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本来アンチである自分があえてジェネシスの外伝を書いてみる。
ユウキ 主人公で現在はフリーのゾイド乗り。ディガルドに自分の住んでた街を占領され、過酷な強制労働で両親を失い、弟はディガルドの兵士となった。両親はこっそりユウキを逃がし、ユウキは自分専用のセイバータイガーを駆り、街を逃げ出した。ゾイド乗りとしての腕はもちろんのこと、ゾイドの整備等メカニックにも精通。セイバータイガーユウキ仕様ユウキ専用の白いセイバータイガー。リーオのブレードを2本装備している為に重量が増加し、最高速度は210km/hまで低下。
追われている。相手は分かっていた。そう、ディガルド軍だ。リーオの武器を持っている、それだけで危険視される理由になる。彼は一年以上も前からこのリーオの武器をセイバータイガーに積んでいたが、彼の存在が危険視されるようになったのはつい最近、どこかの天然の要塞に元キダ藩士達を中心とした反ディガルド勢力が集結し、討伐軍を結成したという噂を聞いてからだった。自分もディガルドを憎んでいたが、彼らの事も少しだけ恨めしく思っていたのも事実だった。後ろから追ってくるのは銀色の小型ゾイド、バイオラプターだ。数にして2機。彼の腕と愛機ならばこれらを仕留めるのは容易いことだった。だがここは見晴らしの良い平地。もしバイオラプターの残骸がここに残るようならば偵察部隊に発見され、少なくともリーオの武器を持ったゾイドが周辺に居るという事実が知れてしまう。今の彼にとってそれは良しとしなかった。殺るならば見つかりにくい場所、森林や遺跡の中などが望ましい。だが、そのようなものはこの辺りには無い。ここは平地のど真ん中だ。「まだ追ってくるのか・・・」逃げ続けて1時間、このしつこさは未だかつて無かった。突然、彼の目にとあるものが留まった。いくつもの岩が積み重なれていた。「墓?それにしては大きいな。ゾイドの墓か?」だがユウキにはそんな事よりも、それを利用することを優先していた。岩の前でセイバーに停止をかける。追ってきたラプター達も立ち止まった。「コレヨリハイジョスル」コンピュータのような声のディガルド兵の合図と共にラプターは一斉にヘルファイアを吹きかける。避けてもいいのだが、その岩を破壊されては困る。彼はセイバーの肩に装備されたリーオブレードを突如抜刀しヘルファイアを切り裂いた。そして、飛びかかってくるラプターを一機、すれ違いざまに真っ二つに切り裂いた。間髪入れず、もう一機のラプターへ突撃。あまりに複雑な動きに敵は全く対処できていなかった。そしてもう一機も葬り去った。だがこれで終わりではない。ラプターの残骸を岩に寄せ、岩に向けてセイバーの火器を一斉に放った。崩れ落ちた岩はラプターの残骸を覆い尽くしたのであった。
追撃してきたラプター達を撃退してから半日ほどセイバーを走らせ、ようやく平地を抜けて街が見えてきた。山岳地帯に囲まれたゼ・ルフトの街である。ゼ・ルフトには以前はかなりの規模のディガルド軍が駐屯し占領していたのだが、指揮官ゲオルグを失ったゼ・ルフトのディガルド基地では指揮系統が崩れ、まともに機能していない状態であった。戦力の大半もゲオルグのバイオトリケラとともに失われており、僅かな部隊が残され、この街は完全ではないにせよディガルドから開放されていると言ってもいい状態だった。ユウキが街の入り口まで来てもディガルドの見張りは居ない。ユウキはセイバーで街のゲートをくぐった。彼は少しは行ったところにいた街の警備員のような男に声を掛けられた。「ゼ・ルフトの街へようこそ。大型ゾイドを連れているようだけど、何かご用件で?」