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[53] 天空の騎士 青蓮寺住職 - 2006/02/06(月) 00:46 -

ZAC2051年、中央大陸は長き戦乱の時を終えようとしていた。既に共和国軍は帝国首都ガニメデ市を陥落させており、ゼネバス皇帝の居城であったガニメデ城にはヘリック共和国の青い国旗が翻っていた。
ゼネバス皇帝は残された全将兵を率いてウラニクス湾とダラス海の間に浮かぶ要塞島、ニカイドス島に立て篭り、ヘリック大統領の再三の降伏勧告に沈黙をもって答えた。ヘリックは最終作戦決行の決断を下し、共和国全軍に通達した。

ウラニクス市郊外の野戦飛行場。ニカイドス島を空爆するためにいくつか造られた急ごしらえの簡素な前線飛行場である。それでもコンクリートで作られた滑走路は3000mの長い滑走路を2本擁しており、駐機場も広い。
兵員宿舎、管制塔、格納庫など軍用飛行場としては一通り揃っている。無いのは酒と女ぐらいである。まあ、そんなものは市内に行って買いに行けばそれで済むことだが。
「クルーガ、出撃だ!起きろ起きろ」
突然、上官であるグラハム大尉の怒鳴り声で起こされた。
「まだ夜明け前の3時ですよ?」
「大統領命令だ。第32、36、39航空群、つまりうちの隊にも出撃命令が下った。夜明け前にニカイドス島を空爆するから護衛につけだとさ」
「いよいよ、総攻撃開始なのですか?」
「そうだ。未明時に大規模な上陸作戦を展開する。その前に俺たちが先陣を切る。わかったなら早く着替えろ。30分以内に出撃準備を整えろと航空団司令のお達しだ」
そう言うとグラハム大尉は急ぎ足でクルーガの部屋を出た。おそらく他の隊員の何人かを叩き起こしに行くのだろう。
クルーガは急いでフライトスーツに着替え、ヘルメットを被り、決まっている集合場所の駐機場に駆けつけた。駐機場には隊員30人以上集まっていた。後ろには丹念に整備された新鋭機レイノスが作業員の手でしっかりと並べられている。
「よし、クルーガが来た。あと二人、ブラウンとフィリップスだけか」
やがて、ブラウン中尉とフィリップス少尉が急ぎ足でやって来た。
「遅れて申しわけございません」
遅れた二人は揃ってグラハムに向かって口を開く。
「そんなことはいい。これで全員揃ったな。よし、搭乗開始!」
グラハムの号令の下、全員がレイノスに搭乗する。そのうちの一人、クルーガはこれが三度目の出撃であった。

「管制塔へ。青の一番機、クルーガ出撃する!」
管制官が鸚鵡返しに答える。
「クルーガへ、管制塔了解。いつでも飛んでくれ。グッドラック!」
クルーガは一年前に士官学校を卒業し、少尉に任官されて第39航空群に配属されたばかりの若き俊英であった。
攻撃的な性格から士官学校の同期生たちから「クレイジーホース」と呼ばれた名物男で、その勇猛果敢さは高く評価されている反面、同期生たちを心配させていた。
クルーガが隊の先陣を切って夜明け前の夜空を飛び、それを追うように僚機が次々と滑走路を離れて飛び立つ。目的地はニカイドス島上空であり、空爆任務を受け持つサラマンダーの護衛が任務である。帝国軍は追いつめられたとは言え、まだ要撃機を飛ばせるぐらいの戦力はあるはずだ。爆装したサラマンダーは運動性が悪く帝国空軍機のレドラーに簡単に撃墜されるであろう。



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