今年の桜は長く楽しむことができました。しかし、それも終わりのようで我が家の近辺はすでに散り始めました。気温も高くなり、汗ばむ日も稀ではありません。気温20℃未満ならサブも落ち着いていますが、それを超えると「暑いのだ〜」と言い始めます。そんな日は扇風機が活躍します。それにしても炬燵と扇風機が同居している光景は奇妙なものです。
さて今日はワクチネーションプログラムに関する話題です。2007年に発表された世界小動物獣医師会(WSAVA)のガイドラインが改訂・拡大されましたので抜粋して解説します。
@ 基礎免疫の仕上げは16週齢以上に 幼少期(初年度)のワクチン接種が基礎免疫です。複数回接種が一般的です。その最終接種を16週齢以上に行うことが推奨されました。これまでよりやや遅く設定されています。母犬由来の移行抗体によるワクチン効果の阻害を回避するためです。基礎免疫の仕上げが早いと、つまり16週齢未満で最終接種だと十分に免疫が付与できないことがあるようです。その後は6か月齢、もしくは1歳時に追加接種します。
A コアワクチンは3年以上の間隔で 致死性の高い感染症に対するワクチンがコアワクチンです。ジステンパー、アデノ、パルボに対するワクチンがこれに該当します。狂犬病ワクチンが必要な地域はそれもコアワクチンとされます。「コアワクチンは状況にかかわらず全ての犬に接種すべき」と規定しています。それ以外の感染症に対するワクチンはノンコアワクチンです。「ノンコアワクチンは地理的要因、地域の環境、ライフスタイルによって特定の感染症のリスクが生じる場合のみに必要」と定義しています。
「コアワクチンに関して追加接種後は3年以上の間隔で接種すべき」とされました。ただし前提条件は抗体価上昇の確認です。免疫が十分でない場合は「3年以上の間隔」は通用しません。ワクチン学講座でも解説しましたが、「3年以上の間隔で」を実施するためには二つの大きな課題が残されています。一つが院内でできる簡易抗体価測定キットがないこと、もう一つが市販ワクチンは多種混合ワクチンばかりでバラエティがないことです。さらにペットホテルを利用する場合に“接種済み証明書”の提示を求められることもあります。これらが障壁となり“年1回接種”の壁を崩すことができないのが現状です。「必要な時に必要なワクチンだけを接種し、ワクチン接種回数を減らす」という目標達成にはまだまだ時間を要すようです。なお、日本では狂犬病ワクチンの年1回接種が義務付けられています。
B 年1回の健康診断を ガイドラインは、「コアワクチンは3年以上の間隔で」を提言するとともに、「年1回の健康診断と必要なノンコアワクチン接種」を支持しています。定期健康診断の重要性は言うまでもありません。「必要なノンコアワクチン」とは、Aに記載した定義を満たし、免疫持続期間が短いワクチンです。またコアワクチンが必要な場合はコアワクチンも追加接種です。
2016年04月08日 (金) 16時52分
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