ごみを拾えば「モーニング娘。」のサイン入り感謝状がもらえます――。芸能プロダクションなどが東京都渋谷区と協力して展開している「美化推進運動」に、予想を大幅に超える若者や子供が参加している。ボランティア精神をサインで釣るなんて、と複雑な反応がある一方で、現代っ子に奉仕を体験させるきっかけになるからいいじゃない、という声も多い。
　
　国立代々木競技場内の特設会場で７月２６日から今月２６日まで開かれている「ＨＥＬＬＯ！渋谷の夏祭り」。「モーニング娘。」のオリジナル商品やＴシャツ、ＣＤを販売するコーナーに交じって「渋谷ＣＬＥＡＮ　ＵＰ大作戦」の看板がかかったテントが設けられた。袋をもらい、会場周辺で缶、瓶、ペットボトルを拾ってくると、メンバーのサインが入った、はがき大の感謝状がもらえる。
　
　大手広告会社や芸能プロダクションなどでつくる夏祭りの実行委員会が、渋谷周辺でごみの投げ捨てや落書きが多いことを知り、ごみ拾いの企画を加えた。１カ月の期間中、３万枚の感謝状を用意したが、始めて６日ほどで１万枚以上がなくなり、２万枚を追加印刷した。今月中旬までに、のべ約２万人が参加した。渋谷の街は確かにきれいになり、代々木公園の関係者らからは「助かる」と好評だという。
　袋を手にまじめにごみを探す子が大半だ。ただ、近くの公園内の売店裏のごみ置き場から、缶などをちゃっかり拝借して袋に入れ、戻ってくる若者もいる。同級生と２人で来た中学生の男の子は「ここでしかサインがもらえないから、自分が飲んだボトルも袋に入れちゃえ」。
　後援している区の職員らからは、こんな声も聞こえる。「いかにも今の子たちらしいが、サイン目当てにごみを拾うのは、ボランティア精神とは少しずれていることも知って欲しいのだけれど」
　実行委メンバーで企画を担当した湯浅隆一さんによると、感謝状をあげることにしたのは、商品にしたくなかったからだという。「真のボランティア精神は親が子に語ってやるべきもの。参加を契機に親子が会話すれば相乗効果も生まれる」と話している。