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MAKAHIKA

なまえ
めーる
たいとる
めっせーじ
ほーむぺーじ
ぱすわーど
くっきー

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■ おーい

2004年06月03日 (木) 18時16分


ロンギヌスさんロンギヌスさん一階の迷子センターで冥さんがお待ちです。
繰り返します(以下略)

そーいやぁ、ロンって「バルハラ」っていう小説書いてなかった?

1101番 MAIL HOME 冥 ▼

■ んきゃ

2004年06月05日 (土) 00時04分


だーれもレスしないからオ・イ・ラが☆
ロン丸は行方不明?餓死してないだろうか・・・
鹿丸と命名されてまだ仕返しができてな〜い!
てか冥、迷子なの?(笑)

1102番 MAIL HOME 獅子丸 ▲

■ こぅら!

2004年06月05日 (土) 20時14分


日記は毎日チェックしとるけども、掲示板は最近忙しゅうておざなりにしとったら…。こっちで迷子センターに通報しおったか!?
さっきまで税務署の職員が迷子センターから来てて大変だったんやぞ!!(何!?)

バルハラねぇ…。懐かしいな。ちなみに、あの精神はまだ受け継がれとるぞ。

鹿○、悪いが、今はリッチに果物をぱくついておるぞ。若葉を捜してうろうろしておる鹿○とは違うんじゃ!!(だんだん変な名前になっとる…)
よし、俺ッチがここを忘れていない証拠に、クソ長い半ば嫌がらせな小説をいっぺんのせてやろう。くっくっく、その胸にとくと刻み込むがいい!
ロンギヌスは永遠にここに来るぞー!(オー!)

1103番 MAIL HOME ロンギヌス ▲

■ 白む日の前に

2004年06月05日 (土) 20時17分


一部 黒猫の晩餐会
 ザクリ、ザクリ。闇夜にスコップのやわらかい土に食い込む音がする。
単調に響くその音をノエルはどこか遠くから聞いていた。ガチンと鈍い音が唐突に響いた。男はニヤリと笑った。
月の光がぼんやりと辺りを照らすが、彼の整えられた髪の下は棺の中よりも深い闇が覆っている。
「出てこい、ノエル」男の言葉には逆らいきれない威厳があり、ノエルのうつつな頭にはそれを拒絶する気力も浮かばなかった。
固く強ばりはじめた右腕を苦労して持ち上げ、真新しい棺の蓋に手をかけた。ぎぎ、ときしむ音がする。だが、蓋はそれ以上開きもしない。やがて男は苛立ったように棺に手を差し伸べ、無理矢理にこじあけた。
 「私は長く生きているが、お前のようなろくでもない同族は初めてだ。ゾンビじゃあるまいし、早くその臭い棺から体をおこせ。私はこんな辛気臭いところに長くいるのは辛抱ならないのだ」
男は蓋に手をかけた格好のままのノエルを無理矢理にひきずり上げ、軽々と肩にかつぎあげるとふっと消えた。
木々を高鳴らせる一陣の風が月光を歪めると、墓場はまた一時の静けさを取り戻した。
かさこそと動き回る夜の住人たちがまたその営みを取り戻すまでさして時間はかからないだろう。
 クラーク男爵と彼は名乗った。ノエルは彼にかつがれるままに任せ、ただ飛ぶように過ぎ去っていく景色に視線を向ける。男爵は彼を乱暴にかつぎあげはしたものの、それからはいたって丁寧にノエルをあつかっていた。おかげで、ノエルは静かに物思いにふけることができた。そう、彼がなぜ棺に納まっていたのかを考えていたのだ。「ノエル、気分はよくなったかい?」流れる景色と調和するような優しい声がノエルの耳をくすぐった。
「男爵閣下…なぜ、私は生きているのでしょうか」
「閣下はつけんでよいぞ。私は同族にはいたって寛大だからな。それから、なぜ君が生きているかだが、それは簡単だ。お前は黒猫の儀によって汚れた血となったからに他ならない。今こうして生きていることこそ我らが高潔なる同族の証に他ならないのだ」当然のことだろ? と彼は付け加えた。
 ノエルはがっくりと肩をさげてまたマッキンリーに身を任せた。まだ、細かいことを考えられるほど頭もしっかりとしていなかったのだ。しだいに遠退く意識の中で、ノエルは懐かしい声を聞いた気がしたが、それがアーチを作る杉の木の甘い囁きでないと誰に言えるだろうか。目を覚ますとノエルは見覚えのない小屋にいた。やけに腹がすいている。見回すと木の壁に合わせた一枚板のテーブルの上に赤いリボンが結わえられたワインの瓶が一本と、籠につまれたパンが目に入った。
頭は…もうはっきりとしている。昨日あった不可思議なことも難なく思い出される。
カーテンはしっかりと閉じられて、外のようすは分からない。一部屋しかないこの家(と言うよりも小屋だが)には誰もいないのは明らかだ。生まれたときから馴れ親しんでいたネズミのかける音も聞こえないのが落ち着かない気持ちをかきたてる。
「男爵、クラーク男爵」ノエルは呼び掛けてみた。
この隠れるべき場所も見当たらない家に彼がいないのは明らかだが、確かめないわけにもいかなかったのだ。ノエルは、彼はなぜここにいるのかを何よりも知りたかった。おそらく彼だけが唯一ノエルの知りたいことを語ってくれる存在であることは確かなのだ。なぜならノエルは、もうすでに死んでいるはずだったのだから。
 「棺に入るは死体だけ」ノエルのつぶやいたのは古い童謡だった。