「ああ、少し補給と休息をね」ユウキは警備員に誘導され、ゾイド格納庫へセイバータイガーを収容してもらう。ディガルドに占領されているとは思えない程、街の住民は明るく、子供達は広場を駆けめぐっていた。既にゾイド乗りとしての教育や強制労働などが行われている様子はなかった。少し気になるのは、ここから見えるジェネレーターの周辺にバイオラプターが数機いる程度だが、パイロットが乗っている様子はなく、ただ立っているだけのようであった。ユウキはとりあえず街の格納庫にあるゾイド整備場でレッゲルの補給をした。レッゲルとはゾイドの燃料とも言える液体でジェネレーターから湧き出ている。レッゲルにはゾイドコアを生存させるために必要な原始海水と同じ成分やその他養分などが含まれており、このレッゲルがないとゾイドは動けなくなってしまう。補給を済ませたユウキはとりあえず今晩の宿をとることにした。ユウキが宿のベッドの上でくつろいでいると、ドアをノックする音が聞こえた。「我々はゼルフト守備隊員の者です。あのリーオのブレードを装備したセイバータイガーのパイロットの方ですね?折り入って少しお願いが御座います。」ユウキは少し考えた。リーオの武器を装備した大型ゾイドのパイロットだと言うことが相手に分かっているのなら、それを排除するためにやってきた、一般市民を装ったディガルドの人間かもしれないということは十分にあり得ることである。そうでなくても、パイロットを殺し、セイバータイガーを手に入れて高値で売り飛ばす賊である可能性もある。「怪しいな。」ユウキは軽く返事をした。すると今度は少女の声がした。「あの、私たちはあなたに危害を与える者ではありません。どうしても私たちに協力して欲しいのです。」さらに、今度は老人の声がした。「ゼルフト町長であります・・・・」確かにその声は、街の集会場に居た町長の声だった。「分かった。中に入れよう。今ドアを開ける。」意を決し、ユウキはドアを開けた。
そこに立っていたのは4人自分と同じ20代前半の男、赤い髪の少女、二人の老人。その内一人はここの町長、そしてもう一人は知らない老人。「ゼ・ルフト守備隊隊長のレンです。」若い男が自己紹介をした。続いて「私はムサと言います。この子は孫のルネです。」町長ではない方の老人が自己紹介をすると、少女は軽くお辞儀をする。「で、用件とは?」ユウキはいきなり本題に入ろうとした。「実は・・・」町長は説明を始めた。彼の話はこうだ。ディガルドは今、指揮官ゲオルグを失った挙げ句、多くの戦力がそれとともに失われ、また他の戦力は本国からの命令でトラフへと派遣された。それによりゼ・ルフトの戦力はバイオラプターが7機程になってしまい、支配もままならない状況となったという。そこでこの機に完全にこの街からディガルドを撃退するというのが彼らの目的だという。しかし、守備隊の戦力はそれ以上に貧弱であった。先日の戦いでモルガ部隊は壊滅し、隊長のカノンフォートが一機、副隊長のヘビーライモスが一機で、それ以外はバラッツだけという。リーオの武器を持たずして、さらに数の利も無い状態でバイオラプターへ挑む等ということは自殺行為に等しい。そこでユウキへ依頼したというのだ。「で、報酬は?」当然だが良心だけでそんな事をしてやる気にはなれない。彼にだって金は必要なのだ。町長はムサと相談し、算盤を打ち始めた。「こんなものでどうかと?」かなりの金額、これだけの金額はおいそれと出せるものではない。小さめの街の月予算にも匹敵する。しかし、それだけこの作戦を彼らは重要視しているのだろう。「承った」ユウキは返事をした。「それで、そちらの娘は何か用で?」ユウキはルネを見てムサに訪ねた。代わりにルネが答える。