[3] AA戦記 第二話「急襲!ジサクジエン!」 |
- ギルザラード - 2004年08月05日 (木) 14時46分
2ch暦400年。同日。同時刻。2ch西側メインストリート。 町の住人のほとんどがシティ中心部、あるいは各々の持ち場でセレモニーの準備をしている中、西側の大通りを、二人の男が大きな荷物を積んだ荷車を転がしながら歩いていた。 「…ったくひろゆきの奴、いきなり呼び出しやがって…AA使いが荒いぜ。人がせっかく気持ちよく昼寝してたっつーのによ。」 「ギコは楽しみじゃないモナか?祭り。」 「まあ、一応俺も楽しみなんだけどなあ、楽しみだけどなあ、モナー。んなもん他の連中に任せときゃ良いじゃねえかゴルァ。」 「モナ達だけ何にもしないなんて、なんか後味がよくないモナ。」 「…お前は底なしのお人良しだぜ、モナー。」 「オマエモナー。」 ギコハハ、と「ギコ」と呼ばれたAAが笑う。このギコという男、白い体毛を除けば、見た目しいとそっくりなのだが、顔つきは少々いかつい。普段はあまり笑わず、良く知らない人間から見たら乱暴者に見られがちだが、優しい一面も持っており、六つ下の弟達やちびギコ達からは、「ギコ兄ちゃん」と慕われている。 そして、もう1人の、「モナー」とよばれた男、ギコと比べると少々太めで(これは太っていると言う意味ではなく、モナー族としては、極めて標準なのである)、のほほんとした顔つきをしている。性格は、まあ顔どおりの性格なわけだが、これで結構正義感が強い。ちなみに彼の一族は、2chの第一住民で、「始まりのAA」とも呼ばれている。 そしてこの時、AAシティの中心部を、黒い雲が覆い始めていた… 「…おいモナー。なんか雲行きが怪しいぞゴルァ。」 「本当モナ。急いだほうがいいモナね。んん…?」 そう言うとモナーは、目をすぼめて、道路の先を注意深く見始めた。 「どうしたモナー。何かあるのか?」 「分からないけど…何かぼた餅みたいなのがはねながらこっちにやってくるモナ。」 しばらく足を止めて見ていると、それが一つでは無い事が分かってきた。それは、かすかにドドドドド…と音を上げながらこっちに迫ってきた。 「一体ありゃ何なんだゴルァ…。」 「もっと近くに言って見てみるモナ!」 モナー達は荷車を置いて、それに向かって走っていった。 「!!!」 「イイ!イイ!イイ!イイ!イイ!」 「…!ジエンの大群だぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」 モナーが叫ぶ。一等身の耳なしモナーのようなそれ、つまりジエンは声を響かせながら、砂塵を巻き上げてこちらに迫ってくる。 「やるぞモナー!」 「分かったモナ!」 ギコとモナーが構える。ジエンの大群はどんどん迫ってくる。そしてジエンのうちの一体がギコに向かって飛び掛ったその瞬間、 「俺様をなめんじゃねええええええ!」 雄叫びを上げながら、ギコがそのジエンに向かって、渾身の一撃を食らわせる。そのジエンはひとたまりも無く倒れる。 「!?」 ギコはそれに違和感を感じた。何かが違う。あまりにも…そう、あっけなさ過ぎる。だがギコにそれ以上疑問を抱えている時間は無かった。数十体のジエンが押し寄せてきていたからである。 ギコは再び構え、ジエンの群れを倒していった。 数分後、ジエンの大群は一匹残らず地面に叩き伏せられた。 「…ったく、一体どうなってやがんだ…!?」 悪態をついてジエンを見下ろしたギコが、驚く。倒したジエンの体が、どんどん消えていく。 「…。…そうか、読めたぞモナー。こいつらはコピペAAだ。」 「コピペAA?」 「コピペ厨がよく使う奴さ。いわばクローンAAだな。簡単に製造できるが、オリジナルと比べると弱く、すぐあぼーんされる。しかし妙だな…。コピペAAは本体がいないと作れないはずなのに…」 「ココニイルゾ。本体ナラナ。」 背後から聞こえた声に、ギコとモナーが振り向く。すると、柱の上に、本物のジエンが座っていた。ジエンはそれを確認すると、柱から飛び降り、ぴょん、と、道路の上に着地した。 「ジエン!一体これはどういうことなんだ!?」 ギコの言葉に、ジエンが固まる。 「俺ハジエンジャナイ…関東裸会代表、ジサクジエンダァァ!」 「!!?」 突然、ジエンの下の部分がわれ、筋骨隆々の肉体が姿を現した。 「オレ、ジサクジエン、イイ!」 「くそ、なんだか分からないけれど、行くぞゴルァ!」 ギコとモナーが同時に飛び上がり、ジエンの胸に一撃を食らわせた。だが、ジエンはさしたるそぶりも見せず、二人を片手で払い飛ばした。 「き、効かねえ…」 口にたまった血を吐き出しながら、ギコがあえぐ。 「オ前ラノヘナチョコパンチゴトキデハ、コノ肉体ニ傷ヒトツツカナイ!カコイイ!」 「しょうがない…こうなったら…」 「所詮何ヲシヨウトムダ!ムダ!ムダ!イイ!」 ジエンが迫る。だがモナーは静に構えている。そしてジエンの拳がモナーの顔まで三十センチのところまで来たとき、モナーが飛んだ。とっさに顔を上げるジエン。そして渾身の一撃が、ジエンの頭に向けて放たれる。派手な音を上げて、ジエンが倒れる。 鉄拳制裁。モナーが、いざと言うときにしか使わない、じいちゃん直伝のパンチ。ジエンがたちまちもとの大きさに縮む。 ギコが急いでジエンのそばに駆け寄り、話しかける。 「ジエン…何でこんなことをしたんだ。」 「ウウ…逃ゲロ…町ガ…2chガ危ナイ…」 「…!分かった、おいモナー、お前ん家、こっから近かったよな。ジエンの手当てすっから、お前の家まで運ぶぞ。」 「…分かったモナ。」 ギコはジエンを背負うと、手早く荷物の中にあったタオルでジエンをしっかり固定しモナーに向かって、何もいわずにうなずいた。そして、それぞれに深刻そうな表情を浮かべながら、三人は走り出し、その場を後にした。 2chのどこかで… 「どうやら逃げられちゃったようだね。…君。」 「ぬるぽに襲わせますか?…様。」 「いいや、その必要はない。もう次の追っ手を向かわせたからね…ふふふふふ…」 十数分後、西側メインストリート ズシーン、ズシーン。 巨大な影がその体を揺らしながら、先程までモナー達がいた場所まで歩いてきた。その視線は、荷車、コピペ軍団の痕跡、ギコが吐いた血の跡、そして巨大な人型のひび割れにすばやく移る。 「アババババ、全く…」 そこまで言って、目ざとくギコ達の足跡を見つけ、足跡の進む方向に顔を向け、言葉を続けた。 「全く、クマった奴等だなあ…。」 ―第三話「小さな戦士達」へ続く―
|
|