棺に入るは死体だけ
生きて入りゃ お天道さまも上らない
棺に入るは死体だけ
生きて出るのはご法度さ

苦笑してノエルは自分の服を眺めてみた。葬式に着せられる質素な服をいまだにまとっている。空腹を感じ、彼はテーブルへと向かった。
今にもこのパンの持ち主が扉を開けて入ってくるとでもいうかのごとく、ノエルはびくつきながらパンを引っつかんだ。しかし、とってしまえばこちらのもの。空腹も相成ってあっという間に一つ、二つ、三つとあっという間に平らげてしまった。
 最後の一杯と思いその手をワインにも伸ばす。貧しい家のノエルにとって、この食事はさながらクリスマスの晩餐のようなものだ。だが、今更神の罰を気にしてもいられない。ノエルは濃い赤をしたワインをグラスになみなみとついだ。
と、彼はそのワインのあまりに甘い匂いに一瞬頭が真っ白になった。
気がつけば…丸々一本のワインをいつの間にか飲み干し、恍惚としていた。
あまりに濃い味にどんなワインだったのかもさだかではない。ノエルは、コップの底に残ったしずくを指で救い上げ、慎重に舌に当てた。
…血だ。

二部 夜空のピエロ
 「私のプレゼントを楽しんでいただけたようだね」
ノエルが食事をたしなんでから幾時間もたち、クラーク男爵は姿を現した。
この間の夜と同じ卸(おろ)したてのぴりっとした服にしっかりと撫で付けた髪が身分の高さを表している。
だが、その男爵が、今は粗雑な紙袋一杯に食料を詰め込んで両手に持っているさまは、なかなかの光景だ。
「そう見てないで手伝ってはくれないのか? これは全てお前のための食料なんだぞ」
そう言われて初めてノエルは手を動かした。男爵は少し眉をひそめたが何も言わない。
「その様子だと血の味はもう覚えたな? 見事なものだ。瓶一本も用意してやっていたのに、私の分がもうないではないか」
大げさに男爵は両手を広げ、神に祈るかのようなポーズをとってみせた。そして、その両の牙を光らせて言った。
「君は忌まわしき吸血鬼となったのだよ、ノエル君。それも、格別に薄汚い黒猫の血だ」
「僕が普通じゃないのは認める。死んだはずなのに、こうしてピンピンしている。頭の傷はもう痛くもない。あんたの趣味の悪い血のワインもおいしくいただいた。これじゃあ伝説の吸血鬼とまったく同じだってのはたしかだ。それに、さっき外に出ようとしたらひどい目にあった」ノエルは袖を引いてみせた。男爵の口笛の音にむっとする。
「とにかく、僕は吸血鬼になってまで生きてはいたくなかった。なんでこんなことになったんだ?」
「そりゃあ簡単だ。お前は生きたいと願ったのさ。死に際、その体の上を黒猫が横切った。そのときお前の願いがかない、お前の血は吸血鬼の血となった。知らないのか? 死体の上を黒猫が横切ったらそいつは吸血鬼になるのさ。ただし、強い願い。他の全てのものを犠牲にできるだけの強力な願いの力が必要だがな」
「他の全てを…ね。でも、僕は吸血鬼にまでなって生き返りたくはなかったと思っているんだぞ」
「そんなのは方便さ。どたん場になれば誰でも本音が出る。お前だって、死に際にはなにかとんでもないことを考えていたはずだ。それが黒猫と同調し、今のお前がいる。とにかく、吸血鬼になってしまった以上ヘタには死ねない。何を願っていたのかじっくり考えて、結論を出せ。死にたいなら私が始末をつけてやる。だが、生きたいならば、吸血鬼になってまで叶えたかった願いを叶えてみたらどうだ? 考えようによっては、神の配剤。世界で最も醜い奇跡さ」
「くだらない」
「くだらないか? 私はこの奇跡の力で男爵になった。そして、君という男を救った。奇跡は意味があるからこその奇跡なのだよ」
「どんな意味が? 何の意味があるというんだ? 僕はこんな穢れた姿になってまで生きたくはなかった! あんたに分かるか!!」
「分かる必要もない。私は奇跡を理解した、この醜い奇跡をね。これ以上の問答は無用だ。今は食べて考えろ。そして、結論を出せ。生きるか、死ぬか、それが問題だ」
クラーク男爵は手に持った食料をドサリと落とし、さっさと小屋から出て行った。扉の開いた一瞬の間に、ノエルは馴染みの星々をその目にとどめたのだ。もう二度と見ることもないはずだったあの星を。
 生憎ノエルはそれほど腹を減らしてはいなかった。バスケットに盛られたパンはなかなかの量だったし、血のワインで潤した喉は水を求めない。死に際にはあれほどまでにズキズキと痛んでいた後頭部ももはやなんともない。さっき触ってみたら血もついていなかったので、葬儀の前に誰かが洗っておいてくれたのだろう。死体をフロに入れるだなんてぞっとしない話しだ。
となればやることも一つだ。ノエルは立ち上がり、扉に手をかけた。
ざざあっと木々を揺さぶる突風はこの地方独特のものだ。遠くの木々のなる音を聞いて身構えなければ、大人だってよろめかされる。そう、ノエルが死んだのもこんな突風の吹く夜だった。

