今夜も窓を開けておく。来るかもしれないアイツのために
バサッ バサッ
「久しぶりだな」
「来てくれたんだね,ユーリ」
忙しいはずなのによく来てくれる。
「上がらせてもらうぞ」
「こら。ちゃんと靴脱ぎなさい」
言われてから渋々靴を脱ぐ。靴を脱いで部屋に入るという習慣が
この男にはない。靴のまま入られて畳をボロボロにされたこともあった。
「ほら,飲も。ちゃんと用意しておいたよ」
「日本酒よりワインが好きだと言ったはずだが」
「あたしは洋酒は飲まないんだよ」
こんなワガママも言われるけれど,ユーリと一杯やるのは楽しい。
愛想は無いけれど,しっとりとしたイイ男。
「この酒おいしいだろう?」
「………………」
「バンドはうまくいっているみたいだね」
「そうだな」
「最近何かいいことあった?」
「それはお前だろう。さっきからニコニコして。何が嬉しいんだ?」
(鈍い………)
こんなにチグハグなのに楽しくて仕方がない。
「さて,もう帰らせてもらおう」
「まだいいだろう?」
「婦人の家に長居するのは苦手でな」
「待って!」
………どう言えばいいんだろう。言葉に詰まる。
「か,帰らないで………」
「そういうわけにもいかないのでな」
「でも……」
「また月の美しい夜に来る。月を見ながら一緒に飲もう。それでいいな」
「うん」
「次はお前にそんな顔をさせない」
「えっ!?」
バサッ バサッ
「おやすみも言わないで帰るなんて。あいつらしいわ フフッ」
月の綺麗な晩は眠れない。あいつが来てくれるような気がするから
【コメント】
この2人,誰がどう見ても共通点なんて無いのに,好きです。
しかし月夜が似合う。これだけは言えます。
これは後から知ったのですが,ドイツの吸血鬼は招き入れられないと家に入らないとか。
入ってる。思いっきり自分から入ってる!