「あの、お兄さんはゾイド乗りだって聞いて・・・もしかしたら青いライガー見たことあるかなって聞いてみたかったんです。」青いライガー、そういえば前に居た街の商人から妙な話を聞いたことがあった。バイオトリケラが倒される瞬間を見たというのだ。シールドライガーとも違う見たこともないライガータイプの機体が突如赤いライガーへ姿を変え、一瞬にしてトリケラを葬り去ったというのだ。ゾイドがいきなり変身するなどというのはゾイド乗りとしての経験が豊富な彼ですら聞いたことがなかったので信じがたいものがある。その事を彼はルネに話した。「そうですか・・・やっぱりルージが・・・」「それで、作戦はあるのか?」ユウキはレンに尋ねる。「いえ、それはこれから。あなたが作戦に加わってもらえる事になってから立案しようと考えていました。」まあ確かにその戦力ではどんな作戦を立てても無駄だったろう。「ふむ。」ユウキは、レンに提示されたゼ・ルフトの地図と、現在の敵味方の戦力を見ながら考え出した。
現在の敵の戦力はバイオラプター7機、そのうち4機がジェネレーターの確保、3機が司令部の警護に当たっている。「このジェネレーターの周辺にいるバイオラプターだが、ジェネレーターの周辺で戦うのはまずい。なのでこいつらを一時的に街の外へおびき出すこととする。」ユウキが作戦の説明を始める。海の方の村で、ディガルドとの戦闘でジェネレーターが破壊されてしまったという話を彼は聞いていた。ジェネレーターは街の命とも言える存在。ジェネレーターを失えばその街は滅亡を避けられないのである。しかしディガルドの首都、ディグのジェネレーターは停止しているようだが、街は滅んでいない。これは恐らくディガルドの超越した技術力によるものであろう。「その方法として、カノンフォートでディガルドの司令部を砲撃、そのまま街の外へ脱出し、司令部のバイオラプターをもおびき出す。その奇襲には俺も随伴する。」リーオの武器を持った大型ゾイドが関与していれば、バイオラプター全軍をこちらへ向けてくるのは間違いない。そして、彼ならばバイオラプター7機を葬り去る等ということは容易い事であった。「バイオラプターが街の外へ集まったところでバラッツは丸腰になったディガルド司令部を制圧する。」「了解しました。」レンは頷いてそう言った。「決行は明日の深夜、それまではディガルドはもちろんのこと、一般市民にも気づかれぬようゾイドの整備だけを行った方がいいな。」そうして、4人は部屋から出ていった。ユウキはベッドに入り、深い眠りに入った。
次の日の夜、作戦は決行された。「これより、ディガルド司令部を砲撃する。ユウキ殿、準備はよろしいか?」「ああ。」カノンフォートの重撃砲が火を噴いた。ディガルド司令部の壁は脆くも崩れ去った。警報が当たりに響き渡り、3機のバイオラプターが愚かにも現れた。「よし、そのまま逃げ切れ!」しかし、最高速度ではバイオラプターの方が僅かだが勝っている。少しずつだがバイオラプターとカノンフォートの距離が縮まっている。逃げ切れない!そのとき、地面を割って一機の中型ゾイドが姿を現した。副隊長のヘビーライモスだ。超硬度ドリルを回転させ、ラプターの腹部へ突き入れる。いくら無敵の防御力を誇るバイオゾイドとはいえ装甲のない、フレームの部分を攻撃すれば通常ゾイドにも勝ち目はある。だがこの攻撃は微妙に外れたが、ラプターを転倒させるには十分であった。この隙にカノンフォートは弾幕を張り、街の外へ出ることに成功した。だが直ぐに追撃は来た。だがここまでは計算通りだったのだ。「ジェネレーターの周りの奴らも来たぞ」7機のバイオラプターが全て町の外で集結した。「さて、始末するぞ。」ユウキはセイバータイガーのスロットを全開にする。愛機が唸りを上げバイオラプターに突撃する。