三部 輝く配剤
 「ノエル、婚約おめでとう」
「ありがとう、アーサー。これからもよろしくな」
「俺にそれを言うのは酷じゃないか? 俺だってリータを嫁にもらいたくてこの歳まで結婚してなかったんだぞ」
「だから言っているんだよ。一生苦しめてやるからな」
「この性悪め!」
 ノエルとアーサーは幼いころからの親友だった。
血の誓いをした僕らを村長たちは白い目で見ていたが、僕らは平気だった。血の誓いとは、親指をナイフで切ってお互いに押し当て、血と血の兄弟の誓約を交わす簡単な儀式だ。普通は小さな子供がたいして考えも持たずにやることが多いだけに、二十を過ぎてこの村では結婚していない数少ない若者になった僕らがやるのは自分で思っても異様だ。
 「とうとうノエルに負けちまったな。喧嘩をしても、かけっこをしても、家の大きさから言っても、絶対に俺のほうが有利だったのにな」
「人徳ってやつだよ。アーサーは恐すぎるんだ」
ジロリとアーサーがノエルをにらみつける。とっさにノエルは、軽く叩かれる前に一歩引き下がり、
「それでもお前は親友だよ」と言った。
お互いに笑いあった。ノエルは心の底から。そして、アーサーは必死に自分を押し殺しながらも、彼を祝福して。
そう、リータをめぐる二十年の戦いはようやく終止符を打ったのだ。
これでバカみたいに騒ぎ立てれば、なおさら惨めになるだけだとアーサーには分かっていた。
アーサーは、ノエルの方をぐっとひっつかんだ。あまりの強さにノエルがうっと声を漏らす。
 「リータを泣かせれば俺が許さないからな。何があろうと、彼女より先に死ぬな。生涯をかけて愛し続けろ。今、ここで俺に誓え」
彼の真剣な目に、ノエルは「誓う」と短く言った。
そして、また二人はひとしきり笑った。
明日は村中を上げてのお祭り騒ぎになるだろう。その主人公は、ノエルとリータ。そして、華々しき婿どのの付添い人がアーサーなのだ。
二人は道を分かつ最後の橋にさしかかった。
ここで、ノエルは右に。アーサーは左に向かうのだ。
「それじゃあな、アーサー」
「頑張れよ、ノエル」
橋の上で、最後の抱擁を交わした時、突風が吹いた。
 ゆらりとゆれた二人の体が、ふいに離れ離れになる。ノエルの腕は宙を切り、目は恐ろしいものでも見たかのように見開かれている。アーサーは、ぐっと踏みとどまった足元を凝視し、手だけが不自然にノエルのいたところに伸びている。月の光がゆがみ、彼の顔に影を落とした。くぐもった音にようやく彼が気がついたのは、もう朝も白み始めたころだった。アーサーの瞳は、それまでピクリたりとも足元から離れはしなかった。
こうして、ノエルはその長いとは言いがたい生涯を終えた。

