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タイトル:募る想い、病んだ愛、閉ざされし未来 ホラー・怪奇

――会えなければ会えない程、抱く思いは強くなる。だが、強すぎる思いは、総じて反動も強くなるのが必然。約束を反故にされた日、ふと窓の外を見た彼女の目に映し出された光景は、あまりにも残酷なものだった……。メリーヤンデレクリスマス! デレはどことか言わないで! クリスマス作品三作目は、血飛沫飛び交うブラッディクリスマス!?

月夜 2010年07月04日 (日) 03時00分(234)
 
題名:募る想い、病んだ愛、閉ざされし未来(第一章)

――ごめん、先輩……クリスマスは、家で皆と過ごす約束なんだ。

今も脳裏に焼き付いて離れないのは、この間のデートで別れ際に彼の口から放たれた言葉。
楽しみにしていた、彼と一緒に過ごす予定だったクリスマス。
それが叶わぬものとなった時の私の失望感といったら、相当なものだった。
だというのに、そんな彼の言葉に対して、私の返事はと言うと、

――そうですか……約束なら、仕方ないですね……。

なんていう、本心とはまるでかけ離れた、物わかりの良い風を装ったものだった。
あんな胸なしの妹やらメイド姉妹なんか放っておいて、私と一緒にいて欲しい。
年に一度しかない聖なる夜を、私のすぐ傍で過ごして欲しい。
そんな本音を押し殺した理由は、たった一つ。
しつこい女だと、彼に嫌われたくなかったから……ただそれだけ。
その結果が、これだ。
「はぁ……」
一人しかいない部屋の中に、溜め息だけが異様なくらい鈍重に響き渡る。
今日はクリスマス、しかも休日と重なった絶好の日だというのに、私は薄暗い部屋に一人きり。
隣にいるべきはずの、想い人の姿はここになかった。
「……遠野君」
ベッドに身を横たえたまま、私はその名を呟いた。
音一つない室内には、そんな小さな声ですら幾重にも重なり合い反響する。
その音が空気中に溶けて消え入った後、訪れるのは胸を真綿で締め付けるような切なさ混じりの虚脱感。
「はあぁ……」
再び口元から漏れる大きな溜め息。
溜め息を一つつく度に、幸せが一つ逃げていくと良く言うけれど、そんなわけはない。
溜め息というのは、ある不幸せな出来事をきっかけに出てくるものだ。
もし、溜め息をつく度に幸せが逃げるというのなら、その幸せが逃げる毎に溜め息をつき、そしてまた逃げた幸せを憂いて溜め息を溢す。
そんな負の連鎖が、無限に続くことになるじゃないか。
でも、実際は違う。
いくら溜め息をついたって、幸せはいつか必ずやって来る。
首だけを捻り、壁に掛けられたカレンダーを見つめた。
そこに示されているのは、既に来年の1月の日付になっていた。
その一番最初の日、正月。
そこの余白には、ハートで囲まれた枠の中にピンク色の字でこう書かれていた。

“遠野君と初詣♪”

