「またここにいたんだ」
「あ,ベルちゃん」
「探したわよ」
「ごめんごめん」
「で?今日もそうやって一日中歌ってるの?」
「うん,そのつもり」
「もう・・・・」
セシル君は私のボーイフレンド。告白は彼の方からで,
大して考えもせずにOKした。でも,つきあっても何もしていない。
せめてデートに誘うくらいはしてほしい。
「ねえ,セシル君は歌っている時どんな気持ちになるの?」
「うーん・・・例えば,絵を描くのが好きで,絵を描いている時が
一番幸せっていう人,いるよね。そんな気持ちかな」
「わかったような,わからないような」
「それに,歌は僕の自信でもあるんだ」
「どういうこと?」
「僕は絵が苦手だけど,その分音楽は上手いと思ってる。
だから絵が苦手なのが苦にならない」
「じゃあその帽子と蝶ネクタイは?」
「昔見たサーカスのジャグラーでこういう格好をした人がいたんだ。
白シャツに黒ズボン,赤い蝶ネクタイに黒い帽子。
それがとてもかっこよく見えた。だから歌うときはいつもこの格好なんだ。
いつかあんな風に,大勢の前に出たいと思ってる」
「そうだったんだ・・・初めて聞いた」
「ベルちゃんは何になりたいの?」
「私は・・・・ペット関係の仕事かな」
「がんばって。ベルちゃんならできる」
「・・・・明日,家に行ってもいいかな?」
「うん,いいよ」
「こんにちは」
「いらっしゃい,ベルちゃん」
「はい,これ。ケーキ焼いてきたの」
「ありがとう。お菓子好きなんだ」
「一緒に食べましょ」
私はまだ将来の夢なんて考えていないから,セシル君がとても立派に見えて,
その夢を応援してあげたいと思った。
セシル君は夢に向かってくれればいい。
恋人らしい事は私が積極的にしてあげなくちゃ。
人の為に何かをするのってすごく気持ちがいい。
それが好きな人なら一層・・・・・
<コメント>
いろはが稼動し、自分も活動せねばと
思い立ったは良いのですが、書いたのはセシベル。
実は「いろはでベルが復活する」と聞き、
あわててセシベル書いたはいいが、実際には復活しなかった。
とまあ、そういう訳なのです。
セシルの語り部分は実際に自分が演説したことを思い出しながら
書きましたが、恐ろしく長い。
自分の小説では珍しい、2行以上のセリフになりました。
今一歩、何か足りないような気はしています。
ベルの性格の掴みにくさをあらためて実感しました。