“ダブルバインド”という心理学用語があります。日本語では“二重拘束”と訳されます。二つの矛盾した命令を受け取って混乱し、かと言って矛盾を指摘することもできず、嫌々応答せざるを得ない状態です。ストレスを溜め込むことになります。
ダブルバインドは家庭でも職場でもよく見られます。
家庭での例: @ 親が子供に「こっちにおいで」と言う A 子供が親の所に行くと、親は言葉以外の仕草・声のトーン・視線などで「こっちにくるな」というメッセージ時を送る B こっちにおいでと言われたから言ったのに嫌な態度をされるので子供は混乱する C そして離れることを禁止してこの矛盾からの不快感を食らい続けるように仕向ける
職場の例: @ 何か言えば・・「何だその言い方は」 A 黙っていれば・・「なんとか言ってみろ、口もきけないのかお前は」 B 下を向けば・・「人と話すときは目を見るもんだろ」 C 目を合わせて話を聴いていたら・・「なんだその反抗的な目つきは」 D 涙を流せば・・「泣けばなんでも許されるとでも思っているのか」 E 泣きたいのを我慢すれば・・「こんな時に涙の一つも流さないなんて本当にかわいくないよな」
上記のような経験をされた方も多いのではと思っています。さて、ダブルマインドは犬の呼び戻し訓練でも見られます。
@ リードから放して遊ばせていたら、飼犬が何か飼主の意に沿わないことを始める A 飼主は、悪いことをしている犬を叱ろうと「おいで」と呼ぶ(それも猫なで声で) B 犬は飼主が優しく呼ぶので「何かいい事があるのだろう」と飼主の元に戻る C 犬が飼主の元に来るといきなり叩かれる、あるいは戻るのが遅いと叱られる
飼主が犬を叩いて叱るこの行動は最初の声による命令とは階層が異なり非言語的です。犬は呼び戻しの優しい声と手による罰に強い矛盾を感じ、飼主の意図を理解することができません。犬は飼主に呼ばれたから戻ったのに叱られるという矛盾から次第に逃げられなくなり葛藤を抱え疑心暗鬼になります。で、少々飼い主が呼んでも、犬は戻るべきか戻らざるべきかを思い悩み、消極的ではありますが戻るのを止めるという選択を優先することになります。これは飼主側に原因がある犬の問題行動です。飼主側を徹底的に訓練し直すしか対策がありません。 で、飼主側の改善点です ■ 犬を呼び寄せて叱ってはいけない ■ 犬が呼び戻しに従ったら、事前にどんなことがあっても戻った犬を笑顔で褒める ■ 犬を叱る必要があったら、犬が悪いことをしている現場に飼主が出向いて悪いことをしている場所で叱る ■ 今行っている悪いこと、あるいは直前にしていた悪いことだけを叱る ■ 犬を叱る時は、叱るべき対象行為から時間が経ってから叱ってはならない(犬の短期記憶時間は2分だそうです) ■ 犬をむやみに殴ったり蹴ったりして叱ってはいけない(ただし犬が人間に危害を及ぼしかねない状況は除く) さて我が家のドラ息子・サブですが、未だ「横について歩く、飼主が止まったらお座りをして待つ、ドアの前では許可があるまで待つ」の段階です。それもいつもその通りにはやってくれません。「リードを外して自由に遊ばせ、呼び戻し訓練をする」なんて夢のまた夢かもしれません。
2015年03月11日 (水) 10時01分
|