……見れば見るほど、恥ずかしくなってくる。
文章の最後に“♪”なんて使っていることが、その恥ずかしさに余計に拍車をかけているようだった。
だけど、それ以上に楽しみで仕方がなかった。
今日、この日を遠野君と過ごせなかったのは残念だったけれど……いや、今日一緒にいられなかった分、更にお正月にかける思いは高まっていた。
一週間後が今から待ち遠しくてたまらない。
「……っと、いつの間にか、もうこんな時間ですか」
枕元の目覚まし時計に目を向けてみれば、時刻はそろそろ深夜を迎えようとしていた。
さて、どうやら今日もお勤めの時間がやってきたようだ。
ベッドから跳ね起き、クローゼットの中から愛用の漆黒の法衣を手に取る。
それを羽織りながら、私は窓際へと歩みを進めた。
今日も夜空に月が映える。
雲に遮られることなく、冷たい月光は夜の街を突き刺すように降り注ぐ。
何気なく、それこそ何かに気付いた訳でも何でもなく、私はただなんとなく視線を下界へと下ろした。
「え……」
だから、一瞬何が見えたのか分からなかった――いや、心が理解してくれなかった。
だが、現実というものはいつも非情且つ無情。
それが夢幻でないことを知らしめるかのように、眩い月明かりは対象を明確に照らし出し、夜の暗がりに紛れることを許さなかった。
視界にはっきりと映し出される一組の男女。
短く切り揃えられた金髪をなびかせながら、楽しそうにすぐ側の男性に抱きつく女。
そんな彼女に戸惑う様子を見せながらも、決して嫌がることなく為されるがままの男性。
そのどちらもが、私の見知った人物だった。
「……遠野……君」
その名を口にする。
刹那、心に芽生える感情。
これは……何だろう?
恋慕?
嫉妬?
慈愛?
憎悪?
それとも――
「……遠野君」
もう一度、愛しい彼の名を呟く。
瞬間、自分の中で何かが爆ぜた。
あぁ、今まで私は何に遠慮をしていたんだろう。
私は、遠野君のことが好き、大好き。
遠野君も、私のことが好き。
なら、私が遠慮なんてする必要ないじゃないか。
そうよ。
遠野君は私だけのモノ。
他の誰かになんて、髪の毛一本くれてやるものか。
踵を返し、窓際から玄関へと向かう。
ついさっき、衝撃的な場面を目撃してしまったにもかかわらず、心を満たす感情は平静そのもの。
自分でも不思議なくらい穏やかで、そこにはさざ波一つ立ってはいない。
靴を履き、ドアノブを捻る。

――バキッ!

と、その瞬間、突如として手元で上がった鈍い破砕音。
その音源へと目を向けてみれば、そこには根本から捻り切られたドアノブを握る、私の右手があった。
あれ?
この家のドアノブ、こんなに脆かったっけ?
まぁ、いいや。
こんなもの、別にどうでもいいし。
今となっては、ただの鉄製の円柱へと成り果てたそれを後ろ手に放り捨て、私は目の前の扉を蹴り飛ばした。

――バキャッ!! ドガッ!

勢い良く吹き飛んだドアは、直ぐ先にある縁にぶつかって轟音を上げる。
あ、しまった。
こんな夜遅くに、少し騒がしかったかもしれない。
……まぁ、それもどうでもいいか。
今は早く、彼に会いに行かないと。
「待っててね、遠野君……」
そう呟き、私は地を踏む足に力を込めた。

月夜 2010年07月04日 (日) 03時01分(235)
題名:募る想い、病んだ愛、閉ざされし未来(第二章)

「あちゃ〜、ついさっきまで晴れてたってのに、なんで急に降ってくるんだよ」
時を経る毎に勢いを増してゆく雨に対して愚痴を溢しながら、俺は片手を傘代わりに、小走りで夜の街を駆けていた。
先ほどまで、降り注ぐ月光により仄明るかった街も、いつしか暗雲に月明かりを遮られ、今となっては定間隔置きに立てられた街灯の無機質な光のみが光源だ。
人通りの無い夜道に響くのは、駆ける足が生み出す靴音と、アスファルトを打ち付ける雨音のみ。