バイオラプター達は必死にヘルファイアを放ち抵抗するがそんなものは全く持ってセイバーには当たらない。一機目のラプターは切り倒された。二機目、三機目と次々とラプターを葬っていく。レンはユウキのあまりに華麗な操縦に息を呑んだ。例えリーオの武器を装備した大型ゾイドとはいえここまで見事に動かせる者はそうはいない。6機目のラプターが倒されるというそのとき、ユウキの全身の毛が逆立った。彼の本能が危険を最大ボリュームで伝えていた。彼の視界に飛び込んできたのは一機の大型のバイオゾイド、バイオメガラプトルだった。「トラフへ向かう最中に寄り道をしてみれば、こんな事になっていたとは・・・。」聞こえてきたのは若い男の声。「メタルZiの武器を装備した大型ゾイド、放置するわけにはいかんな。」その男はメガラプトルをセイバーの方へ向けた。「貴様、何者だ?」ユウキがそのパイロットへ問う。「私は、ゾイド乗りのザイリン。」ザイリン、確かディガルド軍の総司令、ジーン大将の直属の少将だ。かなりの腕の持ち主と聞いているが・・・。「俺はユウキだ。フリーのゾイド乗りだ。」「そうか・・・。だが悪いがここで死んでもらう。」バイオメガラプトルは唸りを上げて、セイバータイガーに襲いかかってきた。
メガラプトルのハッキングクローがセイバーに襲いかかる。それを軽々とバックステップで回避し、背中のビームと腹のショックカノンを撃ち込む。だがザイリンはそれを予測していたかのように、身を捻り、それらを悠々と回避した。「こいつ、出来るな・・・」次はユウキが先手を取った。メガラプトルに飛びかかる。だが、飛びかかるというのは実はあまり有効な戦術ではない。もし避けられた場合、着地の硬直を狙われるのはほぼ確定であるために、ユウキは普段ならあまりしないことである。ザイリンはその飛びかかりを横に飛び、回避。だがユウキはそのまま着地はせず、左前脚で地面を突いた。並のパイロットがこんな事をすればバランスを崩し転倒してしまう。ユウキは地面に向かい、衝撃砲を撃ち込み、その反動で体勢を直す。すぐにメガラプトルの尾の一撃が来る。それを姿勢を低くし回避し、ブレードでメガラプトルへ斬りつけた。だがメガラプトルは軽く体を捻り、爪でブレードを掴んだ。「やるじゃないか。こんなに熱くなれる戦いはルージ君以来だよ」メガラプトルはそのままセイバーを投げ飛ばそうとした。パワーではメガラプトルの方が上なのである。だが、セイバーは超至近距離でビームと対地ミサイルを放つ。例えバイオゾイドにダメージは無くとも、衝撃を与え、そこから抜け出すには十分だったのだ。抜け出した直後、ザイリンは特に動じる様子もなくヘルファイアを放ってきた。同じく至近距離での一撃。ギリギリ回避したユウキは一瞬背筋が凍り付く。バイオラプターとは比べものにならない破壊力の一撃。まともに喰らえば終わりだろう。最後のラプターを倒したレン達ゼ・ルフト守備隊のメンバーは何もすることが出来なかった。自分たちを遙かに越えた次元のレベルの戦いを繰り広げる両者に近づくことすら出来なかった。「こうしてはいられない。」レン達は司令部の占拠へ向かったバラッツ達の様子を見に行った。延々と攻防を続けるユウキとザイリン。だが少しずつだがメガラプトルが優勢になりつつあった。ゾイド乗りとしての実力は両者とも全くと言っていいほど互角、だが機体性能には残念なことにかなりの性能差があったのだ。「このまま戦い続ければ俺の敗北は確定か・・・」ユウキは早急に決着を付けることを決意した。セイバーはメガラプトルに向かって突撃を掛ける。それを迎え撃つように火球を撃ち出すメガラプトル。正面からの攻撃、そんなものにユウキが当たるわけがなかった。しかしそれは向こうも承知のこと。