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『犬祭4』作品登録リスト(小説部門)

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作品登録リスト(小説部門)

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作品名:「バタードッグス」 自由投稿

 茶林小一と団鬼緑、奇跡のコラボレーション!
 茶林の作品をあの鬼緑先生が徹底改変し、めくるめく倒錯と官能を呼び覚ます!
 果たして誰が読みたいと思うというのか。果たして犬祭コードに引っかかりはしないのか。
 もしもこれが載っていたなら、私は感謝する。たぶん色々な意味での問題作!
 最初に謝っておく。ごめん!

団鬼緑 2010年08月16日 (月) 17時58分(7)
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作品名:「バタードッグス」

 濡れた石畳を照らすのは、瓦斯灯の火。月は雲隠れにして、見しや其れともわからない。暗闇に程近い中央通りを、柔らかな足音が進んでゆく。
 最上質のベルベッドを幾重にも縫い合わせてつくられた、ピンクのドレス。四肢の半ばまでを覆うそれは雨を吸い、重く背中に圧し掛かる。赤ん坊用のものを仕立て直した絹のフードが風にはためき、前進を妨げる。
 低い前傾姿勢。顔は見えない。唸るかのように言葉が漏れる。
「オーケー、マム。こいつは簡単な、とてつもなく簡単な選択肢だ。つまりは今日。今。この時間。アンタの命令に従ってこの雨の中を駆けつけるか。それともこのまま行方をくらますか。どっちでもいい。好きに決めりゃあいい。大事なのは。そう、こいつが最も大事だが。それ以外の選択肢はない。分かれ道は、いつだって二択だ。俺が今探している選択肢は、もっと前の。もう俺が通り過ぎてしまった場所にあったモノだ。オーライ?」
 速度を上げる。等間隔に並んだ瓦斯灯の一つ。光を受けてその下に、一軒の館。
 館の前で足を止める。そして軽く二度、ノック。
「お入り」
 声に従い、足を踏み入れた。
 月のない夜とは思えぬほどの眩しさ。屋敷の中は煌びやかにライトアップされていた。いつだってそうだ。ここは、マムのステージだから。
「待っていたよ」
 首を振ってメイドにタオルを返し、声の方へと歩む。大きな椅子に腰掛け、内装以上に華やかなドレスを纏い、乗馬鞭を手にした女主人。組まれた脚には網状のストッキング。その上にはXだかZだか知らないが、化け物じみた乳が二つ揺れている。
 女主人は無駄な口を利かない。脚を解き、鞭を鳴らした。
「はじめようか」
 イエス、マム。
 ご主人様がドレスの裾を持ち上げる。ストッキングと、ガーターベルト。その間には、何一つ纏われていない。つまり、絶対領域。
 甘い匂いに誘われ、黄金の密林にむしゃぶりついた。
 今や好物となったそれを舐め上げ、穿ち、舐り、突く。ただひたすらに。己の欲望を満たすために。
 ただ一つの電動器械と化し、サンダーロードを駆け巡る。
 時折主人の指示が飛ぶ。
 お手。そして、おかわり。
 チンチン。
 断続的に響く水音。喜悦を告げる高周波。そして激流はすべてを飲み込み、今日も一つの仕事が終わる。
 液体を顔で受けながら、俺は吼えた。
「よく逃げなかったね」
 椅子に体重を預けたままで、気だるそうに女主人が問う。
 光る鼻先を鳴らして、背を向けた。
 わかってる。俺たちゃバター犬さ。死ぬまでな。
 館を出る。
 雲が切れ、ようやく姿を見せた月が、石畳の街を朧に照らし出す。その一角で、首のない犬がメイドに引き摺られていく。
 瓦斯灯立ち並ぶ中央通りから、足音は遠ざかってゆく。
 別れを済ませるには、いい月夜だ。

団鬼緑 2010年08月16日 (月) 17時59分(8)
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