――カツッ。

と、そんな中に突如として現れた誰かの気配。
その音源は、走る俺のすぐ前方、曲がり角にそびえる電柱の陰からだった。
「……」
反射的に足を止め、その場で軽く身構える。
右手をズボンのポケットへと伸ばし、手に馴染む守り刀の柄を掴む。
その間、もう片方の手は何気なく目元へと導かれ、掛けられている眼鏡――魔眼殺しを取り外した。
非日常を生き抜いてきた本能が、全身の細胞に臨戦体勢を促す。
そんな俺の見ている前で、曲がり角から現れたのは……
「……え?」
よく見知った人物の姿だった。
「こんばんは、遠野君」
そう言って、漆黒の法衣を身に纏った少女――シエルは、笑顔で挨拶を述べた。
「せ、先輩!?」
その姿を確認するなり、俺は慌てて戦闘体勢をといた。
外していた眼鏡を掛け直し、短刀を握り締めていた手から力を抜く。
「ど、どうしてここに?」
「どうして? 変なことを聞きますね。私がいつも、この時間に町を巡回しているのは、遠野君もご存知でしょう。むしろ、それはこちらの質問です」
そこで一旦言葉を区切ると、先輩はこちらへと歩み寄り、改めて口を開いた。
「遠野君こそ、どうしてここに? 今日は、家で家族の皆と一緒に過ごしているのではなかったのですか?」
「あ、え、えっと……それは……」
返す言葉に困り、口ごもってしまう。
クリスマスは一緒に過ごそうと彼女に言われて、自分からその提案を退けたというのにもかかわらず、アルクェイドと一緒にいたなんてことがバレたら、どうなることか分からない。
当初は、確かに家で皆でクリスマスパーティーの予定だったのだ。
これに関しては、嘘偽りなんてこれっぽっちもない。
けれど、当日の朝になって、秋葉に外せない急用が出来てしまったのだ。
ああ見えても、遠野家当主の肩書きを背負っている彼女だ。
詳しくは知らないが、色々と忙しいのだろう。
で、急に予定が空いてしまったので、先輩に連絡しようとしていたその矢先、いきなりやってきたアルクェイドに外へと連れ出され、今に至るという訳だ。
……だけど、今更こんなことを言ったって、ただの言い訳にしかならない。
かといって、だんまりを決め込んでいても何も解決しないし、無言の時が経てば経つほど気まずくなっていく。
早く何とかしないと……
「ち、ちょっと酒を飲まされ過ぎたから、酔い醒ましに夜道を歩いてたんだよ」
なんてことを考えていたら、焦りからかついそんなことを口走ってしまっている自分に気付いた。
「……そうですか」
そんな俺を、先輩はただただ見つめるのみ。
その眼差しに凍てつく程の冷たさを感じたのは、果たして俺の気のせいなのだろうか。
「……ところで、遠野君」
冷えた視線で俺を見据えたまま、先輩はゆっくりと口を開いた。
「お正月ノ約束は、忘れテマせんヨネ?」

――え……?

俺のことをじっと見つめる先輩。
その表情は、笑顔だった。
とても優しそうで、包容力に満ちた暖かい微笑み。
そのはずなのに……何かが違った。
いつもと同じはずの笑顔なのに、何かが決定的に違う。
背筋を冷や汗が伝う。
全身が総毛立つ。
頭の中が真っ白になり、思考が停止す――
「遠野君? どうしたんですか?」
「えっ……」
普段通りに戻った彼女の声に、俺の意識は我を取り戻した。
すぐ目の前にある彼女の怪訝そうな顔。
そこに、先ほど感じた妙な違和感は既になかった。
「あ、い、いや……何でもない……」
俺は小さく頭を振りながら、そう答えた。
気のせいだ。
自分自身に言い聞かせる。
「それで、どうなんです?」
「え? どうって?」
「お正月の話ですよ。ちゃんと……私と過ごしてくれますよね……?」
「あ……」
またしても、俺は返す言葉に詰まった。
確かに、正月は先輩と約束していた。
だが、パーティーの予定がキャンセルとなってしまった今朝、秋葉が言ったのだ。

