マラミュートには、毛が長くて柔らかい長毛は比較的多く見られますね。 しかしあくまで理想的なコートは「手触りが粗くパリパリした中庸の長さの上毛と、密度の高い下毛からなるダブルコート」ですから、長毛の場合はその点では望ましくありません。 これは、以前に何度も会報などで書いたかと思いますが、極地の悪天候で作業をする時、長毛は氷が全身にぶら下がって重くなる上、パッド回りにはダンゴのように雪が固まるため作業の邪魔になるからです。そしてまた面白いのは長毛より普通のダブルコートのほうが耐寒性が高いんですよね。2頭一緒にいて、コンディションや体質がほぼ同じの時、暑さに苦しむのは硬くて密度の高いコートを持った犬なんです。 普通毛の毛は、上毛と下毛の長さが明らかに違います。ミンクの毛皮を想像してみればわかりやすいです。ピンピンと飛び出た硬い針金のような上毛は雨や雪や氷の粒を撥ねのけますし、かき分けても皮膚が見えないほど密生した下毛は体温と皮膚の乾燥をしっかり保ってくれます。 ところが、長毛のマラミュートをみると、下毛と上毛の長さの違いが無いんです。上毛と下毛の色が違っても、同じような柔らかさと長さで全身を覆っているため、まったく違う風貌に見えますね。あくまでフルコートの時の話ですが。
我が家にはコートの長い犬が1頭だけいます。メスなんですが、構成、タイプ、バランス、歩様、顔、性格、どれをとってもピカ一。 惜しいかな、コートが長いだけが彼女の弱点。しかし、他の犬が追随できない位に良いところをたくさん持ち合わせた彼女を、育種計画上どう使うかが私たちの腕の見せどころ、というか犬作りの面白さでもあるんですよね。 長毛は劣勢遺伝なので、相手を選べば次世代に長毛は出なくすることができます。 または相手が不顕性のLlまたはlLだと2世は50%ずつに分かれます。あくまで計算上の見かけの話。 しかし!ショーに出す上で、LlまたはlLのマラミュートは見かけがゴージャスになる(ことが多い)のです。 このような点で、昔から良く「あの犬はショーでは優秀な成績だが台牝としては今ひとつだ」とか、必ずしもショーで映えるわけでないものが台牝としては極めて優秀な成績で後世に名を残すこともあるわけです。
参考までに、マラミュートを犬質の点で判断する場合、全体の得点が100とすると、コートの質の得点配分は5、です。配分として特に高いのは躯幹と四肢が35、歩様が15ですから、これらの項目だけで半分の得点となります。作業犬ですから、動きを生み出すパートがもっとも重要とみなされます。頭部は20ですね。マラミュートがシベリアンでもない、秋田でもない、この犬の沿革を物語る特徴ですから。 ちなみにシェパードや秋田犬では、長毛はそれだけで「失格」事項として定められてますから、犬種によって望まれるものがはっきり違うんですね。
マラミュートの長毛は確かに極地で労働に従事させる時には望ましくありませんが、一般家庭の伴侶として一緒に暮らす上ではきわめて愛らしく魅力に溢れたものです。 余談ですが、あえてモコモコの長毛のマラミュートを欲しがる人たちもあるみたいですよ。
2009年12月02日 (水) 01時00分
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