メガラプトルは直ぐに接近戦の構えを取る。セイバーもブレードを展開しメガラプトルに斬りかかる。それをメガラプトルは両腕の爪で受け止めた。「そんなものは通用しないと分かっただろう?」「どうかな?」突如、ユウキはセイバーのブレードを強制排除した。「何!?」ザイリンは驚愕の声を上げる。そのまま、セイバーをその牙を、メガラプトルの右肩の装甲の隙間に突き入れた。バイオゾイドの唯一の欠点である関節部はフレームそのものがゾイドの軽量化を優先しているために通常ゾイドと比べても強固とは言い難い。そして、そのまま右腕を引きちぎった。「おのれ!」ザイリンはすぐに反撃の構えを取る。だが、すぐに彼は攻撃の手を休めた。「どういうつもりだ?」ユウキがザイリンに問う。「我々が戦う理由は無くなった。みたまえ。」ディガルドの司令部が炎上している。占拠及び破壊に成功したのだ。作戦は成功した。「次に会うときは、こうはいかないぞ。」ザイリンはそう言い残し、明け方の闇に消えた。
ディガルドを撃退し、報酬を受け取った。そうしてユウキはゼ・ルフトの街を後にした。しばらくの間、彼はコックピットに座りながら次の行き先について考えていた。いくつか頭の中を過ぎる。まずはキダ藩残存勢力が作り上げたという天然の要塞ズーリ。ここでは反ディガルドを掲げるディガルド討伐軍が結成されたという。各地のゲリラや名うてのゾイド乗りに使者を送り、協力を求めていたのだ。当然ユウキの所にもその使者がやってきた。だが基本的には人と群れることを好まない彼はそれを断ったのだ。行く当てもないのでそこでもいいのではないかと考え直したのである。気づかぬ内に、彼は森林地帯に足を踏み入れていた。この森林地帯は普通の森林地帯ではなく、古代遺跡が眠ると言われる非常に広大な樹海。迷い込めばそのまま死ぬまで出られなかった者などいくらでもいた森。彼は引き返そうとした。別にこの森で迷うつもりはないが、そこには何もないのだ。あるとすれば脱出できなかった者の屍。彼が機体を反転させた瞬間、謎の警報が鳴った。「トラップか!」地下から3機のバイオラプターが姿を現した。「ディガルドのトラップ・・・何故こんな所に?」だが、こんなものを仕掛けるというのだ。恐らくここには何かがあるのだろう。3機のラプターは何の連携もなくまっすぐにセイバータイガーへ突っ込んできた。それらの首をはね、一瞬で終わらせるユウキ。来た道を戻ろうとするが、どこから来たのか全く分からない。そうして走り続けて2時間、ユウキは樹海の中で、一つの古びた大きな建物に辿り着いた。
古代遺跡か?そう思わせる巨大な建造物。だがもう一つ彼の目に留まる物があった。それは夥しい数のバイオゾイドの残骸。中にはエレファンダーやコマンドウルフ、アイアンコングなどの通常ゾイドの残骸すらもあった。数は100や200では効かないだろう。「なんなんだここは・・・?」セイバータイガーも低く唸り声を上げている。危険を感じているのか?突如、木々の陰から、一機のバイオラプターが姿を現した。黒く塗られていることから隊長機だろう。ユウキが攻撃を仕掛けようとした瞬間、「待て!」という声がした。そのバイオラプターからだった。「私はディガルド軍中佐のリーだ。悪いことは言わない。死にたくなければ今すぐここから立ち去ることだな。」「ご親切にどうも。だがいきなりそんな事を言われて素直にはいそうですかと立ち去れるか。」「君にはこの残骸が見えないのかな?」先ほどの無数のゾイドの残骸達。「・・・どういう事だ?」「簡単なことだ。この遺跡に眠る古代の遺産を手にするべく、数多くのトレージャーハンター、そして我々ディガルド兵がこの遺跡に入り込んだ。だがその遺産に辿り着く前に、この遺跡を守護するガーディアンゾイドの餌食になったのさ。