四部 醜き奇跡
 ノエルは歩き出した。
このまま男爵に頼んで殺してもらうのも一興かもしれないが、せっかく生き返ったのだ。せめて、自分が何を願っていたのかぐらいは確かめてから死んだところで誰も文句はないだろう。
今は夜。ひりひりと痛む腕の教訓から、もはや二度と昼間に外を出歩くことはないであろうことは容易に想像できる。まさに、夜の住人となってしまったのだ。この村でささやかれる夜の住人-ネズミやゴキブリなど-とは似ても似つかぬ人間の体であることは幸いなことだ。
 ノエルとしての彼は死んだ。あの橋の袂で。そこで、ノエルは不自然にならない程度に布で顔を隠した。これで、少なくても夜道にすれ違った程度で気づかれることはない。だが、用心に用心を重ね、人影が見えればすぐに道のわきの藪の中に姿をくらまし、人気がないときだけを狙って歩き続けた。
気がつけば、そこは郊外。うつらうつらと覚えている月に照らし出された道は、この地方を治める男爵家の直轄地に繋がるたった一本の野道だった。どうやら、クラーク男爵という名前は嘘ではないらしい。もしそうでなければ、明日かそこらにでも杭やら鍬やらを持った屈強な男たちがあの小屋を取り囲むことになるだろう。確かめるのは簡単なことだ。日光の心配を除けば、だが。
 ほんの数日で世界がまったく新しくなったような気がした。
いつの間にか季節は濃くなり、今が旬と酔っ払いががなりたて、恋人たちは家路を急ぐ。
そんなもはや彼とはかかわりもなくなってしまった光景に、ふと気がつけば目頭が熱くなる。急いで目をぬぐうとノエルは足を進めた。目指す場所はとうに決めている。それは、教会だ。
 厳粛な教会だけは外の陽気さとは一線をきし、ノエルにつかの間の安らぎを与えた。
幸いなことに教会に入るのも十字架にキスをするのもノエルには苦痛ではなかった。もし、これから先も生き続けるとすれば、キリスト教徒であることを捨てる必要はなさそうだ。これは素直にうれしいことだ。
信仰は生きる糧となる。
 しかし、そんな喜びはつかの間だった。
「こ、これはこれは、こ、こんな夜遅くに、い、いかがいたしましたか?」
つっかえつっかえにしか話せないこの教会の神父、カラマント。彼を見たとたん視界が赤く染まり、ノエルは理解した。
 『私は奇跡を理解した、この醜い奇跡をね』
「私は…理解した。この醜い奇跡を」
「な、なん、ですと?」
「主の御名により、汝に正しき制裁の下らんことを…」

五部 ユニコーンも近づかぬ娘
 リータはふかふかのベッドに腰を下ろして深いため息をついた。
つい数日前に彼女の婚約者であったノエルという若者がこの世界を旅立ち、カラマント神父の手によって墓地へと埋葬された。それも、リータの家柄の墓地ではなく、彼が本来埋められるべきであった共同墓地にだ。
リータは彼女の父親に強く抗議した。だが、彼の恐るべしかたくなな頭に再考の余地はどこにもなかった。彼にとって娘とは財産であり、その財産がろくでなしのノエルなどと結びつくことによって汚らしい汚れ物になることを彼は何より悲しんでいた。
それだけに、何もないままノエルが死んでくれたことは彼にとって願ったりなのだ。
この上ノエルを自分の家の墓地になど埋めようものなら、リータはいい気になってせっかくの幸運を台無しにしかねないと彼は常々考えていた。
 そして、リータはまたため息をついた。
彼女の忠実な侍女であるフランチェスカはそんな女主人を見てこれまたため息をついた。
「リータ様、アーサー様はとても素敵な方じゃありませんか。それに、あなた様のことを深く愛していらっしゃいます」
そう、リータはノエルの喪も明けないうちにアーサーと結婚することになったのだ。
彼女の父親が、リータが喪に伏すことはすなわち、リータとノエルの間にはそれだけの関係があったということにつながり、娘の価値が下がると考えた上で仕組んだことだった。
リータはその甘茶色の髪の毛を手櫛でかきほどき、フランチェスカに言った。
「世間様ではこういうのをどう言うかしっている?」
「政略結婚ですか?」
「それもあるけど、皆な私のことを尻の軽い女って呼んでいるのよ」
「そんなのはリータ様の気にしすぎです。政略結婚は貴族間ではよくあることじゃないですか」
「貴族? 私の家のどこが貴族なの! アーサーの家だってそうよ。ちょっと土地を持っていて、運のいいことにどっかの伯爵家と遠縁だってだけじゃない。こんなのは貴族とは言わないの。地主というのよ」
フランチェスカは再度ため息をついた。リータの言い出したら聞かない性格は、幼いころからいくら直そうとしても直らないのだ。
「いいですか、リータ様。お家の間において、女なんてのは弱いものです。旦那様なんて、リータ様のことを家の宝程度にしか考えておりません。しかし、本当に歴史を動かしているのは女なのです。リータ様がいつまでのノエル様のことを想い慕い続ければそれだけ、アーサー様の御愛情は離れてゆきます。そうなれば、リータ様の力も弱くなる。ひいては、歴史を動かすこともできないほど…」
「ああ、もういいわよ! あなたのお説教はもうたくさん。私はふて寝するから出て行ってちょうだい」
「しかし…」
「フランチェスカ、誰が主人か忘れたの?」
「…分かりました。しかしこれだけは言わせていただきます。アーサー様とのご結婚は、必ずやリータ様の幸せとなるでしょう。では、失礼いたします」
 フランチェスカが出て行ったのを見届けると、リータはふかふかの布団の上にうつぶせに倒れふした。10の歳になったときから人前でこれをやるとはしたないと言われるので自粛しているが、これほどまでに気持ちのいい寝方は他にはないとリータは確信している。
ノエルもまた、この寝方が好きだった。
「ノエル…」
ノエル、アーサー、リータは幼いころからの親友だった。
最初のうちこそ、リータは何をやらせてもノエルよりも上手なアーサーに惹かれていた。しかし、ある日ちょっとしたきっかけでアーサーとは血が繋がっていることを知ってしまったのだ。それも、さして遠くないところで。
そうなれば小説-吟遊詩人の謳う都などの風説-に夢はせるよりも、野山を駆け、鍬を握るほうが性に合うリータのことだ。
教育係もかねているフランチェスカから教わった、近血縁間の血の交わりによる恐ろしい病気の数々を思い出すとそのたびに背筋が寒くなり、それ以来どちらかというとアーサーをさけるようにすらなった。
そして、十分すぎるほどの時をへて、ようやく彼女とノエルは華々しくゴールを迎えるはずだったのだ。
 「なんで…死んでしまったの…」
この問いを彼女はもう何度も繰り返した。
そのたびに答えは見つからず、最後はいつまでも泣き伏し、そして今ではもう涙も枯れ果ててしまったのだ。
フランチェスカの言うことはいちいちもっともだ。だが、あいにくリータは地位を持つ者の娘としては失格な心の持ち主だったのだ。

