「ねえ。ヒュー君は将来何になりたいの？」
「俺は街に出てバイクの整備士。翼は？」
「あたしはだんぜんパイロット。この町の飛行場でね！」
「じゃあそのうち会えなくなるな」
「…………やだよ」
「翼？」
「あたしそんなの絶対にやだっ！」



ああ，そんなこともあったっけ。
あたしったらギャーギャーわめいて。
あの時のヒュー君の顔は今でも忘れられない。
それと，14才の夏だったかな？


「俺，バイクの整備士あきらめようと思う」
「そんな。嘘でしょ!?」
「他の機械工学系の仕事を目指す」
「他って何よ。他って」
「………飛行機の整備士」
「な，なんで！」
「バイクの整備士になろうとしたらこの町を出ないといけない。
　翼とも別れることになる。でも，飛行機の整備士なら翼と」
「バカっ！」
「えっ!?」
「あたしなんかの為にどうして自分の夢を捨てたりするの？
　そんなの全然うれしくないんだからね！」
「……ごめん」
「離れていても飛んで会いにいくよ。あたしはパイロットなんだからね」









そう，離れていてもいつでも会いに行けるんだから。今日みたいに。
さて，そろそろ電話するか。

「もしもしー，あたしだよー」
「今どこにいる？」
「すぐ近く。北の方」
「んー………あ，見える見える」
「もうすぐ着陸だけど，その前に。よく見ててよ」

………………………………………………

「うまくいったかな？」
「ああ。まったく，空にラクガキするなよ」
「まあまあ，照れない照れない」



大空のキャンパスにあたしの飛行機で愛を描く。
白くて大きなハートの飛行機雲を受けとめて！




















【コメント】
ええと，なんでしょうね？回想する翼の話。
個人的に，この２人に共通するテーマは「将来の夢」です。