――残念ですが、今回のパーティーは正月まで延期ですね。

さも当然のことのような口振りだった。
もちろん、その日は先輩と過ごすことになっていることくらい、ちゃんと覚えていた。
だけど、約束としては先輩より秋葉たちの方が前々からのものだったし……などということを考えていた時、不意に「それで良いですよね?」と問い掛けてきた秋葉に対して、反射的に頷いてしまったのだ。
……我ながら、優柔不断だと常々思う。
だけど、ここで頷いてしまうわけにはいかない。
形はどうあれ、自分でこうすると決めてしまった以上、その行為にけじめはつけなければ。
「……えっと、先輩……悪いんだけど、正月はちょっと外せない用事が入っちゃって……家から出られそうにないんだ……」
「……そうですか」
そう、悲しげな声で呟くと、先輩は一歩こちらへ歩み寄ってきた。
何かと思い、知らず知らずの内に背けていた視線を前に戻した……その瞬間だった。
「んっ!?」
唇に触れる柔らかい感触。
いや、それは触れるなんていう生易しい表現では、到底言い表せるものではなかった。
何もかもを奪い尽くすかのような、乱暴で一方的な口付け。
「――っ!」
反射的に、突き飛ばすようにして俺は先輩の体を押し退けた。
「せ、先輩!? 一体何を……」
「何をって……キスですよ」
そう答える先輩の顔は、無表情だった。
まるで、能面を張り付けたかのような無機質且つ無感動極まりない表情。
「ど、どうして、いきなりこんなことを……」
「どうして? 好きな人とキスをしたいって思うのは、至極当然なことでしょう?」
そう答えながら、先輩は俺の方へと距離を詰める。
表情が無なら、その眼差しもまた無機的。
「遠野君も、私のこと好きだよね?」
体に穴が空いてしまうんじゃないかと思うくらい、冷たい目でこちらを抉るように見据える先輩。
形式こそ問い掛けだったが、それは言外に絶対的な強制力を含んでいた。
「あ……あぁ……」
気圧されるまま、首を縦に振る。
自分でも気付かない内に、俺の足は後退っていた。
「だったら、どうして私だけを見てくれないの? どうして他の女と一緒に楽しそうにするの?」
そんな俺に詰め寄りながら、先輩は酷く悲しそうな、怒っているような……しかし、それでいて何も感じていないような冷徹な声色で、淡々と言葉を紡いでゆく。
「……ウソつき」
「っ――!?」
身体中が凍り付いた――そんな錯覚を覚えるくらい、その言葉は凍てついていた。
「遠野君は私のことしか見ちゃだめなの。私だけを好きでいなきゃダメなの。私以外ノ女と口を利イちゃダメなノ」
「せんぱ、い……?」

――ドン!

背に伝わる固い衝撃。
これ以上、退路はない。
依然として歩みを止めない先輩との距離は、みるみる内に縮まってゆく。
その手に握られているのは、彼女が常に携帯している武装。
「私ノコトを大事ニシテくれナイ遠野君ナンテ――」
すぐ眼前にて振り上げられる刃。
大きく見開かれたまま、こちらを見つめる輝きの失せた瞳。
恐怖を覚えている暇すらなかった。
「――イラナイ」

――グチャッ。

そんな肉の潰れる鈍い音を最後に、俺の意識は消えた。

月夜 2010年07月04日 (日) 03時02分(236)
題名:募る想い、病んだ愛、閉ざされし未来(第三章)

「……」
無言のまま、地を見下ろすシエル。
その先には、倒れ伏したまま動かぬ一体の亡骸が。
その体を中心に広がる血は、雨水に混じり下方へと流れてゆく。
周囲を満たすのは、アスファルトを打つ激しい雨音のみ。

――パシャッ。

そんな中、不意に上がった何かの落ちる音。
そちらへと向けた視界に映し出されたのは、呆然とその場に立ち尽くす一人の女性の姿だった。
冷たい街灯の光を浴び、艶やかな金色の髪が妖しく光輝く。
その足下では、開きっ放しにされたまま地に落とされた傘が、守るべき持ち手を見つけられぬまま雨を弾き続けていた。
「し……き……?」
ぽつりと呟かれる愛しき人の名を呼ぶ声は、雨音にすらかき消されてしまいそうな程に酷く弱々しかった。
焦点の合わない瞳に映るのは、明瞭な輪郭を持ち得ないぼやけた像。
それは果たして、見開かれた瞳を濡らす雨のせいか、それともその瞳から涙が零れているからなのか。
「あら、貴女ですか。アルクェイド。私の遠野君に、何か用ですか?」
「――っ!!」
聞き慣れた人物の声に、彼女の意識が我に返る。
次の瞬間には、もう体が動いていた。

――ガスッ!

肉を打つ鈍い音を伴い、シエルの体が凄まじい勢いで宙を駆ける。

――バキィッ!