しかも、破壊されたゾイドからは綺麗にゾイドコアが抜き取られていた。バイオゾイドからもな。」なるほど。確かにこういった古代遺跡になら中にあるお宝によってはそういった守護ゾイドが存在していてもおかしくはない。だがトレージャーハンターは兎も角として、これだけのバイオゾイドがやられるとはどういうことか。ディガルドなら圧倒的な物量にものを言わせてそのゾイドを撃破し遺跡を占拠することも可能ではないのか?ユウキは好奇心に駆られ、遺跡の内部へとセイバーを走らせた。本来は迷路になっているようだが、大量の侵入者や戦闘によって壁は破壊し、内部へと直通の道が出来ているようだった。「一体何が・・・。」一時間ほど通路を歩いただろうか。外観からは予測も出来ないほど長い地下通路。そうして、一つの大部屋に辿り着いた。そこはゾイド同士の戦うコロシアムよりも更に広い。「何なんだこの部屋は?」突如、セイバーがすさまじい音量で叫んだ。同時にユウキにも何かが感じられた。「来る!」そして、床の下から、一機の巨大蠍型ゾイドが姿を現した。
青と赤の装甲、背中には大型の砲塔。見たこともない巨大なゾイドだった。そのとき、セイバーのコンピューターがその機体の正体を弾きだした。「デススティンガー?なんだ?聞いたことがない名前だ・・・」それだけではない。何故こんなデータがこの機体の中に入っているのか、それも分からない。デススティンガーは、背部の巨大な衝撃砲を放ってきた。それをユウキはヒラリとかわすも、その衝撃で機体が揺れた。恐ろしいパワーだ。衝撃砲が壁に激突し、崩れ落ちる・・・と思いきや、壁は一瞬光り、何事もなかったかのように無傷だった。「ギ、ギギィ・・・」デススティンガーは不気味に唸り声を上げると、いきなり謎の光に包まれる。それと同時にユウキのセイバーも光に包まれた。光が消えると、目の前には広大な樹海が広がっている。遺跡の外に出たのだ。そこには、先ほどのディガルド兵、リー中佐の部隊と思われる、バイオラプターが数十機待ちかまえていた。ラプターは一斉にデススティンガーにヘルファイアを浴びせかける。業火に包まれる巨大ゾイド。だが、炎の渦から姿を現したのは全く持って無傷のデススティンガー。それと同時にその巨体からは想像も出来ない恐ろしい反射速度でラプターに接近、2機のラプターを両腕のレーザーシザースで軽く捉え、捻り潰した。さらにレーザーカッターでその横のラプターを真っ二つにする。だがまだラプターは軽く20以上は残っている。そのとき、デススティンガーの尾の砲塔が激しく発光を始めた。恐ろしいエネルギー量だ。ユウキは本能で危険を感じ取り、デススティンガーの背部へ回る。チャージが終わり、デススティンガーは荷電粒子砲を放つ。圧倒的な光とエネルギーにより何も見えなかったが、視界が戻ったとき、そこには何事もなかったように樹海が広がっていた。しかし、バイオラプター達は跡形もなく消し飛んでいた。一時的にシステムフリーズに陥ったセイバーも回復したが、ユウキの頭の中には分からない事だらけであった。あの遺跡も、この樹海もあれだけのパワーの攻撃を受け、何故全く被害がないのか、あのゾイドは何者なのか、何故一瞬にして遺跡の地下から地上へワープしたのか。冷静なユウキとはいえ、悩まずにはいられなかった。ユウキは直ぐに立ち直り、戦う姿勢に戻った。デススティンガーはゆっくりこちらを振り返る。どうやら自分も殺そうとしているらしい。ユウキはヤツを仕留める段取りを考えていた。恐ろしいパワーとあれだけの集中砲火をまともに受けても傷つかない装甲、その巨体に見合わない運動性能、そして先ほどの一瞬にしてバイオラプターを消滅させた砲撃。正直、まともに戦って敵う相手ではなかった。