がぶつぶつと許しを懇願していたが、笹岩の耳には届かなかった。


「私は、この世界が終わるところを見てみたいんだ」


 銃声が、室内に木霊した。














 そう。俺とツタヤが出会ったのは三週間前。
俺を焦がそうとしているかのように、太陽が照り付けていた日だった。

 その日はずいぶんと天気が良かったんだ。
湿度もなく、からっと晴れていたし、なにより、風が吹いていた。
いいかい、風だ。ひんやりと冷たく、清清しい風だったんだ。
その日はバイトがあった。だが、俺はそいつをぶっちぎったよ。
何故だかわかるかい?

 そう、風を感じたかったからさ。
俺は自慢の愛馬でツーリングにでかけた。そうです、私の愛馬は凶暴です。
……あん?話の腰を折るなよ。馬に乗ってるのかって?んなわけねーだろタコ。
比喩だよ、比喩。中学校で習わなかったか?んあ、小学生?ガチで?
マジかよ。そんなロリがこのゲームやってんのかよ。世も末だな。

……いや、どうでもいいんだ。

それで、だ。
俺はツーリング中に、ふと気づいた。
そういえば、DVDを返してないことにな。
そして偶然、俺の鞄の中にDVDが入っていることに気づいた。
これはちょうどいい。返しに行こう、ってな。

あ?DVDの中身?いいだろ、そんなこと。気にすんなよ。

そしてレンタルショップに入った。
即座にDVDを返却したな。そして、俺はこのまま帰るのも味気ない。
もう一本DVDを借りようと思ったんだ。アクション、レース、アドベンチャー……
俺を燃え上がらせてくれる映画を探してな。

 DVDコーナーに行こうとしたんだ、が。
そこで今にもレンタルしようとしている少年がいた。
別段、特徴もそんなあるわけでもない。
だが財布の中にはいっていたカード……TJIDカードがあった。


「そこで俺とツタヤは意気投合したってわけさ!」

「いや、意味がわかんないから」

「何度言えばわかるんですか。僕は竜矢ですって!
 まぁ、実際にはゼファーさんから無理やり誘われてタッグを組んだんですけどね……(笑」


戦いの後、聖雫、心紅、ゼファー、竜矢の四人は一服していた。
話を聞けばゼファー、竜矢はランクCらしい。そうだとしても、彼らの戦いぶりはCのそれではなかった。
ゼファーはとにかくスピード狂、現実世界でもバイク好きという、まさにそういうタイプだった。
竜矢の場合、彼は中学生らしいが兎にも角にも頭の回転が速い。
学校でも優秀らしく、校内トップクラスらしい。

 心紅が言った。

「それにしても、竜矢君はホント頭良いよね? やっぱり頭良い人っていうのは、頭の出来が違うのかなぁ」

「そ、そんなことはないですよ。(苦笑) これはたぶん、TJのおかげだと思うんです」

「どういうこと?」

「僕は初期値の知識のパラメーターを上げておいたんです。もともと、そういう参謀キャラに憧れていたので。
 そしたら、TJにログインした瞬間に、今まで僕が知らない知識が流れてくるんですよ」

「へー。そんなこともできるんだねぇ、TJって」

「ですよねぇ。僕が思うにこのゲームを作ったといわれている笹岩プロデューサーは天才だと思うんですよ。
 恐らく脳の構造を理解し、なおかつ電流によって刺激を与え、この別世界へと意識を導く。
 それだけでも神の領域だというのに、知識流動、現実への体力の干渉……嗚呼、このゲームは革新ですよ。
 なおかつ幻想的なグラフィック、猛々しいモンスター、壮大なゲームステージまさにこれはry(以下略」

「そ、そうなんだ^^;」


 竜矢の話(の一部)を聞いて、聖雫は思った。
確かに、知識の話だって、ゲームでの経験地が現実に影響することだって、おかしいことだよね、と。
 聖雫の肩にポン、と手を置かれた。ゼファーの手。