木の柵に激突し、砕け散った木片の中に沈むシエル。
「志貴! 志貴っ!」
そんな彼女には目もくれず、アルクェイドは倒れ伏したまま動かぬ彼の傍らに跪いた。
「志貴っ……!?」
その体を仰向けにしたところで、彼女は気付いてしまった。
瞬き一つすることなく、見開かれたままの瞳孔。
その黒き瞳は何物をも捉えておらず、雨粒を受けても微動だにすることはなかった。
「志貴っ……どうしてっ……!」
嗚咽を押し殺しながら、腕に抱えたその身をきつく抱き締める。
溢れる涙は止めどなく、雨に混じって頬を伝い落ちては、アスファルトにぶつかって砕け散る。
「遠野君は……私だけのものです」
「っ!?」
声のした方へと視線を向ける。
そこに佇むのは、バラバラの木片の上に立つシエルの姿。
こちらを見つめる瞳に輝きはなく、死人のそれとまるで変わらない。
「あんた……自分が何したか、わかってるんでしょうね……!」
目尻を釣り上げ、今にも殺さんばかりの壮絶な殺気を放ちながらシエルを睨み付ける。
「えぇ、もちろんです」
一般人なら、その気迫だけで気を失ってしまいそうな凄まじい殺意の奔流にも、彼女はまるで臆することなく首を縦に振った。
「遠野君を助けてあげたんです」
「……何ですって?」
「遠野君は迷惑がっていましたよ。むやみやたらに言い寄ってくる貴女や、何かにつけて自分を束縛しようとしてくる妹さんのことを。だから、私がそれから救ってあげたんです」
「ふざけたことを……!」
「あら、ふざけてなんていませんよ。それに、遠野君は私のことが好きだったんです。私のことだけを見ていたかったけど、貴女みたいな鬱陶しい女のせいで、それができなかった。だから、私が遠野君をその苦しみから解放してあげたんです」
「……」
「わかりますか? 私が彼を殺したことで、彼は私のものになった。そして、彼を殺した罪によって、私は彼のものになった。だから……」
「……黙りなさい」
「……」
アルクェイドの呟くような一言に、シエルは口をつぐんだ。
だが、それは彼女の威圧感に気圧されたからなどではなく、ただ黙れと言われたから黙った……ただそれだけだった。
そのことは、依然として涼しげなままのシエルの表情に、ありありと示されている。
「志貴……」
再び、腕の中の彼へと目を向ける。
その脳裏にて蘇るのは、志貴と過ごした楽しい思い出たち。
浮かんでは消え、また浮かび上がるなり沈み込む、フラッシュバックのように駆け抜ける走馬灯の数々。
その最後、暗転した光景の奥から沸き上がってくるのは、彼への想いとシエルに向ける憎悪の念。
しかし、その最奥には、それ以上に大きな負の感情があった。
シエルの言ったあの言葉……彼は私のものだという発言に対する強い反感。
それは、嫉妬心混じりの深い独占欲だ。
あんな女に志貴は渡さない。
志貴は私だけのものだ。
未来永劫、志貴は私だけのもの。
私だって、志貴だけのもの。
だから――
「……」
気付いた時、彼女はもう既に行動を終えていた。
口の中いっぱいに広がる甘く甘美な味。
永い間……それこそ、永久にも近い時の間、美味と知りながらも決して口にしてこなかった味。
それが今、彼女の口全体に満ち溢れていた。
脳髄をも犯さんばかりに、その全身を侵食してゆく甘い――の味。
「……フ、フフフ……」
自然、口から漏れる笑い声。
何故、彼女は笑っているのか。
彼女自身、わからなかった。
だが、すぐに理解する。
あぁ、そうか。
楽しいから、私は笑っているのか、と。
だから、彼女は嘲った。
「フフッ……アハハハハハハハハハハッ!!」
身体中が軽くなるのを感じた。
この身を縛っていた、多種多様な不可視の鎖たちが、音を立てることなく、だが豪快に崩れ落ちてゆく。
今まで抑制されていた欲求が、激しい衝動となって込み上げてくる。
そして、彼女は気付いてしまう。
そうだ。
彼を私だけのものにしたいんなら、何よりも一番簡単な方法があるじゃないか。
彼に近付く女を……あぁ、そんな風に選ぶのは面倒だ。
彼に近付く人間全て、強いてはこの世に存在する命あるもの全てを、この手で滅ぼしてしまえばいいんだ。
そうすれば、彼は名実共に私だけのもの。
だって、私以外の誰もが、彼に近付くことは疎か、彼という存在を認識することさえ出来ないのだから。
至る結論。
そのあまりの退廃性を、今の彼女では欠片たりとて悟れなかった。