六部 さすらいの悪魔
 雨が降っていた。
ざあっざあっと絶え間なく振る雨は今の時期欠かせない恵みの雨だ。
だが、ノエルはその雨に打たれて今にも死にそうな気になっていた。
「吸血鬼は雨に打たれると弱くなる…って本当だったんだな」
自嘲めいた笑いをうかべて彼はまたゴミの山を動かし、少しでも寝心地をよくしようと試みた。
彼は今、この町きっての不潔さを誇るゴミ置き場に寝泊りしていた。あの教会に行った日から山小屋へは帰っていない。
男爵の買ってきてくれた食糧のほとんどは、もう腐っているだろう。願わくば、男爵が適切な処分をしていてほしいものだ。
 昼にはほんの息継ぎていどの晴れ間が顔を出した。
それに合わせて幾人かの人々が急ぎ足で教会へと向かう。日曜の祈りを早々に済ませて、また雨が降る前に家にひっこもうという魂胆なのだ。だが、あいにくそれはかなわなかった。聖なる教会は、おぞましき血によって汚されていたのだから。
悲鳴を上げるパン屋の未亡人をノエルは遠い目で見つめていた。
醜き運命の歯車が、音を立てて動き始めるのを彼は聞いた。
決して慈悲を持つことなき神のあざ笑う声を聞いた。
この町の唯一の聖職者にして、住民皆の尊敬を集める神父の死を悼む祈りの声を聞いた。
そして、犯人を呪う血の友、アーサーの姿を認めた。
ノエルの姿は、再び降り始めた雨の中に溶け込んで消えていった。
 未亡人はあまりのショックに気をうしなっていた。アーサーたち村の若者がその死体を検分し、犯人のメドを付けようと死体の状況を絵に模写し始めている。この田舎の地方には検事もなにもいない。何かが起きれば村人の手によって制裁が下され、地方領主にも知らされはしないのだ。
 模写が終わるとこのひどい有様の死体にも動じない猛者が状況を調べることになった。その中にはアーサーの姿もあった。だが、その猛者にも思わず駆け出して一目につかないところで吐き出してしまう者がいるほどその死体はひどかった。
胸には拳大の大きな穴が開き、そこに本来あるべき命の源がなくなっている。死体の口にはどろどろになった肉-おそらくは胸にあるべき命の源-が詰め込まれ、首には不自然な穴が開いている。そして、何より異様だったのは、その神を忘れた神父のジワリジワリと殺される獲物のような消えることのない悲鳴と見事なまでに枯れ果てた赤い血だ。
「こんな、死体を見たことがあるか?」アーサーが猛者の一人に聞いた。
「いや。こんなもん、子守唄でしか聞いたことがねえだよ。吸血鬼だ。この村に吸血鬼が出ただ」
「しかし、吸血鬼は教会には近づけないんじゃないのか?」
「伝説が間違っているのはよくあることだべ? だども、まだ町の人には知らせないほうがええだろな。どう対処すりゃあいいのかも分からないのに、無駄に混乱させてもなんの益もないべ?」
アーサーは黙りこくった。
 『契約をしよう』
「今、何か言ったか?」アーサーが聞いた。
「いいや。それより、早くこの死体を隠すべ。神父様の葬式では棺の蓋は開けられそうもねえな。
 『契約をするのだ』
「なんの契約だ!?」
アーサーは叫んだ。
 『契約せよ』
アーサーはその場で悲鳴を上げ、地面に倒れた。仲間が駆け寄ると、「悪魔め、去れ!」と言って必死になって追い払おうとする。しまいには、四、五人の屈強な男たちに無理やりに引きずられて教会の一室に放り込まれてしまった。
 「なんだったんだ?」
男たちは普段何事にも動じないアーサーの不可思議な行動に心底興味が惹かれたようだったが、その興味も許さないほどに今は忙しかった。すぐに彼の失態は忙しさの中に忙殺され、丸一日もたつと、またアーサーは人々の指揮をとってカラマント神父の盛大な葬儀を催す計画を立てていた。もはや彼は名実ともにこの町の中心となっていた。大地主の娘であるリータの婚約者として人々はそれを大いに喜んだ。彼が地主を継げばこの一帯は全て彼の所有地となり、今まであった二つの地主によるくだらない小競り合いもなくなる。それはそれは暮らしやすくなるだろう、と。