「まぁ、そういうわけだからよ。しばらくの間だが、俺たちとチームを組んでもらうぜ」

「よろしくお願いしまーす」

「敬語はいらねぇよ。Bランクなんだろ? 俺たちより上だしな」

「じゃあ、よろしく」


 よくゼファーを見てみると、彼は高校生くらいの顔つきだ。
基本的に現実世界のヴィジュアルを使うから、ほとんどのプレイヤーは現実世界の顔をしている。
ゼファーも恐らくそれに則っており、レーサーのような、精悍な顔つきをしている。
心紅相手に講座(?)を開催している竜矢は、一度はきょどった彼に嫌悪感を感じたが
このゲーム内ではずいぶんとはっきりしている。なかなか、良い人たちだな。と思った。





笹岩たちとは違う、通常のスタッフたちが運営しているスタッフルーム。
霧島や南山たちだ。慌しく動いている。
霧島はスーパーコンピューターに座り、南山や他数人のスタッフが後ろからその様子を伺っている。

 霧島は言った。

「間違いない。ウイルスに侵入されてる」

 室内がざわついた。セキュリティは一国のそれよりも頑丈にしている。それを解くハッカーなど……
一人しかいない。

慌てて南山が携帯を掴んだ。
「社長に連絡します!」

「やめとけ、無駄だ。……恐らくな。」

「何故ですか! ……あ」

「そういうことだ。 おい、お前ら! ぼさっとしてねぇでやることをやれ!」

 様子を眺めていたスタッフは慌てて自分のデスクに座った。
表情一変。

「駄目です主任! こっちのマシンにもウイルス侵入されてます!」

 背中から汗が吹き出た。

―――笹岩ッ……!

「何が起きるんですか……。霧島さん……」

「わからない……が、間違いなくやべぇことなのは間違いない」


 霧島はうな垂れた。ついにスーパーコンピューターにもウイルスが侵入された。
恐らく笹岩特製の特別なものだ。もはや霧島に打つ手は無い。

 スーパーコンピューターの正面に、髑髏の絵とともにうつるBREAK OUTの文字。
その片隅の監視モニターの一角に移る聖雫たち。それに近づく一人の男。







 男に見覚えがあった。
幻影の時にほんの少し話したことがあったし、なにより優しい人だった。
聖雫は笑顔で駆け寄って、男に声をかけた。

「呉爾羅さん!」

 呉爾羅は暗く、沈んだような目。ぼろぼろの体。

「お久しぶりです。あたし、覚えてますか?」

ゼファーは感じた。どこか、おかしい。
雰囲気が、というか、オーラ?というのだろうか。
それに、どこから、あいつはヤバイ、という声が聞こえる。
聖雫は知り合いのようだが、どうやら呉爾羅という男は無反応のようだ。

「ツタヤ、どう思う」

「竜矢です。少なくとも、友好的な雰囲気は感じられませんね」

「だよなぁ」

 心紅がおろおろとゼファーたちの聖雫たちを交互に見ていた。


 空気の振動。規模の大きい技を使うときに必ず誰もが感じる、びり、びりという振動。
今、誰もが感じた。そして鳥肌が立つ。
深淵、闇のように、それは黒い。視覚的に見える黒ではない。
その男の本質。意識。それが、黒い。

「呉爾羅、さん?」

 呉爾羅の手の平の上には、球状のエネルギー集合体。

―――レイディエイションランプ

「聖雫ッ! 逃げろ!」


 ゼファーが駆け出した。聖雫との距離は10m程度。
レイディエイションランプは今にも呉爾羅の手から離れようとしている。
聖雫は動かない。動けない。

ついに手を離れた。
獣の咆哮のような音を立てて、近づいている。ゆっくりと確実に、死へ。
辺りの建築物がことごとく破壊されていく。
壊れ行く木々はレイディエイションランプにより消滅させられた。


 そして、着弾。


 破滅が、始まった。



Number
Pass

ThinkPadを買おう!
レンタカーの回送ドライバー
【広告】AMAZONからG.W.に向けてスマイルセール!4月22日まで開催
無料で掲示板を作ろう   情報の外部送信について
このページを通報する 管理人へ連絡
SYSTEM BY せっかく掲示板