――ピシャッ。

雨を弾く足音。
その音を聞いて、初めて知ったかのように彼女はそちらへと視線を向けた。
「あら、シエルじゃない。まだ居たんだ?」
「えぇ、貴女を消すことが私の、そして遠野君の為ですから」
そう言って歩みを進めるシエルの両手には、数本の黒鍵が握られていた。
「アハハッ、私を消す? 貴女も随分と偉くなったものねぇ。そんな大口を叩くくらいなんだから、私の遊び相手くらいは務まるんでしょうね?」
「黙れ、魔王。堕ちた真祖に生きる価値はない。今、ここで私が殺す」
「アハハハハハッ! そうこなくっちゃねぇ! いいわ、遊んであげる。八つ裂きにしてあげるから、簡単に死なないでよ?」
正気を失った紅き瞳に映る、その全てが破壊殺戮の対象。
永き暝りより今目覚めしは、魔王、アルクェイド=ブリュンスタッド。
終わらない悪夢が、始まる……。

月夜 2010年07月04日 (日) 03時03分(237)
題名:募る想い、病んだ愛、閉ざされし未来(あとがき)






















ぬわ―――――っ!!














みなさん、聖なる夜をいかがお過ごしでしょうか。









気持ちいつでもロンリーナイツ








事実いつでもロンリーナイツ








実際そろそろロリもありかな


なんて心が揺れる今日この頃な私、月夜です。


私がお姉さんスキーであることくらい、私の性癖暴露隊員の皆さんは既にご存知かと思います。

まぁ、実際そうです。

私、気の強い勝ち気なお姉さんが大好物です。

今も昔も、その気持ちは変わりませんよ。

ロリっ娘パラダイスこと東方の中でも、ロリとは程遠いゆゆ様スキーな子ですから。

ただね〜。

ロリっ娘にも色々といるわけですよ。
こう、心を巧みに揺るがしてくる策士がいるんですよ。
母性本能ならぬ父性本能的なものを刺激してくるような娘がいるわけなんですよー。

あ、予め断っておきますけど、アレな方向じゃないですよ?
性的な方向じゃないですよ?

守ってあげたくなるような、慈愛的な方向性ですからね。

……え? あわよくば的なことは考えていないのか?

…………。

……………………。

………………………………ちょっぴりは……。





















すぐ連れて逝きますんで・・・
     /⌒\ っ   /\
    /'⌒'ヽ \ っ/\  |
    (●.●) )/  |: |  
    >冊/  ./    |: /
   /⌒   ミミ \   〆
   /   / |::|λ|    |
   |√7ミ   |::|  ト、  |
   |:/    V_ハ   |
  /| i         | ∧|∧
   и .i      N /⌒ ヽ) 
    λヘ、| i .NV  |  | |
      V\W   (  ∪
              || |
              ∪∪






















な ぜ 殺 た し










できれば、死んで当然とか言わないでやってくだしあ(´・ω・`)



さてさて、今回はヤンデレクリスマスということで執筆させていただきましたが、いかがなものでしたでしょうか。

正直、あそこまで人外混ざってると、純粋にヤンデレってなかなか難しい気がががが。

志貴を誠っぽくってことだったんですが、志貴って基本「ざまぁww」なイメージないんで、そこまでキャラ崩壊させられなかった私。

まぁ、一応ヤンデレというハードルだけならクリアしてるような気がするので、勘弁してくだしあ。

今回、タイトル的にもちょっと考えてみました。

シエルの募る想いを第一章に

シエルの病んだ愛を第二章に

そして、アルク暴走により閉ざされる未来を第三章に

って感じでね。

まぁ、正直アルクが暴走しただけで完全に未来が閉ざされる訳ではないんだけど、そこら辺のツッコミはご勘弁くだされー。

ではでは、今回もこのあたりで失礼いたします。

この作品に対する感想からゴルァ!までは、下の「小説感想アンケート板」または「小説感想掲示板」、「月夜に吠えろ」の方までどぞよろしく。

クリスマス、お正月作品もそろそろ執筆終了間際。

死なない程度にてやや〜♪していきますよ〜。

ここまでは、最近何故かパパスの断末魔の悲鳴が頭から離れない病んだ子、月夜がお送りしました。

月夜 2010年07月04日 (日) 03時06分(238)


Number
Pass

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