七部 最後に笑う吸血鬼
 彼は唐突に現れた。
雨が降っている。人々はあの清く公平なカラマント神父の死を悼み、少しでも役立とうと教会に向かっていた。フランチェスカはちょくちょくリータに知らせを届けるために戻ってきたが、それでも朝からほとんどずっと教会に居座りこんでいる。彼女が今は、地主の代弁者であり、目、耳なのだ。他の誰かならともかく、人々は居座りこんでいるフランチェスカを追い出そうなどとは少しも思わない。
もっとも、フランチェスカのよく気がきく性格はなにかと葬儀の準備に振り回されがちな村の若者たちにはうれしいものだったので、たとえ、彼女が地主のもとから使わされていなくても誰一人として彼女を追い出そうなどとは思わなかったことだろう。
床にこぼれた少なすぎる血を見るたびに、悲鳴を上げて気絶することを楽しんでいるかのようなお嬢様がたとは違うのだ。
 そして、彼は現れた。
降りしきる雨の中から亡霊のように現れた彼は、戸口に立つリータを認めるとにっこりと笑った。
「帰ってきたよ、リータ。僕の醜い運命に別れをつげて」
リータは彼の名を叫び、その腕の中に飛び込んだ。
「行こう、ここでは僕らは幸せにはなれない。どこか遠い地へ。僕が誰も傷つけないですごせるところへ」
リータはそこでふと自分の姿を見た。暗い夜闇の中で黒く見えるこれはなんだろうか。ノエルの服にべったりとついたこれはなんだろうか。
「ノエル、まさか、あなた…」
「分かっておくれ、リータ。それが僕の醜い運命だったんだ。あの悪魔に死を告げ、神の裁きを授けることが黒猫に血を注がれた、僕の運命だったんだ」
ノエルは膝をつきリータの前に頭(こうべ)を垂れた。
そして、唐突な背中の鈍痛に悲鳴を上げた。勢いあまってその体は雨でゆるんだ泥の中につっこんだ。
 「ノエル、なぜ戻ってきた! なぜ、人殺しなんて悪魔の行為をしたんだ!」
地面に体を横たえたノエルが視線を上げると、そこにはあの血の友、アーサーがいた。手には杭と鍬を持っている。
「アーサー…君は分かってはくれないのか? あの時、君もあそこに居たというのに。僕の醜い運命を理解してくれないのか?」
「何が醜い運命だ。お前のやったことは人殺しだ! そして、俺の目の前からリータをさらおうとした」
「君は、見ていないのか? 聞いていない…のか? あの悪魔の咆哮を」
 その日、ノエルは橋の上からはるか下へと宙を飛んだ。伸ばした腕もむなしく、ノエルはアーサーの憎しみのこもった目に驚愕を覚えた。
橋の袂では、激しい激痛が彼がまだ生きていることを表していた。だが、あまりの痛みに彼には動くこともままならない。
「こ、これはこれは、ノ、ノエル君で、で、では、あ、ありませんか」
隣から聞こえたつっかえつっかえの話し方には聞き覚えがあった。ノエルは熱心な教徒なのだ、毎日この声を聞いて日々の糧としていたのだ。まさか、こんなところで会うとは思ってもいなかったがまさに天の助けだ。
「神父…様。どうか、人をおよびください、お願いいたします」ノエルは目をつぶって言った。あまりの痛みに目も開けていたくなかったのだ。
「そ、それは、で、できかねます、ね。い、いえ、ひ、人はちゃんと、よ、呼んでさしあげます。た、ただ、そ、そのときはもう、て、手遅れと、な、なっている、で、でしょうけれどもね」
 神父の言葉に異様なものを感じて、ノエルはその瞳を薄く開いた。
そこには、組み敷かれたリータの姿があった。
「ま、まったく、と、とつぜん、そ、空から降ってくるとは。き、君はどうして、そ、そうも唐突な、こ、行動を、と、取るのでしょうかね?」
リータの涙を漏らした瞳は呆然として力を失っていた。そして、ノエルは願った。
「悪魔に、死の制裁を」
