[6] “無” |
- BAKU - 2004年08月09日 (月) 03時05分
俺はまず、自分の家に帰る事にした。いつまでも此処に居たら危ないと思ったからだ。 俺は、前の俺の肉体の屍から自分の家の鍵を取った。そしてその屍は放置したままにしておく事にした。どうせ隠してもいつかはバレる訳だし、今のうちに俺を殺した事にしておいたほうが後々楽だからだ。 そして俺は、家に帰っていった。
自宅はアパートだが、まだ夜中で、厄介な管理人はまだ起きていない。その内に俺はそーっと物音を立てずに自分の部屋へと入っていった。 部屋の電気をつけて、顔を洗いに洗面台へ行くと、鏡には見慣れない男の顔が……
なんて事は無い。ただの俺の顔だ。つまり、肉体を奪ったヤツの顔である。
「そう言えば……」 俺は自分の服の内ポケットを探った。すると、中からあのサイレンサー付きの拳銃が出てきた。 俺はベッドに寝転び、拳銃を翳す。鋼鉄の筒が、鈍い光りを放った。
「――さて、どうするかな」
次の日になった。 俺は家に居てもしょうがないと思い、外に出た。陽は、目がくらむほど眩しい。服の中に入っていたサングラスを俺は掛けた。 一旦昨日の場所へと戻ってみる。公園の近くには、黒い高級車が置いてあった。確か昨日もあった筈……。俺はポケットの中を探っていると、車のキーらしき物を見付け、車を開けようとしてみた。すると、思った通り車は開き、俺は中に入った。
「ちっ、野郎め……こんな高級な車に乗りやがって」 チャンチャランチャララ♪ ――と、聞き覚えの無い着信音が耳に入る。だが、辺りには俺以外の誰も居らず、仕方なく服を探し回し、漸く携帯を見付けて取る。
「おう、俺だ」 無理矢理口調を変える。相手は昨日の二人の内の一人らしかった。
「兄貴?!ドコに行ってるんスか?姐さんが探してましたぜ?」
「あ、あぁ……。昨日のヤツを始末するのに手間掛かってな。済まん、直ぐに行く。何処だ?」
「――ヤだなぁ。兄貴、決まってるじゃないですか。俺達の溜まり場ですよ。いつもの酒場ですよ」 これは困った。これじゃあ場所が全く分からない。電話の相手に聞く訳にもいかない。と、横を見てみるとカーナビが付いている。
「もしかすると……」 思った通り、カーナビには相手の言っていた酒場が地図登録されている。これならちゃんと行ける筈だ。 「よし、じゃあ行くとするか」 俺は携帯を切って、車のエンジンを掛けた。
TO BE CONTINUED...
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