投稿者:うたかた 2006年04月30日 (日) 00時57分
初めて投稿します。 今日1日だけ私の想像にお付き合いください。
この「愛の夕暮れ劇場」はいつも楽しみにして読んでました。 今まで沢山の素敵な物語が読めて幸せでした。 作家の皆様、支えてきた皆様、ありがとうございます。
「初めての出会いは文字からだった」
親戚のアキラに連れられて初めて平井堅のライブに来た。 はじめは行く気がしなかったが、 結婚前の小旅行を兼ねて・・・しかもアキラが旅行費用とライブチケット代を負担してくれるという プレゼント付。 これは行くしかない! ただ条件付だったことは言うまでも無い。 ほんの5分程度の代役だ。
ライブ終了後にから渡されたストラップには「GUEST」というカードが付けられていた。 ミュージカル好きな私でもこの意味は知っている。 関係者しか入れない出入り口に入れるパス。 何故アキラがこれを入手できたのかは分からない。
ドアにへばりついているガードマンにとがめられることなくドアの向こう側に入った。
誰か捕まえなければ、教えてもらわなければ。 そう、私の・・・いや、アキラとの面会を望んでいる人の居場所はどこ? 「すみません。あの、あの」 ライブ後の向こう側の世界は雑然としていて、 それぞれの人が忙しそうで声がちいさくなってしまう。 それでも、私は誰かを捕まえた。 「すみません。会いたい人がいるのですが」 手紙を差し出して、廊下のかなり奥まで連れてきてもらった。 青いのれん。 開いているドアをコンコンとたたく人。 「お客さんだよ」 誰か出てきた。前髪ぱっくり分けの声が低い人。 「どちら様?ですか」
数分後、私はその楽屋の主と2人で会話を始めた。 「はじめまして。アキラと申します」 「はじめまして。ごめんな。ちょっとちらかってて」 彼は荷物をテーブルの端のほうに片付けた。 30分前にはステージ上で歌って笑わせて、そして泣かせた人。 前から20列目からでも間近でもかっこいいなぁ。 「とても素敵でした。歌もお話も」 緊張していてなぜか声が上ずる。 「・・・そうかな?」 照れている姿もなかなかカワイイ。 「キミ、アキラじゃないね」 即答だった。 この部屋に入って3分。 「彼女はそんな事は言わないよ」 長い沈黙を感じた。 「彼女は会ってくれないんだ」 頭を左に傾けた。 「どうして会ってくれないんだろう?」 「どうしてなんでしょう?」 私も即答した。 こんなに素敵な人に会えるチャンスを生かさない義姉は何を考えているのか? 「彼女はどんな人?」 もう私は正直に答えるしかなかった。 「私の母の姉の子供のお嫁さんで、子供が2人いて。近いところに住んでいます。時々アキラ家にも遊びに行きます」 「そう。・・・彼女は幸せそう?」 「前はよく話はしたけれど、今はお互いに時間が合わなくて」 長い沈黙。 もう5分間代役は絶望的。 「アキラは先に帰ると言っていたから、もうここには居ないと思います」 そうまでしてアキラが彼に会うことが出来ない理由は言えない。 「(ごめんね。こんな役を頼んで。 私が不美人だから会ったら彼が幻滅すると思うわ。 幻滅しないままにしたいんだ)」 そんな理由だ。 アキラは何があっても会わない。 「用意した席は誰も座って居なかった。 ステージの上からでも彼女を確認したかった」 「20列目の29番と30番だったんです」 「そんな場所じゃ確認できないね」 暗い顔してる。 なんだか同情してきちゃった。
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