神父の咆哮と共にリータはびくりと跳ね上がり、そして、ノエルの命もまた消え去った。沈みゆく意識の中で、彼は猫の鳴き声を聞いた。
「神の裁きを!」
 「俺は…悪魔と契約をしたんだ。本物の悪魔と」
アーサーは言った。ノエルはもう立ち上がり、彼をにらみつけている。
「あの橋で、悪魔は俺に声をかけた。『願いを叶えてやろう。だから、お前の最も愛する者のほんの一時の不幸せを見逃せ』とな。そして、俺は契約を交わしたんだ。なにがどうなるのかも分からなかった。俺は、お前がうらやましかっただけなのに…」
「アーサー、もう過ぎたことだ。リータのもとにユニコーンは訪れない。どうか、僕らを行かせてくれ」
「君はどう思っているんだい、リータ?」アーサーが聞いた。懇願するかのような涙をその目には浮かべている。
リータは、一歩引き下がった。そして、もう一歩。アーサーからノエルの側へと退いた。
その瞬間アーサーは叫んだ。
「契約を交わす!」
 雷が瞬いた。ノエルのほんのすぐそばの木立に雷が落ち、ノエルは思わず目を覆った。
きらめく刃がまっすぐにノエルの喉元へと伸びた。その柄を握るのは他でもないアーサーだ。
しかし、吸血鬼となったノエルの動きはすばやい。左手で刃をそらし右の拳を彼の腹に叩き込んだ。
 「悪魔の契約は、終わっていない。あのときの契約はほんの始まりだった。あれから、悪魔は、ことあるごとに俺に呼びかけた。契約を交わせと」膝をついたアーサーは嗚咽を漏らしながらつぶやいた。
「アーサー、私は彼と行きます。もうこの村には用がなくなりました」リータが彼の後ろから語りかけた。
リータ…とアーサーは呟き、泣き出した。雨の中、彼の顔を伝うしずくは無数に増え、それら一つ一つが彼の罪を浄化するようだった。雷はその一発でなりをひそめた。アーサーの顔に、涙とともに再び笑みが戻った。
刃がまたたき、アーサーの一突きが再び翻った。それも、今度はリータの喉元をめがけ。ノエルはあの橋の上でのように腕を伸ばした。だが、その手が彼女に届くにはあまりにも遠すぎた。雨音を切り裂いてノエルの彼女の名を叫ぶ声がひびく。
キーン、と高い音が響き、アーサーの顔から笑みが消えた。
 「ノエル君、私は同族にはいたって寛大だと教えたね。この私の領土における君の苦難とあれば、いつでも飛んでくるほどに寛大なんだよ」
そこには、サーベルを軽く構えたクラーク男爵がいた。彼はリータの前に立ちふさがり、アーサーの一突きを軽く流していた。
「そして、悪魔に魂を売り渡した者よ。私は同族に危害を加える者には冷酷でもって答えることにしている」
しゅっと風を切る音がしてアーサーのナイフを握った右腕が宙にういた。だが、アーサーは信じがたいといった表情でクラーク男爵を見つめて、右腕が無くなったことにすら気がつかないようだ。
「クラーク男爵閣下…?」アーサーが言った。
「いかにも。私こそがこの地方を治めるクラーク男爵だ。そして、かのノエル君と同じ穢れた血の持ち主だ」
 クラーク男爵はノエルのほうへつかつかとやってきて、小さな子供にやるように彼の髪の毛をクシャクシャにした。
「醜い運命によくぞ別れを告げた。この上は、死ぬか、生きるかを選ぶがいい」
ノエルは自室呆然となっているアーサーと、彼の体を離れた右腕を見た。そして、じっと自分を見つめるリータを見た。
「死を」
リータがはっとした。そのリータに、ノエルは優しく微笑みかけた。
「僕は居てはいけない存在だ。永遠に君の前から消えうせよう。僕はそれを言いたくて君のもとへと帰ってきたんだ。本当は、来ないほうがどれだけいいかも分かっていたのにね」
「では、君に死を授ける。ここで死なれても迷惑だから、あの山小屋で、ここのことにケリをつけたら会おうじゃないか」クラーク男爵はノエルの肩を軽く叩いて雨の中に消えていった。
 ノエルはリータに歩み寄った。アーサーは呆然としたままさっきからピクリとも動いていない。
パンっと小気味よい音をノエルの頬が発した。リータの容赦の無い平手がノエルを襲ったのだ。
「なぜ…死ななければいけないの? せっかく生き返ったのに。私とどこかへ逃げるんじゃなかったの?」
「それはできない。僕らは違いすぎるんだ。二度と僕は現れないから、どうか君は僕のことを忘れておくれ。いい人を見つけて幸せになってほしいんだ」
泣き出したリータをノエルは抱きしめた。そのとき、ドンッという腹に響く音がしてノエルはうめき声をあげた。
そこにいた二人の男たちはお互いの名前を叫んだ。憎しみだけを込め、何者にももはや浄化できぬ最後の一太刀を振りかぶった。全ての絆を断ち切る最後の一振りを。
雨の中に血飛沫が舞った。地面には赤い水溜りができ、あたりには胸のむかつくような匂いが広まる。
そこに立ち尽くしていたのは、血だらけのコートに身を包んだノエルただ一人だった。
 「リータ…リータ…リータ…」
ノエルはひざまずき、リータの体を持ち上げた。
血によって洗われる不自然な傷口からはとめどなく赤い濃い香りの液体がもれる。そのかぐわしい匂いに、ノエルは喉をならした。
「ノ、ノエル…?」
リータの目は開きはしない。
「リータ、大丈夫、きっと大丈夫だから。だから、目を開けておくれ。その瞳をもう一度見させておくれ」
ノエルは彼女の頬をさすった。そうすれば何かがよくなるとでもいうかのように、さすった。そして、彼女は最後の力を振り絞ってその瞳を開けた。ノエルには分かった。それが最後の視線になることが。
「ノエル、生きて…。私が、いなくても…生きて、幸せを見つけて。それが、私の願い。あなた、だけが私に…願いを押し付ける、だなんて、勝手だと思わない…?」
「リータ、リータ!」
雨の中に獣の咆哮がとどろいた。彼は、人としての自分を捨てる決意をした。彼女の名前を叫び、ただ、何度も叫び、決別をはたした。
 熱くて、濃い極上のワインがその喉を通る。まるで、一滴でも雨に流されることを許さないかのようにノエルはその牙をつきたてた。むさぼるようにしていくら飲んでもむせ返りはしない。まるでそれが当然のように、口に入った瞬間に体中に力がみなぎるのが分かる。
リータは、そんな彼に満足げに微笑み、最後の微笑を浮かべ、人として最後の眠りについた。
ノエルの勝ち誇ったかのような獣じみた笑いが雨の中とどろいた。町中にとどろいた。屋敷にとどろいた。
彼は、その血だらけの体を天に向け、残酷な神に別れをつげてチェス盤を降り立った。

終部
 「行くのか? 同族には寛大な私はお前を息子として招き入れたいぐらいなんだぞ」
「申し訳ありませんがそれは僕らの望むことではありません。では、失礼します、クラーク男爵閣下…父さん」
君だけが願いを押し付けるだなんて不公平だろ? とノエルは傍らに笑いかけ、山小屋を後にした。
「白む夜の前に行き着けるといいな、息子よ」クラーク男爵は一人の男として満足げに笑った。

1104番 MAIL HOME ロンギヌス ▲

2004年06月05日 (土) 20時18分


さすらいの文芸修行の成果が出とるやろ?

1105番 MAIL HOME ロンギヌス ▲

■ ・・・・。

2004年06月05日 (土) 20時21分


な、長いレス・・・
こんなのはじめて見た・・

1106番 MAIL HOME 獅子丸 ▲

■ あはは

2004年06月06日 (日) 17時09分


ホント嫌がらせだな。
頑張って読むよーありがとなー

おまえやっぱり文才あるよ

1107番 MAIL HOME 冥 ▲


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